消費者は、製品価値より製品によって体験できることに価値を感じるようになりました。
つまり、従来のような製品を製造し販売するだけのビジネスモデルでは、変化する市場で生き残れない可能性があるといえます。
本記事では、製造業のデジタル変革に不可欠なサービタイゼーションとは何か・取り組む必要性を解説。
「サービタイゼーションの言葉自体は知っているものの、具体的な意味まではわからない」という方も、事例をもとに自社に置き換えイメージしてみてください。
製造業におけるサービタイゼーションとは?
サービタイゼーション(Servitization)とは、製品や商品を販売するのではなく、サービスとして顧客に提供し売り上げを得るビジネスモデルです。
サービタイゼーションでは、顧客ニーズを満たす無形のサービスとして付加価値を提供し、物質であるモノと分離して、それぞれで収益化を狙います。
月額制で音楽や動画アプリを好きなだけ使えるサブスクリプションのサービタイゼーションの1つです。
従来の製造業では、モノを売るだけのビジネスモデルが主流でしたが、近年では市場で生き残るためにサービタイゼーションへの転換が重要となります。
サービタイゼーションではAIとIoTが重要
製造業がサービタイゼーションへ転換するには、顧客との継続した繋がりや、顧客満足度を高める仕組みが大切です。
そこで必要な技術が、AI(人工知能)とlot(センサー技術)。
物質であるモノの提供が多い製造業において、顧客の利用状況を把握するためには、機械に設置したセンサーからデータを収集する必要があります。
まずは、機械に備え付けたセンサーから取得したデータをクラウドサービスなどを利用して蓄積し、ビッグデータとしてAIで分析。
機械利用に関する利用状況を確認しニーズに合わせて改善すれば、顧客満足度を上げることが可能です。
製造業にサービタイゼーションが必要な理由
製造業のデジタル変革には、サービタイゼーションが不可欠といわれています。
その理由は主に、顧客が求める価値の変化と業務の効率化が広がっているためです。
本章では、サービタイゼーションの必要性を2つ解説します。
サービタイゼーションの必要性1.価値がモノからコトへと変化している
従来では、モノの数自体が少なかったこともあり、人々は生活を豊かできる商品やサービスを求めていました。
しかし、インターネットの普及が進んだ現在では、必要とするモノは簡単に欲する人の手元に届きます。
よって、人々のモノへ対する価値は薄れていき、反対に購入するだけでは得られない体験や経験へとニーズが変化しました。
製造業が従来のビジネスモデルをおこなっていても、時代とともに変化する消費者のニーズには対応できません。
高い技術力を誇る日本ですが、品質だけでは世界の市場で勝ち抜くことは困難です。
人々の価値がモノからコトへと変化する現在、サービタイゼーションへの転換が求められています。
サービタイゼーションの必要性2.スマートファクトリーの拡大
スマートファクトリーとは、ドイツ政府が提唱したプロジェクト「インダストリー4.0」に基づく、製造業における効率向上に向けた取り組みです。
ソフトウェアを用いた自動化の発展を第3次産業革命とし、次に起こりうる革新的な生産革命の第4次産業革命の意味合いもスマートファクトリーにはあります。
スマートファクトリーの目的は、AIやloTなどの技術を駆使し、業務の自動化や長期的な生産性向上によって、コスト削減や品質改善、顧客のニーズに合わせた製品の生産です。
スマートファクトリーを実現できれば、製造業の競争力を高めつつ、新たなビジネスチャンスの創出につながります。
製造業のサービタイゼーション事例3選
本章では、サービタイゼーションへの転換したことにより成功した3つの事例を紹介します。
デジタル革命により、今後ますます激化する製造業で生き残るには、時代に合わせたビジネスモデルの変化が非常に重要です。
サービタイゼーションにより成功した事例をもとに、自社でどのように活かせるのか考えてみましょう。
サービタイゼーション事例1.ロールス・ロイス
ロールス・ロイスは、ゼネラルエレクトリックやプラットアンドホイットニーに並ぶ世界3大航空エンジンメーカーの1つです。
ロールス・ロイスでは、航空機向けエンジンの開発および販売だけでなく、1962年から「Power by The Hour」と呼ばれるサービスを提供しています。
Power by The Hourは、自社が製造する航空機エンジンの出力と移動時間に応じて、エンジン利用者に利用料を請求するサービスです。
このサービスの基盤となるのはloTシステムで、エンジンに備え付けたセンサーから取得できるデータから利用状況を把握できます。
ロールス・ロイスは、エンジンを売るのではなく、エンジンの推力と利用時間のみを抽出して販売するビジネスモデルを創出しました。
エンジン状態の把握は、整備のタイミングや人員のリソースを最適化できるなど、保守サービスへの発展にも繋がります。
