技術継承とは?改善すべき4つのポイント・課題・効果的な施策を解説

  • 2024年2月27日
  • 2024年2月27日
  • 製造業

技術継承は、約半数以上もの企業が失敗している難易度の高い取り組みです。

ベテラン従業員の高齢化にともない、年々技術継承の重要性は高まっています。しかし、「具体的にどのような取り組みをすれば良いか?」が定まらず、未だ手探りの企業も多いでしょう。

本記事では、技術継承の概要と取り組むべき4つのポイントを紹介します。後半では、多くの選考企業が取り組む施策例も解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

技術継承とは?

技術継承とは、ベテラン従業員が持つ専門的な知識・スキルを後継者へ引き継ぐことです。比較的古くから技術継承の重要性は説かれていましたが、近年、その重要度がますます高まっています。

しかし、多くの製造業企業が施策を実施するなか、思うような成果を得られていないのが現状です。本章では技術継承の概要として、以下2つの内容を紹介します。

  • 【製造業】技術継承の動向
  • 技術継承が進まない5つの要因

本章は、「独立行政法人 労働政策研究・研修機関」の資料をもとに説明します。

参照:ものづくり産業における技能継承の現状と 課題に関する調査結果|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

国内製造業の技術継承の動向

現状、国内製造業の約半数が技術継承に苦戦しています。以下は、技術継承の重要性と成果認識を問うたアンケート調査の回答です。

引用:平成30年度ものづくり基盤技術の振興施策「概要」

上記資料によると、約9割もの企業が技術継承の重要性を認知しています。実際、各省庁の資料で事例が紹介されたり、ノウハウを継承するためのソリューションが提供されたりするほど、多くの企業が技術継承への取り組みを推進しています。

しかし成果の認識に目を向けると、「うまくいっている・ややうまくいっている」と回答したのは、全体の45%です。つまり、技術継承の重要性を理解していても、思うような成果をあげられていない企業が多いのです。

では一体なぜ、国内製造業企業の技術継承はうまく進まないのでしょうか。

技術継承ができない5つの課題

多くの製造業企業で技術継承が進まない理由は、主に5つあります。

以下は、3,000社以上の製造業を対象に、「技術継承がうまくいっていない理由」を調査した際の回答結果です。特に回答数の多いものをまとめています。

  • 若年人材を十分に確保できていない
  • OJTを計画的に実施できていない
  • 被支援者の技術習得意欲が低い
  • 指導者を確保できていない
  • 指導者と被指導者のコミュニケーションが不足

ここで注目すべきは、上記の多くが「企業の体制に関するもの」という点です。さらに言えば、技術継承の準備段階でつまずくケースが多いのです。

このことから分かるとおり、技術継承を成功させるには、小手先の施策に注力するよりも、組織の在り方や指導体制などを抜本から見直していく必要があると言えます。

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技術継承が求められる理由

改めて、技術継承の必要性をおさらいしましょう。技術継承の重要性が高まっている背景には、主に以下2つの要因があります。

  • ベテラン従業員の定年が近づいている
  • 業界全体の技術力が向上

本章では、上記2つの要因を深掘りしていきます。

理由1.ベテラン従業員の定年が近づいている

近年、技術継承の重要度が高まっている一番の要因は、高い技術力を持つベテラン従業員の定年が、すぐそこまで近づいているためです。以下は、2020年時点の人口ピラミッドです。

引用:人口ピラミッド|国立社会保障・人口問題研究所

上記資料にて、特に人口が多い年代は50歳前後です。この世代は、長年ものづくりに携わり、高い技術力・多くの知見を抱えています。

製造業にとって、技術力は事業の成長を左右する重要な要素。しかし、現状これらが引き継がれないまま、定年という形で消失しようとしているのです。

なお、上記資料が公表されてから数年以上が経過しているため、厳密には残り5年を切っています。製造業企業が事業を成長・存続させるためにも、若手従業員への技術継承は、緊急かつ重要な課題となっています。

理由2.業界全体の技術力が向上

2つ目の理由は、業界全体の技術力が向上しているためです。かつての日本は、ものづくり大国と称されるほど製造業が盛んでした。

これを下支えしていたのは、ものづくりに関する高い技術力です。「メイドインジャパン」が海外に浸透するほど、各国と比べても技術力で優っていたのです。

しかし近年では、デジタル・IT技術が発展したことで、各国との差が着実と埋まりつつあります。なお前述したベテラン従業員の高齢化もあり、国際的な競争力はやや遅れをとっています。

今後、国内製造業が今の地位を維持・向上していくためにも、技術継承の重要性が高まっています。

技術継承に向けて改善すべき4つのポイント

技術継承を成功させるためには、改善すべきポイントを絞り、着実に推進していくことが重要です。前述した5つの課題から見える改善ポイントは、主に以下の4つです。

  • 若手人材の雇用
  • 人材の定着
  • 技術の見える化
  • 技術の指導方法

本章では、上記ポイントの要点と方針を紹介します。

ポイント1.若手人材の雇用

技術継承において特に改善すべき点は、若手人材の雇用状況です。

技術の継承先となる人材を確保できなければ、取り組み自体を推進できません。また、技術を継承は3〜10年と長い時間がかかる取り組みです。

現状、ベテラン従業員の定年が近づいていることを考えると、少しでも早く課題を解決する必要があります。たとえば、自社の採用基準を見直したり、自社の魅力を発信したりして、若手人材が集まりやすい状況を目指しましょう。

