海外拠点管理では、地理的な距離のみならず、言語・文化の違いから多くの課題に直面します。
これから海外進出をお考えの方は、拠点管理で生じる課題が気になるのではないでしょうか。
本記事では、海外拠点管理で生じる課題とその原因を解説します。
後半では、海外拠点管理のポイントも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
海外拠点管理で生じる4つの課題
多くの企業がつまずく海外拠点管理の課題は、以下の4つがあげられます。
- 本社が海外拠点の現状を把握できない
- 本社からの指示が通らず現地任せになる
- 本社と海外拠点の連携に多くの時間・手間がかかる
- 拠点ごとにシステムが異なり業務効率が悪い
それぞれ順に紹介します。
課題1.海外拠点の現状を把握しづらい
もっとも発生しやすい課題は、本社が海外拠点の現状を把握できないことです。
一般的に、海外拠点では現地の法律・通貨に対応すべく、現地のパッケージシステムで業務を管理しています。
しかし、この現地のパッケージシステムが、本社のシステムと連携できないケースもしばしば。
そのため本社が現地の状況を確認するには、以下の手順を踏む必要があります。
- 現地の担当者がシステムから必要データを抽出
- データを整理し、メールなどで本社へ共有
- 不足があれば、本社から担当者へ確認
- 担当者は再度データを抽出し共有
連携に多くの時間がかかることで、現状とのタイムラグが生じていることもあります。
また、共有できるデータ量には限りがあるため、次第に現地の状況が見えづらくなり、海外拠点の不透明化につながります。
課題2.本社からの指示が通らず現地任せ
次に、本社からの指示が通らないことで、海外拠点での采配が現地任せになるケースも多くみられます。
先ほどと同様、拠点間の連携がうまく機能しない状況では、本社が海外拠点の現状を把握できません。
これにより、状況を唯一把握できている現地担当者に業務負担が集中する傾向があります。
ただ、現地担当者には、本来従事しなければならない業務があるもの。
業務負担が増加するにつれて、本来従事すべき業務が疎かになり、海外拠点の業績悪化を招きます。
なお、本社からの統制が取れない場合は、現地での不正行為や規則違反が生じるガバナンスの問題もあります。
課題3.本社と海外拠点の連携に多くの時間・手間がかかる
3つ目の課題は、本社と海外拠点の連携に多くの時間・手間がかかることです。
海外拠点と本社の連携には、時差や通貨・言語・商習慣の違いなど、多くの障害があります。
データを連携するには、収集した現地のデータを加工し整理なければなりません。
例えば決算処理の場合、データを取得したあとに、為替レートを確認しながら現地通貨を日本円へ修正する必要があります。
また、本社からデータを送る際にも、現地のシステムに適合できるようデータ整理や、法律・税務の調査など多くの手間がかかります。
こうしたデータ連携にかかる時間と手間は、業務効率を低下させる大きな要因です。
課題4.海外拠点間の連携が取れない
一般的に、複数の海外拠点がある場合、拠点ごとに別々のシステムを運用しています。
ただ、拠点間のシステムが相互に連携を取れず、人手で情報を共有することがほとんどです。
製造業のような拠点間の連携が不可欠な業種では、致命的なタイムラグを生むでしょう。
例えば、海外部品工場が最終製品の消費量を把握できなければ、需要変動や仕様変更があった場合に対応が遅れます。
また、海外部品工場が変更に気づけないまま、生産を継続すれば、過剰在庫や大量廃棄がが生じる恐れもあります。
海外拠点管理の課題が発生する3つの原因
前述した課題の主な発生原因は、以下の3つです。
- 本社と拠点のシステムを連携できない
- 言語・商習慣・法律の壁
- 海外拠点のIT人材が不足している
原因を把握し、出来うる対策を講じましょう。
原因1.本社と拠点のシステムを連携できない
一番の原因は、本社と拠点で別々のシステムを連携できないことです。
海外拠点では、導入時の所要期間やコストを抑えるために、現地のパッケージシステムを導入するケースが多く見られます。
また、拠点ごとにそれぞれ異なったシステムを運用した結果、海外拠点の不透明化や業務の煩雑化を招いています。
こうした課題を回避するには、本社との連携を重視し、各拠点のシステム環境を整備することが重要です。
原因2.言語・商習慣・法律の壁
2つ目の原因は、言語・商習慣・法律の壁です。
本社と各拠点を連携する際に立ちはだかるのが、この問題です。
本来、本社で運用するシステムを拡張し、海外拠点へ導入するのが最もコスト・手間を抑えられます。
ただ、多くの企業が運用する数十年前に構築されたシステムでは、現地の言語・通貨に対応した機能がない、もしくは不足していることがほとんどです。
導入に際しては、本社システムの大幅改修が必要となり、かえってコストがかかることもあります。
こうした背景から、多くの企業は海外拠点へ現地のパッケージシステムを導入し、管理上の課題に直面しています。
これから海外進出する場合は、言語・商習慣・法律の壁を回避するのではなく、いかにして乗り越えるのかを検討することが重要です。
原因3.海外拠点のIT人材が不足している
3つ目の原因は、海外拠点のIT人材が不足していることです。
IT人材が不足していると、海外拠点で発生したトラブルへの対応が遅れます。
たとえシステム側が正常な場合でも、それを運用する人材がいなければ、システムを活用できません。
