機械メンテナンスと保守、保全の違い。必要性とデジタル化の可能性を解説

  • 2021年11月25日
  • 2024年5月31日
  • 製造業

製造業ならではの話題としてよく耳にする、機械メンテナンス・保守・保全

どれも同じ意味の用語に感じますが、厳密には意味合いが異なります。

本記事では、製造業に欠かせないメンテナンス・保守・保全の違いを解説。

後半では、設備・機械メンテナンスの必要性とデジタル化の可能性を紹介します。

設備・機械のメンテナンス・保守・保全の違い

製造業でよく耳にする、メンテナンス・保守・保全という言葉。

実は、メンテナンスと保守は同じ意味合いの用語ですが、保全はプロセスで異なる部分があります。

定期的に機械や設備の稼働状況を確認したり、故障しそうにないか調査したりする作業が、メンテナンス・保守。

一方、保全には3つのプロセスがあり、メンテナンスや保守と比べイメージしにくい部分があります。

この章では、メンテナンス・保守・保全の意味とそれぞれの違いを掘り下げて解説します。

保守とメンテナンスの違い

保守とは、設備や機械が正常に動作するよう、点検・整備することを指します。

一方のメンテナンスは、システムやネットワークなどの保守・点検作業を意味する用語です。

いずれも、機械や生産設備の点検や修理を意味しており、製造業の現場では同じ意味合いで使用されるケースが多く見られます。

したがって、保守とメンテナンスを区別する必要はなく、「保守=メンテナンス」と考えて良いでしょう。

保守・メンテナンスと保全の違い

保守・メンテナンスと類似した用語に、保全があげられます。

保全とは、設備・機械の点検をおこない、安全性を保つことを指します

保守・メンテナンスと同義にも思いますが、保全は「機器や生産設備が壊れないようにする」というニュアンスが強い点が特徴です。

一方のメンテナンス・保守には「機械や生産設備が故障したら修理する」という意味合いも含まれます。

保守・メンテナンスと保全の違いをまとめると、以下です。

  • 保守・メンテナンス:設備・機械が正常に動作するよう点検・修理すること
  • 保全:設備・機械の異常を回避するため、維持管理すること

ただし、メンテナンス・保守・保全の定義は人(会社)によっても解釈が異なるため、注意が必要です。

設備・機械保全の種類

設備・機械の保全は、大きく以下の3種類に分類されます。

  • 予防保全
  • 事後保全
  • 予知保全

本章では、上記3種類の保全をさらに細分化し、それぞれの違いを解説します。

設備・機械保全1.予防保全

予防保全とは、保全計画をもとに設備や機械を定期的に点検・修理、部品交換することです。

設備・機械が壊れたり、異常をきたしたりする前に、対処するのが目的です。

さらに、予防保全は以下2種類に分類されます。

  • 時間基準保全:部品の状態に関係なく、一定の期間内に使用した部品を交換
  • 状態基準保全:部品の状態を確認し、劣化状況によって部品を交換

時間基準保全と状態基準保全は、ともに設備・機械の故障を未然に防ぐためのものですが、保全するタイミングが異なります

