昨今の日本企業において、デジタルトランスフォーメーションの推進は急務。
しかし、「DXの全体像をつかめていない・具体的な進め方がわからない」という企業が数多く存在します。
本記事では、デジタルトランスフォーメーションの基礎知識と進め方を紹介します。
DX事業を模索する製造業の方、既存システムの一新を検討する情報システム部の方はぜひ最後までご覧ください。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の基礎知識
デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義とは?
デジタルトランスフォーメーションの始まりは、大学教授であるエリック・ストルターマン氏が提唱した「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面で豊かにしていく」という広義な概念。
この概念がビジネス向け変換され、昨今の日本では下記の内容で認知されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、 データとデジタル技術を活用して、 顧客や社会のニーズを基に、 製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、 業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、 競争上の優位性を確立すること
引用:「DX 推進指標」とそのガイダンス|経済産業省
要するに、データ・デジタルを活用して自社に変革をもたらし、他社に負けない競争力を身につけることを指します。
ただ、注意してもらいたいのが、DX≠デジタル化であること。
DXの本質はデジタル化ではなく、その先にある変革・競争力の確立なのです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる2つの理由
DXが求められる背景には様々な要素が挙げられますが、元を辿ると下記の2つに集約されます。
- 急速に変化する市場へ対応するため
- ディスラプターへ対抗するため
近年の消費傾向はコトからモノへの移り変わりを見せており、これに合わせて、企業のデータ活用・デジタル化の重要度が高まっています。
たとえば、デジタル技術によって収集した顧客の購買データを分析し、ニーズを満たした商品開発を進めるなど。
刻一刻と変化する市場環境で企業が存続するためには、データ・デジタル技術を活用した変革(DX)が不可欠なのです。
また昨今の市場では、いち早くDXに取り組んだ企業による、デジタル・ディスラプションが活発化しています。
これにより、市場を牽引してきた企業であっても、ディスラプターに市場シェアを奪われるケースが多く見られます。
ディスラプターに対抗する防衛的な意味でも、DX事業の取り組みが重要です。
経済産業省が発表、日本企業の「DX事業の遅れ」
本調査に参加しなかった企業が数多く存在することを踏まえると、日本企業のDX取り組み状況は不十分といえます。
なぜ、日本企業のDX事業がこれほどまでに遅れているのか、その原因は「変革への危機感の低さ」が挙げられます。
自社のデジタル化に関する取組状況を調べた調査では、約4割の企業が自社をトップランナーと評価。
一方、ビジネスモデル変革の必要性に関する調査では、8割以上の企業が変革に消極的と回答しています。
先述の通り、DXの本質はデジタル化ではなく、その先にある変革・競争力の確立です。
しかし、多くの企業ではデジタル化の推進にとどまり、DXの本質である変革に至っていないのです。
日本企業の「DX遅れ」は、見方を変えればライバルに差をつけるチャンスといえます。
いち早く変革の必要性に気づき、アクションを起こすことで、今後のデジタル競争を優位に進められるでしょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進め方
- 1.DX戦略の策定
- 2.DXの実行
- 3.問題点の洗い出し&修正
各工程の要点を紹介します。
また、より詳細なDXの手順を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
DX(デジタルトランスフィーメーション)は組織全体を変革する取り組み、IT化はデジタル技術を利用した業務の効率化を意味し…
デジタルトランスフォーメーション戦略の策定
まずおこなうべきは、DX戦略の策定です。
DXで達成する目標の設定や推進体制の整備など、事業の大まかな指針を策定します。
戦略の策定では、現場の意見を十分に取り入れ、社内で共有することが重要。
DXは全社な取り組みであり、経営層による独断の実施では変革内容が定着しない恐れがあるためです。
また、システムやデジタル技術に関する知見が不足する場合には、外部機関へ助言を求めると良いでしょう。
デジタルトランスフォーメーションの実行
次に、デジタルトランスフォーメーション事業の対象範囲を定めて、実行していきます。
はじめから大規模なDXを実施すると、現場への負担が大きい上にミスが生じる恐れがあります。
まずは一部分に限定しておこない、徐々に対象範囲を広げることが大切です。
問題点の洗い出し&修正
デジタルトランスフォーメーションは一度の実施で終わりではなく、継続的に改善していく必要があります。
当初思い描いていた目標を達成できたのか、売上や顧客数が目標値に達したかなど、現実的な数値をもとに評価しましょう。
想定していた成果が得られない場合は、どこに問題があったのかを明確にし、戦略の修正・再度実行を繰り返します。
またDXの実行直後は、現場への定着に時間がかかるため、PDCAサイクルを回す際には、1年など長めの期間を設定することが大切です。
DX事業では「経済産業省:DX推進指標」の活用がおすすめ
この章では、DX推進指標の概要と活用方法を紹介します。
経済産業省の「DX推進指標」とは?
