パフォーマンスの最大化「業務プロセス改革(BPR)」とは?進め方と事例を解説

  • 2022年1月11日
  • 2024年5月10日
  • 製造業

業務プロセス改革とは、企業の目的に向けて業務プロセスを見直し、抜本的に再構築する概念のこと。

業績改善に効果的な手法とされている一方で、 進め方を誤り業績悪化に陥るケースもあります。

本記事では、業務プロセス改革とはの問いに応えつつ、正しい進め方と推進する上でのポイントを紹介します。

自社の業績向上を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。

業務プロセス改革(BPR)とは?

業務プロセス改革とは、企業本来の目的である利益最大化に向けて、業務プロセスや組織体系、情報システムなどを根本から見直し、抜本的に再構築する概念のこと。

昨今の日本では、業務プロセス改革(Business Process Reengineering)の頭文字をとった、BPRの名称で知られています。

本章では、業務プロセス改革の歴史と業務改善との違いを紹介します。

業務プロセス改革(BPR)の歴史

業務プロセス改革の歴史は古く、1990年代初頭のアメリカにまでさかのぼります。

業務プロセス改革は、長期不況により疲弊した企業経営を、根本から立て直す革新的な概念として注目されました。

その後、バブル崩壊期の日本でも注目され、多くの企業で業務プロセス改革を実施。

ただ、日本企業による業務プロセス改革の取り組みは、皮肉にもリストラの助長やそれに伴う混乱を生む結果となってしまいました。

一度は失敗に終わった、業務プロセス改革。

しかし、高齢化により労働力の減少が進む昨今の日本では、再び注目を集めています。

また、デジタル・IT技術の発展もあいあまり、既存リソースを効果的に活用し、パフォーマンスの最大化を図る動きが加速しているのです。

業務プロセス改革(BPR)と業務改善の違い

業務プロセス改革と混同されがちな言葉に、業務改善があります。

業務改善とは既存のビジネスプロセスを、部分的に最適化する取り組みのこと。

ビジネスプロセスを根本から作り替える業務プロセス改革とは、全く異なる取り組みです。

双方の違いを「家」で例えると下記の通り。

  • 業務プロセス改革:建て替え(現状の不満を考慮して新たな家を建築)
  • 業務改善:キッチン・お風呂のリフォーム(問題箇所のみを部分的に最適化)

いずれも業務効率化を目指す取り組みですが、課題解決に向けたアプローチが大きく異なります。

業務プロセス改革(BPR)で期待できる効果

業務プロセス改革の効果は、実施目標や改革対象などによっても異なりますが、一般的には下記が期待できます。

  • 生産性の向上
  • 労働時間の短縮と人的コストの削減
  • 経営スピードの向上
  • 収益性の向上

企業に最も大きな恩恵をもたらすのは、生産性の向上

業務プロセス改革では問題の解決のみならず、より効率的に業務を遂行できるよう業務プロセスを一新します。

これによりムダな業務を削減でき業務効率が改善、生産性の向上を実現できるでしょう。

また、生産性の向上に付随して、労働時間の短縮やコスト削減、情報活用の推進に伴う経営スピードの向上などが期待できます。

業務プロセス改革の進め方を5Stepで解説

引用:民間企業等における効率化方策等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究・(3)BPR実施の一般的ステップ |三菱UFJリサーチ&コンサルティング

