SAPがどのようなシステムなのか、疑問をお持ちではないでしょうか。結論ですが、SAPはERPパッケージの名称のことです。
この記事では、SAPのメリット・デメリットを詳しく解説します。ERPとの違いと併せてご覧ください。
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ERPとは?
ただし、日本でのERPは「統合基幹業務システム(ERPシステム)」を表すケースが一般的です。ERPシステムは、人事・会計・生産などの基幹業務を統合し、一元管理するためのシステム。
導入によって、業務効率化や経営資源の最適化などの実現が期待できます。従来の基幹システムでは、各基幹業務ごとに情報を管理しているため、部門間に垣根が生じ、情報資源を有効活用できないケースが少なくありませんでした。
また、会社全体を俯瞰すると、業務の重複や非効率性などの課題が見られました。一方、ERPシステムは、会社の全基幹業務を統合管理して可視化するため、導入により多くの課題解決・それに伴う業務効率化が期待できます。
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SAPとはERPパッケージの名称
ERPパッケージとは、いわば製品化されたERPシステムのこと。世界中には、「Oracle Fusion Cloud ERP」・「GLOVIA」・「IFS」など数多くのERPパッケージが存在します。
SAPはシステムの総称ではなく、上記製品と同様で、ERPパッケージの名称にすぎません。SAPはドイツにある大手ソフトウェア会社の「SAP社」が開発したERPパッケージ。
SAP社のERPパッケージは、世界各国の企業で導入されており、高いシェア・信頼性を誇ります。SAPは、開発社名と製品名を示していますが、一般的にはERPパッケージの名称を表す言葉として使われます。
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SAP社のERPを導入する3つのメリット
- 全世界で利用される信頼性
- コストを大幅に削減できる
- リアルタイムで情報を共有できる
上記3つのメリットについて、深掘りして解説します。
メリット1.全世界で利用される信頼性
1つ目のメリットは、全世界で利用されるており、信頼性があることです。SAPは多言語・多通貨への対応はもちろん、各国の商習慣・税制度にも対応しています。
また、多言語サポートや機能面の充実により、全世界の企業で利用されているERPパッケージです。
引用:トップ10のERPソフトウェアベンダー、市場規模、市場予測2019-2024|Apps Run The Worldn
Apps Run The Worldnのデータによると、SAPは、全体の6%を占め世界シェア第1のパッケージです。また、全世界の18,300社以上で導入されているため、信頼性が高いERPパッケージといえます。(参照:SAPが選ばれる理由|SAP公式サイト)
導入実績が多ければ、効果が出るというわけではありませんが、導入実績の少ないERPパッケージよりも安心して利用できるのではないでしょうか。
メリット2.コストを大幅に削減できる
2つ目のメリットは、コストの大幅な削減が期待できることです。従来の基幹システムは、各部門ごとに業務・情報を管理する縦割りシステム。
しかし、SAPなどのERPシステムは、社内業務を横断的に管理し、情報を1つのシステムに集約します。そのため、部門間での連携が容易となり、従来業務の連携にかかっていた時間・人材などのコストを大幅に削減できます。
また、SAPの導入によって削減された人材は、別の業務へ再配置できるため、経営資源の最適化が実現できるでしょう。
メリット3.リアルタイムで情報を連携できる
3つ目のメリットは、リアルタイムで情報を連携できること。ERPシステムの中には、各業務モジュールが統合されておらず、バッチ処理でしかデータ連携ができない製品もあります。
バッチ処理とは、一定期間で蓄積したデータを、夜間など特定の時間帯にまとめて処理することです。バッチ処理によってデータの連携を取る場合、入力したデータが他部門へ反映されるまでにタイムラグが生じます。
そのため、ERPシステム本来の役割である情報フローの円滑化が実現できず、業務に悪影響が出る可能性も考えられます。しかし、SAPは、情報をリアルタイムに共有できるため、他部門との連携強化を実現できるでしょう。
また、最新の社内情報を瞬時に取得できることで、適切かつ迅速な経営判断にも繋がります。
SAP社のERPを導入する3つのデメリット
- 高額なため導入企業が限定される
- 機能・設定が複雑
- SAPコンサルタント不足
メリットだけでなくデメリットも理解し、検討時の判断材料にしましょう。
デメリット1.高額なため導入企業が限定される
1つ目のデメリットは、コストが高額なため、導入企業が限定されること。SAPにかかるコストは、次の通りです。
- SAPのライセンス料・購入費用
- SAPコンサルタント費用
- 定額の保守費用
- サーバー料金(オンプレの場合)
