成功事例から見る、DX推進を支えるデジタル技術と成功の秘訣

  • 2021年11月16日
  • 2024年1月31日
  • DX・IT

近年、数多くの企業から注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)

必要性は理解しているものの、「どのような技術があるのか・どのように推進すればよいのか」など、全体像を描ききれていない方も多いはず。

本記事では国内企業の成功事例をもとに、DXを支える技術と成功の秘訣を解説します。

ビジネスシーンにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向へ変化させる」という、スウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念のこと。

トランスフォーメーション(transformation)を直訳すると”変化・変換”を表しますが、DXの場合には従来の仕組み・枠組みを根底から新たなものへと作り替える”変革”の意味として使われています。

エリック・ストルターマン教授が提唱したDXは、人々の生活という広義な概念でしたが、経済産業省はビジネスシーンにおけるDXを下記のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

引用:デジタルガバナンス・コード2.0(旧DX推進ガイドライン)
旧デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0|経済産業省
https://www.meti.https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx_guideline.pdfgo.jp/policy/it_policy/dx/dx_guideline.pdf

要点をまとめると、データとデジタル技術を活用し、競争上の優位性を確立することが、ビジネスシーンにおけるDXのことです。

DXは定義する企業や人によって異なるため、本記事では経済産業省が示すDXの定義に従い、解説を進めます。

デジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い

ビジネスシーンでDXと一緒に語られることが多い、デジタイゼーション・デジタライゼーション。

それぞれデジタル化と訳される用語ですが、厳密には意味合いが異なります。

まずデジタイゼーションとは、一般的に知られているデジタル化のこと

例えば紙で管理していた書類をデータ化することや、対面でおこなっていた会議をオンライン上でおこなうことが挙げられます。

一方のデジタライゼーションとは、デジタル技術の活用により、自社のビジネスプロセスを変革し、新たな価値の創造や生産性の向上を図ること

デジタライゼーションはデジタイゼーションの次のステップである、価値創造までを内包しているのです。

また、デジタイゼーションが局所的な技術導入を表すのに対し、デジタライゼーションは全域的なデジタル化を表す点も大きな違いです。

3用語をまとめると、下記の通り。

  • デジタイゼーション:アナログをデジタルへ(第一段階)
  • デジタライゼーション:デジタル技術を活用し新たな価値創造(第二段階)
  • デジタルトランスフォーメーション:競争上の優位性を確立(第三段階)

したがって、DXとはデジタル化の最終ステップを表す用語なのです。

社内DXの実現はデジタル競争におけるアドバンテージになる

経済産業省が警鐘を鳴らす2025年の壁により、DXの必要性を認識する企業は増加傾向にあります。

しかし、国内企業のDXの推進状況は、依然として低水準のまま。

立行政法人 情報処理推進機構は、DX推進状況を下記の6段階に分類して評価を実施しました。

  • レベル0:未着手
  • レベル1:一部で散発的実施
  • レベル2:一部での戦略的実施
  • レベル3:全社戦略に基づく部門横断的推進
  • レベル4:全社戦略に基づく持続的実施
  • レベル5:グローバル市場におけるデジタル企業

