ERPとMRPの違いとは?各特徴と導入メリット・デメリットを解説

  • 2021年8月12日
  • 2024年1月11日
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MRP(資材所要量計画)とERP(企業資源計画)は、名称・概念が似ていることもあり混同している方も多いのではないでしょうか。

ERPとMRPは、全く異なる概念・システムです。

この記事では、ERPとMRPの違いについて、システムの対象範囲・導入目的の2つの視点から解説します。

導入時の具体的なメリット・デメリットとあわせてご覧ください。

MRPとは?

MRPは、Material Requirement Planningの略で、日本語に訳すと「資材所要量計画」です。

日本語訳をみても、MRPは何か具体的にピンとこない人も多いのではないでしょうか。

この章では、MRPとはどのような仕組み・システムなのか、背景とあわせてわかりやすく解説します。

MRPは資材調達の最適化を目的とした仕組み

MRPとは、資材調達の最適化を目的とした仕組みのこと。

MRPが目指す資材調達の最適化とは、「必要なものを」「必要なときに」「必要なだけ」調達するという、トヨタ自動車が掲げるジャストインタイムの考え方です。

MRPでは、ジャストインタイムの考え方を達成するために、製品の完成から逆算して資材調達の計画を策定し、この計画を元に資材調達を実行します。

例えば、車を完成させるには、タイヤの取り付け工程が始まるまでに、タイヤが4つ必要です。

MRPでは、タイヤの輸送機関や在庫を考慮して調達計画を策定するため、計画通りに調達すれば、スムーズに生産工程を進められます。

さらに、調達する資材量は適切であるため、在庫過多やキャッシュフローの停滞を回避でき、経営面での効率化にもつながります。

こうした資材調達の最適化を目的とした生産管理手法がMRPなのです。

システムとしてのMRP

MRPは、「資材調達の最適化を目的とした仕組み」と解説しましたが、システムとしての側面も持ち合わせています。

資材調達では、在庫管理や調達量の算出などの膨大なデータを整理する必要があります。

仮に、これらの作業を人手でおこなうとなると、計算ミスや発注ミスなどのリスクが考えられます。

また、資材調達を円滑に進められれば、製造ラインに悪影響を及ぼす恐れすらあるでしょう。

しかし、MRPシステムでは、生産計画と連動したコンピュータが、資材ストックのデータを照合し、適切な調達時期や調達量などを算出してくれます。

MRPシステムを導入することで、人的ミスを回避できる上に、それまで必要であった人材を削減でき、人材配置の最適化にも繋がるでしょう。

MRPはMRP2へと派生

1970年代に生まれたMRPは、資材調達の最適化を実現し、効率的な生産管理を目指す仕組みです。

1980年代に入ると、MRPの概念に加え、ヒト・モノ・カネなどの製造能力を総合的に考えることが求められました

この需要を満たすために開発されたものが、従来のMRPを派生させたMRP2(製造資源計画)。

MRP2では、資材調達の最適化に加え、従業員や設備などの製造能力も考慮して生産計画を策定します。

MRP2は構成データが膨大なため、複雑な管理手法ともいわれました。

しかし、当時の製造業では、より高い生産効率が求められたため、アメリカを中心に拡大していきました。

ERPとは?

