コンポーザブルERPとは?メリット・導入の課題・成功ポイント

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コンポーザブルERPとは、2020年にガートナー社が提案した新たなERPの形態です従来のERPよりも細かなシステム要件に対応できると、注目を集めています。

本記事では、従来型のERP形態をおさらいしつつ、コンポーザブルERPの概要とメリットを紹介します。導入時の課題やコツも解説しますので、ERPの導入・既存システムの刷新をお考えの方はぜひご覧ください。

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コンポーザブルERPとは?

コンポーザブルERPとは、細かな機能やアプリケーションを自由に組み合わせて構築するERPのことです。コンポーザブルERPは、あらゆるシステムを連携するための基盤的な役割を果たし、外部ツール・アプリケーションの導入・組み替えを円滑にできるようにします。

機能の組み替えがスムーズなため、複雑な業務や業種特有の商習慣にも柔軟に対応でき、企業のシステム要件を満たしやすい点が特徴です。また、ビジネス環境の変化にも対応しく、長期的な運用に適しています。

コンポーザブルERPが登場した歴史

コンポーザブルERPは、かつて大企業で運用されていた大規模なERPから始まり、以下の段階を経て誕生しました。

  • モノシリックERP:1990年代〜
  • ポストモダンERP:2010年代〜
  • コンポーザブルERP:2020年代〜

ここでは、コンポーザブルERPがどのような背景で誕生したのか、その歴史を紹介します。

モノシリックERP:1990年代〜 

1990年代に登場したのが、大企業で運用されていた「モノシリックERP」です。モノシリック(Monolithic)を直訳すると「一枚岩」を意味し、その名の通りあらゆる業務を単一のシステムで管理する形態でした。

たとえば、営業・生産・人事・会計などの基幹業務を一元管理し、これら各業務に対応する機能を有していました。もちろん、複数のシステムで連携する必要がないため、業務に適合すれば効率化や情報共有の円滑化など大きなメリットがあります。

しかし、当時は社内に設置したサーバーでデータを管理していたため、多額の保守・運用コストがかかりました。また、ERPの機能同士が高度に連携していたことで、カスタマイズや機能の新規開発が困難だったのです。

こうした背景から、保守・運用のしやすさや、常に変化するビジネス要件への対応力が求められるになります。

ポストモダンERP:2010年代〜

モノシリックERPの課題を解決すべく誕生したのが、ポストモダンERPです。ポストモダンERPは、対象範囲をコア業務に絞り、不足する機能を別のSaaSやアプリケーションで補填する形態のことです。

モノシリックERPよりもERP自体がスリム化され、低コストでの運用が可能です。また、この頃からクラウド上でシステムを稼働させる「クラウド型ERP」が登場しました。

これにより、導入・運用コストが大きく削減され、中小企業〜中堅企業でのERP導入が加速しました。

コンポーザブルERP:2020年代〜

ポストモダンERPの後継として登場したのが、本記事のテーマである「コンポーザブルERP」です。コンポーザブルERPはポストモダンERPと類似していますが、より最新のデジタル技術との連携度を重視した形態です。

突き詰めれば、コアERPという概念すらなく、市場に存在するSaaSやベンダーが提供する機能モジュールを組み合わせ、一連の業務を管理するERPを構築するという考え方ですポストモダンERPはあくまでもベースとなるコアERPをベースとし、拡張性を追求したソリューションであるのに対し、コンポーザブルERPはシステム間のシームレスな連携を追求した形態と言えます。

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コンポーザブルERPのメリット3つ

コンポーザブルERPは、従来のERPと比較して以下のメリットが期待できます。

  • 優れた柔軟性・拡張性
  • 開発コストを抑えられる
  • 最新ソリューションの恩恵を受けやすい

ここでは、上記3つのメリットを詳しく紹介します。

メリット1.優れた柔軟性・拡張性

従来のERPと比較してコンポーザブルERPがとくに優れているのは、柔軟性・拡張性です。コンポーザブルERPでは、異なるベンダーが提供するソリューションを組み合わせることも可能なため、より現場業務に適したシステムを構築できます。

