原価管理にエクセルを活用している企業は想像以上に多く、属人化・システム老朽化などの問題を抱えているのが現状です。
基幹システム導入の必要性を感じつつも、システム導入費用がない・人手不足などが原因で「システム導入なんて夢のまた夢」と感じてはいないでしょうか。
そこで今回は、原価管理が可能なエクセルテンプレートを紹介します。
エクセル原価管理による属人化予防のポイントも、あわせてご覧ください。
エクセル原価管理の目的は「利益最大化」
エクセルの原価管理は、予算と実績に剥離が生じる原因を究明し、対策を講じて利益を最大化するのが目的です。
原価には人件費・原材料費・経費などのほか、時間・工数・価格などの要因が関係します。
エクセルの原価管理では、項目・要因の可視化が可能です。
原材料費を例に考えてみましょう。
原油価格が高騰した場合、原材料費は比例して高騰してしまいます。
このケースでは、原材料費の高まりを回避するのは非常に困難。
そのため、工程を効率化して人件費を抑えるなどの対策をする必要があります。
利益最大化のためには、数値の可視化が必要不可欠であり、エクセルによる原価管理は有効な手段です。
原価管理で活用可能なエクセルテンプレート3選
エクセルによる原価管理は、フォーマットを完成させるまでが大変です。
そこで便利なのが、エクセルテンプレート。
今回は、以下3つのテンプレートを紹介します。
製造業で活用可能、エクセル原価管理テンプレート一覧
テンプレート1.製造原価を自動で算出「活動ベースのコスト管理」
Microsoftテンプレート「活動ベースのコスト管理」では、製品生産にかかる直接原価・間接原価・一般費・管理費が管理可能です。
入力結果から、製品の価格決定にも活用できます。
製品原価と生産単位数を入力すると、製造原価の合計を把握できるのもポイント。
製造業の経営において、原価率の管理も必須でしょう。
活動ベースのコスト管理は、大手がリリースしている安心感と、原価・原価率管理がしやすくなるテンプレートです。
テンプレート2.シンプルで使いやすい「原価管理表」
上記の原価管理表は、製品ごとの原価を管理可能です。
材料費・加工費・経費・間接費から原価の計算ができ、シンプルゆえに使い手を選びません。
カスタマイズが可能なため、より使いやすいよう工夫もできます。
製品ごとにエクセルファイルが必要になりますが、フォルダ分けによる管理で解決するでしょう。
フォルダ分別やファイル名の決め方など、業務プロセスを標準化しておくとより安心です。
業務プロセス標準化の重要性については「業務プロセス標準化とは?効率化が必要な理由と進め方【製造業向け】」をご覧ください。
テンプレート3.部門を問わず使用可能「予算管理表」
予算管理表は、月ごとの経常損益・特別損益を項目ごとに管理するケースに活躍します。
全ての予算を1シートで管理でき、エクセルファイルが増えすぎるリスクがほとんどありません。
ただし、予算管理表を使用するときは、エクセルの関数が入っていないセルがある点に注意しましょう。
使用前に、エクセル関数の知識がある社員によるカスタマイズが必要です。
エクセルで原価管理するメリット・デメリットを解説
エクセルでの原価管理には、一長一短があります。
しかし、それを承知のうえで、エクセルを使って原価管理をしている企業が多いのではないでしょうか。
エクセルのメリットとデメリット、そしてエクセルに頼らざるを得ない現状について解説します。
エクセル原価管理のメリット・デメリット・現状
エクセル原価管理のメリットは「間口の広さ・低コスト」
ほとんどの場合、パソコンにはエクセルが搭載されているため、新たな導入コストが不要です。
さらに、エクセルは一般に広く知られており、教育の手間が少ないのも大きなメリット。
前述(原価管理で活用可能なエクセルテンプレート3選)にて紹介したように、必要なときにテンプレートがすぐに見つかるのも、エクセルが広く知られているからこそでしょう。
キーマンズネット「Microsoft Excelの利用状況(2022年)」によると、エクセルを使用している企業は98.6%にのぼっていることが明らかになりました。
エクセルは、企業規模に関わらず、メリットの多さから幅広く使用されているソフトです。
エクセル原価管理のデメリットは「属人化のリスク」
エクセル原価管理のデメリットは、2つに大別されます。
1つは複雑な関数使用による属人化、もう1つは管理に手間がかかることです。
エクセルは、関数に詳しい人材が抜けると更新が困難になり、更新作業すらままならないというケースが見受けられます。
更新作業が滞ると、原価管理の情報を、最新バージョンのエクセルで管理するのが困難に。
さらに、Googleのスプレッドシートが登場してからは、同時編集ができない点もデメリットとして目立つようになりました。
エクセルの原価管理は、長期的な視点で考えると、適切とは言えない一面を擁しています。
【現状】エクセル原価管理に頼らざるを得ない
エクセルファイルのブラックボックス化・属人化など、デメリットを知った上で使用している企業がほどんど。
新規システムの導入は、必要なコストや人材が不足しており、現実的ではないと考える企業も多くいます。
そういった背景のもと、エクセルでの原価管理を適切に行うためにはどうしたら良いのでしょうか。
結論は、「考えうるデメリットに対して対策を講じるしかない」です。
次章では、エクセルの属人化を防ぐためのポイントを解説します。
エクセル原価管理の属人化を防ぐ3つのポイントとは?
