カーボンニュートラルとネットゼロの違いとは?課題と解決策

  • 2023年6月27日
  • 2024年4月3日
  • DX・IT

カーボンニュートラルとネットゼロの違いは、ほとんどないというのが結論です。

しかし、カーボンニュートラルとネットゼロという2つの言葉は、使用するシーンが異なります。

本記事では、カーボンニュートラルとネットゼロの違い・実現に向けた取り組みをまとめました。

カーボンニュートラルとネットゼロが抱える課題とともにご覧ください。

カーボンニュートラルとネットゼロの違いとは?

カーボンニュートラルとネットゼロの違いは以下です。

  • カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量と吸収量の「実質的な」なゼロを目指す取り組み
  • ネットゼロ:温室効果ガスの排出量と吸収量の「正味(英語でnet)」という計算上ゼロを目指す取り組み

上記のように、言葉のニュアンスが若干異なるものの、基本的には同義語です。

本章では、カーボンニュートラルとネットゼロの詳細を解説します。

1.完全な中立を目指す「カーボンニュートラル」

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量と、森林の吸収量の合計を、実質的にゼロにする取り組みです。

具体的には、排出する温室効果ガスの総量を減らしながら、植林・森林管理による温室効果ガスの吸収量をアップする取り組みの実行。

2015年に採択されたパリ協定では、世界共通のものとして、以下の長期目標に合意しています。

・世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)

・今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

引用元:脱炭素ポータル カーボンニュートラルとは

身近なところでは、アサヒ飲料株式会社がCO2を吸収する自動販売機の実証実験を開始しており、大きな話題となりました。

自動販売機で吸収したCO2は、肥料やコンクリートなどの工業原料に活用する仕組みで、資源循環やカーボンニュートラルに有効な取り組みです。

今後は、アサヒ飲料株式会社のような取り組みが増えることが予測されます。

2.計算上のゼロを目指す「ネットゼロ(正味ゼロ)」

ネットゼロとは、消費するエネルギーと同量のエネルギーを再生可能エネルギーで創出して、一次エネルギーを正味ゼロにする取り組みです。

(なお、ネットゼロのnetは、英語のnetで「正味」という意味です)

画像引用:環境省 ZEB PORTAL ZEBとは?

ネットゼロは、環境省が推進するZEB(Net Zero Energy Building)が代表的な取り組みです。

ZEBとは、省エネと再生可能エネルギー創出によって、建物の一次エネルギーを正味ゼロにすること。

建物で消費するエネルギー総量が削減され、ZEBの普及がカーボンニュートラルの実現に貢献します。

「環境省 ZEB PORTAL 8.ZEBの事例を知りたい」に掲載されているように、すでに建物のZEB化に成功した企業も実在します。

ネットゼロは、実質的な温室効果ガス削減を目指すことから、カーボンニュートラルの実現に必要な1つの考え方として覚えると良いでしょう。

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3.カーボン・オフセットは排出炭素を相殺する仕組み

カーボン・オフセットは、カーボンニュートラルやネットゼロとあわせて、よく使用される言葉です。

農林水産省では、カーボンオフセットを以下のように定義しています。

カーボン・オフセットとは、市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせるという考え方です。

引用元:農林水産省 カーボン・オフセット

再生可能エネルギーのみでの企業活動は困難なのが実情です。

省エネや創エネに努めたとしても、削減できる温室効果ガスには限界があります。

カーボン・オフセットでは、温室効果ガスの排出削減・吸収を目指すプロジェクトや活動を支援して、どうしても削減できない温室効果ガスの埋め合わせとする取り組み。

温室効果ガスの排出削減・吸収が可能な基盤の強化が、カーボンニュートラルの実現に貢献します。

カーボンニュートラル・ネットゼロに向けた4つの取り組みとは?

経済産業省 資源エネルギー庁「カーボンニュートラルって何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?」では、カーボンニュートラルの実現には、下記の4つの取り組みが掲載されています。

4つの取り組みは組み合わせて実践することが大切です。

なぜなら、各取り組みを組み合わせると、より効率的な温室効果ガスの削減につながるため。

本章では、取り組みの詳細を解説します。

取組1.電化製品を見直す「省エネルギー・エネルギー効率向上」

建物の節電やエネルギー効率が高い製品の使用で、省エネを図ります。

エネルギー効率の高い製品は、一定以上のエネルギー基準を満たした「トップランナー機器」を基準に選定すると良いでしょう。

詳しくは、一般社団法人 日本電機工業会「トップランナー機器とは」に掲載されていますが、エアコン・冷蔵庫などの26品目が対象です。

取組2.電源の脱炭素化「CO2排出原単位の低減」

CO2排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量で、電気1kWh当たり・廃棄物1t焼却あたりなどで算出されています。