業務プロセス改革の基本的な推進方法は、上記の図の流れで5段階あります。

この章では各工程の要点を、注意点も交えて紹介します。

Step1.業務プロセス改革(BPR)の目標を設定

はじめに実施する内容は、業務プロセス改革の目標設定。

詳細な目標設定は改革の成功率を高め、なおかつスムーズな改革の実施につながります。

自社の現状を十分に把握し、現実的かつ明確な目標設定を心がけましょう。

たとえば、「前年度よりも不良品率を〇〇%減らす・生産高1億円を達成するためには可動率〇〇%向上」など。

具体的な数値を設定することで、改革の進捗度合いを図りやすい上に、実現に向けたアプローチが明確になります。

また業務プロセス改革は、実行と修正を繰り返す長期的なプロジェクト。

実行過程でゴールを見失わないよう、主要目標と段階的な目標の両方を設定するのがおすすめです。

Step2.改革対象を分析し問題点を洗い出す

次は、業務プロセスを分析して問題点と改善策を洗い出す作業です。

再構築後の業務プロセスに問題を持ち込まないよう、顕在的な課題のみならず潜在的な課題も洗い出します。

問題点の分析で役立つのが、当事者である現場の意見と各工程を可視化できる業務フローチャート

業務を遂行する現場からは、問題点に関する詳細な意見と具体的な改善策を抽出できるでしょう。

また、フローチャートはボトルネックが作用する業務範囲の把握や、潜在的な課題の把握に役立ちます。

ただし、問題の改善策を洗い出す際には、現場の意見を取捨選択することが重要です。

現場の意見を色濃く反映した業務プロセス改革では、社内全体を俯瞰した際に新たな問題点が生じる恐れがあるため。

現場のミクロな視点と全業務プロセスを俯瞰したマクロな視点の双方から、改善策を模索してください。

Step3.構築内容の設計

問題点と改善策が定まったら、最初に設定した目標を起点に、再構築する業務プロセスの設計図を作成します。

また、ERPシステムによる自動化・アウトソーシング・シェアードサービスの余地がないかも、あわせて検討します。

業務プロセスを抜本的に再構築した場合でも、ムダな業務のすべてを取り去ることは不可能。

そのため、上記ソリューションを活用し、ムダな業務を削減する企業が多く存在します。

自社リソースを、高付加価値業務に配置できる仕組み作りが重要です。

Step4.業務プロセス改革の実施

設計が完了すれば、いよいよ業務プロセス改革の実行フェーズに移行します。

しかし、いざ再構築すると、設計段階では気づけなかった新たな問題が生じるケースもあるでしょう。

これら新たに生じた課題の対処法は、主に下記の2つ。

  • 設計のやり直し
  • 業務改善で課題を解消

いずれの選択を取るかは、課題の重要度によっても異なります。

重要度の低い課題であれば、現場の業務改善で解消できるでしょうし、業務効率を阻害する重大な課題であれば、設計段階からやり直す必要があります。

いずれにせよ、生じた課題の種類や重要度を精査し、自社にとって最善の選択をとってください。

Step5.改革の定着と評価

業務プロセス改革を実行したのち、改革内容の定着と評価をします。

新業務プロセスの定着では現場からの反発が予測され、最悪の場合、うまく定着できず旧業務プロセスへ逆戻りする恐れもあるでしょう。

そのため、トップダウンで押しつけるのではなく、現場の意見も取り入れながら慎重な定着作業を心がけてください。

また、業務プロセス改革の実行後は、効果を評価することも重要です。

具体的には、下記3つのポイントで改革の評価をします。

  • 新業務プロセスが上手く機能しているか
  • 当初の目標をどの程度達成できたのか
  • 生産性向上の余地が残っていないか

仮に目標の達成に至らない場合や改善の余地がある場合は、継続的にPDCAを回し、業務の最適化を図ります。

業務プロセス改革の失敗を回避!押さえておくべき3つのポイント

失敗を回避して改革を成功に導くためには、下記3つのポイントが重要です。

  • 従来のやり方に捉われない
  • 経営層と現場の連携
  • 業務プロセスを可視化する

1つ目のポイントは、従来のやり方に捉われないこと。

既存業務を再構築後に持ち越すと、従来の問題点を改革後に持ち込む恐れがあります。

したがって、自社が達成したい目標を起点に、ゼロベースで新たな業務プロセスを構築し、パフォーマンスの最大化を目指すことが重要です。

