ERP導入のメリット・デメリット!ERPの特徴から導入後のビジョンを描こう

ERP

ERPの最大のメリットは、部門ごとに分散したデータを一元管理できることです。このメリットは、さまざまなメディアでたびたび目にするため、「すでに知っている」という方も多いでしょう。

しかし、「データを一元管理することで何が変わるのか?・どのような効果があるのか?」まで描けている方は少ないでしょう。

本記事では、ERPの導入で得られる8つのメリット・効果を解説します。本記事を参考に、ERP導入後のイメージを鮮明にしてみてください。

ERP導入の目的は企業により異なる

ERPを導入する主目的は、事業内容や企業が抱える課題によって異なります。

もちろん根底には、「社内データを一元管理し、あらゆる点で経営の合理化を図ること」がありますが、それによって「どのような効果・ビジョンを目指すのか?」は企業次第です。

なお、ERP導入の主目的が曖昧では、プロジェクトの方向性を見失うリスクが高まります。また、ERPに実装する機能によっても効果が異なるため、プロジェクトを企画する際は、システムを導入する主目的を明確にすることが重要です。

次章で紹介するメリットはまさに、ERP導入の目的に該当します。ぜひ、自社が抱える課題と照らし合わせながら、参考にしてみてください。

ERP導入で得られるメリット

ERPの導入では、主に以下8つのメリットが期待できます。

  • 社内データを統合し一元管理できる
  • 管理工数の削減により主力業務へ集中できる
  • 豊富な分析機能で経営判断をサポート
  • 社内の「今」を把握し的確な経営判断ができる
  • 分散していたセキュリティも統合でできる
  • データの一元化により内部統制を強化できる
  • 支店・海外拠点との連携を強化できる
  • レガシーシステムを脱却しDX基盤を構築できる

それぞれ順に紹介します。

メリット1.社内データを統合し一元管理できる

ERP最大のメリットは、社内データを統合して一元管理できることです。

従来の管理方法では、販売・生産・人事・会計などの業務ごとにデータを管理していました。各部門が個別にデータを管理するため、他部門とやり取りする際には共有する手間がかかります。

一方、ERPは単一のデータベースで各部門のデータを統合し、一元管理が可能です。これにより、仮に販売担当者が受注データを入力すると、そのほか各部門の帳票にもデータ変更が反映されます。たとえば、在庫数が差引されたり、売上や仕分データに反映されたりなどです。

従来のように、各部門の担当者が変更されたデータを手作業で修正する必要がありません。また、部門間で発生していた二重入力を削減でき、組織全体の業務を効率化できます。

メリット2.管理工数の削減により主力業務へ集中できる

先ほどの内容に付随して、データの管理工数が削減し、主力業務へ集中しやすくなる点もERPのメリットです。とくに販売・営業・マーケティングなどのフロントオフィス業務は、データ管理ではなく、売上・顧客満足度の獲得が主力業務です。

ERPによって、日々のデータ入力やファイル整理などを削減できれば、より顧客との信頼構築や施策の実施に注力できます。結果的に個人の売上、延いては企業の業績を伸ばせるでしょう。

メリット3.豊富な分析機能で経営判断をサポート

ERPと言えば、現場業務の最適化に目が行きがちですが、実は経営へのメリットの方が多くあります。その代表例が、豊富な分析機能による経営判断のサポートです。

ERPには、各種指標を用いてデータを可視化するための機能が実装されています。たとえば、一般的なERPは以下のデータを指標として出力できます。

  • 売上/利益
  • 生産リードタイム/原価
  • 仕入数/在庫数
  • 従業員の個人情報/給与
  • 市場データ/顧客データ

経営層は、「必要な時に・必要な情報を・わかりやすく把握できる」ため、数値に裏打ちされた適切な判断を下しやすくなります。

メリット4.社内の「今」を把握し的確な経営判断ができる

ERPで社内データを一元管理すると、データの収集にかかる時間を大幅に削減できます。従来は、各部門のシステムや担当者のパソコンでデータを管理していたため、これらを収集するには多くの時間がかかりました。

