DX推進が注目される中、基幹システムの老朽化が大きな課題となっています。
システム老朽化は、業務効率低下・保守コスト増大だけでなく、デジタル化・DX推進の足かせになります。
しかし、稼働中のシステムを刷新するとなると、越えるべき課題が多く容易ではありません。
本記事では、老朽化した基幹システムによって引き起こされる問題と刷新方法を解説します。
基幹システムの老朽化はDX停滞の火種
老朽化した基幹システムとは、長年の改修や設計書の紛失などにより、自社での使用が難しくなったシステムのことです。
具体的には、以下いずれかの条件に当てはまったシステムを指します。
- 長年の改修でコードが複雑化している
- ベンダー企業のサポートが終了している
- 運用・保守に多くのリソースが必要
- 不整合データが溜まっている
経済産業省が発表した「DXレポート」によると、調査対象のうち、約8割の企業が老朽化したシステムを抱えているとのこと。
また、約7割の企業が、老朽化したシステムがDXの足枷と感じていると回答しています。
実際、老朽化したシステムでは、入力したデータの反映に丸1日かかったり、外部システムとの連携ができず手作業でデータを移行したりと、多くの問題が発生しています。
このような状態では、データを活用して事業や組織に変革をもたらすDXを推進できません。
DXを推進し企業の競争力を高めていくには、老朽化した基幹システムからの脱却が不可欠なのです。
基幹システムの老朽化によって引き起こされる3つの課題
基幹システムの老朽化によってどのような課題が生じるのでしょうか?
ここでは基幹システムの老朽化によって引き起こされる課題を紹介します。
- 業務プロセスの変化に対応できない
- 運用コストの増大
- セキュリティリスクの増加
企業や組織によっては同時多発的に上記の問題が表面化する場合もあります。
自社のシステムで上記の課題が顕在化していないか確認してみましょう。
課題1.業務プロセスの変化に対応できない
1つ目の課題は、業務プロセスの変化に対応できないことです。
通常、基幹システムと業務プロセスは密接に関わり合っており、業務プロセスの変更に合わせてシステムも回収するのが一般的です。
しかし、老朽化した基幹システムは、長年の改修で構造が複雑化しており、この変化に対して柔軟に対応できません。
また、数十年前に開発された基幹システムは、近年のビジネス環境や技術進歩を想定できていません。
そのため、変化に対応するために無理な改修が繰り返され、複雑化・肥大化が深刻化しています。
今後、老朽化した基幹システムを運用し続けた場合は、さらに変化への対応力が損なわれ、業務効率の低下やシステムの処理速度低下などを引き起こす恐れがあります。
すでに基幹システムが老朽化している場合は、新たなシステムへの刷新が必要です。
課題2.運用・保守コストの増大
2つ目の課題は、運用・保守コストが増大することです。
老朽化した基幹システムは、当時の設計書が残っていなかったり、当時の技術を理解している人材がいなかったりして、基幹システムの運用・保守に多くのリソースが割かれます。
経済産業省が発表したDXレポートによると、IT関連費用のうち8割以上が既存システムの運用・保守に充てられているとのこと。
つまり、単にコストが増大するだけでなく、デジタル化の障害にもなっているのです。
また、近年、IT人材不足が深刻化しており、2025年には約43万人が不足するとされています。
IT人材は流動性が高く、需要もますます拡大するため、人件費が高騰する可能性が高いでしょう。
人件費の高騰はシステムの運用・保守コストに影響するため、老朽化した基幹システムを放置した場合、今後さらにコスト負担が増加すると推測できます。
課題3.セキュリティリスクの増加
3つ目の課題は、セキュリティリスクの増加です。
老朽化した基幹システムは、コードが複雑化しており、新しいセキュリティ脅威に対応するためのアップデートがしづらい傾向があります。
また、稼働させるための保守にリソースが割かれ、セキュリティ対策にリソースを割けていません。
ただ、基幹システムには、機密性の高い情報も保管されているため、万が一情報漏洩が発生すると大きな損失につながります。
セキュリティリスクを抑えるためにも、老朽化した基幹システムの刷新を検討しましょう。
