近年、ERP導入に取り組む企業が増えている一方で、失敗に終わるケースも増加しています。ERPは、企業経営の根幹を支えるシステムなだけに、従来のものよりも導入が難しいのです。
導入のご検討中の方は、「何が原因で失敗するのか?」「どのように取り組めば良いのか?」とお悩みでしょう。
本記事では、よくあるERP導入の失敗例とその原因を解説します。後半では、押さえておくべき成功のポイントも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
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ERP(統合基幹業務システム)とは?
ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の略で、「企業資源計画」という概念を指します。また近年では、企業資源計画を実現するための「統合基幹業務システム」を表す用語として用いられています。
ERP(=統合基幹業務システム)は、企業の経営資源を一箇所に集約し、効果的に活用するためのシステムです。業務単位でデータを活用していた従来の基幹システムと異なり、社内のあらゆるデータを一元管理する点が特徴です。
たとえば、販売・生産・在庫・会計・人事をERPで連携し、各部門から他部門の情報を参照できる状態を目指します。データベースへアクセスすれば、必要な情報を瞬時に把握でき、業務を効率化できます。また、経営陣からすると、自社の現状を素早く把握できるため、意思決定の円滑化が期待できます。
なお、ERPの特徴やシステムの種類、導入の流れについて、以下の記事にまとめました。改めてERPの概要をおさらいしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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ERP導入の成功とは?
ERPの失敗例を紹介する前に、「何を持って成功とするのか?」を明確にしておかなければなりません。ERP導入の成功とは、 以下3つの状態になることを指します。
- ERP導入後に部門を横断した体制が整備されている
- ERPの活用でビジョンを実現できている
- ERP導入プロジェクトのQCDを達成している
仮に、上記のうち1つでも欠けていれば、成功とは言えません。失敗を避けることはもちろん、ERP導入の成果を最大化するためにも、成功の定義をおさらいしていきましょう。
ERP導入後に部門を横断した体制が整備されている
ERPを導入するからには、複数の部門を横断したデータ管理体制が構築されなければなりません。具体的には、複数部門のデータがリアルタイムで連携・活用され、なおかつ経営陣が俯瞰した際に自社の現状を即座に把握できる状態です。
従来の基幹システムでは、販売・生産・会計などの部門ごとにシステムが分かれており、以下のような問題を引き起こしていました。
- 二重入力など部門間での重複業務が発生
- データの入力頻度が高く、ヒューマンエラーが起こりやすい
- 社内の状況を把握するのに多くの時間がかかる
- 度重なる個別最適化により業務がブラックボックス化
ERPは部門間の連携を強め、上記のような問題を解決するためのソリューションです。そのため、ERP導入後に複数の部門が高度に連携されていなければ、「プロジェクトが成功した」とは言えません。
ERPの活用でビジョンを実現できている
ERPに限らずシステムを導入するからには、何らかのビジョン(達成目標)が必ず存在します。ビジョンは、いわばERP導入のゴールに相当するため、その達成度合いでプロジェクトの成否を判断できます。
前述した部門間連携を含め、ERP導入のビジョンは以下のものがあげられます。
- 的確かつ迅速な経営判断の実現
- 部門間の重複業務を解消
- 海外拠点への統制を強化
- レガシーシステムの刷新
なお、企画段階でビジョンを設定する際は、達成度合いを評価するためのKPIが不可欠です。ビジョンに対してどの程度の進捗があるかを測定するためにも、達成目標にあった評価指数を設定してください。
ERP導入プロジェクトのQCDを達成している
プロジェクトとして進める以上、QCDの達成も不可欠です。QCDとは、以下3つからなる用語です。
- Q(Quality):品質
- C(Cost):コスト
- D(Delivery):納期
仮に、ERP導入によってQ(多くの業務課題を解決)できたとしても、C(コスト)やD(時間)が超過していては「成功した」とは言えません。そのため、ERP導入の責任者は定期的にQCDを見直し、プロジェクトを正しい方向へと導くことが大切です。
よくある!ERP導入の失敗例とその原因
近年多くの企業がERP導入に取り組む一方で、以下のような失敗を引き起こすケースが多くみられます。
- 現場に寄り添った結果、ERP導入目標を達成できない
- ERPと業務のミスマッチ
- 過度な機能開発によるQCDの未達
- ERPの管理データをうまく活用できない
ここでは、上記の失敗例とその発生原因を解説します。
失敗例1.現場に寄り添った結果、ERP導入目標を達成できない
1つ目の失敗例は、現場の要望に寄り添った結果、ERPの導入目標を達成できないケースです。もちろん、ERPを導入する際は現場の意見に耳を傾け、業務課題や要望を収集することが大切です。
要望を適切に反映したERPは現場業務との適合率が高く、多くの課題を解消できるでしょう。しかし、過度に現場の意見を反映すると、経営陣にとって扱いにくかったり、今後の経営方針にそぐわないシステムが構築されたりします。