また、フォーマットが統一されておらず、集めたデータの整理に手間がかかるケースもあります。経営層のもとにデータが届く頃には、タイムラグによって現状と乖離している恐れもあります。

一方ERPなら、データベースへアクセスすれば、各部門のデータを即座に収集できリアルタイムで社内状況の把握が可能です。なお、ERPには前述した分析も備わっているため、より迅速に事業の方針を定められるでしょう。

メリット5.分散していたセキュリティも統合できる

基本的に、複数のシステムを導入している場合は、個別にセキュリティ対策を実施します。また、セキュリティレベルを上げるために、機密性の高い情報を暗号化したり、アクセス権限を細かく設定したりして、管理面の負担が懸念されていました。

社内データを統合して管理するERPなら、上記のセキュリティ対策もデータベース上で管理できます。また、現場業務の視点で見ても、データを出し入れする機会が減るため、情報漏洩やデータ改ざんを防止できます。

メリット6.データの一元化により内部統制を強化できる

ERPを導入することで、内部統制を強化できます。たとえば、データの一元管理による整合性の確保や、アクセス権限の管理による情報漏洩・データ改ざんの防止がこれにあたります。

通常、内部統制を強化するには、業務プロセスの改善やルールの設定・定着などが必要で、多くの手間がかかるものです。ただ、これらの作業はERPの導入過程でも実施されるため、別途で体制の見直しやルールの設定・施行に取り組む必要がありません。

したがって、ERPの特性と導入プロセスにより、内部統制を効率良く強化できます。

メリット7.支店・海外拠点との連携を強化できる

ERPで一元管理できるのは、1拠点の情報のみではありません。地理的に離れた支店や海外拠点などのデータも一元化が可能です。

とくに、支店や海外拠点は本社の管理が行き届きづらく、以下の課題に直面しがちです。

  • 本社が海外拠点の現状を把握できない
  • 本社からの指示が通らず現地任せになる
  • 本社と海外拠点の連携に多くの時間・手間がかかる
  • 拠点ごとにシステムが異なり業務効率が悪い

ただ、ERPなら各拠点の管理データを統合でき、リアルタイムで状況を把握できます。また、本社からの指示も即座に共有できるため、現地での事業をスムーズに推進できるでしょう。

メリット8.レガシーシステムを脱却しDX基盤を構築できる

新たなERPを導入し、レガシーシステムの脱却やDX基盤の構築を目指すことも可能です。レガシーシステムとは、古い言語で構築され、さまざまな問題が顕在化しているシステムです。

レガシーシステムの運用を続けると、将来的に以下の課題に直面します。

  • 業務プロセスの変化に対応できなくなる
  • 運用コストの増大
  • セキュリティリスクの増加
  • 新たなデジタル技術に対応できなくなる

こうした問題を解決すべく、ERPを導入する企業も増加しています。とくに、クラウド型のERPは、ベンダー企業が定期的にシステムの保守・点検を行うため、レガシー化の再発防止が可能です。

また、常に最新の仕様へバージョンアップされるため、最新のデジタル技術にも柔軟に対応できます。企業のDX推進にも対応でき、デジタル技術を駆使したビジネスの変革を支援してくれます。

【注意】ERP導入のデメリット

ここでは、ERP導入で注意すべき以下のデメリットを紹介します。

  • ERPの導入に多くのコスト・時間・手間がかかる
  • ERP導入は長期化しやすい
  • EPR導入に失敗すると大きな損失に

なお、ERP導入で発生しがちな失敗例とその原因を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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デメリット1.ERPの導入に多くのコスト・時間・手間がかかる

基本的に、ERPの導入には多くのコスト・時間・手間がかかります。一般的な業務支援ツールとは異なり、システムの対象範囲が広いためです。

とくに導入コストは合計数百〜数千万円ほどかかるため、予算に合った製品を選定することが重要です。なお、ERPパッケージには、必要最小限の機能のみを実装できるコンポーザブル(コンポーネント)型の製品もあります。