ERPとは、Enterprise Resource Planningの略で、日本語に訳すと「企業資源計画」です。

通説によると、近年多くの場面で耳にするERPは、先述したMRP2の発展型といわれています。

この章では、ERPの解説とともにMRP・MRP2との繋がりもあわせて、詳しく解説します。

ERPは経営資源の最適化に着目した管理手法

ERPと聞くと、ITシステムを想像すると思いますが、もともとは、企業経営における概念のこと。

さらに詳しくいえば、ヒト・モノ・カネなどの経営資源を最適に活用することで、企業経営の効率化を実現することに着目した管理手法です。

たとえば、会計・人事・販売など全ての基幹業務を統合管理することで、経営判断の迅速化・業務重複の改善などが期待できます。

システムとしてのERPは、「統合基幹業務システム」とも呼ばれ、経営資源の最適化を実現するためのITシステム。

基幹業務をサポートする機能を網羅的に搭載しており、社内の情報資源の一元管理が可能です。

また、IT技術の進歩により、近年ではクラウド型ERPなどの利便性が高いERPシステムも登場しています。

ERPが普及した経緯

ERPは、BPR(Business Process Re-engineering)という考え方を元に普及しました。

BPRとは、業務や戦略などの根本を見直し、業務単位で再構築する考え方のこと。

いわゆる、業務改革(BPR)です。

業務改革の目指すものは、単なる業務の再構築ではなく、企業活動全体を一貫して顧客志向に置き換え、業務効率の向上を図ること。

業務改革を実現するためには、基幹業務のシステム化・最適化が必要不可欠です。

そこで、注目されたのが、基幹業務のシステム化を実現できるERP。

業務改革・ERPは、1990年代初頭のアメリカで普及しましたが、その後の90年代後半には、日本企業でも導入されるようになり今日に至ります。

ERPと基幹システムとの違い

ERP「統合基幹業務システム」と基幹システムを混同してしまうケースは、少なくありません。

ただし、ERPと基幹システムは、まったく異なるシステムであるため、注意が必要です。

基幹システムとは、生産・会計・人事・営業など、各部門の最適化を図るためのシステム。

対象はあくまでも各部門のみです。

一方のERPは、企業の基幹業務全域をカバーします。

さらに、基幹業務全域を統合管理することで、経営の最適化を実現することが目的です。

ERPと基幹システムでは、システムの対象領域と目指す目的が異なります。

ERPとMRPの違い

MRPとMRPの派生型である、ERP。

ERPとMRPは、一体どのような違いがあるのでしょうか。

この章では、対象範囲と導入目的の視点から、両システムの違いについて解説します。

違い1.ERPとMRPの対象範囲

ERPとMRPの1つ目の違いは、システムの対象範囲です。

ERPの対象範囲は、先述の通り基幹業務全域に及びます。

また、基幹システムの機能を包括しているケースもあるため、単に対象範囲が広いだけでなく、システムとしての機能領域も多岐にわたります。

一方のMRPは、生産管理を対象範囲としたシステムです。

在庫の管理や適正仕入れ量の算出など、資材調達に関する機能が搭載されています。

MRPを導入することで、生産管理の自動化が可能となり、人材の削減・人的リスクの回避・生産管理の効率化などのメリットがあります。

ERPとMRPでは、対象とする範囲・機能が大きく異なるため、問題の所在を明確にし、最適なシステムを検討しましょう。

違い2.ERPとMRPの導入目的

2つ目の違いは、導入目的です。

ERPの導入目的は、基幹業務の統合管理による、経営資源の最適化です。

基幹システムのみを導入した場合、部門ごとに情報を管理するため、整合性を取る必要がありました。

しかし、ERPを導入することで、部門ごとの垣根がなくなり、情報資源の効率的な活用が期待できます。

また、データ入力などの重複作業が改善されるため、業務効率の向上も実現できます。

対して、MRPの導入目的は、資材調達の最適化

MRPを導入することで、必要なものを・必要なときに・必要なだけ調達するというジャストインタイムの実現が期待できるでしょう。

製造業では、過剰に在庫を抱えると、不良在庫の原因・キャッシュフローの悪化などのリスクが伴います。

MRPは、資材管理、ひいては生産管理の最適化を図ることで、上記リスクの回避に効果的といえます。

