製造業が目指すべきプロジェクト管理とは?課題とITを活用した解決策

  • 2023年5月26日
  • 2024年5月28日
  • 製造業

製造業の個別受注生産では、管理工数の増加・プロジェクトの不透明さなど、多くの課題が顕在化しています。

そのため、「どのように製造プロジェクトを管理すれば良いのか」とお悩みの方も多いでしょう。

本記事では、製造業が目指すべきプロジェクト管理の姿を解説します。

製造業のプロジェクト管理とは?

製造業のプロジェクト管理とは、プロジェクトが成功(成果物の獲得)するよう、ヒト・モノ・カネを適切に分配し、進捗を管理することです。

企業によってプロジェクト管理の定義が異なりますが、一般的には進捗・品質・リソースが主な管理要素です。

製造業では、プロジェクト管理ではなく「工程管理」と呼ぶケースが多いでしょう。

ただ、厳密にいうと、工程管理は生産工程の進捗に着目した管理手法です。

進捗状況を管理し、業務の効率化や納期の厳守、コストパフォーマンスの向上が目的です。

一方で、プロジェクト管理には、生産工程以外の業務が含まれており、管理項目も多岐に渡ります。

プロジェクト管理は、よりプロジェクトの実態に即した管理手法です。

そのため、本記事ではあえて製造業の「プロジェクト管理」の解説を進めます。

製造業のプロジェクトを横断的に支援する「PMO」

プロジェクトが複雑化する近年、製造業ではPMOに注目が集まっています

PMOとは、複数ある社内プロジェクトを横断的に支援する部署・システムのことです。

各プロジェクトマネージャーのサポートを役割としており、プロジェクトの品質確保・納期厳守を目指します。

プロジェクトマネージャーのみでは補いきれない業務をPMOが処理することで、プロジェクトの成功率が高まるのです。

ただ、第三者的なポジションのPMOがうまく稼働するには、各プロジェクトをモニタリングするための仕組みが必要

この仕組みを構築するためのソリューションとして、BOMやMRPなどが注目されています。

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近年の製造業を取り巻く個別受注生産プロジェクトの課題

近年の製造業では、競争力の強化や売上の確保を図るため、個別受注生産やハイブリッド生産に切り替える企業が増加しています。

しかし、個別受注生産にはプロジェクト管理を複雑化させるという問題がありました。

たとえば、「管理項目やタスク間の依存関係が多い・度重なる仕様変更により部門間の情報共有が煩雑化」など。

こうした背景を受け、製造業のプロジェクト管理では、以下3つの課題が生じています。

  • プロジェクト管理業務が煩雑か
  • 部門間でムリ・ムラ・ムダが発生
  • 現場の従業員に負担が蓄積

適切なプロジェクト管理の体制を構築するためにも、上記の課題をしっかりと押さえておきましょう。

課題1.プロジェクトの管理業務が煩雑化

1つ目の課題は、プロジェクト管理業務が煩雑化していることです。

案件ごとに仕様が異なる個別受注生産では、従来の繰返生産に比べて管理項目やタスク間の依存関係が多くなりがちです。

さらに、急な仕様変更により、手戻り作業の発生やタスクの優先度が変更されるケースもあります。

単一プロジェクトであればなんとか管理できますが、製造業では複数のプロジェクトが並行して進められます。

個別受注生産特有の問題により、プロジェクトの管理業務が煩雑化。

結果、データ上の進捗状況と実態にタイムラグが生じたり、各プロジェクトの不透明さが高まったりと、多くの問題につながっています。

課題2.部門間でムリ・ムラ・ムダが発生

2つ目の課題は、部門間で生じるムリ・ムラ・ムダです。

従来のデータ管理体制が改革されていない企業では、プロジェクトの情報を部門ごとに管理しているケースが多々あります。

仮にプロジェクトの変更があった場合でも、部門内で共有が完結されるため、関係部門全体では情報に差が生じるのです。

これにより、一時的に業務量が増大したり、タスクの待ち時間が生じたりと、ムリ・ムラ・ムダにつながっています。

たとえば、製品の仕様変更があった場合、部門間の連携が取れていないと各部門で以下の問題が生じます。

  • 営業部門:案件の進捗が見えず確認作業に時間がかかる
  • 設計部門:情報のタイムラグにより手戻り業務が増える
  • 調達部門:手配情報が遅れて届き必要なタイミングに材料が間に合わない
  • 製造部門:業務負荷のばらつきにより従業員に負担や品質のばらつきが発生
  • 経理部門:情報の収集に工数がかかり詳細な原価計算ができない

