選定するERPによって、プロジェクトの成否が分かれると言っても過言ではありません。仮に自社要件との適合度が低ければ、多額の追加コストがかかるばかりか、当初の目的を達成できない恐れもあります。
本記事では、自社に最適なERPの選び方を解説します。事前準備やプロジェクトの失敗を防ぐポイントもまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
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ERPを選ぶ前にすべき4つの準備
ERP選びで失敗しないためには、比較する前に以下の準備をしておくのがおすすめです。
- 自社の課題と要件をまとめる
- ERPの適用範囲を設定する
- ERP導入〜運用後の予算を設定する
- 権限を整理しチームメンバーに割り当てる
それぞれ順に紹介します。
準備1.自社の課題と要件をまとめる
ERP導入でもっとも重要なのが、「何のためにERPを導入し、どのような課題解決を目指すのか?」などの導入目的を決めることです。目的がはっきりしていると、必然的にERPへ求める機能・要件が定まります。
例えば、「調達〜配送までのサプライチェーン全体を可視化したい」という目的があれば、在庫・購買・生産・配送管理以外にも、サプライヤー関係管理や需要計画に対応した機能が必要です。実際は、さらに厳密に機能要件をまとめますが、この一例だけでも膨大なERPパッケージから不要なものを除外できるでしょう。
ERPの比較基準を設定できれば、より自社のニーズにあった製品を選定できる可能性が高まります。ぜひ、自社業務を棚卸ししてERPの導入目的を明確にしてみてください。
準備2.ERPの適用範囲を設定する
先ほどの内容に付随して、ERPの適用範囲も明らかにする必要があります。ひとえにERPといっても、パッケージによって対象の企業規模・業務領域が大きく異なるためです。
例えば、財務・人材管理などのバックオフィス業務に特化したERPもあれば、基幹業務全体をカバーする大規模な製品もあります。仮に、ERPの対象範囲と自社が最適化したい範囲にズレがあると、機能不足で導入目的を達成できなかったり、機能過多でコストムダにがかかったりします。
導入目的を高いコストパフォーマンスで達成するためにも、ERPを適用させる業務領域を明確にしましょう。
準備3.ERP導入〜運用後の予算を設定する
ERPのコストと言えば、システム自体の費用や機能開発コストをイメージしがちです。しかし、実際には導入前の要件定義・システム選定や、運用後の保守・点検にもコストがかかります。
これら細かな費用やERPのランニングコストを予算として管理しなければ、思わぬ出費で財務を圧迫する恐れがあります。また、途中でプロジェクトが停止すると投資の回収が困難なため、ERP導入〜運用後の予算を細かく設定し管理しましょう。
なお、ERP導入プロジェクトには、お金のみならず多くの時間・人員も必要です。経営資源を効果的に運用するためにも、人件費や所用日数等も含めた予算設定が大切です。
準備4.権限を整理しチームメンバーに割り当てる
ERP導入プロジェクトのメンバー編成では、それぞれの役割・権限を明確にする必要があります。役割と権限を割り当てれば、プロジェクトの各段階で誰が何をすべきかが明確になります。
結果、プロジェクトの停滞や遅延を回避しやすく、なおかつ成果物の品質の確保が可能です。一般的なERP導入プロジェクトで必要な役割は以下のとおりです。
- プロジェクトマネージャー:ERP プロジェクトの全体的な管理を担当
- ビジネスアナリスト:組織のビジネス要件を理解し、それを ERPの機能に適用させる責任
- 技術チーム :ERP プロジェクトの技術的な側面を担当
- エンドユーザートレーナー:従業員にERPの使用方法を教育
特にERP導入プロジェクトは、関係範囲が広いため複雑化しやすい傾向があります。メンバーたちが途中で方向性を見失わないよう、しっかりと役割を設定しましょう。
自社にあったERPの選び方6選
自社にあったERPを選ぶ際は、以下6つの観点から比較・検討しましょう。
- 標準機能と自社要件の適合度の高さ
- ERPの柔軟性の高さ
- ERPの提供方法が適切か
- サポートサービスが充実しているか
- セキュリティレベルの高さ
- 同業種での導入実績が豊富か