ERPとMRPに限らず、システムを導入する際には、自社の達成目標を明確化し、目標の達成に最適なシステムを選定するとよいでしょう。

ERPの導入で期待できるメリット

ERPはあらゆる機能を包括しているため、導入により会社にとっての大きなメリットが期待できます。

具体的なメリットは、下記3つです。

  1. 経営状態の可視化
  2. 業務管理コストの削減
  3. 生産工程の効率化

それぞれのメリットについて、詳しく解説します。

メリット1.経営状態を可視化できる

ERPを導入することで得られる1つ目のメリットは、経営状態を可視化できることです。

ERPは社内の情報を一元管理するシステム。

常に最新の社内情報を把握できるため、課題をいち早く認識でき、迅速かつ適切な経営判断を下せるでしょう。

たとえば、各部門のコスト管理やプロジェクトの進捗状況なども瞬時に把握できます。

仮にプロジェクトの進捗状況に問題があれば、人材の投与や再配置などの処置も取れるでしょう。

このように、経営状態を可視化できることで、課題の早期発見・早期解決が期待できます。

メリット2.業務管理コストの削減

2つ目のメリットは、業務管理コストの削減につながることです。

人事・販売・会計などの業務は、互いに関連性を持ちながら遂行されていくもの。

そのため、業務管理を実行するには、それぞれの業務を一元的に管理する必要があります。

会社規模が小さいうちは、業務管理の工数が少ないため、人的リソースの処理でも間に合うでしょう。

しかし、企業が成長するにつれ、業務管理の工数は膨大になります。

ERPを導入していれば、本来別々に稼働している基幹業務が1つのシステムに集約されるため、業務管理の工数削減につながります。

また、全業務を俯瞰できるため、各業務の最適化はもちろん、会社全体の最適化も期待できるでしょう。

メリット3.生産工程の効率化

3つ目のメリットは、生産工程の効率化です。

ERPシステムは、経営者向けのシステムと考えられがちですが、作業の重複回避など、現場の社員にも大きなメリットをもたらします

部門ごとに独立した基幹システムの場合、部門間で重複する業務の発生や情報の連携に手間取るなどのケースもあるでしょう。

しかし、ERPでは、入力したデータが他部門のシステムへ即座に反映されるため、重複データの入力や情報連携の必要がありません。

こうした細かな作業の効率化が実現できることで、重要度の高い業務のみに集中でき、生産効率の向上が期待できます。

ERP導入のデメリット

ERPを導入する際にはメリットだけでなく、デメリットも踏まえて検討することが重要です。

ERPの導入で考えられるデメリットは、下記2つです。

  1. パッケージの種類が多く、選定に時間がかかる
  2. 膨大なコストがかかる

ERPの種類は多岐にわたり、パッケージによって搭載された機能や導入形態などの特徴が異なります。

そのため、ERPの選定では、あらかじめ下記のポイントを明確化しておきましょう。

  • 必要な機能・不要な機能
  • ERPの導入形態
  • ERPの開発形態

選定時のポイントを明確化することで、自社に最適なERPをスムーズ選定できます。

2つ目のデメリットは、膨大なコストがかかること。

ERPは、導入前の段階でも製品選定・既存業務の洗い出し・社内調整などが必要です。

これには、時間やお金といったコストがかかります。

また、導入後でも、システムの保守・運用などでコストがかかるため、決して手軽に導入できるシステムではありません。

一般的に、社内にサーバーを立て運用するオンプレミス型ERPよりも、インターネットを介して運用するクラウド型ERPの方が、コスト面で優れています。

両者にメリット・デメリットが存在するため、一概にどちらがよいとは言えませんが、導入コスト・運用コストを抑えたいのであれば、クラウド型ERPを検討するとよいでしょう。

自社の生産管理に適したシステムを検討しよう

この記事では、ERPとMRPの違いについて解説しました。

ERPとMRPの違いは以下です。

  • ERP:経営資源の最適化を目的とし、全ての基幹業務が対象
  • MRP:資材調達の最適化を目的とし、生産管理が対象

ERPとMRPの特徴を理解し、自社に最適なシステムの導入を検討しましょう。

 

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