こうした失敗を引き起こす主な原因は、経営陣がERP導入へ積極的に関与していないことです。また、仮に関与していても、具体的な方針を示せていないケースが多いです。
結果的に、プロジェクトの方向性は当初の目的からズレていきます。また、実現しやすい現場の意見ばかりを吸い上げ、経営陣が求めるERP像から乖離していくのです。
失敗例2.ERPと業務のミスマッチ
ERPと業務のミスマッチも度々発生します。この主な発生原因は、「業務改革を実施していないこと」・「業務の洗い出しが不十分なこと」が考えられます。
ミスマッチが起こると、機能の追加開発や業務改革が必要です。これらには多くの時間・コストがかかるため、目標の達成が遠のきます。
失敗例3.過度な機能開発によるQCDの未達
先程の内容に付随して、過度な機能開発でQCDを達成できないケースも多いです。業務とERPの機能が大きくズレた場合、大規模な改修が必要となりコストや納期を超過する可能性が高まります。
コストや納期超過のみで終われば幸いですが、最悪の場合、問題点を取り除けず、改修後のERPが十分な効果を発揮しない可能性もあります。当然これは、企業にとって大きな損失です。
こうした失敗を引き起こさないためには、「業務をERPへ適合させる」ことが大切です。また、ズレが発生した場合は問題点を明らかにし、適切に対処する必要があります。
失敗例4.ERPの管理データをうまく活用できない
導入後に、ERPのデータをうまく活用できず、従来の経営を継続してしまうケースもあります。データを活用できなければ、経営の円滑化や市場変化への対応力強化など、ERPが持つ本来のメリットを得られません。
この失敗は、経営陣が主導せず、現場主体でERPを構築した場合に多く発生します。そのため失敗を回避するには、企画〜導入・運用のすべてに経営陣が関わることが大切です。各工程において、経営陣が客観的な視点で確認すれば、当初描いていた構想とのズレを早期発見でき、改善行動を取りやすくなるでしょう。
ERP導入で失敗しないためのポイント4つ
ここまでの内容を踏まえ、ERP導入で失敗しないためには、以下のポイントを押さえることが効果的です。
- ERP導入を経営層が主導
- 業務改革とERP導入をセットで実施
- ERPに精通した人材をメンバーに起用
- ERP導入後に徹底した定着作業を実施
上記のポイントの内容を詳しく見ていきましょう。
ポイント1.ERP導入を経営層が主導
ERP導入を成功させるには、経営層がプロジェクトの旗振りになることが必須条件です。ERPが企業経営の根幹を支える重要なシステムとなります。
自社の経営に関わる人間が主導しなければ、当初の目的からズレてしまい、プロジェクトの方向性を見失う可能性が高まります。
また、ERPは従来のシステムに比べて対象範囲が広い分、ステークホルダーも多くなります。導入プロジェクトでは、各方面に協力を仰ぎまとめあげるだけのリーダーシップも求められます。そのため、リーダーシップのある経営層が積極的に主導することが重要です。
ポイント2.業務改革とERP導入をセットで実施
業務改革とERP導入をセットで実施すると、機能のミスマッチやQCDの未達を防止できます。これは、業務改革で既存業務をシンプルなものへ再構築しておけば、EPRの標準機能を適合しやすくなるためです。
適合率が高ければ、機能の追加開発を最小限に抑えられ、追加でかかるコストや時間を削減できます。
なお、ERPの機能は、ベストプラクティスをもとに設計されています。つまり、さまざまな成功企業が運用している業務プロセスが集約されているのです。
標準機能をそのままの形で運用できれば、業務の効率化や経営の円滑化など大きなメリットが期待できます。失敗のリスクを抑えつつ、ERP導入の効果を最大化させるためにも、「業務プロセスを、導入予定のERPへすり合わせていく」ことが重要です。
ポイント3.ERPに精通した人材をメンバーに起用
プロジェクトの成功率を高めるには、ERPやシステム導入の経験がある人材をメンバーに起用しましょう。導入に携わった経験があるメンバーなら、注意すべき点やトラブルへの対処法を理解している可能性が高いためです。
しかし、ERPやシステム導入に精通した人材を起用するのは、簡単なことではなりません。そもそも社内に在籍していなかったり、すでにほかのプロジェクトで稼働したりする可能性も高いでしょう。
ただ、EPR導入は自社の今後を大きく左右する重要な取り組みです。そのため、社内での調節が難しい場合は、専門家へ依頼するなどして優秀な人材を調達しましょう。
ポイント4.ERP導入後に徹底した定着作業を実施
ERP導入は、「システムを本格稼働したら完了」ではありません。ERPの効果を発揮させるには、現場社員への定着を図り、定期的に運用方法を見直すこと必要です。
ERP導入直後は、とくに業務の変更が多く現場社員に大きな負担がかかります。そのため、マニュアルの整備や研修を実施するなどして、現場社員の負担を軽減していくことが大切です。
ERPの導入をお考えの方へ
この記事では、ERP導入の失敗例とその原因を紹介しました。とくに発生しやすい失敗例は、以下の4つです。
- 現場に寄り添った結果、ERP導入目標を達成できない
- ERPと業務のミスマッチ
- 過度な機能開発によるQCDの未達
- ERPの管理データをうまく活用できない
上記の失敗は、仮に発生すると大きな損害をもたらす恐れがあります。ただ、事前の対応次第で十分に回避できるため、先行企業の事例などを参考にし、自社なりの戦略を策定してみてください。
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