BPR(業務改革)とは、ビジネス・プロセス・リエンジニアリングの頭文字をとった言葉です。
近年、働き方改革や経営環境の変化によって、BPRへの注目が高まっています。
とはいえ、BPRの目的や進め方がわからない方もいるでしょう。
この記事では、BPRとは何か・業務改善との違いや進め方を解説します。
BPRについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
BPR(業務改革)とは?
BPRはBusiness Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の略で、業務改革を意味します。
発祥は1990年代のアメリカで、業務改革だけでなく人材や評価制度、研究開発などの企業運営に関わるすべての事柄において、抜本的に見直し、統合や再構成をおこないました。
つまり、BPRとは、企業が目標を達成するために実施する抜本的な改革であり、組織構造や業務フロー、人事評価などを再設計することです。
業務改革と業務改善の違い
BPR(業務改革)と混同しがちな言葉に、業務改善があります。
業務改善は、ビジネスプロセスはそのままにして、部分的な変更をおこなうことです。
仮に、特定の部署に仕事が集中し、業務量のバランスが問題となっている場合を想定します。
その場合、業務改善とは、システムや人員リソースなどを見直し、従業員数の増加や業務を他の部署に割り当てることです。
つまり、部分的かつ徐々に変えていき問題解決を図るのが業務改善といえます。
業務改善の目的は業務の効率化であり、BPR(業務改革)の目的は抜本的な改革と、目指すゴールが別です。
BPR(業務改革)が注目される背景
BPRが注目される背景には、1990年代の日本で起きたバブル崩壊後、各企業が経営に苦戦し改善を求めていた過去があります。
アメリカで誕生したBPRが日本で注目され始めたのは、バブル崩壊後です。
バブル崩壊後は、民間企業だけでなく、国や地方自治体でも積極的に組織改革が推進されるようになりました。
よって、不景気に陥った日本と重なったことにより、BPRはリストラの助長やそれに伴う混乱などを生むことになります。
近年では、労働者不足やIT技術を駆使した組織改革が求められており、再びBPRが注目を集めるようになりました。
しかし、従業員に対する知見とIT技術の両方をアプローチできる人材が不足しているため、BPR導入に苦戦している企業も存在します。
ビジネスにおけるBPR(業務改革)の進め方
BPRを進めるには、以下の手順が必要です。
- 検討
- 分析
- 設計
- 実行
- 評価
BPRは、事業部単位で責任者と事業メンバーが主体となって進めていきます。
企業全体的の改革が必要なため、展開する背景や推進する構想を経営層と擦り合わせることが重要です。
さらに、他業界など他社の成功・失敗事例を参考に構想を考えることも必要といえます。
それでは、ビジネスにおけるBPR(業務改革)の進め方を見てみましょう。
【業務改革の進め方】手順1.検討
まずは、目的や目標設定を経営層が共有する必要があります。
人によって見えるゴールが異なる場合があるため、思考の擦り合わせは大切です。
対象業務の範囲もこの段階で設定し、明確に改善する範囲を決めます。
対象業務をしっかりと決めずに業務改革を進めても、抜本的な改革は実現できません。
より具体的なビジネスプロセスを想定しておくと、BPRの成功率は格段に高まります。
【業務改革の進め方】手順2.分析
十分に検討できたら、次はビジネスプロセスを分析します。
分析は、ツールなどを実際に使用し、ビジネスプロセスを根本的から見直す作業です。
現段階でのプロセスの長所と短所を徹底的に洗い出し、次の手順で紹介する「設計」の材料にします。
使用する分析ツールは、ABC手法やBSC手法がおすすめです。
ABC手法は活動原価計算という方法を用いて、コストの観点からBPRの効果を測定し、BSC手法はコスト以外の要素も評価します。
【業務改革の進め方】手順3.設計
ビジネスプロセスの分析やBPRの効果を測定が終わると、次は設計をおこないます。
分析では、ビジネスプロセスを徹底的に見直し、プロセス自体が影響を及ぼしている課題を洗い出しました。
分析によって見つけた課題などをもとに、設計するための方針を決定。
BPRは、ビジネスプロセスの単純化を想定しているため、この段階で統一化できていないビジネスプロセスの標準化を検討します。
ツールなどを使用し測定した効果データをもとに、高い効果を得られそうなものから優先的にビジネスプロセスの再設計を実施。
つまり、顧客満足度や競争優位の実現を念頭に置きながら、しっかりとしたプロセスを練っていきます。
設計したビジネスプロセスは、社内全員で共有しましょう。
【業務改革の進め方】手順4.実行
検討・分析・設計はあくまで、BPRを始める準備段階です。
BPRを始める準備が整ったら、いよいよ実行するフェーズに入ります。
この段階で肝心なのは、BPRは抜本的かつ大規模な改革のため、目的の達成まで時間がかかる点を頭に入れておくことです。