この調査によるとレベル0の企業が全体の30.5%、レベル0から1までの企業はなんと、全体の68.5%とのこと。

つまり7割程度の企業では、本格的なDXを実施できていない状況なのです。

DXの実現は生産性の向上・新しいビジネスモデルの創造・2025年の壁に対するリスクマネジメントなど様々な効果が期待できます。

現段階で多くの企業ではDXを推進できていないため、いち早く社内DXを成功させることで、デジタル競争における大きなアドバンテージを獲得できるでしょう。

DX推進を支える代表的な5つのデジタル技術

DXを推進するためには、AI・ICTなどのデジタル技術を活用し、社内外からデータを集め、分析するデータ活用が求められます

具体的に、どのようなデジタル技術がDXを支えているのか、代表的な5つのデジタル技術を例に解説します。

技術名 特徴 活用例
IoT モノをインターネットに接続し、モノの利便性を向上させる技術

スマートスピーカー

ドローン

サイバーセキュリティ システムやデータの安全性を担保するセキュリティ

不正アクセスの防止

データ改ざん・流出の防止

ICT 通信を使い電子情報をやり取りする技術

メール・SNS

eラーニング

AI 自然知能をコンピュータで再現する技術

介護ロボット

音声翻訳

ビックデータ 量・種類・発生頻度からなくデータ群

需要予測

天候予測

上記の技術はDXを推進するにあたり、欠かすことのできないものばかりです。

DXの成功率を高めるにも、デジタル技術を積極的に取り入れると良いでしょう。

【業種別】DXの成功事例と使用されたデジタル技術

DXの成功事例と使用されたデジタル技術を、下記の業種別に解説します。

  • 農業:横田農場
  • 建設業:株式会社NIPPO
  • 医療業:大塚製薬

DX推進をご検討されている方は、ぜひご参考ください。

【農業】DX成功事例:(有)横田農場

横田農場は稲作を主力事業としており、150ヘクタール以上もの広大な耕作地を持つメガファーム。

農林水産省管轄の農林水産技術会議と連携してDXを推進しました。

横田農場のDX成功事例は、圃場(田んぼ)水管理システムを利用した見回り作業・水量制御の自動化・遠隔化です。

田んぼの水量は、稲の成長に合わせ調節する必要があり、天候の変化で水量が変わる場合には適量になるまで調整しなければなりません。

この田んぼの見回り作業・水量制御の自動化・遠隔化を実現したのが株式会社クボタケミックスの「WATARAS」。

WATARASの導入により見回り回数が80%削減、加えて排水管理制御システムによる節電効果は40%とのこと。

大幅な業務・コスト削減が実現しています。

また台風や大雨など悪天候の中、見回りへいく必要がないため、従業員の安全性確保にも繋がっています。

参照:農業者の生の声「REAL VOICE」|農林水産技術会議

【建設業】:株式会社NIPPO

株式会社NIPPOはENEOSホールディングスの子会社でもある、日本有数の道路舗装会社。

株式会社NIPPOでは、舗装工事の現場が各支店から離れた位置に点在しており、品質チェックにかかるコストが大きな課題でした。

また、現場で生じた問題を電話で伝えていたものの、状況を正確に伝えることが難しく、技術者の到着まで工事がストップするケースもあったほど。

KDDIが提供する遠隔作業支援システム「VistaFinder Mx」を導入したところ、タブレットやスマートグラスで簡単に映像を共有ができ、生産性の向上や現場の支援に大きな効果を発揮しています。

中でも、広大な土地を有する北海道支店では、移動時間の削減が顕著とのこと。

VistaFinder Mxはコスト削減・業務効率化以外にも若手技術者の教育に活用されるなど、まさしく全社的な変革といえます。

参照:『VistaFinder Mx』で、現場の状況を映像で共有。|KDDI

【医療業】:大塚製薬

大塚製薬株式会社は医薬品、食料品の製造・販売をおこなうトータルヘルスケアカンパニー。

医薬事業において薬の飲み忘れが多いことに着目し、服薬支援薬箱の「プレタールアシストシステム」を開発しました。

このシステムは、服薬時間になるとLEDが点滅し服薬を促すというもの。

容器から錠剤を取り出すとLEDが消え、取り出した履歴を自動保存・医療関係者へ共有します。

万が一錠剤を取り出さなかった場合には、その旨を医療関係者へ通知できるため、迅速な対処が可能となり、病状の安定化が期待できます。

参照:脳梗塞再発抑制薬の毎日の服薬を支援する 「プレタールアシストシステム」に対応した専用容器を国内申請|大塚製薬

デジタルトランスフォーメーションを成功させるための3つのポイント

DXを成功させるためには、下記3つのポイントを意識することが大切です。

  • 経営トップによる全社的なDXを推進
  • DXの推進に対応できる人材確保・育成
  • リスク回避に備え段階的にDXを推進

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

ポイント1.経営トップによる全社的なDXを推進

DX推進を成功させるためには経営者からのトップダウンのみならず、現場からの意見も考慮した全社的な取り組みが重要です。

仮に、現場の社員を置き去りにしたDX戦略を推進した場合、業務効率を低下させる上に、現場からの反感を買う恐れがあります。

会社の業務を最も理解しているのは、経営トップではなく現場の社員。

従来の業務やビジネスモデルを一新するには、現場をよく知る社員からの理解と協力が欠かせません。

したがって、DXを推進する際には、社内全体の意識改革が必要であり、全社を挙げた中長期的な視点で取り組むことが重要です。

ポイント2.DXの推進に対応できる人材確保・育成

DXを成功させるには、DX推進に精通する人材の確保と育成が不可欠です。

経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、DX推進に必要な人材を下記のように定義しています。

  • デジタル技術・データ活用に精通した人材
  • 各部門の業務内容に精通し、DX 推進をリードする人材
  • DXの実行を担っていく人材

参照:デジタルガバナンス・コード2.0(旧DX推進ガイドライン)
旧デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx_guideline.pdf

DX人材の需要は一過性のものではなく、DX実現後にもシステムの運用・保守などあらゆる場面で必要です。

ただ、社会全体を見渡すと、DX推進の加速により人材不足が大きな課題となっています。

DX人材の確保は年々ハードルが上がっているため、いち早く人材を確保できる環境を整備することが重要です。

ポイント3.リスク回避に備え段階的にDX推進

DXの成功率を高めるには、リスク回避に備え段階的にDXを推進することが大切です。

新システムや新体制の導入後は、業務への不慣れから一時的な業績不振に陥る傾向があります。

一般的にこの業績不振は一過性のものであり、新体制が浸透するにつれ解消されますが、広域にわたる大規模な変革をおこなった場合には長期化する恐れもあります。

こうしたリスクを最小限に止めるためにも、まずは部分的な最適化や業務改革を取り組むと良いでしょう。

【注意】戦略なき技術起点のDXは失敗に終わる

戦略がない中でデジタル技術・システムを起点にDX推進を図ることは避けましょう

理由は、DXの本質がデジタル化ではなく、その先にある変革であるため。

デジタル技術・システムは自社を変革させるための手段であり、目的ではありません。

仮に技術起点でDXを推進すると、解決できない課題の残留やシステムの再レガシー化に繋がります。

DXを推進する際には自社を客観的に見つめ直し、抱える課題や目指すビジョンを起点に戦略を策定すると良いでしょう。

DXの進め方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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DX推進のファーストステップ=は経営の可視化、お悩みの方へ

本記事では、国内企業での成功事例をもとに、DXを支える技術と成功の秘訣を解説しました。

DXを推進する際には自社を客観的に見つめ直し、抱える課題や目指すビジョンを起点として戦略策定・導入するデジタル技術を選択すると良いでしょう。

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