業務や本社へのデータ共有が停止する恐れもあるため、十分なIT人材を確保しシステムの安定した稼働を目指しましょう。
適切に海外拠点を管理するためのポイント
海外拠点を適切に管理するには、以下のポイントが大切です。
- 海外拠点管理の目的を設定する
- 海外拠点管理の体制を整備する
- 海外拠点対応のシステムへ移行する
上記は、すでに海外拠点管理の課題に直面している場合でも有効です。
自社で取り入れられそうなものがないか、検討してみましょう。
ポイント1.海外拠点管理の目的を設定する
1つ目のポイントは、海外拠点管理の目的を明確にすることです。
この前提部分が曖昧なままでは、本社からの指示が通りづらく、海外拠点側も意図を把握できないまま指示に従わざるをえない状況になります。
この状況が深刻化すると、本社と海外拠点の間に垣根を生み、海外拠点側のモチベーション低下を招きます。
なお、海外拠点管理の目的は、企業の業種や規模、海外拠点の役割によっても異なります。
例えば、海外拠点に仕入れや製造を任せているのであれば、日常的に在庫状況や進捗を確認する必要がるでしょう。
一方、販路拡大を目的とした海外拠点であれば、日報報告と定期的なミーディングのみで事足りる場合もあります。
重要なことは、海外拠点を管理する目的を明確にし、本社と管理される側の海外拠点で共有の認識を持つことです。
まずは、前提となる目的を明確にしましょう。
ポイント2.海外拠点管理の体制を整備する
2つ目のポイントは、海外拠点管理の体制を整備することです。
特に多いケースとして、現地担当者の役割をすり合わせできておらず、本社側が意図しない動きをしていること。
この状態では、本社側が必要な情報を受け取れないばかりか、現地担当者もどのような業務を進めれば良いかわからず、お互いに不満を募らせていきます。
先ほどの目的設定と類似しますが、何のために海外拠点を管理し、それを実現するために必要な体制を構築することが重要です。
また、定期的に現地担当者とミーディングを行い、双方の意見をすり合わせると良いでしょう。
ポイント3.海外拠点対応のシステムへ移行する
3つ目のポイントは、海外拠点対応のシステムへ移行することです。
海外拠点管理にも対応した単一のシステムへ移行すれば、本社との連携強化を実現できます。
本社にいながら、海外拠点の状況を適切に把握できるため、統制を図りやすい点もメリットです。
また、単一のシステムであれば、運用・保守にかかるリソースも削減できます。
従来のように、システムごとにIT人材を配置する必要がなく、少ない人員でトラブルにも迅速に対応できるでしょう。
近年、海外拠点管理に対応したクラウドシステムが数多く提供されています。
会計・財務管理のみならず、生産管理や販売管理など、対応する機能も様々です。
自社が設定した海外拠点管理の目的に合わせ、適切なシステムを選定しましょう。
海外拠点管理にはERPがおすすめ
海外拠点管理には、ERPシステムがおすすめです。
ERPシステムとは、会計・人事・販売・生産などの基幹業務を統合し、社内情報を一元管理するシステムです。
従来の基幹システムは、単一の基幹業務に集中していたのに対し、ERPは複数の基幹業務を一元的に管理できます。
ここでは、海外拠点管理にERPシステムが適している理由を紹介します。
おすすめ1.全拠点の統一基準の策定につながる
ERPシステムを導入すると、全拠点の統一基準策につながります。
従来のように、海外拠点後へ個別のシステムを入れていると、現地通貨・法律の影響で、拠点後に異なる管理基準が設定されがちです。
本社が情報を収集すると、拠点ごとにデータの仕様が異なり、整理に多くの手間かかります。
一方、ERPシステムを導入することで、管理データが一箇所に集約されます。
ERPシステムの機能により、現地の法律・会計基準を考慮しつつ、統一された基準での集計が可能です。
また、各拠点の管理データをデータベース上に集約でき、リアルタイムで海外拠点の状況を把握できます。
こうした統一基準の設定と管理データの集約により、集計業務の効率化と不正行為の防止を実現できるでしょう。
おすすめ2.業務の標準化につながる
海外拠点では、人員が少なく、特定業務が一部の担当者に属人化するケースが多くみられます。
もし、担当者が退職する場合、業務が十分に引き継がれず、一時的に停滞する恐れもあるでしょう。
ERPシステムは、業務データもデータベース上に集約されるため、他の従業員が業務内容や進捗を瞬時に把握できます。
これにより、業務の標準化につながり、従来のような退職によるリスクを回避できます。
海外拠点管理でお悩みの方へ
この記事では、海外拠点管理で直面する課題とその解決策を紹介しました。
海外拠点は、言語・法律・商習慣の壁により、多くの課題が生じます。
しかし、進出前に問題点を把握し、十分な対策を講じていれば、スムーズな拠点展開・管理が可能です。
ぜひ、本記事を参考に海外拠点進出を検討してみてください。
当メディアを運営するチェンシージャパン株式会社では、製造業向けのERPシステムを提供しております。
海外拠点の業務管理のみならず、本社との連携も考慮した多言語・多通貨機能を搭載しています。
適切な海外拠点管理を目指す方は、ぜひ弊社のIFS Cloudの特徴をぜひご覧ください。
また、ERPシステムに関するウェビナーや製品情報を配信しておりますので、気になる方はお気軽に資料をご請求ください。