軌道修正を忘れずに、目的をしっかりと達成できているか随時、確認しましょう。
目標が現段階から遠い場合は、中間目標をいくつか設定し、短期的に実施の効果を見直せる機会を作ることをおすすめします。
ビジネスプロセスの変革は、すぐに効果が出るような簡単なものではありません。
BPRを進める際には、社内全員での共有を怠らず、協力して目標を達成できる組織体制を作りましょう。
【業務改革の進め方】手順5.モニタリング・評価
最後に効果を測定するために、モニタリング・評価をおこないます。
モニタリング・評価で測定するポイントは以下の3つです。
- 設計したビジネスプロセスは上手く機能しているか
- 問題が発生した場合、何が原因か
- 従来のビジネスプロセスに比べて、どのような効果があったか
モニタリング・評価をおこなえば、BPRのプロセスは終了です。
ビジネスのBPR(業務改革)を進める際のポイント
次は、BPRを成功に導くために注意すべきポイントを3つ解説します。
ビジネスのBPR(業務改革)を進める際には
- 目的の明確
- 業務改革の必要性を部署のメンバーに共有する
- 経営層が現場の業務を理解する
上記のポイントが重要です。
【ビジネス業務改革】ポイント1.目的の明確化
BPRは、計画段階で目標やゴールを明確にしなければ成功できません。
会社全体でビジネスプロセスの改革に取り組む推進力を維持するには、目的を見失わないように業務プロセスを見直すことが重要です。
分析や検討をおこなう段階で、無駄の削減や生産効率の向上、販売などの目標数値を達成するといった目的を明確にしておきましょう。
【ビジネス業務改革】ポイント2.業務改革の必要性を部署のメンバーに共有する
BPRの必要性を各部署のメンバーで共有できれば、一人ひとりの仕事に対する意識やモチベーションを変えられる可能性があります。
メンバーのモチベーションが上がれば、部署内の業務がスムーズになり、結果的にBPRの成功率も上がるでしょう。
また、変更後の業務フローを各部署で共有しないと、部署内のメンバーが連携できなくなり、社内全体の業務効率が悪くなる恐れがあります。
業務の非効率化を防ぐためには、変更後の業務フローをしっかりと各部署で共有すべきです。
【ビジネス業務改革】ポイント3.経営層が現場の業務を理解する
BPRの実施には、経営層は社員とコミュニケーションを積極的に取り、現場の業務状況を理解することが大切です。
経営層が現場の業務を十分に理解していない状態で改革を進めても、業務プロセスの洗い出しや見直し後のプロセス変更時に混乱が生じる恐れがあります。
ビジネスに必要なBPR(業務改革)の代表的な手法
次は、BPRを実施する際に用いる代表的な手法を紹介します。
それでは、業務フローの洗い出しに有効なフローチャートの作成と、経営層の意思決定をサポートする管理システムを見てみましょう。
【業務改革を進める手法】1.フローチャートの作成
現状の問題点を洗い出すために、業務フローチャートの作成は非常に有効な手法です。
業務フローを見直す際には、以下のポイントに注目して問題点を洗い出します。
- 時間を要している一連の業務になかで、阻害している業務
- 他部署と業務が重複していないか
- 顧客から必要とされていない非付加価値的な要素
一部門の業務や事業だけでなく、全社規模で見直すことがBPRによる抜本的な改革といえます。
たとえば、経費精算ルールや人事評価の体制も見直すべきポイントの対象です。
【業務改革を進める手法】2.ERP(経営管理システム)の導入
ERPとは基幹系情報システムのことで、経営層の意思決定をサポートするために利用します。
ERPは、販売・在庫管理・生産体制といった複数の部門に分かれる情報を集約し、フロー全体を統合的に管理できるシステムです。
EPRのような幅広い業務に対応できるシステムを導入すると、BPRを実施した後に日々の業務管理が簡単になります。
EPRを利用すれば、部門毎に管理していた情報を関連する一連のフローが可視化できるため、効率的な問題解決に有効です。
なお、EPRの詳しい特徴やソフトウェアの選び方について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
ERPソフトの種類は多岐にわたるため、それぞれの種類と特徴を理解して選定する必要があります。この記事では、ERPソフトの…
業務改革でビジネスプロセスを変える進め方を理解しよう
この記事では、BPRとは何か・業務改善との違いや進め方を解説しました。
BPRは業務改革を意味しており、組織構造や業務フロー、人事評価などを再設計し、企業が目標を達成するために実施する抜本的な改革です。
業務改革と業務改善は、言葉自体は似ているものの、BPR(業務改革)の目的は抜本的な改革を目指し、業務改善は業務の効率化を目指すため、目的が異なります。
ビジネスプロセスを変革するBPRは、短期的に効果が出る取り組みではありません。
BPRを成功させるには、組織全体で協力し、洗い出したフローを全員が共有することが非常に大切です。