サービタイゼーション事例2.クボタ
世界的にもトップクラスの農機メーカーであるクボタでは、農機とloTを連携して品質や収量の管理をサポートする「KSAS(クボタ・スマート・アグリ・システム)」を提供しています。
KSASは、データ収集機能を搭載したセンサー付き農機を導入した農家が利用できるサービスで、インターネットの地図データをもとに、農地管理や作業管理を自動化。
さらに、取得したビッグデータを活用し、作物の品質向上をサポートします。
KSASはサブスクリプションであり、農機そのものを販売しないサービタイゼーションの成功例です。
サービタイゼーション事例3.ダイキン工業
ダイキン工業は、世界150カ国以上で事業を展開している空調機器の総合メーカーです。
ダイキン工業では、世界中の空調機をインターネットに接続する「Daikin Global Platform」と呼ばれるloTプラットフォームを提供しています。
Daikin Global Platformによって、販売した空調設備の稼働状況をクラウド上で一元管理し、そのデータをもとに故障点検や遠隔点検といったサービスが可能です。
ダイキ工業では、loTとAI技術を活用した空調ソリューション事業の加速を目標に、空調機器の販売から空調ソリューションの提供へとビジネスモデルを変えました。
サービタイゼーションにおける製造業の現状と課題
サービタイゼーションの必要性は理解していても、なかなか取り組めない場合もあります。
特に、人員や資金力が不足しがちな中小企業にとって、サービタイゼーションへの転換が難しい場合があるでしょう。
本章では、製造業におけるサービタイゼーションの現状と課題を解説します。
製造業でのサービタイゼーションの現状
大企業では従来のビジネスモデルをサービス化していますが、中小企業ではまだまだサービタイゼーションが浸透していないと感じる方もいるでしょう。
モノからコトへと変化している消費者ニーズは把握していても、大企業に比べて資金力に劣る中小企業ではサービタイゼーションへの取り組みが困難な場合があります。
社内に、ビジネスモデルのサービス化の知識・ノウハウ・技術を持つ人材がいないことも、中小企業で取り組みが遅れている原因です。
製造業でのサービタイゼーションの課題
製造業でのサービタイゼーションの課題は、社内におけるマネジメントの方向性や組織構造、取引している相手企業との関係性を変えることです。
製造業のサービス化では、製品自体を販売せず、データやノウハウを活用したサービスを価値として提供します。
つまり、従来のビジネスモデルとは大きく異なるため、社内での理解や意識改革、取引先である顧客の理解が必要です。
サービス化によって取引内容が大きく場合もあるため、サービス化による顧客へのメリットを明確に伝える必要があります。
製造業でサービタイゼーションに取り組む2つの利点
製造業でサービタイゼーションに取り組む利点は以下2つです。
- 消費者との良好的な関係
- 消費者ニーズに合わせた提供
本章では、サービタイゼーションに取り組んだ企業が得られる2つのメリットを紹介します。
サービタイゼーションの利点1.消費者との長期的な関わり
企業が利益を最大化するには、リピーターをいかに獲得できるかが非常に重要です。
リピーターを創出するには、製品の品質改善やサービス向上に注力しますが、想像以上にコストが必要な場合があります。
一方、サービタイゼーションは一般的に、利用頻度や利用する製品に応じた従量課金制です。
つまり、消費者と必然的に長く関わることになり、企業は効率よくアプローチできます。
製品に対する消費者の情報を入手しやすい点は、サービタイゼーションの大きなメリットです。
サービタイゼーションの利点2.消費者のニーズに合わせて他社と差別化できる
近年、消費者のニーズは多様化しており、企業はいかに対応できるかが市場で生き残るためのポイントとなります。
プランを多様化し、さまざまなオプションを用意することで消費者への対応力や柔軟性を高め、ニーズに合ったサービスの提供が可能です。
製造業がサービタイゼーションを実現するにはIT技術の活用は必須で、AIやloTを活用し、データを収集します。
しかし、現在ではサービタイゼーションを実現している企業が少ないため、早めに取り組むことで他社との差別化が可能です。
製造業のサービタイゼーション事例をもとに自社で役立てよう
本記事では、製造業に必要なサービタイゼーションとは何か・取り組む必要性を解説しました。
消費者ニーズは、時代とともに変化しています。
従来のビジネスモデルのように、ただ製品やサービスを販売しても、他社との競争に負けてしまうでしょう。
成功事例のように、現在ではモノではなく体験や経験などのコトを提供するサービタイゼーションへの取り組みが非常に大切です。
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