ポイント2.人材の定着

次に、人材の定着です。人材の定着率が低ければ、たとえ技術・ノウハウを継承したとしても、離職によって消失する恐れがあります。また、技術継承に割いた時間・労力もムダになります。

従業員たちに長く働いてもらえるよう、まずは従業員が抱える不安や不満をヒアリングするのがおすすめです。課題がわからないままでは、効果的な施策を実施できないためです。

仮に待遇面への不満が多い場合は評価基準を、働き方への要望がある場合はフレックスタイム制などを導入するなど、課題と施策をセットで実施しましょう。

ポイント3.技術の見える化

3つ目のポイントは、ベテラン従業員が持つ技術の見える化です。ベテラン従業員の技術・知見は、これまでの経験に基づく暗黙知がほとんど。

暗黙知とは、本人すら気づいていない潜在的な知見のことです。暗黙知は、本人すら把握できていない可能性が高く、マニュアル等に反映しづらい傾向があります。

そのため、まずはベテラン従業員がどのような技術・スキルを持っているのかを、徹底的に見える化することが大切です。なお、見える化する際は、ICTを活用し、定量的なデータへ落とし込むのが効果的です。

定量的なデータを取得できれば、指導時に曖昧な表現が減るため、若手従業員の理解度が高まります。

ポイント4.技術の指導方法

4つ目のポイントは、技術の指導方法です。多くの製造業がOJTにて技術を継承していますが、思うような成果をあげられていません。

よくある失敗例として、以下のケースが挙げられます。

  • 人事部・経営層の意向が反映されていない
  • ベテラン従業員へ丸投げになっている
  • 通常業務が忙しく、指導に時間を割けない

本来のOJTは、育成対象者の特性に合わせ、指導する内容や期間などを綿密に計画して進められるものです。しかし、上記のような失敗例では、十分な計画が練られていないまま推進されているのです。

そのため、まずは「OJTをどのように進めるのか」を明らかにし、技術の指導方法を設定していくことが大切です。

多くの製造業が取り組む技術継承の施策

技術継承へ取り組む製造業企業は、主に以下の施策を実施しています。

  • ベテラン従業員の雇用継続
  • ITの導入により技術を見える化
  • 技術習得社への評価制度を見直す

技術継承の取り組み内容を迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

参照:ものづくり産業における技能継承の現状と 課題に関する調査結果|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

施策1.ベテラン従業員の雇用継続

特に多くの企業が取り組んでいるのは、定年退職が近づいているベテラン従業員を、技術指導役として継続雇用することです。

基本的に通常業務へは参加せず、OJTのトレーナーや講習会の指導者などに徹するケースが多くみられます。技術指導に特化する分、繁忙期など業務の影響を受けずに指導を推進できる点が魅力です。

また、育成対象者側もより手厚い指導が受けられるため、不明点を解消しやすく技術の習得期間を短縮しやすいでしょう。現状、社内で技術指導役を確保できなかったり、通常業務との並行が難しかったりする場合は、定年退職者の継続・再雇用を検討してみましょう。

施策2.ITの導入により技術を見える化

次に、ITシステムを活用した技術の見える化です。ベテラン従業員が持つ技術をシステム上で管理・分析し、マニュアル作成や技術指導に活かしています。

また、数値などのデータ化が難しい技術は、作業風景をカメラで撮影します。ベテラン従業員と若手従業員の違いを比較することで、技術の可視化が可能です。

なお、この取り組みは、現状技術の引き継ぎ手が不在の場合でも着手できる点が魅力です。ナレッジベースとして管理し、若手人材を確保できた際に継承していけば、技術の消失を防止できます。

施策3.技術習得者への評価制度を見直す

3つ目は、技術取得者の評価制度の見直しです。

技術継承は多くの時間がかかるうえに、成果が見えづらいデメリットがあります。技術を指導する側・習得する側は進捗を把握しづらく、モチベーションが下がりやすいのです。

この問題を解決する施策として、技術習得を評価し給与へと反映する取り組みが進められています。たとえば、業務に必要な技能検討・資格習得者に手当を与えることで、モチベーションの向上を図るなどです。

また、すでに多くの技術・資格を持つベテラン従業員も評価することで、技術継承への意欲を高める効果もあります。

技術継承に取り組みブラックボックス化を回避しよう

本記事では、技術継承で取り組むべき4つのポイントを紹介しました。現状、多くの企業が成果をあげられていませんが、ポイントを絞って取り組むことで成果につながりやすくなります。

これまで培ってきた技術を消失させないためにも、入念な準備のもと、技術継承を進めましょう。

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