工場の機器や設備を定期的にメンテナンスしないと、不具合や故障が生じる可能性が高まります。
不具合や故障により生産ラインを止めざるを得ない状態になると、大きな損害につながりかねません。
この記事では、製造業に欠かせないメンテナンス・保守・保全の違いや、ポイントを解説します。
なかでも保全はわかりにくく、プロセスも数種類あるため、本記事で理解を深めていきましょう。
機器・設備のメンテナンス・保守・保全の違い
製造業でよく耳にするメンテナンス・保守・保全という言葉。
実は、メンテナンスと保守は同じ意味です。
定期的に機器や設備の稼働状況を確認したり、故障しそうにないか調査したりする作業が、メンテナンス・保守。
一方、保全には3つのプロセスがあり、メンテナンスや保守と比べて理解がしづらいです。
この章では、メンテナンス・保守の意味と保全の種類を掘り下げて解説します。
メンテナンスと保守は同じ意味
メンテナンスはシステムやネットワークなどの保守・点検作業を意味し、保守は正常な状態を保つこと。
一般的にメンテナンスと保守は同じ意味で使用する場合が多いため、同義と考えてよいでしょう。
どちらも、機器や生産設備の点検や修理をする意味で使用する言葉です。
しかし、保全は「機器や生産設備が壊れないようにすること」というニュアンスが強く、メンテナンス・保守は「機器や生産設備が故障したら修理する」という意味を持ちます。
機器・設備保全の種類
保全は、工場の機器や設備が正常かつ安全に稼働できるように、維持管理することを意味します。
混同しがちなメンテナンスや保守とほぼ同じ意味で使用する言葉ですが、保全には3つのプロセスがある点が特徴です。
予防保全
予防保全とは、保全計画をもとに機器や設備を定期的に点検や修理、部品交換することです。
予防保全の部品交換には、時間基準保全と状態基準保全があります。
- 時間基準保全:部品の状態に関係なく、一定の期間内に使用した部品を交換
- 状態基準保全:部品の状態を確認し、劣化状況によって部品を交換
予防保全は、故障の予防を目的としています。
予知保全(予兆保全)
予知保全は、機器や設備が故障する前に保全することです。
予防保全と予兆保全は故障を未然に防ぐ点は同じですが、予防保全は定期的に保全するのに対して、予兆保全は故障の予兆がある際に保全します。
予兆保全には機器や設備の監視システムが必要ですが、近年ではloTが活用が増えたため、注目を集めている保全の方法です。
事後保全
事後保全とは、機器や設備が故障・停止した場合に、原因を調査し対処することです。
事後保全は、機能低下型故障と機能停止型故障の2つが故障の対象で、違いは以下です。
- 機能低下型故障:パフォーマンスが悪くなった故障で、点検時に部品の劣化状況などから予測しやすい
- 機能停止型故障:機能が突然停止した故障で、定期的に点検しても不具合が見つかりにくい
事後保全では、発見時にその場で対処できる故障は素早く修理し、新しい部品が必要な場合には、発注してからトラブルに対処します。
機器・設備のメンテナンスや保全の目的
機器や設備をメンテナンス・保全する目的は、主に以下の4つです。
- 機器・設備の耐用年数を延ばす
- 故障を最小限に抑える
- 稼働率を上げる
- 物損の発生を防ぐ
メンテナンス・保全は、工場の機器や設備が故障するの防ぐため、安定した稼働と品質の確保には欠かせません。
さらに、設備の老朽化による事故を防ぐ役割もあります。
それでは、メンテナンス・保全を実施する目的を見てみましょう。
【保守・保全の目的】1.機器・設備の耐用年数を延ばす
機器や設備の定期的なメンテナンスによって、締結しているボトルやナットの締め込み作業や給油、周辺部品や付帯設備が傷つくのを防ぐことで、耐久性を上げ耐用年数を延ばしています。
工場の生産設備には数多くの部品があり、使用するほど劣化するため、いずれは故障するでしょう。
部品が故障すると、性能の低下や生産設備が停止する恐れがあるため、定期的なメンテナンスは欠かせません。
とはいえ、無駄な部品交換が多いと、コストが膨らみ、生産物の価格が上がってしまいます。
コスト増加を防ぐためには、生産設備にある部品の耐用年数を延ばすメンテナンスや保全が必要です。
【保守・保全の目的】2.故障を最小限に抑える
工場の機械などの生産設備が故障すると、不良品の発生や生産計画の遅れにつながるでしょう。
故障状況が悪いと、生産ラインを止める場合もあり、製品不良分を生産する材料費や光熱費、従業員の残業にかかる人件費など、生産コストが増加してしまいます。
故障による生産コストの増加を防ぐには、予防保全が有効です。
さらに、故障した機器や設備を修理するだけでなく、事後保全を実施すれば再発防止も期待できます。
【保守・保全の目的】3.稼働率を上げる
