ERPを導入するにあたり、最初の障害となるのが製品の選定です。
「他の企業ではどのようなERPを運用しているのか・信頼性の高いERPを導入したい」との思いから、ERPの市場シェアを把握したい方も多いでしょう。
本記事では、国内外のERP市場シェアを解説。
また記事の後半では、近年市場シェアを拡大させているクラウドERPについて紹介します。
ERPの導入をご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
世界のERP市場シェア(2021年公開情報)
昨今のERP市場は急速に拡大しており、今後も大幅な需要拡大が見込まれています。
調査企業の株式会社アイ・ティ・アールによると、2019年のERP売上金額は1,128億円で、前年度比12.4%増とのこと。
急速に拡大するERP市場で、高いシェアを誇るのはどのベンダー企業なのでしょうか。
本章では世界のERP市場シェアのトップ3社を紹介します。
ERPシェア1位:SAP社
ERP市場でトップを誇るベンダーは、SAP社です。
SAP社は、世界各国の企業にERPを提供しており、ERP市場でのシェアは7%にも登ります。
SAP社のERPは世界的にも高い評価を獲得しており、調査機関であるガートナーからは最高評価のリーダーに認定されるほど。
2022年現在は、企業規模に合わせた下記4種類のERPが提供しています。
- ERP Central Component(ECC):大企業向け
- SAP S/4HANA:中堅〜大企業向け
- SAP Business ByDesign:中小〜中堅企業向け
- SAP Business One:中小企業向け
ただし、主力製品であるERP Central Component(ECC)は、2025年にサービスを終了するため、SAP S/4HANAへの移行が進んでいます。
「SAPはITに関する言葉らしいけど、何を表しているんだろう?」との疑問をお持ちではないでしょうか。この記事では、SAP…
ERPシェア2位:Oracle社
世界のERP市場で第2位のシェアを誇るのが、Oracle社です。
Oracle社は、いち早くクラウド型ERPに着手し、世界的に高い信用を獲得しています。
Oracle社が提供するERPは、主に下記の2つです。
- Oracle NetSuite:中小企業〜中堅企業
- Oracle Fusion Cloud ERP:中堅企業〜大企業
中でもOracle NetSuiteは、全世界で29,000社以上もの導入実績を誇る、Oracle社の主力クラウド型ERPです。
190種類以上の通貨と19言語に対応しているため、各国に拠点を持つグローバル企業でもリアルタイムな業務統合が可能です。
SAP社と同様、Oracle社のERPも高く評価されており、ガートナーからリーダーの評価を得ています。
高いERPシェアを誇るOracle社は、2種類のERP製品を提供しています。主力製品であるOracle ERP Clou…
ERPシェア3位:Intuit社
世界のERP市場で第3位のシェアを誇るのが、Intuit社です。
Intuit社はアメリカでの評価が高く、会計システム・税務システム・クラウドサービス部門では、アメリカ市場のトップシェアを誇ります。
また、Intuit社は中小企業向けのERPを専門に扱い、アメリカ・カナダ・インド・中国など人口の多い国を中心に提供していることがシェアを広げた1つの要因と考えられます。
ただ、Intuit社のERPが日本で導入されたケースはほとんどないため、なじみがない方も多いのではないでしょうか。
【2022年最新】 国内の中小企業・中堅企業のERPシェア
続いて、国内の中小企業・中堅企業の、ERPシェアを紹介します。
日本国内でトップシェアを誇るベンダー企業は、下記の3社です。
- 1位:株式会社大塚商会
- 2位:富士通株式会社
- 3位:SAPジャパン株式会社
本章では、上記3社の特徴とERP製品について紹介します。
ERPシェア1位:株式会社大塚商会
国内シェアトップを誇るのは、株式会社大塚商会です。
大塚商会はERPのみならず、生産管理システムや販売管理システムなど、さまざまなITソリューションを提供しています。
ERP・基幹系・情報系システムの開発・導入をワンストップで対応しているため、連携度の高いシステム構築を実現します。
大塚商会が提供する主力ERP製品は、「SMILEシリーズ」です。
SMILEシリーズは、約40年もの歴史を持つシステムであり、これまでに培ったノウハウや企業のベストプラクティスを搭載。
PRA機能も内包しているため、バックオフィス業務の自動化・効率化を実現します。
ERPシェア2位:富士通株式会社
国内シェア第2位を誇るのは、富士通株式会社です。
富士通株式会社が提供するERPは「GLOVIAシリーズ」です。
GLOVIAシリーズは導入企業の業種・規模感・対応業務に合わせ、さらに細かく細分化されます。
たとえば、「GLOVIA iZ」は経営・会計・人事・労務・販売・貿易・生産の、7つの基幹業務と現場業務をつなぐフロント基盤をラインナップ。
一方の「GLOVIA smart」は製造・小売・サービス・食品業など各業種に特化したERP製品です。
中小企業〜中堅企業向けのERPを提供しており、多くの導入実績を誇ります。
ERPシェア3位:SAPジャパン株式会社
国内シェア第3位を誇るのは、SAPジャパン株式会社です。
SAPジャパン株式会社は、先述したSAP社の日本支部であり、国内企業向けにSAP社製のERPを提供しています。
SAP社のERPは世界スタンダードといわれるほど信頼性が高く、多くの日本企業が導入しています。
クラウドERPがシェアを拡大!人気の理由とは?
