結論から申しますと、生産管理システムの自作は可能です。
今回は、生産管理システムを自作する方法を紹介します。
生産管理システムの基礎をはじめ、エクセルで生産管理システムを作成するメリット・デメリットも解説します。
生産管理の効率化にお役立てください。
生産管理システムとは?【基礎知識】
生産管理システムは自作可能ですが、基礎知識がなければ作業の効率化を図るのは困難でしょう。
まずは生産管理システムの基礎知識を紹介します。
生産管理システムの役割や目的を明確化する際に参考になさってください。
生産管理システムは仕事をスムーズにするのが役割
製造には以下のような要素があります。
- 資材・部品などの「モノ」
- 生産計画・納期などの「情報」
- 原価・利益などの「カネ」
上記のような要素は、それぞれが組み合わさって経営に活かされ、総合的に管理する必要があります。
生産管理システムは、「モノ・情報・カネ」の3要素を統合して管理し、仕事をスムーズにするのが役割です。
生産管理システムで業務別に作業をサポート
生産管理には生産計画・資材管理・工程管理・品質管理・在庫管理などの業務があります。
生産管理システムは、各業務を適正に管理し、業務別に作業をサポートするのが目的です。
そのため生産管理システムは、生産管理の業務を熟知したうえで自作すべきです。
より詳細な生産管理の業務について知りたい方は、下記記事をご覧ください。
生産管理の最適化に必要なのは、業務把握・課題明確化・適切な対処です。この記事では、生産管理の業務内容や抱えやすい課題をお…
生産管理システムの自作はエクセル使用が主流
生産管理システムの導入では、大きく2パターンに分けられます。
外注するパターンと自作するパターンです。
自作に用いられるソフトは、エクセルが用いられるケースがほとんど。
エクセルは低コストで済み、プログラミングのような専門知識を必要としません。
エクセルで自作した生産管理システム、具体的に何が役立つのか?
エクセルの生産管理に役立つ機能は下記の通りです。
生産管理に役立つエクセル機能一覧
各機能が生産管理にどのように役立つのかを詳しく解説します。
生産管理の業務と照らし合わせ、イメージしながらご覧いただければ幸いです。
自作生産管理システムで役立つエクセル機能1.ピボットテーブル
エクセルのピボットテーブルとは、エクセル内のデータからクロス集計表を自動作成する機能です。
具体例としては縦軸が年度、横軸に資材調達費用と設定し、資材に必要なコストをどの程度見込めばいいかの分析に役立ちます。
さらに、年度ごとの商品の売れ行きや在庫数の分析などにも活用できます。
自作生産管理システムで役立つエクセル機能2.ガンチャート表示
ガンチャートとは、縦軸に作業内容・担当者・開始日/終了日などを、横軸に期間を設定して進捗状況を視覚的に表現したグラフのこと。
エクセルのガンチャート表示機能を活用すると、計画通りに生産ができているかを把握しやすくなります。
さらにガンチャートには工程ごとの担当者や進捗状況のほか、タスク記入も可能です。
製造工程や計画の調整がスムーズになり、作業の効率化が図れます。
自作生産管理システムで役立つエクセル機能3.SUMMIF・VLOOKUP・IF関数
エクセルのSUMMIF・VLOOKUP・IF関数の詳細は以下の通りです。
- SUMMIF関数:条件に合致する数値のみを合計する機能
- VLOOKUP関数:表を縦方向に検索、条件に合う数値を見つける機能
- IF関数:設定した条件に合致したときに特殊表示を行える機能
SUMMIF関数やVLOOKUP関数を活用すると、膨大な数字を目で追いながらの気の遠くなる作業を効率化。
IF関数は納期管理や在庫・資材管理に有効です。
在庫の最低数と最大数を設定しておき、キャッシュフローの悪化を防止できます。
自作生産管理システムで役立つエクセル機能4.同じ操作の自動化
エクセルにはユーザーの操作を記憶し、同じ操作を自動化するVBAという機能が備わっています。
作業計画表ファイルの入力やデータ入力などの定型業務を簡略化でき、業務改善に役立ちます。
VBAの活用により、少ない人員数の作業でも残業を減らし、主幹業務をスムーズに進行できるでしょう。
自作生産管理システムで役立つ機能5.バーコードとの併用機能
エクセルのバーコード作成・管理機能も生産管理に活用できます。
特に役立つのは不良品への対応です。
ロットごとにバーコードを作成し、ハンディターミナルと併用すると、どの製造ラインで不良品が製造されたかが一目瞭然。
素早い原因の究明に役立ちます。
生産管理システムを自作する3ステップ
生産管理システムを自作するためのステップは以下の通りです。
適切なステップを踏み、自社にとって有益な生産管理システムを自作しましょう。