機器や設備の稼働率が上がれば、運用や保守にかかるコストの大幅な削減が可能です。
故障を未然に防ぐことで、製造が止まる状態を回避できるため、工場の生産性が向上します。
【保守・保全の目的】4.物損の発生を防ぐ
工場の生産設備では、常に何らかの製造をおこなっています。
しかし、生産設備の性能が低下したことに気づかず生産が進むと、不良品が大量に発生し、大きな損害になる可能性も少なくありません。
不良品となった製造物の破棄は、お金を捨てる行為と同じといえます。
このような物損(不良品)の発生を防ぐのも、メンテナンスや保全の目的です。
機器・設備メンテナンスを外注するメリット・デメリット
機器や設備のメンテナンスを外注すると、自社の人的リソースの確保や手間が省けます。
ただし、コスト増加や自社にノウハウが溜まりにくいといったデメリットもあるでしょう。
後々トラブルにならないためにも、メリット・デメリットをしっかりと理解したうえでメンテナンスを外注するか判断することが大切です。
機器・設備メンテナンスを外注するメリットとデメリットをみていきましょう。
機器・設備メンテナンスを外注するメリット
人材不足により、メンテナンス業務へ人材を配置できない場合もあるでしょう。
そこで、外注すれば、社内の人的リソースをメンテナンス以外の業務へ割けます。
メンテナンス業務には、機器やシステムを熟知した人材が必要ですが、外注ではメンテナンス会社の経験やノウハウに頼るため、自社で人材を確保する必要がありません。
新規プロジェクトで設備を導入したばかりの頃は、社内に十分なノウハウがないため、メンテナンスにリスクを伴います。
しかし、メンテナンス業務を外注すれば、安心してほかの業務へ集中できるでしょう。
機器・設備メンテナンスを外注するデメリット
メンテナンス業務に必要な人材確保の手間や費用は抑えられるものの、請負契約である外注は取引先の利益分が上乗せされるため、コストが増す場合もあります。
また、メンテナンス業務の外注により、業務の過程で得られる技術やノウハウが自社に貯まりにくい点もデメリットです。
メンテナンス業務を外注する際には、人件費や固定費だけでなく、外注先とやり取りする担当者への負担も考慮する必要があります。
機器・設備をメンテナンス・保全する際のポイント3つ
機器や設備のメンテナンスや保全で抑えるべきポイントは以下の3つです。
- 速さ
- 改善後の向上
- 新しい技術の取り入れ
故障や不具合を素早く見つけ改善するだけでなく、機能を向上させることが重要です。
それでは、機器・設備をメンテナンス・保全する際のポイントを見てみましょう。
ポイント1.速さ
定期的なメンテナンスや保全で重要となるのが、速さです。
メンテナンスでは、異常を見つけてから部品交換をします。
よって、異常が起こっている原因を素早く見つけ、損害がでないうちに修理しなければなりません。
原因の探求や修理に時間がかかるほど、工場の生産性や機能性は低下してしまいます。
素早く適切に判断するためには、工場設備に関する知識が必要といえるでしょう。
ポイント2.改善後の向上
故障を見つけ修理した後も、再びトラブルが発生しないように改善し工場設備の機能を向上させるのもメンテナンスのポイントです。
改善だけで終わる場合は多いですが、今後もっと使用しやすいためにはどうすればよいのか考えることも大切といえます。
事後保全に関しては、改善と向上がセットです。
次に故障した際の代替機の用意や、修理会社への連絡手段を確認するなど、トラブルの再発を防止する対策を取りましょう。
ポイント3.新しい技術の取り入れ
予防保全や予知保全では、設備を新しくする際に新しい技術や工夫を取り入れることがポイントです。
従来と同じ設備を導入しても構いませんが、新しい技術や工夫を取り入れた方がコストを抑えられる場合があります。
工場設備を改良すれば、操作性や耐久性、安全性が上がるだけでなく、メンテナンスや修理にかかるコストを削減でき、部品劣化の防止も可能です。
機器・設備をメンテナンスして故障を防ごう
この記事では、製造業に欠かせないメンテナンス・保守・保全の違いや、ポイントを解説しました。
メンテナンスと保守は同じ意味として使用する場合が多いですが、保全は少しニュアンスが異なります。
保全には3つのプロセスがあり、それぞれの違いをしっかりと把握することがメンテナンス業務において大切です。
生産設備では、日々何かしらの製造物を生産しており、機器は徐々に劣化していきます。
機器や設備が故障または不具合が生じると場合によっては、生産ラインを止めなくてはなりません。
不良品や生産ラインの停止を防止するためにも、定期的なメンテナンスや保守、保全が必要です。
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