カーボンニュートラルの目標は、2030年と2050年にそれぞれ設定されています。
中間目標を2030年として、最終的なカーボンニュートラルの目標が2050年に設定されているのです。
本記事では、カーボンニュートラルで目指すべき目標を解説します。
カーボンニュートラルに必要な取り組み・事例・注意点なども、あわせてご覧ください。
カーボンニュートラルとは2050年までの脱炭素化を目標にした概念
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量が均衡する状態を目指す概念です。
具体的な取り組みの内容は、おもに以下の2つ。
- 温室効果ガスの排出量を削減
- 植林・森林管理などで温室効果ガスの吸収量を増加
カーボンニュートラルは、世界規模で発生している気候変動問題の解決に向けて、120ヶ所以上の国と地域がそれぞれの目標に向けた活動を始めています。
各国がカーボンニュートラルで策定した2030年の目標とは?
カーボンニュートラルの実現に向けて、最初に目指すものは2030年の中間目標です。
2030年の中間目標を実現するには、具体的な数値を知り、段階的に取り組む必要があります。
本章では、各国が掲げる2030年の中間目標を解説します。
目標1.【日本】2030年までに46%削減
日本では、温室効果ガスを2013年度比で2030年までの46%削減を目標にしています。
詳しくは後述するものの、日本政府はすでに都市の脱炭素化に向けた取り組みや、カーボンニュートラルを目指す企業への支援活動などを実施しています。
なお、2030年の46%削減は最低限の目標値であり、50%削減の達成にも挑戦する内容が「資源エネルギー庁 2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方」に掲載されています。
目標2.【アメリカ】2030年までに50%以上削減
アメリカは、2005年比で2030年までの50%以上の削減を目標にしています。
アメリカはパリ協定から一時的に離脱していたものの、気候変動問題の解決は経済的に有益と考えたことを背景に、カーボンニュートラルに積極的な姿勢をとっています。
そのため、当初は2025年までに26~28%削減としていた数値を、2倍近くまでに引き上げました。
目標3.【EU】主要都市100箇所をカーボンニュートラル化
EUは、2030年までにヨーロッパの主要な100都市のカーボンニュートラル化を目指しています。
航空燃料への課税・2035年以降はガソリン車の販売を廃止するなど、具体的な取り組みも進行している状況です。
具体的な目標を打ち出した組織は欧州委員会。
2018年より「A clean planet forall」という気候変動対策の概念を掲げて、各種の取り組みを推進しています。
日本政府が打ち出す6つのカーボンニュートラルの取組とは?
日本では、カーボンニュートラルの実現に向けて、資源エネルギー庁を中心とした体制が構築されています。
令和5年には、環境省が「2030年目標、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた成長志向型カーボンプライシング構想について」で、GXの重要性にも言及。
GXとは、脱炭素社会を目指す中で経済社会システムを変革させて持続可能な成長を目指す概念です。
本章では、GXの実現にも関連する日本政府の取り組みを解説します。
取組1.企業のカーボンニュートラルをサポート「脱炭素事業の出資制度」
脱炭素事業の出資制度に該当する事業は、おもに以下の3つです。
- 地域の気候変動基盤整備事業
- 浮体式洋上風力発電を活用した地域の脱炭素化ビジネス促進事業
- 地域循環共生圏構築促進事業
事業の代表例としては、秋田県の洋上風力発電を浮体式に変更する取り組みです。
今後も、地域に寄り添った事業の拡大が予測されます。
取組2.生活関連産業のカーボンニュートラルを促進「グリーン成長戦略」
グリーン成長戦略は、2050年までに成長を見込める14の重要分野に、大幅な削減目標と技術革新の実装・実現を求める概念です。
14分野は、大きく分けてエネルギー・輸送・製造・家庭およびオフィス関連産業の3つに大別され、生活に関わるほとんどの産業が含まれています。
取組3.都市のカーボンニュートラルを支援「ゼロカーボンシティ」
ゼロカーボンシティは、2050年までに温室効果ガス排出量の実質的なゼロを目指す都道府県・市町村を支援する取り組みです。
「ゼロカーボンシティを目指す」と宣言した自治体が対象となり、宣言後はクリーンエネルギー導入をはじめとした取り組みに対して、国からの支援を受け取れます。
取組4.新たなビジネスチャンス獲得も可能「脱炭素経営の促進」
日本政府は、カーボンニュートラルを目指す企業に対する支援もしています。
脱炭素経営は、他社との差別化による経済的な優位性の獲得と、環境課題の解決というメリットに期待できるためです。
脱炭素経営は、建物の省エネも含まれるため、ZEBも含めて検討すると効率的でしょう。
ZEBは、カーボンニュートラルを目指す製造業にとって大きな意義のある取り組みです。本記事では、ZEBの基礎知識や補助金の…
取組5.燃料の脱炭素を狙う「エネルギー対策特別会計」
エネルギー対策特別会計とは、再生可能エネルギー設備の導入・環境インフラ・CO2削減などの支援を目的とした取り組みです。
環境省のエネ特ポータル「エネ特(エネルギー対策特別会計)とは」のページからは、各取り組みの補助・委託事業の検索ができます。
再生可能エネルギー設備の導入を検討している場合は、同ページから補助・委託事業を検索して、取り組みの効率化を図りましょう。
取組6.企業の使用電力をクリーン化「環境省RE100の推進」
環境省RE100とは、企業が事業で使用する電力を100%再エネルギー化する取り組みです。
具体的な目標値は、2030年で60%、2040年で90%。
詳細は環境省「環境省RE100の取組」に掲載されていますが、王子製紙株式会社・ネクストエナジーアンドリソース株式会社などの所有施設が、取り組みを開始しています。
製造業のカーボンニュートラルはコストとモチベーション維持が課題
製造業界では、カーボンニュートラルに大きな注目が集まっている反面で、以下2つの課題も浮上しています。
- コスト:創エネ・省エネ設備のイニシャルコストが大きく、投資が困難。
- モチベーション:CO2排出量の可視化が困難でPDCAサイクルを回せず、結果がわかりにくい。
創エネ・省エネが進むにつれて、光熱費が軽減される一方で、イニシャルコストを回収するには長期的な取り組みが必要です。
長期的な取り組みには、設備・システムなどのランニングコストも含めた検討が必要となるため、結果的にコスト管理がうまくできずに頓挫してしまうケースも。
イニシャルコストを軽減するには、照明のLED化やHEMS機器の導入など、身近な省エネから取り組むと良いでしょう。
製造業のカーボンニュートラルに向けた2つの取組事例とは?
