製造業のAI活用例!事例から学ぶメリット・デメリット

近年、製造業でのAI活用が注目されています。ただ、AIの用途が広いだけに、どのようなシーンで活用できるのか、どのようなメリットがあるのかと疑問に思うでしょう。

本記事では、製造業でのAI活用例をもとに、メリット・デメリットを紹介します。AIの導入をお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

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製造業でAIが求められる理由

AIとは、人工知能と呼ばれるデジタル技術の1つです。膨大な学習データでパターンを学習させることで、高度な分析や提案をしてくれます。

利便性の高さから、近年の製造業では以下の課題解決を目的に導入が進められています。

  • 深刻化する人手不足
  • 従業員の業務負担が増加
  • 従業員の高齢化に伴う技術継承の問題
  • グローバル化とそれに伴う競争の激化

たとえば、AIを使えば業務の一部またはほとんどを自動化でき、従業員の負担軽減につながります。また、過去のデータを自動で学習・分析し、より精度の高い生産計画や需要予測を提案します。

導入企業はコストの削減や生産性の向上、ひいては競争力の強化を実現できるでしょう。すでに中小企業の間でもAIの導入が進められており、大きな導入効果をもたらしています。

製造業でAI技術を活用できる場面

AIの用途は、実に多岐にわたります。細かなものまで挙げれば、文書の作成やデータ整理にも活用できます。

ここでは、数ある用途の中で、とりわけ大きな導入効果が期待できるAIの活用場面を紹介します。製造業でAIを活用できる主な場面は、以下の3つです。

  • 需要予測
  • 機械・設備の予知保全
  • 部品の品質管理

それぞれ順に紹介します。

活用場面1.需要予測

製造業の需要予測では、過去のデータをもとに将来の売上や受注数、在庫量を算出します。将来の予測を算出する際にAIを活用することで、予測精度の向上や作業の効率化が可能です。

たとえば、過去の販売データや市場のトレンド、季節変動などの膨大なデータをAIに機械学習されると、定量的な観点から将来の需要を予測できます。また、人手で予測結果の細かなズレを修正すれば、より精度の高い結果を少ない工数で算出できるでしょう。

正確に需要を予測できれば、生産の過不足を回避しやすくなり、コスト削減や供給チェーンの最適化が期待できます。なお、AIを活用した予測の算出は、比較的短時間で遂行できるため、リアルタイムで市場を監視でき、突発的な需要の変化も考慮した予測を算出しやすいです。

もちろん、「人×AI」での作業にはなりますが、従来よりも効率良く高い精度の予測が立てられます。

活用場面2.機械・設備の予知保全

機械・設備のトラブルはダウンタイムや納期遅延など、製造業にとって大きなリスクと言えます。

従来から、機械・設備の稼働状況を分析し、未然に修理やメンテナンスを実施する「予防保全」は実施されていました。しかし、AIを活用することでさらに予測精度の高い「予知保全」を実現できます。

具体的には、機械・設備に取り付けられたIoTセンサーからリアルタイムでデータを収集し、AIにて故障やトラブルの予兆を分析予測する仕組みです。異常を検知した際に設備の問題箇所を修繕すれば、突発的な機械の停止やそれによる生産ラインのダウンタイムを縮小できます。

また、AIはデータに基づく定量的な分析をするため、副次的な導入効果として、保全業務の属人化解消も期待できます。従来の勘や経験による予防保全を脱却でき、従業員の育成にも役立ちます。

活用場面3.部品の品質管理

ものづくり産業において欠かせない品質管理も、AIの活用で効率化・最適化が可能です。近年多くの製造業で導入されているのが、AIによる画像認識技術を活用したカメラセンサーです。

これは、部品や製品をカメラセンサーで撮影すると、細微な欠陥や不要箇所があった場合に通知してくれるというものです。機械学習させるデータの量や質によって精度は異なりますが、比較的高い精度で不良品を検知できます。

これにより、品質の一貫性を確保できるだけでなく、リワークや廃棄コストを削減できます。また、一般的にはすべての部品・製品を人手で目視検査するところ、AIの活用により、不良と判断されたものから良品を取り除く人手の再検査のみで、品質を確保できている事例もあります。

