基幹システムの統合とは?メリットと課題・成功させる進め方を解説

  • 2023年11月21日
  • 2024年9月6日
  • DX・IT

組織再編や情報管理の見直しに伴い、基幹システムを統合するケースが多く見られます。

しかし、具体的にどのようにして統合するのかが分からずお困りの方も多いでしょう。

本記事では、基幹システムの統合に関する基礎知識と進め方を紹介。

後半では、実際にあった失敗例をもとに、成功のポイントを解説します。

基幹システムの統合とは?

基幹システムの統合とは、独立した複数の基幹システムを連携・集約し、データや機能を結びつけることです。

人事・会計・生産・販売など各基幹業務のシステムを連携・集約するケースもあれば、組織再編に伴い、同じ役割のシステムを1つに集約する場合もあります。

本章では、基幹システムの統合に関する基礎知識として、下記の2つを紹介します。

  • 基幹システムを統合する目的
  • 基幹システムを統合するための3つの手法

統合の目的によって、選択すべき手法が異なります。

適切な手法を採用するためにも、基幹システムの統合を検討中の方はぜひご確認ください。

基幹システムを統合する目的

基幹システムを統合する目的は、主に以下の2つが考えられます。

  • M&A後の組織再編
  • 業務連携の強化

事業継承やM&Aが実施された後は、重複した基幹システムが社内に複数存在するケースが一般的です。

ただ、複数の基幹システムが稼働していると、管理体制が複雑になり、情報の不透明化や業務の非効率化につながるおそれがあります。

そこで、基幹システムが本来の効果を発揮できるよう、1つの基幹システムに集約したり、大型のシステムを開発してデータを移行したりします。

2つ目は、DXの一環として、業務連携の強化を目的に基幹システムを統合するケースです。

業務連携の強化を目指すシステム統合では、人事・会計・生産・販売などで稼働する個別のシステムを連携し、社内情報の一元化を目指します。

基幹システムの統合では、重複入力の解消やリアルタイムでの情報共有、効果的な意思決定の支援など多くのメリットが期待できます。

基幹システムを統合する3つの手法

ひとえに基幹システムの統合と言っても、その手法は多岐にわたります。

多くの企業で実施される代表的な手法は、以下の3つです。

  1. 一方の基幹システムに集約(M&A)
  2. 新たな大型システムを開発しデータを移行
  3. 既存システムを改修しデータ連携にて統合

各手法のメリット・デメリットを下記の表にまとめました。

 

メリット

デメリット

一方の基幹システムに集約

  • 所要時間・コストが少ない
  • 不具合やトラブルのリスクが低い
  • 大規模な業務改革が必要になるおそれがある
  • データを上手く連携できないおそれがある

新たな大型システムを開発しデータを移行

  • 既存システムの課題を抜本的に解決できる
  • 連携度が高く成果を実感しやすい
  • 所要時間・コストが多い
  • 大掛かりなプロジェクトであり、達成難易度が高い