エクセル原価管理の属人化を防ぐポイントは、下記の3つです。
各ポイントをみていきましょう。
ポイント1.原価管理のエクセルファイル置場を共有
エクセルファイルは、同じファイルを使用するチームで共有するのが大切です。
ファイルの置き場所を個人のパソコンにせず、ファイルサーバーやストレージを活用しましょう。
クラウドを活用する際は、セキュリティの確認作業が必須です。
特に、無料のクラウドサービスを利用するときは要注意。
ハッキングなどのリスクを想定し、社外に情報が漏れないよう、慎重な対応を心がけてください。
ポイント2.エクセル原価管理のマニュアルを策定
エクセル原価管理のマニュアルがあれば、ファイルが一人歩きするリスクが軽減します。
マニュアルには、専門用語・項目・数値の説明に加えて、エクセルファイルを作成した目的やプロセスを盛り込むのがポイントです。
新入社員の教育時に、共有しているエクセルファイルに対する理解が深まりやすく、教育の手間をカットできます。
ポイント3.マクロ・関数でエクセル原価管理をシステム化
エクセルのピポットテーブル・表集計・フィルタなど、手作業で進める箇所がある場合は、マクロ・関数でシステム化を進めましょう。
手作業で進める箇所があれば、作業者の経験やスキルに左右されやすく、作業効率に個人差が生じてしまうためです。
マクロ・関数でエクセルをシステム化しておけば、誰が操作しても一定の結果が得られるようになります。
製造業の原価管理が可能、エクセル以外の解決方法3つとは?
エクセルの原価管理からの脱却には、システム導入が必要です。
「結局はシステム導入か」と感じるかもしれません。
しかし、少子化が進む現代において、人材不足が解消される可能性は少ないでしょう。
人材不足が解消されないのであれば、システム導入による業務効率化を推進する必要性が生じます。
システム導入を、企業の成長に必要な投資として検討してみてはいかがでしょうか。
エクセル脱却が可能なシステム一覧
解決方法1.原価管理システム導入で脱エクセル
原価管理システムは、原価管理のほか、原価データをもとにしたシミュレーションが可能です。
エクセルと比較して、ファイルの管理が容易で、情報リソースとして活用しやすくなるでしょう。
ただし、生産管理システムや会計システムなどと連携が必要になるケースがほとんどです。
システム連携のデメリットについては「ERPとMESの違いとは?連携が求められる背景とデメリットも解説」をご覧ください。
解決方法2.会計自動化ソフトでエクセルより効率的に原価管理
会計自動化ソフトは、帳簿が自動で入力されるため、原価管理を含めた会計業務の効率化が可能です。
リアルタイムで入出金を把握でき、よりタイムリーな経営判断にも活かせます。
なかには、銀行口座・電子マネー・クラウド請求管理サービスなど、外部サービスとの連携可能なソフトも存在。
エクセルに比べて、複数ファイルの数値を統合する必要がなく、大幅な業務効率化を実現します。
解決方法3.ERPの原価管理機能でエクセルが不要
ERPを導入すると、部門ごとに異なっていたシステムが1つのシステムにまとまります。
詳しくは「今話題のERPソリューションとは?導入手順とおすすめ製品を解説」で解説しています。
ERPであれば、原価管理にとどまらず、全社的な業務効率化・経営最適化が可能です。
さらに運用・保守費用も単一システムにとどまるため、ランニングコストも抑えやすいでしょう。
エクセルによる原価管理にお悩みの方へ
本記事では、下記3つのポイントをお伝えしました。
- エクセルにはデメリットがあるが、頼らざるをえないのが現状
- エクセル活用には属人化防止策が必須
- 人材不足が深刻な現状では新規システム導入を検討すべき
製造業を取り巻く環境は、良好と言えないのが現状です。
ニーズの多様化・物価の高騰など、経営判断が難しくなっています。
チェンシージャパン株式会社では、抱える課題を解決へと導くERPソリューションを提供しております。
エクセルの原価管理に限界を感じた際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。