工場の見える化は、DXやスマートファクトリーを目指す企業にとって避けては通れない道です。
なぜなら、工場の見える化ができていなければ、効率的な生産性向上が見込めないため。
本記事では、工場の見える化の基礎知識に加え、工場の見える化による効果を最大化するポイントを解説します。
工場の見える化でのお悩み解決にお役立てください。
工場に見える化が求められる3つの理由とは?
工場の見える化が求められる理由は、おもに下記の3つです。
各理由の内容詳細をみていきましょう。
理由1.工場見える化は生産性・作業効率向上に必須
工場の見える化は、生産工程に隠れたムリ・ムダ・ムラを見つけて業務を効率化し、生産性を向上させるのが目的です。
生産性向上のために業務の効率化が必要な理由は、少子高齢化による人材不足が挙げられます。
ただでさえ働き手が不足する中、新型コロナウイルス対策が求められる昨今では、業務効率化による生産性向上の必要性がさらなる高まりを見せているのです。
限られた人材リソースを有効活用するには、従業員が働きやすい環境を構築し、適切なワークライフバランスを確立することによる従業員満足度を高める取り組みが必須。
工場の見える化による作業の効率化は、生産性向上とともに、従業員満足度の向上も見込める取り組みと言えるでしょう。
理由2.工場の見える化はスマートファクトリーに貢献
製造業に携わる中で「インダストリー4.0(Industry 4.0)」という言葉を耳にした経験がある方も多いのではないでしょうか。
総務省が平成30年に発表した情報通信白書のポイントによると、インダストリー4.0はスマート工場を中心としたエコシステムの構築が目的。
IT技術を活用した新たなビジネスモデルの構築が求められています。
そして、インダストリー4.0の目的を達成するためには、工場の見える化は必須。
インダストリー4.0にあるようなスマートファクトリーでは、工場から発信される情報リソースが必要であり、情報リソースを得るためには工場の見える化は避けて通れない道となるためです。
理由3.「2025年の崖」に工場の見える化が有効
工場の見える化は、経済産業省が発表したDXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~に対する有効な取り組みです。
2025年の崖とは、今後DXが推進されずにレガシーシステムが残存した場合、企業の競争力が急速に低下する事態を想定した事態のこと。
多品種少量生産が主流となった現代においては、より効率的な生産が求められており、効率的な生産のためには生産現場のムリ・ムダ・ムラをなくす取り組みは必須でしょう。
したがって、工場の見える化は2025年の崖の克服及びDX推進に必要な取り組みなのです。
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【基礎知識】工場の見える化とは?
工場の見える化は、工場で故障工程が判別できるようにランプを点滅・点灯させたり、ブザーを鳴らしたりといった取り組みから始まりました。
現代では様々な業種に展開され、営業マン・警備員・メンテナンスマンの動きを把握できるまでに発達しています。
それでは、現代の工場における見える化とは何なのでしょうか。
下記3つの視点から解説します。
1.工場の見える化とはリソース効率活用が可能な取り組み
現代社会において、作業の効率性向上と同様に求められているのが情報リソースの効率的な活用です。
工場内から発信させる様々な情報は、生産活動の効率化に大きく貢献し、結果的に収益の向上や競争力の獲得につながるためです。
代表例として挙げられるのはトヨタの「ジャスト・イン・タイム」の生産方式。
IoTによって進化した見える化は、生産活動に関わる全てのものに対してインターネットを接続し、さらなる効率化を可能にしています。
そのため、近年では工場の見える化はIoT化を意味するようになり、リソースの効率的活用に必要な手段のひとつと考えられているのです。
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2.工場の「見える化」と「見せる化」は目的が異なる
工場の見える化と見せる化の違いを、表にして比べてみましょう。
工場の見える化 | 工場の見せる化 | |
目的 | データを可視化し、現場の課題を発見すること | 業務に関わるデータ・情報を常に確認できるようにすること |
効果 | 作業現場の「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし、作業効率化や業務環境向上に期待できる | リモートによる監視ができ、モニタリングが容易になる |
上記のように、見える化と見せる化では目的と効果に大きな違いがあることがわかります。
見える化は効率性を向上できるのに対して、見せる化は業務効率化に期待できない点を理解し、生産性を向上させるための取り組みである見える化に注力すべきでしょう。
3.工場の見える化には現場の人材を育成できる仕組みが重要
工場の見える化は「目で見る管理」とも言われ、もともとは生産現場から生まれた考え方です。
目で見る管理を実践するにあたっては、生産現場の人が目に入った瞬間に判断・対応できるような仕組みが必須でしょう。
たとえば、部品残数・具体的な作業指示が記載されたカンバンを作成し、次の工程に渡すカンバン方式は目で見る管理の代表例です。
カンバンを受け取った次の工程の作業員は、生産現場の状況を速やかに把握・判断したうえでの生産活動が可能になります。
工場の見える化には、生産現場で瞬時に判断し行動できる人材育成が必要不可欠です。
工場の見える化にはIoTが必須、3つの導入フェーズとは?