こうしたERPはあとから機能モジュールを追加できるため、まずは導入コストを抑え、事業の成長に合わせてカスタマイズしたい企業に適しています。

以下の記事では、ERP導入の流れ・期間・費用を詳しく解説しています。ERP導入プロジェクトの概要を把握したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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デメリット2.ERP導入は長期化しやすい

一般的に、プロジェクトの企画からERPの本格稼働までに半年〜1年ほどかかると言われています。ただ、ここで注意すべきは、「ERPの本格稼働=プロジェクトの終了はない」ということです。

前述した、導入メリット(目的)の実現がプロジェクトのゴールに設定されるため、本格稼働後もPDCAサイクルを回し続ける必要があります。設定した目標によっては、数年単位のプロジェクトになるケースもあるため、ERP導入では十分なリソースを確保しておく必要があります。

デメリット3.ERP導入に失敗すると大きな損失に

ERPの導入に多くのコスト・時間・手間がかかる分、失敗した場合は大きな損失につながります。「システム導入で失敗するの?」と思われるかもしれませんが、事実、ERPの本格稼働までは進めても、その後、想定していた導入効果を得られないケースはよく見られます。また、よくある失敗として以下のケースが挙げられます。

  • 現場に寄り添った結果、ERP導入目標を達成できない
  • ERPと業務のミスマッチ
  • 過度な機能開発によるQCDの未達
  • ERPの管理データをうまく活用できない

ERP導入に失敗した場合、投入した膨大なリソースがムダになり企業にとって大きな損失となります。また、ERPは社内の各部門にまたがるため、仮に業務との適合度が低い場合は、生産性の低下や新たな問題の誘発が全社レベルで発生する恐れもあります。

こうした失敗を防止するためにも、ERP導入の経験がある人材をメンバーに選出し、入念に準備しましょう。

【ポイント】ERP導入ではデメリットに対する対策が不可欠

ERP導入の成功率を高めるには、前述したデメリットへの対策が必要です。具体的には、以下のような対策が考えられます。

デメリット

対策
多くのコスト・時間・手間がかかる
  • 拡張性の高い小規模ERPから段階的に導入していく
  • 外部機関の助けを借りプロジェクトの効率化を図る
プロジェクトの長期化
  • 準備過程で綿密なシナリオを描き、実行過程のムダを省く
  • PDCAを高速で回し、トラブルへの対応を早める
失敗による損失が大きい
  • 事例を参考に失敗の原因を分析して防止する
  • あらかじめ失敗シナリオ・対応策を複数用意して、損失の最小化に務める

ERPの導入効果を最大化するためにも、上記のような対策を検討しておきましょう。

ERPの導入をお考えの製造業の方へ

本記事では、ERP導入によるメリット・デメリットを紹介しました。まとめると、以下のとおりです。

メリット デメリット
  • 社内データを統合し一元管理できる
  • 管理工数の削減により主力業務へ集中できる
  • 豊富な分析機能で経営判断をサポート
  • 社内の「今」を把握し的確な経営判断ができる
  • 分散していたセキュリティも統合でできる
  • データの一元化により内部統制を強化できる
  • 支店・海外拠点との連携を強化できる
  • レガシーシステムを脱却しDX基盤を構築できる
  • ERPの導入に多くのコスト・時間・手間がかかる
  • ERP導入は長期化しやすい
  • EPR導入に失敗すると大きな損失に

ERPは、大きな導入効果が期待できる一方で、コストや失敗時の損失がネックとなります。デメリットを抑え、顕在化させないためには、対応策を講じることが大切です。

すでに多くの企業がERPの導入を実施しているため、事例やノウハウが多数公開されています。ERP導入の全貌を把握するためにも、事例などを参考に「先行企業がどのようなにして、導入したのか?」を分析すると良いでしょう。

当メディア(IFS LABO)を運営するチェンシージャパン株式会社は、製造業向けERP「IFS Cloud」を提供しています。「IFS cloud」の最新の導入事例も公開していますので、ERPの導入をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

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