実際にERPを比較する際は、まず、各製品を上記の項目ごとにスコア化するのが効果的です。定量的に比較できれば、膨大な数の製品から自社にあったものを絞り込めます。その後、判断基準の粒度を高めていけば、より適合度の高いERPを見つけられます。
本章では、上述した自社にあったERPの選び方を紹介します。
選び方1.標準機能と自社要件の適合度の高さ
1つ目の判断基準は、ERPの標準機能と自社要件の適合度の高さです。
この適合度が高ければ高いほど、自社が目指す目的を実現しやすくなります。また、標準機能と自社要件の差異が小さなければ、その分、機能開発・カスタマイズのコストを抑えられます。
特に、ERPの仕様にない機能を追加で開発すると、多額のコストがかかるため、適合度が高いERPを探すのが賢明です。なお、一部のERPでは、標準機能と別にオプション機能を用意している場合があります。
したがって、製品選定ではオプション機能の有無やその内容も併せて確認しましょう。
選び方2.ERPの柔軟性の高さ
先ほどの内容に付随して、ERPの柔軟性も重要な判断基準です。基本的に、ERPの仕様が導入企業のニーズに100%マッチすることはありません。
もちろん開発側はこれを考慮し、要件にあわえてカスタマイズできるようにERPを設計しています。ただ、このカスタマイズの可能領域は、製品ごとに異なるため、前述した適合度とあわせて確認してください。
具体的な確認すべきポイントは、以下のとおりです。
- 標準のERPをどの程度カスタマイズできるのか
- 外部ソリューションとの対応が可能か
- 新規機能を開発した場合の費用
なお、柔軟性の高いERPを選定できれば、ビジネス環境の変化や法改正への対応力を高められます。しかし、カスタマイズには費用がかかるうえに、システム構造の複雑化を招くなどのデメリットもあります。
したがって、あくまでも標準機能>カスタマイズの優先順位を意識しましょう。
選び方3.ERPの提供方法が適切か
ERPの提供方法には、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。
オンプレミス型とは、自社が管理するサーバー・ハードウェアにERPを構築し、保守・整備も自社で内製化する形態のことです。一方、クラウド型はベンダー企業が管理するEPRを、定額制で利用するライセンス提供の形態です。
両形態の特徴を、以下の表にまとめています。
オンプレミス型 | クラウド型 | |
ERPの導入先 | 自社のサーバー等 | ベンダー企業のサーバー |
利用インフラ | 社内ネットワーク | インターベット |
システム保守 | 自社 | ベンダー企業 |
イニシャルコスト | 高い | 安い |
ランニングコスト | 安い | 普通 |
セキュリティ依存 | 自社に依存 | ベンダー企業に依存 |
カスタマイズ性 | 高い | 低い |
オンプレミス型のEPRは、システムの運用保守を内製化できる企業にとって大きなメリットがあります。システムを自由にカスタマイズできるうえに、保守・メンテナンスなどのランニングコストを削減しやすいためです。
ただし、導入するERPを購入したり、サーバー・インフラ整備が必要だったりと、イニシャルコストが高額になる傾向があります。
クラウド型のERPは、ベンダー企業が管理するシステムを利用するため、導入企業の負担が少なめです。また、ERPを購入する必要がないため、オンプレミス型よりもイニシャルコストを抑えられます。
しかし、システムの保守やセキュリティ対策はベンダー企業に依存するため、信用できる企業を選ぶことが重要です。
選び方4.サポートサービスが充実しているか
クラウド型のERPを選ぶ場合は、ベンダー企業によるサポートサービスの充実度も重要な判断基準です。特に導入初期は、様々なトラブルが発生するため、サポートサービスがあると安心です。
サービス内容はベンダー企業によって異なりますが、一般的には以下のサポートを受けられます。
- インストール・セットアップ支援
- トレーニング・教育支援
- システムトラブル等の技術サポート
- ERPのカスタマイズサービス
- コンサルティングサービス
- ERPの保守サービス
たとえ同じERPを選択しても、ベンダー企業によってサポートサービスの内容・品質が異なります。自社で導入を進めることに不安を感じる場合は、サポートが手厚いベンダー企業を選択しましょう。
選び方5.セキュリティレベルの高さ