時間計画保全

時間計画保全とは、TBM(Time Based Preventive Maintenance)とも呼ばれ、一定の時間間隔で実施される保全のことです。

設備・機械の交換すべき部品をリストアップし、過去のデータをもとに適正な交換期間を割り出します。

時間計画保全では、たとえ故障や異常が見られない場合でも部品を交換するため、保全コストが大きくなりがちです。

ただし、部品交換計画どおりに実施するため、部品在庫を最小限に抑えられる点が魅力です。

状態監視保全

状態監視保全は、CBM(Condition Based Maintenance)とも呼ばれる保全方法。

設備・機械の状態を点検し、異常が見られた場合にその状態に合わせて部品を交換・修理する方法です。

時間計画保全と異なり、必要な部分のみの交換で済むため、保全コストを抑えやすい点が特徴です。

一方、点検回数が多いと手間がかかるうえに、部品在庫を常時抱えておく必要がある点はデメリットと言えます。

設備・機械保全2.事後保全

事後保全とは、設備や機械が故障・停止した場合に、原因を調査し対処することです。

主に、機能低下型故障と機能停止型故障の2つを対象としており、それぞれ以下の違いがあります。

  • 機能低下型故障:設備・機械の性能が低下する故障のこと
  • 機能停止型故障:設備・機械が停止する故障のこと

また、事前の予防保全によって部品交換・修理された設備・機械が故障した場合は、緊急保全で対処します。

一方、予防保全の対象に該当しない設備・機械が故障した場合は、通常事後保全

呼び名こそ違いますが、設備・機械の呼称がトリガーとなって実施される点では同義です。

また、設備・機械の故障は生産工程の遅延や停止にもつながるため、早急な対処が求められます。

設備・機械保全3.予知保全(予兆保全)

予知保全は、設備や機会故障の予兆を見極め、事前に対処する保全方法です。

予知保全は状態監視保全に近い考え方ですが、IoTやAIなどのデジタル技術を活用し継続的にデータを収集・分析する点が特徴

デジタル技術の発展やDX推進の影響を受け、近年注目を集めている保全方法です。

すでに一部の製造業企業では、設備・機械にIoTセンサーを取り付け、故障の予兆をAIで分析している事例もみられます。

設備や機械メンテナンス・保守の必要性

設備や機械をメンテナンス・保全する目的は、主に以下の4つです。

  1. 機器・設備の耐用年数を延ばす
  2. 故障を最小限に抑える
  3. 稼働率を上げる
  4. 物損の発生を防ぐ

メンテナンス・保全は、工場の設備や機械が安定して稼働し、製品の品質を確保するために欠かせません。

さらに、設備の老朽化による事故を防ぐ役割もあります。

それでは、メンテナンス・保全を実施する目的を見てみましょう。

【メンテナンスの必要性】1.設備や機械の耐用年数を延ばす

設備や機械の定期的なメンテナンスによって、締結しているボトルやナットの締め込み作業や給油、周辺部品や付帯設備が傷つくのを防ぐことで、耐久性を上げ耐用年数を延ばしています。