本来、企業の競争力を高めるための個別受注生産ですが、十分な体制が整っていないとムリ・ムラ・ムダにつながります。

課題3.現場の従業員に負担が蓄積

3つ目の課題は、現場の従業員に負担が蓄積することです。

プロジェクト管理が正常に機能していれば、現場の負担は少なく、比較的少ない負担で成果をあげられます。

しかし、前述したプロジェクト管理がうまく機能していない企業では、そのしわよせが現場の従業員に集中します。

現場の従業員からすると、精一杯働いているのに成果が出ず、モチベーションの低下につながるでしょう。

個別受注生産プロジェクトの課題を解決するためには、生産形態にあったプロジェクト管理の体制を構築することが重要です。

製造業が目指すべきプロジェクト管理のあるべき姿

製造業が個別受注生産プロジェクトの課題を解決するには、以下の体制を目指す必要があります。

  • 業務とシステムの統合
  • 部門間の連携
  • 図面ではなく部品表中心の管理

上記の3つは、プロジェクト管理の体制を構築するうえで重要な要素です。

ぜひ自社のプロジェクト管理に取り入れていみてください。

プロジェクト管理のあるべき姿1.業務とシステムの統合

1つ目は、業務とシステムの統合です。

現状、プロジェクトの進捗をExcelやスプレッドシートで管理している企業も多いでしょう。

Excelは使い慣れたソフトでもあり、追加コストもかからない点が魅力です。

ただ、個別受注生産やハイブリッド生産を取り入れた複雑なプロジェクト管理では、エクセルでの管理に限界があります。

たとえば、データの入力に時間がかかったり、複数人での入力に対応できなかったりなどです。

そこでITシステムを活用した、業務のデジタル化が重要なのです。

システム上で業務を管理すれば、入力データを最小限に抑えられます。

また、管理者としても各部門の業務負担も把握できるため、仕様変更やトラブルが発生した際にも適切に対処できます。

製造業のプロジェクトは、関係部門が多岐に渡るため、生産管理システムやERPなど大型システムの導入がおすすめです。

プロジェクト管理のあるべき姿2.部門間の連携

2つ目は、部門間の連携です。

業務をシステムで管理したとしても、部門間で連携が取れなければ課題の解決に至りません。

各部門の業務を統合し、データを一元的に管理するシステムが必要です。

部門間でデータを連携できれば、依存関係にあるタスクを円滑に進められ、待ち時間や手戻り作業を大幅に削減できます。

たとえば、調達部門が製造部門の進捗状況を考慮し、資材を適切なタイミングで手配するなど。

上記の例では、待ち時間や手戻り作業の削減のみならず、在庫の保管コストも抑えられます。

また、プロジェクト全体が可視化されることで、問題箇所を把握しやすく、PDCAを回すことでQCDの最適化にもつながります。

プロジェクト管理のあるべき姿3.図面ではなく部品表中心の管理

3つ目は、図面ではなく部品表中心の管理体制を構築することです。

製造業企業の中には、設計図面を中心とした生産管理体制を築いているケースがあります。

しかし、プロジェクトの途中で変更が加わりやすい個別受注生産の場合、図面を中心とした管理体制では現場の混乱を招きかねません。

たとえば、仕様変更による図面の修正や部品手配のやり直しなど。

個別受注生産では、部品表を中心にプロジェクトを管理し、基本設計段階で、製品を構成する共通部品等を洗い出すことが大切です。

また、必要情報を随時検索できるようデータ化しておけば、仕様変更への対応力を向上させられます。

製造業の課題を解決するITシステムの選び方