上記のプロセスでは、従来よりも大幅に作業時間を短縮できるため、従業員の負担軽減や人件費の削減が期待できるでしょう。

製造業でAIを活用するメリット

前述した製造業でのAIの活用例を踏まえると、導入によって主に以下のメリットが期待できます。

  • 生産性の向上
  • 成果物の品質向上
  • 技術継承の推進

もちろん、上記以外にも細かなメリットがあるため、それらを補足しつつ製造業でのAIの活用メリットを紹介します。

メリット1.AIの活用による生産性の向上

製造業がAIを活用する一番のメリットは、生産性の向上です。AIの得意分野である機械学習・分析をうまく活用すれば、従来よりも少ない工数で業務を遂行できます。

特に近年の製造業では人手不足が深刻化しているため、AIによる生産性の向上は課題解決の足掛かりになるでしょう。また、担当者は空いた時間で別の業務にも注力でき、社内の生産性向上も期待できます。

メリット2.成果物の品質向上

AIを活用することで、製造業におけるあらゆる成果物の品質を向上しやすくなります。ここでいう成果物とは、製品のみならず前述した需要予測や機械保全といった業務の成果も含まれます。

「AI × 人間」のダブル体制で業務に取り組むことで、膨大なデータ分析やパターン認識を効率よく行い、なおかつ人間がその結果を精査するプロセスを実現できます。たとえば、需要予測を行う際、AIが過去のデータや市場動向を基に正確な予測を立て、人間がその予測結果を調節し最終的な判断を下します。

膨大なデータ分析は予測精度の向上につながりますし、最終結果を人間が調節することでAIによる誤った予測を回避できます。このように、AIと人間の協力体制により、単独作業よりも高品質な成果物を効率良く生み出せるでしょう。

メリット3.技術継承の推進

AIを活用することで、これまで可視化が難しかった熟練技術者の技能やノウハウをデータ化でき、新人従業員の育成を推進しやすくなります。技術継承の難しさは、主に、熟練技術者が持つ技能・ノウハウを可視化しづらい点と、新人従業員にわかりやすい形で共有しづらい点の2つです。

AIを活用する場合、熟練技術者が培ってきた経験やスキルなどを文書として学習させます。それをAIが分析・整理することで、これまで暗黙知となっていた技術を可視化できます。

また、熟練技術者の技能やノウハウが標準化されることで、新人技術者は業務でつまずいた際に必要な情報を必要な形で取得しやすくなります。これにより、従来の技術継承の課題が解決され、迅速かつ正確に技術を継承できるでしょう。

製造業でAIを活用するデメリット

メリットの多いAIですが、以下の点には注意が必要です。

  • AIの導入・活用にコストがかかる
  • AIをうまく活用できない恐れがある

AIの導入をお考えの方は、上記への対策を講じましょう。

デメリット1.AIの導入・活用にコストがかかる

製造業でAIを導入する際には、コストがかかります。

まず初期投資として、AIを導入するためのシステム開発や機器の購入が必要です。また、AI技術を現場に適用するためのカスタマイズやソフトウェア開発も必要で、これらにも費用がかかります。

導入後もシステム保守や運用のための費用が継続的に発生します。もちろん、導入箇所やシステムの規模によっても異なりますが、比較的大きな資金が必要です。

デメリット2.AIをうまく活用できない恐れがある

AIは製造業において大きな可能性を秘めていますが、運用の難しさも懸念されています。AIは比較的新しい技術であり、公開されている情報が限定的です。

そのため、どのように導入・運用すればよいのかが分からない企業や、導入効果を把握しきれていない企業も多い状態です。また、AIを専門的に扱える人材も少ないため、導入後にうまく活用しきれない恐れがあります。

この問題を解決するには、AI技術を徐々に習得し、長期的な視点で運用していくことが重要です。まずは小規模なプロジェクトから始め、段階的に活用範囲を広げていくことで、リスクを軽減しながらAIスキルを高められます。また、必要に応じてAIベンダーやコンサルタントなどのサポートを得ることで、導入・運用のハードルを下げられるでしょう。

製造業でAIを導入する際の流れ

経済産業省が発表した「AI導入ガイドブック」では、製造業でAIを導入する流れを以下のように示しています。

  1. AI導入プロジェクトの設計
  2. AIモデルの構築と検証
  3. AIモデルの実務導入・運用

まずは、AI導入プロジェクトの構想や予算を設定して全体像を描きます。この段階でAIの活用範囲を設定し、機械学習に必要なデータの収集を開始します。

次に実施するのが、AIモデルの構築と本格導入に向けた検証です。AIモデルとは、AIのシステムが学習し、タスクを遂行するための数学的なアルゴリズムやフレームワークのことです。

