製造業に求められている、平準化。
しかし、「平準化とは何か、平準化が求められている理由とは?」と気になる方も多いでしょう。
今回は、製造業における平準化の基礎知識を解説します。
なかなか生産性が向上しないとお悩みの方にとって、ヒントとなる内容が隠れているはずです。
生産計画の平準化が求められる理由とは?
生産計画の平準化が求められる理由をまとめると、おおきく下記3つにわかれます。
- 人件費の削減
- 品切れ・納期遅れリスク回避
- 製品の価格調整
各理由の詳細を見ながら、平準化の必要性を改めて考え、自社に適した対策を練っていきましょう。
理由1.生産計画の平準化は人件費の無駄を削減可能
生産計画の平準化が求められる1つ目の理由は、人件費の削減です。
人件費削減と聞き「基本的な人員数は決めていて、繁忙期だけ派遣で賄っているから人件費の無駄はない」と考える方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、経験豊富な派遣スタッフを採用できたとしても、工場のシステムや動きに慣れやすいように育成する必要があります。
育成に時間を費やせば、生産性は落ちこんでしまいます。
つまり、繁忙期限定での人員増加は人件費が増える一方で生産性低下の可能性があるということ。
需要量に応じた人員増加は、生産計画に大幅な狂いをもたらす可能性も考えられます。
生産計画の平準化し、人件費削減を達成できれば、製品の質を保ちながらの低価格化も可能です。
年間を通したフラットな人件費を意識して、現状を今一度確認してみましょう。
理由2.生産計画の平準化で品切れ・納期遅れのリスクを回避
生産計画の平準化が求められる2つ目の理由は、品切れ・納期遅れリスク回避(在庫の過不足をなくす)ためです。
そもそも生産計画とは、需要変動を加味して考える計画のはず。
需要に合わせて生産量を変えていては、必要な時に十分な製品を確保できず、納品先の信頼を大きく損ねてしまいます。
同時に、需要の減少を見越せずに在庫過多に陥り、操業度を保てなくなるリスクもあります。
一定の人材を確保できるのであれば、需要に対して必要な製品数をあらかじめ生産しておく見込み生産を実施しましょう。
生産量が安定するだけでなく、現場スタッフの負担も一定に保ちやすくなります。
理由3.結果的に高質な製品を低価格で提供
生産性の平準化を求められる3つ目の理由は、製品価格にあります。
ほとんどのエンドユーザーが求めるものは、低価格で高品質な製品です。
ただし、自社が赤字経営になっては元も子もありません。
年間計画をしっかりと練り、年間を通して平準的な生産を続けると、コストダウン・品質保持につながります。
生産計画の平準化の必要性を理解し、平準化の基礎知識を身につけましょう。
「生産計画の平準化」とは?基礎知識と考え方を解説
平準化とよく間違われる「標準化」ですが、実は意味が異なります。
生産計画の平準化について、正しい知識を身に付けて的確な取り組みを実施できるようにしておきましょう。
正しい知識は、社内の意識統一にも役立ちます。
【基礎知識】生産における平準化とは生産量を均等にする手法
よく間違えられる、平準化と標準化。
具体的には何が違うのでしょうか。
それぞれの言葉の意味を比較してみます。
平準化 | 生産量及び人材量を、年間通して平均的にすること。需要に合わせて生産せず、見込み生産を行いながら生産量を適正化する。 |
標準化 | ISO基準のような、世界的な基準を取得すること。一定以上の品質を証明でき、信頼獲得につながる。 |
意味を履き違えたまま取り組んだ場合、効率が落ちるだけでなく、不必要な経費が必要になるリスクもあります。
社内に対して説明をする際は、口頭で説明するだけでなく書面でも伝えるように心がけてください。
書面の作成には手間を要しますが、説明後に言葉を検索しやすくなり、理解が深まりやすくなります。
考え方1.生産能力に応じて雇用増加や勤務体制を見直す
生産計画の平準化に取り組む前に、一度考え方をリセットしましょう。
「生産量は需要に合わせて変える」という考え方のままでは、平準化に取り組むのは困難です。
見込み生産をするにあたり、どれくらいの人材が必要か・交代制で稼働率をアップする必要があるかなどの検討時は、柔軟な思考が大切になります。
人材や勤務体制見直し時、生産量を検討する際には過去のデータが必要です。
それでは、過去のデータとは何か見ていきましょう。
考え方2.過去のデータからピーク・オフピークの需要を予測
過去のデータからは、いつ・どのような製品が・どれくらい生産されていたかがわかります。
たとえば、工場がフル稼働している状態で生産できる上限を10としましょう。
4~5月はAという製品を5、Bという製品を3製造しましたが、稼働状況には余裕があります。
ところが、6月はAを5・Bを3に加えてCという製品を、6製造しなければいけません。
人材確保に残業増加と現場スタッフの負担が増え、人件費も多く必要な状態です。
しかし、前年も同じ状態になっていた場合、繁忙期の予測と見込み生産が可能になります。
4~5月はAを3、Bを5、Cを2製造しておけば無理な稼働は避けられます。
つまり過去のデータを生産計画に活かせば平準化が可能になるということ。
納期遅れや欠品の心配が少なくなり、同時に信頼を築くことができるでしょう。
【実例】トヨタのジャスト・イン・タイムは生産計画の平準化が前提
必要なものを・必要な時に・必要なだけ供給するのが、ジャスト・イン・タイムです。