2つ目のポイントは、経営層と現場が連携をとり、全社的に業務プロセス改革へ取り組むこと。

業務プロセス改革の実行に際しては、経営者による強力なリーダーシップが欠かせません。

しかし、業務を遂行する現場の意見を取り入れなければ、問題点を改善できないばかりか、業務効率の悪化を招く恐れがあります。

業務プロセス改革を成功させるには、経営層と現場が連携し、双方の意見を反映した改革の実施が重要です。

3つ目のポイントは、業務プロセスを可視化すること。

業務プロセスを可視化しないと、各業務の関係性や問題点を把握できない恐れがあります。

そのため業務プロセス改革を成功させるには、既存の業務プロセスを可視化し、徹底的に分析することが重要です。

また、人手で可視化業務をすることは膨大な手間がかかるため、基幹システムやERPシステムなどを使い、自動化するのも良いでしょう。

業務プロセス改革を成功させた2つの事例

下記の2社は、業務プロセス改革を実施して課題を解決した会社です。

  • 日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
  • 株式会社ビズリーチ

本章では、2つの参考事例を順に紹介します。

事例1.日鉄ケミカル&マテリアル株式会社

日鉄ケミカル&マテリアル株式会社は、システムの老朽化と各グループ会社で業務が統一されていないことから、下記の課題を抱えていました。

  • 情報連携の非効率
  • 低付加価値業務が存在
  • システムが業務を支えきれない

同社が実施した改革は、柔軟性・拡張性に優れた基幹システムへの一新と、それに付随した業務の再構築

これにより上記の課題解決を解決し、なおかつデータ活用の推進・品質管理機能の強化・内部統制の促進を実現しました。

事例2.株式会社ビズリーチ

株式会社ビズリーチは社内アンケートをきっかけに、RPAツールを使った業務プロセス改革を成功させた会社です。

当時の人事部には社内アンケートの収集業務があり、人手での遂行に3日かかっていました。

業務効率を改善すべく、すでに契約していたRPAツールを使用したところ、1時間程度で作業が完了。

これを機にRPAツールをさまざまな部署へ展開し、2019年1月時点で3部署15業務で活用しています。

各部署の事務作業を自動化したことで、コア業務に集中でき、生産性の向上を実現しています。

業務プロセス改革(BPR)を下支えするERPシステム

業務プロセス改革の一環として、ERPシステムを導入する企業が多く存在します。

ERPシステムとは、既存システム上にある情報を一元管理し、経営の効率化を図るためのソフトウェア。

本章では、業務プロセス改革におけるERPシステムの活用効果を紹介します。

また、ERPシステムの概要を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

業務プロセス改革におけるERPシステムの活用効果

企業体制の一新にあわせてERPシステムを導入すると、生産性のさらなる向上が期待できます。

ERPシステムは社内情報をまとめて管理するため、入力作業の重複や他部門への問い合わせなど、さまざまなムダを削減でき、生産性の向上につながります。

たとえば、販売部門が大量の注文を受けた場合、在庫や生産状況などを各部門に問い合わせる必要があります。

しかし、ERPシステムがあれば、すべての必要情報をデータベースから取得可能。

また、納品書を作成すれば、在庫数が自動的に差し引かれるため、入力作業の重複を回避できます。

ただERPシステムの選定時には、システムと業務プロセスの適合率が重要なポイント。

システムと業務が乖離する場合、ERP本来の成果を享受できないため。

その点、業務プロセス改革時にERPシステムを検討すれば、システムと業務の適合率を調節でき、十分な活用効果を期待できます。

業務プロセス改革(BPR)の実施をご検討中の方へ

この記事では、業務プロセス改革について紹介しました。

業務プロセス改革とは、利益最大化に向けて、業務プロセスや組織体系、情報システムなどを根本から見直し、抜本的に再構築する概念のこと。

限られたリソースを効率的に活用し、パフォーマンスの最大化を図る上で重要な取り組みです。

また、業務プロセス改革の一環として、ERPシステムを導入するのも有効です。

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