カーボンニュートラルを実現するために、どのように物事を考えて、どのように取り組むべきなのかを悩む声が多く聞かれます。
そこで本章では、カーボンニュートラルの実現に向けた企業の取組事例を解説します。
成功例や取り組み例を参考に、自社が着手できる取り組みを検討してみましょう。
事例1.輸送の工夫で88%のCO2削減に成功した「ネスレ日本株式会社」
ネスレ日本株式会社は、産業の垣根を超えた物流の共同化を実施して、88%のCO2削減に成功しました。
国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」に掲載されている通り、運輸部門が排出しているCO2は莫大な量です。
そこでネスレ日本株式会社は、空回送していたコンテナで別の荷物を配送させて、トラックの台数減少に成功。
ムダを探し出す分析力と、共同化という柔軟な思考力が、カーボンニュートラルに有効な取り組みを生み出したのでしょう。
事例2.再生可能エネルギー購入で大幅なCO2削減を目指す「ダイムラー(メルセデスベンツ)」
ダイムラーは、製造工程のCO2排出量を削減するとともに、再生可能エネルギーを購入してカーボンニュートラルに取り組んでいます。
工場内で使用するエネルギーの電化と、再生可能エネルギーの買い付けを同時に実施して、脱炭素化とエネルギー使用の効率化を実現。
なお、ダイムラーは販売する乗用車1台あたりのCO2排出量を、2020年比で半減することも発表しています。
カーボンニュートラル実現に向けた2つのポイントとは?
近年では、テレワークをはじめとしたフレキシブルな働き方が浸透しつつあります。
ニーズの多様化も進む中で、製造業を取り巻く環境は、刻々と変化を続けているのが現状です。
刻々と変化を続ける環境に適合しながら、カーボンニュートラルを実現するには、今後の経済を見据えた地盤の構築に取り組む必要があります。
本章では、カーボンニュートラルの実現に向けた2つのポイントを解説します。
ポイント1.カーボンニュートラルの礎となる環境整備
製造業界では、DXをはじめとした変革が求められているのと同時に、テレワークやハイブリッドワークの導入が進んでいます。
在宅勤務には、企業のオフィス縮小・光熱費削減など、カーボンニュートラルにつながるメリットも。
一方で、フレキシブルな働き方の実現に必要なIT技術を導入するには、イニシャルコストの高さを懸念する声があるのも事実です。
そこで大切なポイントは、保有している技術やインフラで実現できる範囲で取り組むことです。
前述した通り、カーボンニュートラルの実現にもイニシャルコストが発生します。
そのため、礎となる環境整備にかけるコストを抑えつつ、しっかりとした地盤を構築するのがポイントです。
ポイント2.循環型経済を意識した取組の実行
カーボンニュートラルでは、リサイクルの概念も大切です。
たとえば、消費後の資源・製品をリサイクルして使用するサーキュラー・エコノミーは、循環型経済を後押ししているモデル。
循環型経済の波に乗るためには、自社の製品・サービスを、どのように循環させてリユース・リサイクルを効率化させるかが大きなカギとなるでしょう。
今後は、循環型経済がさらに拡大することが予測した経営方針を固めるとともに、カーボンニュートラルに取り組む必要があります。
カーボンニュートラル、目標達成はCO2排出量の可視化が起点
本記事では、カーボンニュートラルの目標や必要な取り組みを解説しました。
特に大切なものは、以下3つのポイントです。
- カーボンニュートラルに取り組む前に、礎となる環境を構築する必要がある
- カーボンニュートラルの実現には、適切なコスト管理が大切
- プロジェクトメンバーのモチベーション維持には、CO2排出量の可視化が必要
カーボンニュートラル・DX・CO2排出量の可視化の3つを、低コストかつ同時に実現するには、社内のシステムを一本化を目指すのも大切です。
システムが一本化された場合は、ランニングコストの軽減・情報の一元管理による業務効率化に期待できるためです。
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