なお、近年はデジタル技術の発展に伴い、市場にはさまざまなSaaSが登場しています。こうした最新のソリューションを特定業務ごとに取り入れられる点もコンポーザブルERPならではの魅力です。

また、反対に一部業務の対応機能を外すことも可能なため、BPOによって業務を外注したり、業態変更によって体制が変化する際にも柔軟に対応できます。

メリット2.開発コストを抑えられる

コンポーザブルERPでは、システムの開発コストを抑えられます。これは、ERPを構築する際に必要最低限の機能でシステムを構築できるためです。

たとえば、第一段階として生産・会計・在庫管理業務のみを管理するシステムの構築など。モノシリックERPのように、全業務をカバーする形態ではないため、搭載する機能も限定的でありコスト負担を抑えることが可能です。

なお、企業の成長に合わせて段階的にERPできるため、管理領域や機能の重複を防ぎやすい傾向があります。この重複によるムダな導入コストを省けるため、最小限のコストで自社に適したERPを構築しやすいのです。

メリット3.最新ソリューションの恩恵を受けやすい

コンポーザブルERPは、外部のSaaSとの連携が可能なため、最新ソリューションの恩恵を受けやすい傾向があります。とくに近年はAIを活用したソリューションが増加しており、バックオフィス業務の自動化が一般的になってきました。

ただ、従来のモノシリックERPやポストモダンERPでは、カスタマイズの対象範囲が広く、機能の開発に多くのコストがかかったり、ベンダーが提供する製品に依存したりと多くの障がいがあります。その点、細かな業務単位で機能を拡張できるコンポーザブルERPなら、必要箇所に従来よりも低コストで最新のデジタル技術を導入できます。

近年は多くの業種で人手不足が深刻化しているため、コンポーザブルERPにて最新ソリューションを導入・活用していくことは大きなアドバンテージとなるでしょう。

コンポーザブルERP導入の課題・難しさ

一見メリットばかりのコンポーザブルERPですが、実は、導入時に立ちはだかる以下の課題に注意が必要です。

  • システムのブラックボックス化を招く恐れがある
  • 要件が複雑化し導入難易度が高い
  • セキュリティホールが生まれやすい

現状、コンポーザブルERPの導入をお考えの方は、上記リスクへの対策を講じましょう。

課題1.システムのブラックボックス化を招く恐れがある

1つ目の課題は、柔軟性が優れているがゆえに発生するブラックボックス化です。コンポーザブルERPでは、複数のベンダーが提供するソリューションを組み合わせ、自社に適したERPを構築できます。

ただ、ベンダーが異なれば当然システムの仕様も異なるため、適切に保守・運用しなければ構造が複雑化します。また、システムの構造を随時把握できなければ、あらゆる業務でブラックボックス化が発生する恐れがあります。

こうした事態を防ぐには、ERPの導入前にシステムの全体像をドキュメント化し、構造や保守・管理体制を整備することが重要です。カスタマイズの際は随時ログを残し、第三者が見てもERPの構造や状況を把握しやすいようにする必要があります。

課題2.要件が複雑化し導入難易度が高い

2つ目の課題は、要件が複雑化して導入難易度が高い点です。コンポーザブルERPでは、従来のERPよりも細かな要件に対応できます。

言い換えれば、それだけ選択すべき事柄が多いということです。当然、導入時に設定するパラメータも多岐に渡るため、導入〜運用に時間がかかる恐れがあります。

また、部門ごとに要件や意見が分かれ、意思決定に時間を要する可能性もあります。そのため、これまで以上に経営層による意思決定が重要となり、プロジェクト自体の難易度も高いと言えます。

課題3.セキュリティホールが生まれやすい

3つ目の課題はセキュリティホールが生まれやすいことです。セキュリティホールとは、システムを構築した段階で発生するセキュリティ面の弱点のことです。

複数のソリューションを組み合わせるコンポーザブルERPでは、連携部分にセキュリティ上の弱点が発生するケースがあります。こうした弱点があると、外部からの攻撃にさらされ情報漏洩につながる恐れがあるため注意が必要です。