それでは、生産管理システム自作のステップを詳しく解説します。
ステップ1.生産管理システム自作の戦略明確化
最初に行うべきは、生産管理システムの目的とゴールを選定すること。
注意が必要なポイントは、生産管理部門のみならず、会社全体・外注先なども含めて考えておく点です。
生産管理部門は、営業・工場・資材購入先・顧客などと幅広い人と接点があります。
そのため生産管理システムを自作する際は、全体を見通しながら、導入後にどのような戦略をすすめるのかを明確にしておかなければなりません。
俯瞰的な視野を持ったうえで、組織的に検討を重ねましょう。
ステップ2.生産管理システムが担う機能の選定
生産管理システム自作の第2ステップは、現状で抱えている課題明確化と必要な機能の検討です。
課題全てを解決しようとした場合、自作したシステムの過度な複雑化によって、導入後の修正作業に手間取るリスクがあります。
最も大きいと考えられる課題から順を追ってシステムに追加しましょう。
ステップ3.生産管理システムの自作に必要なコスト算出
生産管理システム自作は完成後もコストが必要です。
エクセルのライセンス料・作成や修正に必要な人件費など、ランニングコストがどの程度必要なのかを算出しましょう。
同時に生産管理システムの作成に必要な期間を算出しておくのも忘れてはいけません。
コストと期間の概算がわかれば、企業体としての具体的計画策定に活用可能です。
生産管理システムのエクセル自作、3つのメリット
生産管理システムをエクセルで自作するメリットは大きく分けて以下の3つです。
それぞれのメリットを詳しく解説します。
生産管理システムのエクセル自作が自社に適しているかの検討にお役立てください。
生産管理システムエクセル自作のメリット1.導入コスト・ランニングコストを抑えられる
ベンダーが提供する生産管理システムの導入には、百万円単位のコストを要します。
しかしエクセルで生産管理システムを自作すると導入コストが最低限に抑えられます。
さらに、エクセルで自作した生産管理システム導入後は自社の社員がトラブルシューティングできる点もポイントです。
ベンダーが提供する生産管理システムでは運用・保守費用が毎月必要ですが、エクセルで自作した場合に必要なのは生産管理システムを担当する社員の人件費のみ。
トータルコストを抑えられ、資金繰りが悪化するリスクに怯えずに済みます。
生産管理システムエクセル自作のメリット2.システムの使い方教育に手間がかからない
エクセルは多くの企業が業務で使用しているソフトです。
そのため基本的な使い方について教育体制を整える必要はなく、整備したマニュアルを見せる程度で十分でしょう。
さらに、エクセルは多様な外部ソフトとの連携が簡単なのもメリットです。
エクセルに詳しくない社員でも、エクセル内のデータを他のソフトにエクスポートできます。
生産管理システムエクセル自作のメリット3.システムのカスタマイズが自由にできる
エクセルで自作した生産管理システムは、現場の使いやすさを優先したり、自社特有の管理項目を追加したりが可能です。
現場にとっても使いやすく、比較的早い段階で馴染むでしょう。
さらに、運用中のシステム変更が可能なのも大きなメリットです。
生産管理システムに不足や不備が生じた際は、自社で全て対応できます。
システム変更が成功するかどうかは担当者の力量に左右されるものの、リアルタイムでより使いやすいシステムの構築が可能です。
生産管理システムのエクセル自作、7つのデメリット
生産管理システムをエクセルで自作した場合のデメリットは以下の7つです。
生産管理システムを自作するメリットと比較して、デメリットが明らかに多いのがおわかりになるかと思います。
7つのデメリットを具体的に解説します。
生産管理システムエクセル自作のデメリット1.処理が低速になる
エクセルデータはパソコン上に保管されるため、HDDやSSDに蓄積されたデータ量が増えるにつれて処理が遅くなります。
さらに、パソコンのスペックが低ければフリーズするリスクもあり、非効率的です。
ハイスペックパソコンへの買い替えは、パソコン本体のほか、ウイルス対策ソフト完備にもコストが必要。
データ移行の手間も考慮すると、生産管理システムのエクセル自作は現実的とは言えない一面を擁します。
生産管理システムエクセル自作のデメリット2.複数ユーザーが使えない
エクセルはOffice365を使用している場合、複数ユーザーによる同時編集が可能ですが、基本的に同時編集機能はありません。
そのためデータの整合性に欠けたり、他ユーザーが使い終わるのを待つ必要があったりと効率の悪さを感じる場面も。
エクセルで自作した生産管理システムによる業務効率化には限界があるでしょう。
生産管理システムエクセル自作のデメリット3.データ更新が手間