よりわかりやすく言えば、たくさんのデータを見て賢くなるコンピューターの「脳」のようなものです。このAIモデルが実用レベルに達するまで、検証・改善を繰り返します。

AIモデルが完成したら、実際に業務へ活用し運用を開始します。この段階ではシステムのみならず、業務プロセスでも多くの課題が発生するでしょう。

現場の混乱を避けるためにも、PDCAを高速で回し現場への定着を目指してください。

なお、製造業でAIを導入する際の流れを詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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製造業のAI活用事例3選

すでに、一部の先行企業ではAIの活用が進められています。ここでは、以下3つの用途でAIを導入した製造業の事例を紹介します。

  • 需要予測へのAI活用事例
  • 設備保全へのAI活用事例
  • 品質管理へのAI活用事例

プロジェクトの進め方等も解説していますので、導入をお考えの方はぜひ参考にしてみてください。

活用事例1.城南電機工業株式会社|AIによる需要予測

城南電機工業株式会社は、自動車照明機器や樹脂成形を製造する企業です。同社では、発注内示数と納入数に差異があり、余剰在庫や欠品リスクが課題でした。

元々AIへの関心が高かった担当者を筆頭に、少人数でAI導入プロジェクトを推進します。社内の課題整理・データ準備はチームメンバーで実施し、AIモデルの構築・検証のみ外部へ委託しました。

「小さなプロジェクトを迅速に推進する」ことに重きを置いていたため、すでにデータが蓄積された業務領域に絞ってプロジェクトの方向性を決定します。

また、実装段階では、現状の業務プロセスを据え置きつつ、並列でAIを導入しました。AIの予測精度を見定めながら本格的に活用したことで、安心感を持って業務プロセスへ組み込めたようです。

最終的には、需要予測の精度が大きく改善され、誤差率52%から24%にまで抑えられました。また、予測精度の改善により、滞留在庫の削減や人件費の削減効果も得られました。

活用事例2.株式会社みつわポンプ製作所|設備の故障をAIで予測

株式会社みつわポンプ製作所は、環境関連用スラリーポンプを製造する企業です。製造したポンプを売り切るビジネスモデルだったため、顧客との継続的な関係に発展しない点が課題でした。

AIによるポンプ故障の予知保全に目をつけ、経営者主導でプロジェクトを推進します。しかし、当初はポンプ故障に関する既存データがなく、AIに学習させるデータの収集に苦戦しました。

同社は、社内に擬似故障環境を構築し、新たに幅広いデータを収集します。業務担当者も加わり、故障との関連がない外れ値を除去するなどし、データの精度を向上させました。

その後、AIモデルの構築・検証を経て、顧客向けポンプへの実装に至ります。搭載したAIによる予知保全は、特定の環境下ではあるものの正解率9割を誇りました。

現在では実証した故障判定資料を元に、多くの顧客へAI予知保全を訴求しています。

活用事例3.墨田加工株式会社|AIにより不良品を検知

株式会社ヨシズミプレスは、電池部品や金属文具を製造する企業です。同社は実証実験として、直径5mm程度のレーザーダイオード部品の検品作業に、AIを活用する取り組みを実施しました。

当初は、月間50万個もの製品を6人で10日ほど掛け目視で検品していました。また、製品サイズが小さく、なおかつ品質管理が厳しいこともあり、従業員の負担になっていたようです。

そこで、AIセンサーを搭載した既存の判定機を導入します。同社では、AIが良品と判定した製品はそのまま出荷し、不良品と判定されたものを再度目視にて検品するプロセスを取りました。

結果、検品に係る作業時間を約40%、目視での検品時間は約95%の削減に成功します。また、月間の検品作業時間を171時間削減でき、従業員の負担軽減にもつながっています。

製造業のAI活用事例を参考にDXを推進しよう

本記事では、製造業でのAI活用例と導入するメリット・デメリットを紹介しました。ひとえに製造業でAIを導入するといっても、活用シーンは多岐にわたります。

実際にプロジェクトを発足する際は、自社の課題や状況にあった領域でAIを導入してみてください。

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