DX推進指標とは、各工程が適切に実施されているか、またどんな課題が生じているのかなどを定性的・定量的に押しはかるための指標。
主に下記3種類の指標で構成されています。
- DX推進の枠組みに関する定性指標
- ITシステム構築の枠組みに関する定性指標
- DX推進、ITシステム構築の取組状況に関する定量指標
2種類の定性指標では、デジタルトランスフォーメーションの各工程の評価基準が定められています。
各工程でつまずいた際の課題も記載されているため、次に起こすべきアクションを明確にできるでしょう。
また、DX事業のゴールに対して、どの程度進んでいるかを示す6段評価が用意されています。
実行と修正を繰り返すDX事業では、現在の進捗状況を見失いやすいため、事業を客観的に評価する際に有効です。
3つ目の指標である定量指標は、その名の通り、DX事業の成果を現実的な数値で図るための指標。
DX事業の進捗を管理する以外にも、利害関係者への提出資料として活用できます。
「DX推進指標」の活用方法
DX推進指標の活用方法は、下記の3つ。
- DX事業の認識共有
- 次のアクションを明確にする
- DX事業の進捗管理
DX事業の第一工程である「ビジョン設定」を例に紹介します。
デジタルトランスフォーメーションのビジョンを設定した後、定性指標のチェック項目に照らし合わせて設定したビジョンを評価します。
- データとデジタル技術を使って、変化に迅速に対応しつつ、顧客視点でどのような価値を創出するのか、社内外でビジョンを共有できているか。
- 将来におけるディスラプションに対する危機感と、なぜビジョンの実現が必要かについて、社内外で共有できているか。
引用:D X 推進指標|経済産業省
この段階で問題がある場合は、次の課題が提示されます。
ビジョンがはっきりしないまま、「AIを使ってやれ」で 進めても、PoCの先に進まない。
ユーザーエクスペリエンスにおいてどのような価値を 生み出すか、Whatが語れず、Howから入ってしま う。
なぜDXをするのかが、経営層や現場に腹落ちされ ていないと、途中で前に進まなくなる。
このように、DX事業の各工程が完了した段階でチェック項目と照らし合わせることで、各工程の評価や次のアクションを明確にできます。
DX推進指標をうまく活用することで、デジタルトランスフォーメーションの成功率向上や達成目標の実現に繋がります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)事業を成功させた3つの参考事例
- セブン&アイ
- ユニメイト
- AGC
いずれも規模の大きな会社ですが、DXは中小企業・小規模企業にとっても重要な取り組みです。
事例1.セブン&アイ
セブン&アイはECビジネスにおける顧客との最終接点を短縮するため、「ラストワンマイルDXプラットフォーム」を構築。
AIを活用した配送リソースの最適化を実現し、新たなネットコンビニというビジネスモデルを確立しました。
セブン&アイのDXは現在フェーズ1の段階ですが、国内セブンイレブンの実店舗から最短30分で商品を届けられるほどに成長。
今後さらなる利便性の向上が期待できます。
また、セブン&アイのDXは、プラットウォームの構築をグループ内で内製化している点が特徴です。
グループ内で内製化することで、ノウハウの蓄積や事業の加速を目指すとのこと。
1社での推進すら難しいDXを、グループ全体でおこなう点が高く評価され「DX銘柄2021」に選定されています。
参照:「DX銘柄2021」に初の選定|株式会社セブン&アイHLDGS
事例2.ユニメイト
レンタルユニフォーム事業を展開するユニメイトは、AIを活用した「AI×R Tailor」で採寸を自動化しています。
同社では採寸ミスによる返品が多く、生産性の低下や余剰在庫の増加など様々な課題がありました。
誰でも簡単に正しく採寸できる仕組みの創出が課題解決につながると考え、自動採寸アプリの企画・開発に着手。
AI×R Tailorの導入よって、ユーザーの背面・側面の画像と身長などのデータをもとに、誰でも簡単に採寸ができるようになりました。
これにより、返品の減少による生産性の向上や余剰在庫の削減を達成できたそうです。
参照:AI画像認識を活用した自動採寸アプリで顧客の業務効率化とコスト削減を実現(株式会社ユニメイト)|モンスターラボ DXブログ
事例3.AGC
ガラスメーカー大手のAGCでは、熟練技術者に知見が属人化し、若手技術者への技術継承が進まない点が大きな課題でした。
この課題を解決するために開発したのが、「匠KIBIT」です。
匠KIBITは、熟練技術者の知見を蓄積するシステム。
業務を遂行する上で疑問が生じた際に質問を入力すると、蓄積されたデータから最適な回答を参照できます。
また、自動回答できなかった質問は、該当する熟練技術者を推定して回答依頼を通知。
必要な知見を自動回収することで、自律的にデータベースを拡充できる仕組みを実現しています。
属人化していた知見を着実に若手技術者へ継承できているとのことです。
参照:FRONTEOと共同でAI Q&Aシステム「匠KIBIT」を開発|AGC
デジタルトランスフォーメーションを成功させ事業競争力を高めよう
日本企業では、デジタルトランスフォーメーション事業の遅れが問題視されていますが、見方を変えれば、他社を出し抜き競争上の優位性を確立するチャンスでもあります。
いち早くデジタルトランスフォーメーション事業を推進することで、ライバルとの差別化につながるでしょう。
チェンシージャパン株式会社は、社内DXに向けたソリューションとしてERPの提供実績があります。
社内DXをご検討の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。