ベンダーの生産管理システムは部門を超えた連携により、リアルタイムの情報取得が可能です。
対してエクセルで自作した生産管理システムにデータを反映させるには、データを手作業で入力する必要があります。
エクセルで自作した生産管理システムによって簡略化される業務がある反面、十分に活用するために付随する業務が増えてしまいます。
「必要なデータを現場でメモし、エクセルに入力する」といった二度手間になる恐れがあります。
生産管理システムエクセル自作のデメリット4.ファイル管理が困難
エクセルは簡単にコピーファイルを作成できてしまいます。
つまり、社員がUSBにファイルを保存して持ち帰る可能性もあるということ。
どの社員が所持しているファイルが最新なのかの管理が困難になるうえに、情報漏えいのリスクもあります。
生産管理システムエクセル自作のデメリット5.管理可能なデータ量に限りがある
エクセルの行数や列数には限界があります。
そのため、行数・列数の限界を迎えた際は新たにファイルを作成しなければなりません。
生産管理上のデータをリソースとして活用する企業は多いでしょう。
しかし、過去のデータを探す際に複数のファイルを開いて確認するのは非効率的ではないでしょうか。
エクセルで自作した生産管理システムは、貴重なリソースを活用できないリスクを含みます。
生産管理システムエクセル自作のデメリット6.属人化の可能性がある
エクセルでは操作履歴を残すために、設定を変更する必要があります。
しかし、エクセルで生産管理システムを自作した段階で、操作履歴を残す必要がある点に気付く方は少ないでしょう。
結果、生産管理システムのカスタマイズができるのは作成した社員のみ、と属人化するリスクが高まります。
せっかく自作した生産管理システムも、属人化によってカスタマイズできなければレガシーシステムとなるのは時間の問題です。
生産管理システムエクセル自作のデメリット7.開発に失敗する可能性がある
エクセルで生産管理システムの自作は不可能ではありません。
ただし、作成するのは生産管理システムのプロではない点に注意が必要です。
生産管理システムの自作は膨大な時間と人件費をかけても、失敗する可能性があります。
時間とコストを無駄にしないために、より確実に生産管理システムを導入する方法を含めた検討が必要です。
自作した生産管理システムよりも高効率なERPとは?
自作した生産管理システム以上の効率化を実現するのがERPです。
ERPとは製造業向けの基幹システムのこと。
ERPについて詳しく解説します。
ERPとは各部署がシームレスにつながる基幹システム
ERPは各部署をパイプでつなげ、情報を一元管理できるシステムです。
自分のデスクにいながら工場でどれだけの製品が製造されているかを確認でき、移動にかけていた時間を短縮できます。
つまり、ERPは製造ラインの見える化を促進できるシステムということ。
頭を抱えていた生産計画においても、製造ラインごとの業務負荷を把握しやすく、効率的に業務を進行できます。
各部署が持つ情報のシームレス化が、企業全体の業務改善に貢献します。
ERPで生産管理の業務を大幅に効率化
エクセルで自作した生産管理システムには、データをメモして持ち帰って入力する二度手間が必要なシーンがあります。
しかし、ERPは各機器と接続されているため、データ収集に回る必要やデータを手作業で入力する必要がありません。
需要予測・資材管理・在庫管理など、生産管理には数値をもとにした分析業務が多く存在します。
データ入力が自動化されていれば、分析業務に集中でき、より緻密な生産計画を策定するのも可能です。
クラウド・アジャイル型ERPは低コストで導入可能
ERPは、いわゆる「既存の基幹システム」です。
導入には多額のコストが必要ですし、ランニングコストもかかります。
しかし、近年では中小企業の経済状況に合ったERPが登場しました。
クラウドを利用し、自社にサーバーを設置せずに低コスト化。
さらに自社に必要な機能だけを選び、コストと機能のムダを省いたアジャイル型が注目されています。
生産管理システムの自作は可能だがデメリットも多い
生産管理システムを自作する上で、大切なポイントは以下2つです。
- エクセルで生産管理システムの自作は可能だがデメリットが多い
- 基幹システムERPは自作した生産管理システムよりも高効率
結論としては「生産管理システムの自作は可能だが、不安定かつ不確実な面もある」です。
チェンシージャパン株式会社では、製造業向けのERPを販売しております。
ERP導入の際には丁寧な指導により、導入後の運用・保守が最低限に抑えられ、最終的に低コストになるのが特徴です。
生産管理システムでお悩みの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。