老朽化した基幹システムの刷新手順6ステップ
基幹システムの刷新は、以下の流れが一般的です。
- プロジェクトの発足
- 現状の分析・課題の明確化
- 基幹システムの刷新方法を決定
- 新基幹システムの要件定義
- 新基幹システムの開発・導入
- 運用開始・効果検証
本章では、各工程の要点を紹介します。
手順1.プロジェクトの発足
まずは、基幹システムの刷新を主導する、プロジェクトチームを結成します。
刷新プロジェクトを成功に導くためには、情報システム部門を中心に、営業・生産・人事など各部門からメンバーを選任することが大切です。
これは、企業全体のニーズと課題を正確に理解するためです。
各部門の視点が反映されることで、見落としや偏りを防止でき、より成功率を高められます。
ただ、メンバーの人数が多くなりすぎないよう注意が必要です。
大きなチームは、連携が取りづらく、プロジェクトの進行スピードを鈍化させる恐れがあります。
メンバーの所属部門やチームサイズを意識し、チームを結成しましょう。
手順2.現状の分析・課題の明確化
次に、現状を分析し、課題を明確にします。
課題の分析では、以下3つの視点で洗い出すと抜け漏れを防止できます。
- 業務:例)機能不足によって人手の転機作業が発生している
- 基幹システムの内部:例)コードが絡み合い保守作業の弊害になっている
- 基幹システムの外部:例)UIが悪く操作方法が複雑
抱える課題は、部門や立場などによっても大きく異なります。
プロジェクトのメンバーだけでなく、現場の従業員にもヒアリングをして、細かな課題まで収集しましょう。
課題が出揃ったら、それぞれに優先順位をつけます。
限られた予算・期間で刷新しなければならないため、優先して解決する課題を明確にすることが大切です。
手順3.基幹システムの刷新方法を決定
刷新の方向性が定まった後、刷新方法を決定します。
基幹システムの刷新方法は、大きく以下の3種類に分類されます。
- リビルド:全く新しい基幹システムを再構築して情報資産を移行する手法
- リライト:既存システムの仕様を変えず、旧言語を新言語に置き換え、オープン環境(クラウド等)へ移行する手法
- リホスト:既存システムの仕様や言語を変えず、オープン環境へ移行する手法
適切な刷新方法は、基幹システムの状況や目指すビジョンなどによっても異なります。
自社のみでの判断が難しい場合は、複数のベンダー企業に相談するのがおすすめです。
各社、自社に適した提案をしてくれるため、それらを比較検討することで最適な刷新方法を見つけられるでしょう。
手順4.新基幹システムの要件定義
要件定義とは、新たな基幹システムに期待する効果や実装する機能など、自社の要望をまとめる作業のことです。
整理した内容は、要件定義書にまとめて開発側(ベンダー企業)に提出します。
要件定義の内容がそのまま成果物に反映されるため、抜け漏れや誤解が無いよう慎重に進めましょう。
要件定義書に記載する項目は、以下のとおりです。
- 基幹システムを刷新する背景・目的
- システム全体の構成図
- 予算・スケジュール
- 業務要件:新たに実装する業務プロセス
- システム要件:追加すべき機能や削除すべき機能
なお、要件定義書を作成した後は、自社と開発側(ベンダー企業)との認識のズレを防ぐために、継続的なコミュニケーションが必要です。
お互いの共通理解を深めることで、成果物の品質が向上します。
手順5.新基幹システムの開発・導入
要件定義が終わると、いよいよ新たな基幹システムの開発に取り掛かります。
開発期間は状況によっても異なりますが、数ヶ月〜半年が一般的です。
また、本格稼働に備え、マニュアルの整備や従業員への研修を実施します。
多くのベンダー企業が、導入支援もおこなっているため、自社のみでの実施が難しい場合は協力を仰ぐと良いでしょう。
手順6.運用開始・効果検証
基幹システムが稼働した後、事前に設定した目標やKPIに基づいて、その効果を測定します。
万が一、想定された効果が得られない場合は、ただちに業務プロセスの見直しやシステムの調整を行い、問題の解決を図ります。
PDCAの改善サイクルを高速で回し、プロジェクトの目標達成を目指しましょう。
【失敗しない】老朽化した基幹システムを刷新する際のポイント3つ
老朽化した基幹システムを刷新する際は、以下のポイントを意識しましょう。