既存システムを改修しデータ連携にて統合

  • 現行業務への影響が少ない
  • 短期間で実行できる
  • システムの構造が複雑になる
  • 一部で自動連携ができないなど新たな課題を生むおそれがある

M&A後の組織再編では、一方の基幹システムに機能・データを集約するケースが一般的です。

すでに最適化されている基幹システムがある場合は、低コストかつ短期間でシステムを統合できます。

一方、業務連携の強化を目的に統合する場合は、新たにシステムを開発してデータ・機能を移行するケースが多く見られます。

新たなシステムの開発は、既存システムが抱えるレガシー問題や業務上の課題を抜本的に解決できる点が魅力です。

近年では、人事・会計・生産・販売などのシステムを統合し、1つのパッケージとして運用するERPシステムが注目されています。

基幹システムを統合するメリット・デメリット

基幹システムの統合では、具体的にどのような効果を期待できるのでしょうか。

本章では、基幹システムを統合するメリット・デメリットを紹介します。

基幹システムを統合するメリット

基幹システムを統合する一番のメリットは、社内での情報共有が円滑になることです。

基幹システムを統合すれば、社内のあらゆる業務データを一元管理できます。

たとえば、倉庫で商品の在庫数が更新されると、その情報はリアルタイムで購買部門の在庫リストにも反映されます。

さらに、在庫数の変動を引き金に、自動で在庫の発注をかけることも可能です。

これにより、部門間で発生しがちな重複業務やデータの不一致を解消できます。

また、これまで人手で行っていた業務を自動化できるため、生産性の向上につながるでしょう。

なお、経営層や管理者の視点で見ても、必要情報を集めやすく、全社的な戦略の策定と実行がスムーズになるメリットがあります。

基幹システムの統合は、情報共有を円滑化やそれに伴う多くの効果をもたらします。

基幹システムを統合するデメリット

一方で、基幹システムの統合にはデメリットも存在します。

特に注意すべきは、統合によって以下のリスクが顕在化するおそれがあることです。

  • データの消失リスク
  • 生産性が低下するリスク
  • システム障害・情報漏洩のリスク

基幹システムの統合は、一見簡単そうにも思いますが、実際には越えなければならない障害が数多く存在します。

たとえば、新たな基幹システムへデータを移行する際、既存システムの仕様が合わず、データの一部が消失する可能性があります。

また、既存システムを改修した場合は、構造やコードが複雑になり、将来的にブラックボックス化するおそれもあります。

いずれの統合方法を取ったとしても、多くのリスクが伴うので注意が必要です。

基幹システムは会社の根幹を支えるシステムなので、トラブルが発生した場合は被害の範囲が広大です。

基幹システムを統合する場合は、十分な準備期間を設け、慎重に進めましょう。

基幹システム統合の進め方4ステップ

基幹システムの統合は、基本的に以下の手順で進めます。

  • システムの統合計画を策定
  • 新システムの要件定義
  • 開発・システム統合テスト
  • システム統合を実施

ここでは、各工程の要点を紹介します。

ステップ1.システムの統合計画を策定

まずは、基幹システムの統合計画を策定します。

具体的には、以下の項目を検討しプロジェクトの指針として位置付けます。

  • 新基幹システムの仕様・機能に関するビジョン
  • 利用する統合手法
  • プロジェクトの予算・期間
  • 推進チームのメンバー

プロジェクトを成功させるには、計画の段階でどれほど鮮明なビジョンを描けるかが重要です。

ビジョンは言わばプロジェクトのゴールであり、鮮明に描くことで成果物の品質を高められます。

なお、現代の市場やビジネス環境は、激しく変化しています。

システムのビジョンを描く際は、目先の要件のみならず中長期的な視点で要件を模索し、システムのあるべき姿を設定しましょう。

ステップ2.新システムの要件定義

次に、統合計画をもとに、新たな基幹システムの要件定義を実施します。

ここで作成する要件定義書は言わば、システムの設計図です。

どのような機能を実装するのか(機能要件)、運用方法や業務プロセス(業務要件)など、基幹システムや業務に関する具体的な内容を設定します。

要件定義は開発ベンダーとともに実施するのが一般的です。

双方で認識のズレが生じないよう、ヒアリングを繰り返して自社が目指すシステムの姿を擦り合わせます。

なお、ここでの注意点として、開発ベンダーの提案を鵜呑みにしないことが大切です。

開発ベンダーは専門的な知識をもとに適切な提案をしてくれますが、その提案が100%自社の要件に合致するとは限らないためです。

提案を受けた場合は、自社のニーズに適しているのか・予算に収まるのか等を精査して意思決定しましょう。

ステップ3.開発・システム統合テスト

