工場を見える化するメリットは、業務効率の向上による生産性アップができること、そしてIoTやAIなどの技術導入の土台になることです。
しかし、「具体的にどのような業務効率化が見込めるのか・新技術導入のイメージがなかなか掴めない」こともあるでしょう。
本記事では、工場の見える化のメリットや、どのようにIoTやAI導入につながるのか解説します。
工場を見える化する手順やポイントとあわせて、ぜひご覧ください。
【基礎知識】工場の見える化とは?
はじめに、工場の見える化の基礎知識についてのおさらいです。
工場の見える化の正しい理解は、取り組み時に周囲に説明しやすくなるほか、目的の明確化にも役立ちます。
工場見える化の基礎知識
工場の見える化:運営に必要なデータを可視化する取り組み
工場の見える化とは、生産現場・生産体制・工場運営に関するデータを可視化する取り組みです。
工場の見える化を推進すると、経営者や管理者が現場の動きを把握しやすくなり、業務効率化・生産性向上に活用できます。
たとえば、製造工程ごとの生産量を見える化したとします。
結果的に製造工程によっては、ラインで流れてくる部品に対して生産量が少ないことがわかり、ボトルネック工程が明らかに。
ボトルネック工程が判明し、課題分析と改善を行えば、業務が効率化して生産性が向上するでしょう。
工場の見える化は、このように「何を・どのように」見える化するかを明確にすることで、業務効率化・生産性向上が可能です。
工場の見える化と見せる化は「目的・効果」が異なる
工場の見える化と、工場の見せる化の目的と効果を比較してみましょう。
- 見える化:現場のデータを収集し、課題を発見するのが目的。業務効率化および業務環境の向上効果に期待できる。
- 見せる化:業務に関するデータを常に把握できる環境構築が目的。リモートによる監視・モニタリングが容易になる効果に期待できる。
上記のように、見える化は全体的な業務効率化ができるのに対して、見せる化は監視・モニタリングと限定的なのがわかります。
どちらも工場に必要な取り組みではありますが、優先すべきは工場の見える化でしょう。
見える化の取り組みが成功すると、課題解決・経営改善にもつながります。
工場を見える化する5つのメリットとは?
工場を見える化するメリットは、おもに下記の5つです。
- 工場の状況をリアルタイムで把握、課題・問題を改善可能
- 工場見える化でデータのシームレス共有が可能
- 工場の見える化でスピーディなトラブル対応が可能
- 工場見える化による省エネ対策の実施が可能
- 工場の見える化で事故防止・モチベーションアップが可能
各メリットについて、具体的に解説します。
メリット1.工場の状況をリアルタイムで把握、課題・問題を改善可能
工場の見える化により、工場の状況をリアルタイムで把握できれば、現場が直面している課題・問題をスピーディに解決できます。
たとえば、生産ライン上の生産機器が停止した場合です。
現場からの報告を待たずに状況を把握でき、機会損失のリスクを最小限にできるでしょう。
さらに、見える化によって、これまで気付けていなかった現場の「ムリ・ムダ・ムラ」を発見できる可能性もあります。
メリット2.工場見える化でデータのシームレス共有が可能
工場の見える化は、抽象的だった業務プロセスを具体化し、スムーズな共有が可能です。
工場を見える化すると、業務プロセスを客観的なデータや数値で説明できるようになるためです。
具体化された業務プロセスは改善点を洗い出しが容易になり、さらなる効率化も可能でしょう。
データのシームレス共有は、属人化の防止にも大きな影響を与えます。
個人が抱える業務をデータ化することで、引き継ぎがスムーズになり、怪我や病気などの事態にも対応できます。
メリット3.工場の見える化でスピーディなトラブル対応が可能
工場の見える化が実現すると、機器のトラブルや事故などの発生を迅速に把握可能です。
そのため、生産を止めるかどうか・他のラインに回すかなどの判断をスピーディに下せるでしょう。
スピーディなトラブル対応ができれば、工場内の動きにムダがなくなり、全体的な生産性の拡大に期待できます。
メリット4.工場見える化による省エネ対策の実施が可能
工場のコスト削減を課題としている企業が多いのではないでしょうか。
工場を見える化すると、稼働している生産ラインが一目瞭然。
稼働していない生産ラインについては、照明や機器の電力量を調整し、省エネ対策を実施できます。
さらに、工場の見える化は人件費の削減にも期待できます。
工場内の様子が全てデータとして蓄積され、記録・日報にかかる作業時間を削減できるためです。
上記のことから、工場の見える化はコスト削減に貢献可能な取り組みといえます。
メリット5.工場の見える化で事故防止・モチベーションアップが可能
生産機器の状況をモニターしておけば、振動や温度上昇などの不具合の兆候を把握できるため、事故防止が可能です。
導入するシステムにもよりますが、中にはリモートでのモニタリングや指示出しが可能なタイプがある点もポイント。
管理者のライフスタイルに対して柔軟に対応できるため、より働きやすい環境構築にもつながるでしょう。
環境改善によるメリットは、社員のモチベーションアップです。
子育て・介護など、ライフステージに合わせた働き方ができるようになり、人材確保が容易になる効果に期待できます。
工場見える化のメリットを最大化可能、5つの実行手順とは?