工場の見える化に必要なデータの収集には、IoTの力が必須です。
IoTの活用により、マンパワーでは得られない正確なデータの収集と分析ができるためです。
IoTを活用した工場の見える化を図る場合、下記3つのフェーズに分けられます。
フェーズごとに詳しく解説します。
フェーズ1.センサーデバイス設置による生産ラインの見える化
センサーデバイスによる生産ラインの見える化は、工場の作業効率向上に欠かせないフェーズです。
生産ラインの随所に設置したセンサーデバイスにより、リアルタイムでの状況把握が可能。
さらに、収集したデータをビッグデータとして活用可能な、貴重な情報リソースを獲得できるでしょう。
フェーズ2.データ分析による課題の見える化で生産ライン最適化
センサーデバイスによって得た情報の分析により、生産ラインが抱える課題を洗い出すフェーズです。
たとえば不良品の数を改善する場合です。
不良品が発生したときの状況がデータとして残っていれば、より的確な対応を検討でき、今後の不良品発生予防にもつながるでしょう。
生産ラインに多くの課題がある場合は、優先順位を決めて対策を検討します。
一度に大きな変革を試みると、現場スタッフが対応しきれず、生産性が低下するリスクがあるためです。
その都度現場スタッフに対して説明しながら、順序立てて取り組むのがポイントです。
フェーズ3.AI活用による制御の自動化
AIを活用した制御の自動化では、人が行っていたレギュラーな対応を機械に移行するフェーズです。
センサーデバイスで得られたデータを活用し、様々な状況と対応をAIに入力。
結果とプロセスの状況に応じた柔軟な作業を、AIが自律的に判断して作業できるように調整します。
工場の見える化による生産性・作業効率成功のポイント
工場の見える化による生産性・作業効率の工場を成功させるには、以下3つのポイントが大切です。
各ポイントの詳細をみていきましょう。
ポイント1.工場の見える化は効率化と生産性の正しい理解が必要
効率化と生産性は、セットで使用されることが多く、それぞれが持つ意味を混同しがちな点に注意が必要です。
- 効率化:業務・製造プロセスの「ムリ・ムダ・ムラ」の有無をチェックし、既存の手法を改善するための取り組み。
- 生産性:一定の時間内にどれだけの製品を生産できるかを表す指標。スタッフ1人が1時間で生み出す収益は「労働生産性」とも呼ばれる。
上記のように、生産性は目標となる数値であるのに対し、効率化は目標値を達成するための手段です。
工場の見える化による生産性向上を目指す場合は、効率化と生産性の違いを理解し、現場スタッフにも知識を共有するとよりスムーズでしょう。
ポイント2.スムーズなデータ移行で工場の見える化を効率化
工場の見える化に取り組む際に、古い設備・システムからのデータ移行が必要な場合があります。
そして、古い設備・システムから新規システムへのデータ移行は、デジタル化されていないデータに要注意。
デジタル化していないデータの移行には、多大な時間が必要となり、目標としていた期間内に見える化が終了しないリスクが想定できます。
データ移行をスムーズにするには、IoTセンサーやカメラの設置が必要になる場合もあるため、見える化に取り組む前に必要性を検討しておきましょう。
またIoTセンサーやカメラの設置に必要な経費については、補助金や中小企業投資促進税制が活用できる場合も。
見える化に取り組む際は、補助金についてもチェックしてみてください。
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ポイント3.工場の見える化に必要な評価指数は計算方法を統合
評価指数(KPI)とは、目標達成のための業績評価の指標であり、工場の見える化でも目標の根拠となる数値として活用されます。
しかし、各部署の評価指数は計算方法が異なるケースがあり、根拠数値にばらつきが生じてしまうことも。
プロジェクトチームを立ち上げた際は、根拠とすべき評価指数の計算方法を統一しておきましょう。
工場を見える化できるシステムをお探しの方へ
本記事では、工場見える化について以下3つのポイントをお伝えしました。
- 今後も成長を続けるためには工場の見える化が必須
- 工場の見える化は、業務効率化・生産性向上が可能
- 工場の見える化の実現には、IoTの活用が必須
工場の見える化に成功できれば、収益の大幅な向上が見込めるでしょう。
しかし、工場だけに設備投資をしたのでは、全体のバランスがとれずに生産性が低下するリスクが想定できるのではないでしょうか。
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