しかし、コンポーザブルERPにおけるセキュリティホールのリスクは、当然ベンダーも承知しており対策を講じていることがほとんどです。ただ、講じる対策はベンダー企業によっても異なるため、コンポーザブルERPを導入する際は、信用できる事業者を選択することが重要です。

コンポーザブルERPの導入を成功させる3つのポイント

コンポーザブルERPには導入時の難しさがありますが、以下のポイントを押さえることで、プロジェクトの成功率を高められます。

  • 初めから完璧なコンポーザブルERPの設計を目指さない
  • できるだけERPの標準機能を活用する
  • ERP導入実績のある人材を確保する

ここでは、上記のポイントを順に紹介します。

初めから完璧なコンポーザブルERPの設計を目指さない

コンポーザブルERPを導入するには、初めから「完璧なコンポーザブルERP」を目指さないことが大切です。ここで言う完璧なコンポーザブルERPとは、自社の要件を存分に反映し、大きな導入効果を得られるERPのことです。

もちろん、これが実現できれば、自社にとって大きなプラスとなるのは間違いありません。しかし、導入前の今想定している完璧なシステム像と、導入後に抱く完璧なシステム像とでは乖離が生じます。

一般的に、「家は3回建てて満足できる」と言われますが、これはERPも同様です。コンポーザブルERPはまさに注文住宅と同じで、どんなに細かく仕様を決定できたとしても、初手から完璧な状態を実現するのは困難なのです。

ここで重要な考え方が、完璧なコンポーザブルERPを目指さないこと。まずは、コアERPの領域で自由にシステムを構築し、徐々に拡張・カスタマイズの範囲を広げていく方がプロジェクトの成功率を高められます。

初手から大きな成果を狙うのではなく、段階的にERPを構築していくことが重要です。

できるだけERPの標準機能を活用する

前述した、初めから完璧なコンポーザブルERPを目指さないに付随しますが、まずはERPの標準機能を活用するのがおすすめです。コンポーザブルERPは外部のSaaSとの連携が強みですが、ベースとなる基盤が整備されていないなかで連携を進めれば当然ひずみが生じます。

また、本来業務プロセスの改善で対応できた課題に対し、システム側で調節を図るなど、ムダなコストが発生する恐れがあります。こうした事態を防ぐためは、自社にあったコアERPを導入し、課題や自社の状況に合わせて少しずつ派生していくことが大切です。

ERP導入実績のある人材を確保する

コンポーザブルERPに限らず、ERPの導入を成功させるには、ノウハウや経験のある人材を確保する必要があります。ERPの導入実績がある人材がチームにいれば、多くの課題・リスクを事前に回避できる可能性が高まるためです。

コンポーザブルERPはとくに実現が難しい形態のため、十分な経験・実績のある人材をチームメンバーに起用しましょう。なお、自社で人材を調達できない場合は、ERPの専門家であるベンダーに支援を依頼するのが効果的です。

提供するERPパッケージのみならず、導入時に直面する課題やその対処法を熟知しているためです。ERP導入をお考えの方は、ぜひ信頼できるERPベンダーを見つけてみてください。

コンポーザブルERPでDXを推進しよう

この記事では、コンポーザブルERPの概要を紹介しました。コンポーザブルERPとは、細かな機能やアプリケーションを自由に組み合わせて構築するERPのことです。

従来型のERPよりも柔軟性・拡張性が高く、自社の要件に適合しやすい点が魅力です。また、ビジネス環境の変化にも柔軟に対応できるため、デジタル競争が激化する昨今の企業に欠かせないソリューションでしょう。現状、ERPの導入やDX推進をお考えの方は、ぜひコンポーザブルERPを導入してみてください。

なお、当メディアを運営するチェンシージャパン株式会社は、製造業向けERP「IFS Cloud」を提供しております。ERPに関するご相談や無料セミナーも開催していますので、ERPの導入に向けて情報を集めたい方・疑問や不安を抱えている方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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