トヨタ自動車株式会社が開発した生産管理システムで、生産効率向上・品質確保が可能になります。
本章では、ジャスト・イン・タイムを取り入れるためのステップと押さえておくべきポイントを解説します。
生産計画平準化の第一歩は、一カ月の生産量固定
トヨタのジャスト・イン・タイムは、需要が見込める製品に対して速やかに納入するための取り組みです。
注文数が少ない月であっても、工場で生産する製品の量は一定。
完成品在庫が常にある状態になりますが、需要の波に対する防波堤としての役割を果たし、速やかな納入を可能にしています。
一カ月の生産量固定は、安定した供給のみに留まらず、品質の向上にもつながります。
製造現場スタッフの負担が平均的になり、より働きやすい環境を構築できるためです。
トヨタのジャスト・イン・タイムを取り入れるためには、一カ月の生産量固定は必須と言えます。
一般的な企業は部分的な平準化から
トヨタの全製品に対する平準化は取り組みにかけた時間の長さによるところが大きいのも事実です。
平準化が必要だからといえど、すぐに全ての製品に対して実施できるわけではありません。
そこでポイントとなるのが、部分的な平準化です。
製造している製品の中で、最も多く製造している製品に対して平準化を実施します。
メリットは、抱える完成品在庫が限られて保管場所の確保が容易かつ低コストで済むこと。
多く製造している製品であれば、在庫がさばききれないリスクも少なく、平準化しやすいでしょう。
部分的な平準化であっても、作業効率と生産性の向上に大きく貢献できます。
ポイントは一定期間ごとの生産計画見直し
生産計画の平準化成功のためには、昨年の製造実績と今年の製造予想が必要不可欠です。
昨年の製造実績と今年の製造予想を照らし合わせ、一カ月ごとの製造予想がわかれば製造量の平準化がスムーズになります。
しかし需要の変動が激しい製品に関しては、平準化した生産計画が当てはまらないケースも存在します。
そこで、三カ月ごとの実績数を生産計画に盛り込んで都度修正を加えます。
1月 | 2月 | 3月 | |
昨年の製造実績 | 90 | 60 | 120 |
今年の製造実績 | 150 | 66 |
90 |
上記のような場合であれば、生産計画上は一カ月に90個ずつ製造する予定ですが、実際には予想を上回る量の需要が発生しています。
需要に変動に対して製造量の増加が考えられるため、4月以降は今年の実績を踏まえた製造量に変更してみましょう。
すると4月以降の生産量は102個(1~3月製造実績平均)に固定しておけば十分な供給ができる見込みとなります。
一般的な規模の企業であれば、部分的かつフレキシブルに対応できる方法からスタートすると、平準化のスムーズな取り入れが可能です。
生産計画の平準化を進めるリスクと回避方法とは?
生産計画の平準化に取り組むにあたり、考えられるリスクは以下2つあります。
- スタッフの力量差による失敗のリスク
- 平準化に固執しすぎて目的を見誤ってしまうリスク
本章では、生産計画の平準化におけるリスクと回避方法を解説します。
スタッフの力量に差があるほど平準化は困難
各スタッフが人間である以上、時間内にこなせる業務量には差があります。
たとえば、パーツを1時間で15個完成できるAさんと10個完成できるBさんが同じラインにいては、仕事量に偏りができてしまいます。
受け取る報酬が同じであれば、より多くの仕事をこなせるAさんの不満がつのり、大切な戦力を失う結果になる可能性も。
スタッフの力量と適正の把握に尽力し、スタッフの業務をならすのがポイントです。
最終目的は「平準化」ではなく「生産性向上」
平準化が求められているのは確かですが、誤解してはいけません。
求められているのは「平準化」ではなく「平準化による生産性・製品の品質向上」です。
つまり、生産性・製品品質の向上が可能なら平準化にこだわる必要がないということ。
経営陣で検討し、平準化が現実的でないと判断したのであれば、平準化を無理に取り入れなくても問題はありません。
平準化に変わる方法を話し合い、自社にとってより効率的に生産性・製品品質の向上ができる方法を模索しましょう。
生産計画の平準化が困難な場合は、システムの見直しを検討すべき
生産計画の平準化に変わる方法とは、既存のシステムの見直しです。
たとえば、ERPソフトウェア。
ERPとは、総務課・営業課・現場の情報などを一元管理するためのソフトウェアであり、情報が整理整頓されて業務効率・生産性が向上します。
生産計画の平準化が出来るに越したことはありませんが、固執しすぎず柔軟な発想をもって生産性向上を目指しましょう。
ERPについて詳しく知りたい方は下記の記事で丁寧に解説しておりますので、ぜひご覧ください。
生産計画の平準化ができれば多様化する需要にも対応可能
デジタル化の進歩に伴い、ユーザーの需要は多様化の一途をたどっています。
生産計画の平準化への取り組みができていれば、よりフレキシブルな供給体制の構築が可能です。
本記事でお伝えした平準化のポイントは以下です。
- 平準化の正確な意味を理解・把握する
- トヨタのジャスト・イン・タイムを目指すなら部分的な平準化から
- スタッフの力量に合わせて取り組み、現実的でないと判断したなら深追いしない
平準化が困難な際は、ぜひERPの導入をご検討ください。
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ERP導入により生産性向上・業務効率化を達成したお客様の声を下記にまとめましたので、ぜひ一度ご覧ください。