工場の生産設備には数多くの部品があり、使用するほど劣化するため、いずれは故障するでしょう。

部品が故障すると、性能の低下や生産設備が停止する恐れがあるため、定期的なメンテナンスは欠かせません。

とはいえ、無駄な部品交換が多いと、コストが膨らみ、生産物の価格が上がってしまいます。

コスト増加を防ぐためには、生産設備にある部品の耐用年数を延ばすメンテナンスや保全が必要です。

【メンテナンスの必要性】2.故障を最小限に抑える

工場の設備や機械が故障すると、不良品の発生や生産計画の遅れにつながるでしょう。

故障状況が悪いと、生産ラインを止める場合もあり、製品不良分を生産する材料費や光熱費、従業員の残業にかかる人件費など、生産コストが増加してしまいます。

故障による生産コストの増加を防ぐには、予防保全が有効です。

さらに、故障した設備や機械を修理するだけでなく、事後保全を実施すれば再発防止も期待できます。

【メンテナンスの必要性】3.稼働率を上げる

設備や機械の稼働率が上がれば、運用や保守にかかるコストの大幅な削減が可能です。

故障を未然に防ぐことで、製造が止まる状態を回避できるため、工場の生産性が向上します。

【メンテナンスの必要性】4.物損の発生を防ぐ

工場の生産設備では、常に何らかの製造をおこなっています。

しかし、生産設備の性能が低下したことに気づかず生産が進むと、不良品が大量に発生し、大きな損失につながる恐れがあります。

不良品となった製造物の破棄は、お金を捨てる行為と同じといえます。

このような物損(不良品)の発生を防ぐのも、メンテナンスや保全の目的です。

設備や機械をメンテナンス・保全する際のポイント3つ

設備や機械のメンテナンスや保全において、おさえるべきポイントは以下の3つです。

  1. 速さ
  2. 改善後の行動
  3. 新しい技術の取り入れ

故障や不具合を素早く見つけ改善するだけでなく、機能を向上させることが重要です。

それでは、設備や機械をメンテナンス・保全する際のポイントを見てみましょう。

ポイント1.速さ

定期的なメンテナンスや保全で重要となるのが、対応の速さです。

中でも事後保全は、異常や故障を見つけてから部品を交換します。

交換中は設備や機械を停止する必要があるため、原因を即座に特定し再稼働を目指さなければなりません。

原因の探求や修理に時間がかかるほど、工場の生産性や機能性は低下してしまいます。

素早く適切に判断するためにも、設備・機械に関する知識やノウハウを現場従業員へ共有することが大切です。

ポイント2.改善後の行動

故障を見つけ修理した後、再びトラブルが発生しないように改善したり、メンテナンス効率を向上させたりすることも重要です。

メンテナンスでは故障箇所の修理だけで終わる場合も多いですが、今後「より良くするにはどうすればよいのか」を考えることも大切です。

事後保全に関しては、改善と向上がセットです。

故障した際の代替機の用意や、修理会社への連絡手段を確認するなど、次回以降のトラブルに向けた対策を取りましょう。

ポイント3.新しい技術の取り入れ

予防保全や予知保全では、設備を新しくする際に新しい技術や工夫を取り入れることがポイントです。

従来と同じ設備を導入するよりも、新しい技術や工夫を取り入れた方がコストを抑えられる場合があります。

工場の設備や機械を改良すれば、操作性や耐久性、安全性が上がるだけでなく、メンテナンスや修理にかかるコストを削減でき、部品劣化の防止も可能です。

機械メンテナンス・保守業務のデジタル化・DX推進

かつての製造業では、設備や機械が故障する前に対処する、事前保全が重要とされていました。

しかし、AIやIoTなどのデジタル技術やERPシステムなどのITテクノロジーが登場したことで、状況は一変。

設備や機械が故障する予兆を見つけ、迅速に対処する予知保全が注目されています。

デジタル技術やITテクノロジーを活用すると、人が多くの手を加えずとも、設備・機械の様々なデータをリアルタイムで取得でき、クラウド上のデータベースで管理・分析できるのです。

また人では気がつかない予兆を早期に発見・対処でき、工場の稼働率向上が期待できます。

こうした予知保全の実現に欠かせないのが、ERP(Enterprise Resource Planning)システムです。

ERPシステムは、あらゆるシステムやデジタルテクノロジーと連携し、膨大な量のデータを一元管理・分析できます。

いわば予知保全の中核を担うシステムのため、メンテナンス・保全業務のDXを推進したい方はぜひご検討ください。

機械メンテナンス・保守、保全でお悩みの方へ

今回は、製造業に欠かせないメンテナンス・保守・保全の違いを解説しました。

メンテナンスと保守は同じ意味合いの用語であり、保全は以下の違いがあります。

  • 保守・メンテナンス:設備・機械が正常に動作するよう点検・修理すること
  • 保全:設備・機械の異常を回避するため、維持管理すること

近年、デジタル化やDX推進の影響を受け、故障する予兆をデジタル技術で発見し、迅速に対処する予知保全が注目されています。

その中核を担うシステムが、ERPシステムです。

当メディアを運営するチェンシージャパン株式会社は、製造業に特化したERP「IFS Cloud」により、製造業の様々な要件を満たしながらの予知保全・DX実現をサポートします。

現在、メンテナンス業務の負担を軽くしたい・ERP導入を検討中の方向けに、専門コンサルタントによる無料相談を実施中です。

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