工場の見える化によって得られるメリットを最大化するには、実行する際にポイントを守って取り組むのが大切です。
5つの実行手順とともに、メリットを最大化するためのポイントを解説します。
工場の見える化の実行手順
実行手順1.工場を見える化する目的を明確に
工場の見える化する目的は、生産現場が抱える課題の洗い出し・改善による業務効率化です。
しかし工場の見える化に集中しすぎるあまり、ときには目的を忘れてしまうことも。
現場情報の可視化にとどまらず、分析・改善策策定までを意識して取り組みます。
工場の見える化に取り組む前に、具体的な数値目標を設定しておくと良いでしょう。
実行手順2.見える化に取り組む工場の環境整備
工場を見える化するときは、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を推進して、現場の環境整備に取り組むのが大切です。
現場の環境が整ったところで、カメラやセンサーなど、データ収集に必要な機器を導入します。
カメラやセンサーなどは、無線通信ができるタイプにするのがポイント。
無線通信対応の機器は、見た目がすっきりするだけでなく、生産現場の動線を妨げる心配がありません。
実行手順3.工場の見える化で得た生産設備からのデータを取得・分析
生産設備に取り付けたモニタリング機器からデータを収集し、生産現場の課題を洗い出す工程です。
生産現場にある様々な課題は、種類や同一ラインなどと基準を決めてグループ化しておきましょう。
課題の中には、互いに関連のあるものもあり、グループ化して整理しておくことで次の手順に進みやすくなるためです。
実行手順4.工場内の課題・問題に対する解決法を策定
工場内の課題に対する解決策は、現場スタッフを交えて検討するのがポイントです。
そうすることで、工場内で発生した問題に対する現場の対応がスムーズになり、トラブル発生後の業務正常化までの時間が短縮できます。
現場スタッフを交えて検討するのには、効率化を図る以外にも目的があります。
それは、現場スタッフのモチベーションアップです。
現場スタッフが考案した解決策が認められると「自分で問題を解決できた」と感じることで自信につながり、成功体験となるでしょう。
現場スタッフを交えた解決策の策定は、人材育成とモチベーションアップに期待できる一石二鳥の工程です。
実行手順5.工場の見える化で得た効果と目標値をすり合わせ
工場の見える化を実施した後は、実際に得られた効果と目標値をすり合わせます。
目標値を下回っている場合は原因を究明し、改善して実施する必要があるでしょう。
目標値を上回っている場合は、改善の余地がないように感じるかもしれません。
しかし、さらに高い目標を設定し、効果の最大化を目指さなければ生産現場の成長が止まってしまう可能性があります。
工場の見える化は、PDCAサイクルに則って、向上心を持って取り組むべきです。
工場の見える化を成功には評価指標の標準化も大切
評価指数(KPI)とは、効率性・品質・能力・環境・在庫管理・保全など、生産効率を向上する際に使用される中間目標となる数値です。
評価指数は、工場の見える化に取り組む際の目標の1つとしても活用される反面、計算方法が異なっているケースが散見されます。
評価指数の計算方法が異なれば、根拠となるはずの数値にばらつきが生じてしまうため、評価指数の計算方法は標準化する必要があります。
工場の見える化に取り組む前に、プロジェクトチーム内で計算方法の統一を図りましょう。
工場の見える化は、スマートファクトリー化およびDXの実現に必須とも言える取り組みです。本記事では、工場見える化の基礎知識…
工場の見える化でお悩みの方へ
工場の見える化は、大幅な業務効率・生産性の向上に期待できる取り組みです。
しかし、工場の見える化を実現できただけでは、競争力に欠けてしまうことも。
そこで、AIやIoT技術のさらなる活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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