次に、要件定義に従ってシステムを開発し、統合テストを実施します。

選択する手法や基幹システムの規模にもよりますが、一般的には機能単位ごとに開発サイクルを回します。

これは、統合の失敗リスクと被害を最小限に抑えるためです。

少しでも統合の成功率を上げるには、機能単位ごとに開発サイクルを回しましょう。

ステップ4.システム統合を実施

統合テストで問題を解決できたら、いよいよ本格的に基幹システムを統合していきます。

基幹システムを統合すると、運用方法や操作方法が変わり、現場が混乱するおそれがあります。

したがって、推進チームが中心となり、研修やマニュアルの整備を徹底しましょう。

なお、実際に新たな基幹システムを稼働させると、新たな問題点が見えてきます。

問題点を放置すると、被害が拡大する可能性があるため、迅速かつ慎重に対処しましょう。

【課題解決】基幹システムの統合を成功させるためのポイント

基幹システムの統合は、非常に難易度の高い取り組みです。

実際、大手企業や金融機関がシステム統合を実施し、失敗に終わった事例があるほど。

基幹システム統合の成功率を少しでも高めるには、以下のポイントを意識することが大切です。

  • システムの統合手順所を整備
  • 余裕のあるスケジュールを設定
  • システムの管理体制を整備

本章では上記のポイントについて、よくある失敗ケースとあわせて紹介します。

ポイント1.システムの統合手順書を整備

1つ目のポイントは、システムの統合手順書を整備することです。

統合手順書とは、どのような方法・手順でデータ連携やシステム移行を実施するのかをまとめた資料のことです。

プロセスを記した統合手順書を整備することで、トラブルの原因を特定しやすくなります。

たとえば、在庫データのみ引き継げなかった場合、統合手順書を見れば、関係がある要素を絞り込めるため問題点を特定しやすいでしょう。

統合手順書がない場合は、トラブルの度に無数の要素から問題点を探すので膨大な時間と手間がかかります。

基幹システムの統合を迅速かつ正確に進めるためには、統合手順書の整備が欠かせません。

ポイント2.余裕のあるスケジュールを設定

2つ目のポイントは、余裕のあるスケジュールを設定することです。

基幹システムの統合では、スケジュールの遅延が度々発生します。

この主な原因は、統合日を軸にスケジュールを設定しているためです。

このやり方では、各工程の所要時間を見誤ったり、トラブルによる遅延リスクを見落としたりします。

そのため、スケジュールを設定する際は、各工程の所要時間を設定し、それらを積み上げて完了日を設定するのが効果的です。

ただし、工程を軸にするとムダな余裕期間が生まれやすいため、スケジュールの正当性について客観的に判断しましょう。

ポイント3.システム管理体制の整備

3つ目のポイントは、システム管理体制の整備です。

特に中小企業では、専任の情報システム部がおらず、統合プロジェクトにて責任者が細かく設定されないケースが多く見られます。

ただこれでは、なんらかのトラブルがあった際、発見や対応が遅れるおそれがあります。

そのため、他の業務との兼任でも良いので、システム管理の担当者を決めておくのがおすすめです。

なお、特定の人に依存すると、不在時に対処できないという新たな問題にもなるため、数人からなる管理チームを発足すると良いでしょう。

ERPを活用したシステム統合・刷新の事例

プレシジョン・システム・サイエンス株式会社は、遺伝子やDNAの研究と検査装置の開発に取り組むバイオ機器メーカーです。

コロナ禍に検査ニーズが拡大し、問い合わせが殺到する一方で、既存基幹システムの問題点が明らかになりました。

生産拠点と本社で同メーカーのシステムを運用していましたが、度重なる改修により連携が取れない状態に。

経理部門では手書きの伝票や請求書を処理しており、大きな負担となっていました。

そこで、ERPシステムを導入し、受発注・製造・会計データの一元化を実施します。

結果、13営業日かかっていた経理業務を半減することに成功。

また、システムが統合されたことで、データの検索性が向上し、監査や意思決定を効率化できました。

今後は、他の製造拠点ともシステムを連携させるようです。

基幹システムの統合を検討中の方へ

本記事では、基幹システムの統合に関する基礎知識と進め方を紹介しました。

基幹システムの統合は、非常に難易度の高い取り組みです。

しかし成功すれば、情報共有を円滑化でき様々なメリットをもたらします。

基幹システムの統合をお考えの方は先行企業の事例を参考にしながら、慎重に取り組んでみてください。

なお、本記事で取り上げた事例・ERPを活用し、経理業務の効率化や売上の向上を達成した事例は、以下ボタンからご覧いただけます。

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