製造業のプロジェクト課題を解決するには、ERPや生産管理システムなどが欠かせません。

ただ、闇雲にシステムを導入しても、満足のいく成果は得られないでしょう。

自社にあったシステムを選ぶには、以下のポイントを意識することが大切です。

  • 対象とする業務範囲・生産方式への対応
  • システムの拡張性
  • 現場の従業員が使いこなせるか

ITシステム選びで失敗しないためにも、ぜひ参考にしてみてください。

選び方1.対象とする業務範囲・生産方式への対応

まず確認すべきは、対象とする業務範囲や生産方式への対応です。

これを明らかにしなければ、導入すべきシステムの種類が定まらないため。

たとえば、生産ライン全体を対象に、ヒト・モノ・カネの流れを管理したい場合、生産管理システムが適切です。

工程管理システムは各工程の進捗状況を管理できますが、生産計画の策定や原価計算を内包していないことがほとんど。

また、ERPは搭載機能が多く、機能・コストがムダになる恐れがあります。

まずは自社が何を目的としているのかを明確にし、業務範囲や生産方式などから導入すべきシステムを探すと良いでしょう。

選び方2.システムの拡張性

次に、システムの拡張性です。

システムの拡張性が高ければ、企業が成長したり、業務プロセスが大きく変わったりした場合でも同一のシステムで対応できます

仮に、後から新たなシステムへ移行する場合、追加コストや移行作業に時間・手間がかかります。

そのため、現時点での必要機能に加え、将来的に必要となる機能を内包しているのかを確認しておきましょう。

選び方3.現場の従業員が使いこなせるか

3つ目のポイントは、現場の従業員がシステムを使いこなせるかどうかです。

システムの操作性は、機能面・コスト面と並ぶほど非常に重要なポイントです。

機能面・コスト面が優れていても、操作性の悪いシステムは現場に浸透しない恐れがあるため。

また、操作性の悪いシステムは定着に時間がかかり、現場の負担になりかねません。

そのため、 システム選定時は、機能面・コスト面 に加え使いやすさの面も考慮すると良いでしょう。

ERPシステムによる製造業プロジェクトの課題解決

製造業プロジェクトの課題解決として注目されている、ERPシステム。

ERPシステムとは、販売・生産・在庫・購買・原価などのデータを一元管理するシステムです。

ERPシステムを導入することで、製造プロセスの自動化やデータの一元化を実現し、プロジェクトマネージャーの負担を軽減することができます。

また、ERPシステムにはプロジェクト管理のための以下機能が備わっています。

  • スケジュール管理
  • コスト管理
  • リソース管理
  • リスク管理
  • サプライチェーン管理

ERPシステムを活用することで、部門間の情報をシームレスに連携でき、リアルタイムで進捗状況を把握できます。

また、「人員をどのように配置するのか・必要な原材料をいつどのタイミングで調達するのか」といった細かな業務管理も可能です。

ERPがうまく機能すればプロジェクトの成功率が高まり、在庫管理の適正化・生産計画の短縮・業務負荷の平準化・利益率の向上が期待できるでしょう。

プロジェクト管理でお悩みの製造業の方へ

本記事では、製造業が目指すべきプロジェクト管理の姿を解説しました。

個別受注生産は、数ある生産形態の中でも特に管理が難しい方法です。

複数の案件を並行して管理するためには、以下の管理体制を目指すと良いでしょう。

  • 業務とシステムの統合
  • 部門間の連携
  • 図面ではなく部品表中心の管理

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