以前のERP市場では、オンプレミス型ERPが主流でした。
しかし、近年のインターネットの普及に伴い、クラウド型ERPがシェアを大幅に拡大しています。
株式会社矢野経済研究所が2020年に発表した調査によると、2021年にはクラウド型ERPが全体の63.5%を占めると予測されています。
一体なぜ、これほどまでにクラウド型ERPが注目されているのでしょうか。
本章では、クラウド型ERPの概要と注目される理由を紹介します。
そもそも、クラウド型ERPとは?
クラウド型ERPとはベンダー企業が提供するERPを、インターネットを介して利用する形態のことです。
導入企業が自らサーバーを構築する必要がなく、低コストでの導入が可能です。
また、ERPの保守やセキュリティ対策もベンダー企業がおこなうため、少ないコストで運用できます。
クラウドERPが注目される理由
クラウド型ERPが注目される理由は、主に下記の2つが挙げられます。
- 導入期間・導入コストが抑えられる
- 多様化する働き方にも対応可能
1つ目の理由は、導入期間・コストが抑えられるため。
先述のとおり、クラウド型ERPは導入・運用にかかるコストがオンプレミス型ERPよりも安い傾向があります。
また、すでにパッケージ化されたERPを導入するため、サーバーの構築から取り組むオンプレミス型よりも短期間で導入できます。
2つ目の理由は、多様化する働き方にも対応できるためです。
オンプレミス型ERPの場合、社内ネットワークを介してERPへアクセスします。
そのため、アクセス導線を確保しなければ、外出先などからのアクセスが制限されます。
その点クラウドは、インターネットを介してアクセスできるため、テレワークなど場所を選ばない働き方にも対応できるのです。
こうした理由から、資金力やリソースが限られた中小企業を中心に、クラウド型へ移行する動きが活発化しています。
【注意】ERPシェアだけでなく、「機能・操作性」も考慮しよう
本章ではERPの市場シェアを紹介してきましたが、選定時にはシェアのみならず、機能面・操作性も考慮することが重要です。
もちろんシェアが高い製品は信頼性が高いため、導入するERP候補に加えたくなるでしょう。
しかし、ERPを導入する本来の目的は、情報フローの円滑化や経営資源の有効活用、ひいては社内全体の最適化です。
社内状況や業務フローは会社ごとに大きく異なるため、たとえトップシェアのERPを導入したとしても、目標を達成できるとは限りません。
場合によっては、既存システムとの不適合が発生したり、現場から受け入れられなかったりと、ERP導入が失敗に終わるケースもあります。
そのため、ERPを選定する際はシェアのみならず、搭載機能や操作性、既存業務・システムとの兼ね合いなどを総合的に判断することが重要です。
自社に適したERPを選ぶための3つのポイント
自社に適したERPを選ぶためのポイントは下記の3つです。
- 既存業務・商習慣と機能の差異がないか
- ERPの拡張性・柔軟性の高さ
- ERP導入後のサポートサービスの充実度
3つの選定ポイントを、順に紹介します。
ポイント1.既存業務・商習慣と機能の差異がないERPか
1つ目のポイントは、既存業務・商習慣と機能の差異がないERPかです。
ERPは、製品ごとに搭載機能や得意業種が異なるもの。
たとえば、バックオフィス業務に特化したERPもあれば、製造業に特化したERPも存在します。
万が一、自社の業務・商習慣と機能の差異が大きい場合は、カスタマイズやアドオン開発などに多くのコストがかかります。
機能の開発・カスタマイズコストを抑えるためにも、ERPを選定する段階から、自社との適合率が高い製品を見つけ出すことが大切です。
ポイント2.ERPの拡張性・柔軟性の高さ
2つ目のポイントは、ERPの拡張性・柔軟性の高さです。
ERPの拡張性・柔軟性は、既存業務とのすり合わせのみならず、長期的な運用を見据えるうえでも重要なポイントです。
たとえば、業務課題の解決に向け、業務プロセスを改善・変更することもあるでしょう。
この場合、ERPや基幹システムなどの業務に関連するシステムも、業務に合わせて変更の必要が出てきます。
ただ、拡張性・柔軟性の低いシステムでは、業務プロセスへ適合できず、生産性を低下させる要因になりかねません。
したがって、ERPの長期的な運用を見据えるうえでも拡張性・柔軟性の高さを考慮した製品選定が重要です。
ポイント3.ERP導入後のサポートサービスの充実度
3つ目のポイントは、ERP導入後のサポートサービスの充実度です。
ERPのベンダー企業は、それぞれ独自のサポートサービスを提供しています。
たとえば、導入サポートやシステム管理部向けの教育セミナーなど。
仮に自社の人員のみでERPの導入・運用を進めることが困難な場合は、トラブル・失敗に陥りやすいため、サポート体制が充実したベンダー企業を選ぶと良いでしょう。
製造業向けERPをお探しの方へ
本記事では、国内外のERP市場シェアを解説しました。
国内の中小企業で高いシェアを誇るのは、下記の3社です。
- 1位:株式会社大塚商会
- 2位:富士通株式会社
- 3位:SAPジャパン株式会社
ただ、ERP選定時には市場シェアのみならず、機能面・操作性も考慮することが重要です。
ぜひ、自社の業種・業務に適したERPを選定してください。
弊社チェンシージャパン株式会社は、製造業特化型ERPの「IFS Applications」を提供しています。
ERPの導入をご検討中の方向けに、無料相談会も実施しているため、ぜひお気軽にお問合せください。