ERPを選ぶ際には、セキュリティレベルの高さにも着目してください。ERPでは自社の内部情報や顧客情報など秘匿性の高いデータを管理するため、外部からの攻撃で情報漏洩があると、企業の信用に関わります。
サイバー攻撃と聞くとどこか他人事のようにも思いますが、2022年に国内で確認できている大規模攻撃だけでも、5千件以上あります。小規模な攻撃や確認できていないものも含めると、さらに発生件数が多いでしょう。
参照:第2部 情報通信分野の現状と課題|総務省
そのため、「セキュリティに強いERPなのか?」、クラウド型の場合「ベンダー企業で定期的にバージョンアップしているのか?」を確認してください。
選び方6.同業種での導入実績が豊富か
他の判断基準に比べると重要度は劣りますが、同様業種での導入実績が豊富かどうかも大切です。同業種での導入実績が多いということは、過去の事例をもとにその業種にあったシステムへとバージョンアップされている可能性が高いです。
特に、製造業特化やバックオフィス業務に特化と謳う製品は、業種・業務特有の商習慣にも対応している傾向があります。もちろん、最終的には機能要件との適合度やカスタマイズ性を重視しますが、候補となるERPを絞り込む際には導入実績の豊富さを意識してみてください。
ERP選び・導入で失敗しないための3つのポイント
これまで紹介したERP選びのポイントを意識しても、失敗する可能性があるのがERP導入です。一般的なソリューションよりも大規模かつ複雑なため、選定・導入の難易度が高いのです。
ERP導入プロジェクトの失敗率を少しでも下げるには、以下のポイントを意識しましょう。
- 経営層主導でプロジェクトを推進
- ERP導入に精通した人材をプロジェクトに起用
- 先行企業の事例を分析
上記のポイントを詳しく紹介するため、ERPの導入をお考えの方は参考にしてみてください。
ERP導入のよくある失敗事例と対応策については、以下の記事で詳しく紹介しています。プロジェクトの成功率を少しでも高めたい方は、ぜひご覧ください。
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ポイント1.経営層主導でプロジェクトを推進
ERP導入プロジェクトの失敗を避けるには、経営者の積極的な関与が欠かせません。導入したERPを日常的に触るのは従業員ですが、本来の目的は、課題の解決や経営の効率化です。
導入目的の当事者である経営層がプロジェクトを主導しなければ、現場よりのシステムが構築される恐れがあります。プロジェクトの目的を遂行するには、経営層主導の体制整備が必要です。
なお、経営者は会社のビジョンと戦略的目標をもっとも理解しているため、積極的に関与することでプロジェクトの方向性を示せます。また、導入過程では重要な意思決定を迫られることも多いため、判断の裁量がある経営者が主導する方がスピード感を持って推進できるでしょう。
プロジェクトの失敗を避けつつ、成果の最大化を図るためにも、経営層主体で推進することが大切です。
ポイント2.ERP導入に精通した人材を起用
ERPの選定・導入で失敗しないためには、過去に導入プロジェクトを経験した人材を起用するのが効果的です。こうした人材は失敗・成功シナリオを把握しているため、プロジェクトのあらゆる場面で大きな力を発揮するでしょう。
ただし、ERP導入の知見がある人材の確保は、競争率が高く容易ではありません。新たに人材を確保しようにも、思うように採用できないのが実情です。
したがって、自社での人材調達が難しい場合は、コンサルタントやベンダー企業など、外部機関への依頼を検討してみてください。
ポイント3.先行企業の事例を分析
先ほどの内容に付随して、プロジェクトの失敗を避けるには先行企業の事例を分析するのがおすすめです。近年では、大企業のみならず中堅・中小企業でのERP導入も盛んです。
すでに多くの事例が公開されているため、それらを分析して対応策の立案をすることでプロジェクトの成功率を高められます。ぜひ、自社と同業種のERP導入事例を参考にしてみてください。
正しく比較して自社に最適なERPを選定しよう
本記事では、自社の要件にあったERPの選び方を紹介しました。
ERPは対象範囲が広域なうえに、自社との適合度でプロジェクトの成否を左右します。誤った製品を選定すると、大きな損失につながる恐れもあるため、ぜひ本記事で紹介いたポイントを押さえて適切なシステムを選定してください。
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