近年では火力発電が主要ですが、CO2排出量を削減するために、再生可能エネルギーや原子力発電などの電源の非化石化を進める取り組みです。

火力発電を完全になくすのは現実的ではありませんが、CO2の回収・貯留による利用やカーボンリサイクルなどで脱炭素化を図ります。

取組3.動力源を電化「非電力部門の電化」

ごみ処理場や飲食施設などの非電力分野では、高熱・燃料利用が必要な場合があるため、脱炭素化が困難な場合があります。

しかし、燃料の置き換えや電化で排出原単位の縮小が可能に。

身近なところでは、ハイブリッド自動車の使用や、水素・バイオマス・合成燃料の使用がCo2排出原単位の低減に効果的です。

取組4.大気中のCO2を回収「ネガティブエミッション」

ネガティブエミッションは、CO2を回収・貯留して大気中のCO2を削減する取り組みです。

前述したカーボン・オフセットと似ていますが、ネガティブエミッションは大気中へのCO2排出量をマイナスにするのが目標という点で異なります。

ネットゼロ・カーボンニュートラルの最終目標は「カーボンネガティブ」

カーボンネガティブとは、経済活動の中で排出されたCO2よりも吸収されるCO2が多い状態を目指す概念です。

マイクロソフト社が、2020年1月にカーボンネガティブを提唱したのをきっかけに、注目されるようになりました。

カーボンニュートラルやネットゼロは「CO2排出量ゼロ」が目標なのに対して、カーボンネガティブは「CO2排出量マイナス」が目標。

メルセデスベンツ・Apple・花王などは、すでにカーボンネガティブに関する目標を掲げて、動き始めています。

なお、日本では独自の用語として「ビヨンド・ゼロ」があり、カーボンネガティブと同じ意味で使用されています。

ネットゼロ・カーボンニュートラルが抱える2つの課題とは?

ネットゼロ・カーボンニュートラルの実現には、CO2の適正な管理方法やコスト管理が課題になりがちです。

CO2をはじめとした温室効果ガスを目で捉えるのは困難な上に、再生可能エネルギーの創出には新たな技術導入が必要で多大なコストがかかるためです。

それでは、ネットゼロ・カーボンニュートラルを実現するには、どのようにして管理すべきなのでしょうか。

本章では、ネットゼロ・カーボンニュートラルに取り組む際の課題と解決策を解説します。

課題1.CO2排出量の適正な管理

CO2をはじめとした温室効果ガスは、目に見えないため排出量を明確にするのは困難です。

排出量の算出には、モノを消費する中でデータを収集・分析する必要がありますが、正確な値を算出するまでに多大な労力が必要になります。

しかし、カーボンニュートラル・ネットゼロの実現には、温室効果ガスの排出量の正確な測定・管理が必須です。

温室効果ガスの適切な管理には、ERPをはじめとしたシステムの活用が有効。

たとえばERPを活用した場合は、収集したデータが一元的に集約・管理できます。

ERPの中には、CO2排出量を管理するための機能が付属している場合もあるため、温室効果ガスの排出量測定や管理が容易になるのは明らかです。

課題2.体制構築にかかる技術開発・コスト管理

カーボンニュートラル・ネットゼロに向けた体制構築は、新たな技術開発やコスト管理が必要です。

なぜなら、再生可能エネルギーの発電コストは化石燃料よりも高く、導入には専門知識を要するため。

たとえば太陽光発電を導入しても、発電量は天候に左右されるため不安定になるでしょう。

発電量が不安定な中で、コストパフォーマンスを適正に保つには、年間の発電量とコストのデータを収集して分析しなければなりません。

年間の発電量やコストのデータを活用するには、CO2排出量と同じく、データの一元管理が可能なシステムが有効です。

システムに入力したデータは、リアルタイムで共有され、必要なタイミングで取り出せます。

再生可能エネルギーの発電システムと基幹システムを連携できれば、日常的なデータ測定および入力も自動化可能。

カーボンニュートラル・ネットゼロを目指すには、システムの力が必須と言えます。

カーボンニュートラル・ネットゼロを目指す企業担当者様へ

本記事では、カーボンニュートラル・ネットゼロの違いや有効な取り組みに加えて、実現までの課題解決策を解説しました。

カーボンニュートラル・ネットゼロの実現には、様々な手間や労力が必要ですが、その多くはERPをはじめとしたソリューションで解決できます。

当メディアを運営するチェンシージャパン株式会社は、中小企業向けのERP「IFS Cloud」を提供しております。

IFS CloudはCO2排出量を管理できる「IFS Lobby」が備わっており、効率的なカーボンニュートラル・ネットゼロの実現をフォロー可能です。

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