中でも、SAPのライセンス費用・購入費用は、他のERPパッケージよりも非常に高額なため、導入を躊躇する企業も存在します。また、SAPのライセンス費用は、ユーザー数に応じた従量課金制のため、ユーザー数が多い会社の場合は注意が必要です。
SAP導入時、つい見落としがちですが、SAPコンサルタント費用も無視できるものではありません。SAPコンサルタントは専門性が高い人材のため、優秀な人材を雇うとなると高額なコストが発生します。
SAPの導入には、コストを削減できるメリットがありますが、一方で導入コストが高額であるため、費用対効果を十分に考慮することが重要です。
デメリット2.機能・設定が複雑
2つ目のデメリットは機能・設定が複雑なことです。SAPは機能が充実しており、パラメーターを操作することで、カスタマイズ無しでも既存業務に適合させやすいシステムです。
一方で、機能や設定が複雑なあまり、使いこなすまで苦労することも。また、SAPは、独自のABAPという言語で構築されているため、導入・運用ではABAPを扱える人材が不可欠です。
しかし、SAPの専門知識を持った人材やABAPが扱える人材は限られています。このように、専門知識とスキルをあわせもつ人材の需要が高いことから、高額な雇用費用が発生する恐れがあります。
そのため、SAPの検討段階では、自社の人材で導入・運用を進められるのかについて、新規人材の雇用を視野に入れながら検討することが重要です。
デメリット3.SAPコンサルタント不足
3つ目のデメリットは、SAPコンサルタントが不足していることです。自社にSAPの知識を持った人材がいない場合、SAPコンサルタントを雇うことになるでしょう。
しかし、SAPコンサルタントは多くの企業で求められる上に、人材供給が追いつかず、需要過多の状態です。さらに、2027年を目処にSAPが新バージョンへ切り替わることもあり、SAPコンサルタント不足が一層深刻化することが予測されます。
今後は、今以上に高額なコンサル費用を払わなければ優秀なコンサルを雇えなくなるため、注意が必要です。
SAP社ERPの3種類のモジュール
SAPのモジュールは数多くありますが、下記3タイプに分類できます。
- 会計モジュール
- ロジスティックモジュール
- 人事モジュール
この章では、上記3タイプのモジュールについて、それぞれの役割を解説します。
種類1.会計モジュール
会計モジュールでは、財務会計や管理会計などをおこないます。財務会計は、社外に向けたPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)を伝達するために使われます。
一方の管理会計は、社内に向けた生産・販売領域などの内部管理をする機能です。双方は、他のモジュールで入力されたデータが即座に反映されるため、余分なデータ入力を削減でき、時間・人材などのコスト削減につながります。
種類2.ロジスティックモジュール
ロジスティックモジュールは、販売管理・在庫管理などをおこないます。販売管理は、製品の見積もりから販売、サービスの提供までの業務をサポートし、バックオフィス業務の大幅な効率化を目指します。
また、売り上げや返品などのデータを自動的に財務会計へ送信するため、会計管理の効率化にも繋がるでしょう。在庫管理は、在庫・資材調達に対応しています。
入庫・品目計画・在庫量チェックなどをサポートし、在庫業務の負担を減らします。また、余剰在庫を減らすことで、在庫管理や発注業務を効率化することが可能です。
種類3.人事モジュール
人事モジュールは、人事管理のみをおこないます。社内の採用から退職まで、採用管理・人件費予算管理などさまざまな人事業務を最適化するために使用されます。
人事情報を可視化することで、人件費の削減だけでなく、人的資源の最適化にも繋がります。
SAP社のERPサポート終了【2027年問題】
サポート終了まで残すところ後数年に迫った現在では、多くの導入企業が早急な対策を迫られています。具体的には、下記3つの選択を迫られています。
- 次世代バージョンS/4HANAに移行
- 現バージョンをの利用を継続
- 他のERPへ乗り換える
SAPの導入企業は、日本国内だけで2,000社以上といわれていますが、サポート終了への不安・システム乗り換えにかかるコストへの懸念から、多くの企業は次世代バージョン(S/4HANA)への移行を検討しています。
SAPは一般的な基幹システムよりも守備範囲が広く、バージョンの以降に1年〜2年ほどかかります。そのため、2027年問題を見据え、早急に行動を起こすことが重要です。
また、2027年問題は、あくまでもSAPシステムに限った話です。OSやデータベースなど、周辺システムは2027年問題に関係なく保守期限を迎えるため、併せて更新を進めるとよいでしょう。
SAP社のERPは2027年問題を考慮し検討しよう
しかし、2027年問題やSAPコンサル不足などの課題もあるため、メリット・デメリットを考慮し検討するとよいでしょう。
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