- 基幹システムの刷新と業務改革をセットで実施
- ベンダー企業へ丸投げにしない
- プロジェクトの構想を綿密に設定
上記の3つは、刷新プロジェクトで起こりがちな失敗への対応策です。
プロジェクトの成功率を高めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
ポイント1.基幹システムの刷新と業務改革をセットで実施
基幹システムの刷新では、業務改革をセットで実施することが重要です。
既存の業務は、老朽化した基幹システムの運用を前提として最適化されています。
つまり、既存業務を変革しなければ、たとえ新たな基幹システムへ刷新しても老朽化問題の根本的な解決にいたらないのです。
また、本来業務プロセスの変更で対応できた部分を、新たな基幹システムに要求することで、開発コストが増大する恐れがあります。
そのため、業務プロセスの変革と新しい基幹システムの実装を、必ずセットで進めましょう。
新しい業務プロセスと基幹システムが互いの欠点を補完し合うことで、投資効果の最大化につながります。
ポイント2.ベンダー企業へ丸投げにしない
基幹システムの刷新では、ベンダー企業に依存せず、自社主体で進めることが重要です。
ベンダー企業はシステムについての専門知識を持っていますが、自社の要件を100%理解しているわけではありません。
もちろん、これまでの経験と専門知識から適切な提案をしてくれますが、最終的な意思決定は自社の戦略に基づいておこなう必要があります。
万が一、ベンダー企業の提案を精査せずに採用すれば、課題を解決できなかったり、新たな課題を生んだりする恐れがあります。
そのため、自社主体のもと基幹システムを刷新し、対応に困った場合に支援してもらうなど、適切な関係性を構築しましょう。
また、基幹システムの刷新を通して蓄積した知見は、自社にとっての資産となります。
デジタル競争力を高めていくためにも、積極的にノウハウや経験を蓄積しましょう。
ポイント3.プロジェクトの構想を綿密に設定
基幹システムの刷新プロジェクトは、その規模と影響範囲の大きさから、計画段階の重要度が極めて高いです。
課題抽出〜要件定義までの品質が、そのままプロジェクトの成否を左右します。
万が一、課題抽出〜要件定義の詰めが甘いと、予算超過や新たな基幹システムのパフォーマンス低下を招く恐れがあります。
こうした失敗を防ぐためには、メンバー同士がしっかりと連携して、課題の正確な抽出と要件定義の精度向上に努めることが大切です。
老朽化した基幹システムの刷新にはクラウドERPがおすすめ
老朽化した基幹システムを刷新には、クラウドERPがおすすめです。
主な理由は、以下の3つです。
- 多様化する働き方に対応しやすい
- 運用・保守コストを抑えられる
- 企業の成長・ビジネスニーズに対応しやすい
クラウドERPはインターネット経由で提供されるため、場所を選ばずデータベースへアクセスできます。
出張先やリモートワークでも業務をこなせるため、多様化する働き方にも対応しやすいでしょう。
また、システムの保守・アップデートはベンダー企業が担当します。
定期的に機能やセキュリティがアップデートされるため、常に最新の状態で運用が可能です。
自らシステムの保守にリソースを割く必要がないため、その分の人員・コストをDXの推進に投じられます。
なお、多くのクラウドERPは、必要に応じて機能を追加できるモジュール式を採用しています。
企業の成長・ビジネスニーズに合わせたシステムを低コストで構築でき、短期間での導入が可能です。
クラウドERPはいち早く変化に対応できるため、企業の競争力維持・強化につながるでしょう。
基幹システムの老朽化でお悩みの製造業の方へ
本記事では、老朽化した基幹システムによって引き起こされる問題と刷新方法を紹介しました。
老朽化した基幹システムは、業務効率の低下やコストの増加など多くの問題を引き起こします。
また、近年注目されているDXの足枷にもなるため、自社のシステムが老朽化している場合は早急に対応しましょう。
当メディアを運営するチェンシージャパン株式会社が提供するIFS Cloudは、製造業の基幹業務を一元管理するクラウドERPです。
老朽化した基幹システムからのデータ移行にも対応しています。
IFS Cloudの製品概要・導入事例を以下にまとめていますので、ぜひご覧ください。