ポストモダンERPは、次世代型のERPの在り方として注目されています。従来型ERPの問題点を解消し、なおかつ多くのメリットをもたらす形態です。
ただ、「ポストモダンERPとはどのような形態なのか?従来型ERPとの違いは?」と疑問に思う方も多いでしょう。本記事では、ポストモダンERPの概要と従来型ERPとの違いを紹介します。
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ポストモダンERPとは
ポストモダンERPとは、ガートナー社が提唱した次世代型のERPの在り方を指す言葉です。具体的には、期間業務の管理を単一のシステムでするのではなく、各業務に最適なシステムを導入し相互に結合する考え方です。
従来型のERPがカバーする領域を細分化し、コアERPをベースとしてSaaSや業務アプリケーションを連携していきます。ポストモダンERPでは、システムの構造をシンプルにできるため、保守・運用コストの削減が期待できます。また、カスタマイズによる複雑化やブラックボックス化などのリスク回避にも効果的です。
なお、ポストモダンERPはビジネス環境の変化に合わせて、他のシステムとの疎結合を容易に実施できる点も魅力です。さまざまな要件にも柔軟に対応し、企業の競争力を高めます。
市場の変化が目まぐるしく、デジタル競争が激化した昨今において、ポストモダンERPは企業のDXを下支えする重要なソリューションと言えます。
従来型ERPの種類
従来型のERPとは、主に大企業で導入されていたオールインワンタイプ(統合型)のERPを指します。社内の基幹業務全域をカバーでき、一つのデータベースで社内の情報を一元管理できる点が特徴です。
従来型ERPには、システムの構築方法が異なる主に以下2種類の形態があります。
- モノシリック型ERP
- コンポーネント型ERP
ここでは、上記の概要を解説します。
種類1.モノシリック型ERP
モノシリック型ERPとは、会計・人事・生産・販売管理など、社内の基幹業務全域をカバーする統合型のERPです。システムの規模が大きく、主に中堅〜大企業で運用されています。
モノシリック型ERPでは、その名の通り一枚岩(モノシリック)のように各業務が連携され、すべての管理データを単一のデータベースで管理できます。また、部門間のデータ連携もスムーズなため、業務の大幅な効率化が期待できます。
一方、社内にサーバーを設置する必要があるうえに、システムが大規模なことで運用・保守コストが高額です。なお、連携度の高さ故に、改修時に別の業務にも影響が及ぶ恐れがあるなど、バージョンアップの難しさも課題です。
種類2.コンポーネント型ERP
コンポーネント型ERPは、必要な機能モジュール(機能群)を選択し、自由に組み合わせて構築できるERPです。ポストモダンERPの原型とも言える形態で、業務内容や課題に合わせてシステムをカスタマイズできる点が魅力です。
また、コンポーネント型ERPでは、モノシリック型ERPよりも小規模なシステムを構築できます。基本的に「コアERP+必要な機能モジュール」のみで構成されるため、たとえば人事・生産業務のモジュールを省き、会計・販売業務のモジュールのみでシステムを構築するなども可能です。もちろん、後から事業の成長に合わせて機能を拡張できるため、中小〜中堅企業から注目されています。
しかし、コンポーネント型ERPは同一ベンダーの製品で拡張するケースが一般的なため、ポストモダンERPよりも柔軟性が劣ります。また、機能モジュールの範囲が広く、機能の拡張に多くのコストがかかる点が課題です。
従来型ERPの課題
従来型ERPは、ポストモダンERPよりも多くの課題に直面する可能性があります。補足すると、モノシリック型・コンポーネント型でも、適切な運用・保守をしていればここで解説する課題に直面しないケースもあります。
したがって、本章では、モノシリック型・コンポーネント型ERPで直面する可能性が高い課題を紹介します。
モノシリック型ERPの課題
モノシリック型ERPには、以下3つの課題があります。
- システムを改修しづらい
- ほかのシステムと連携しづらい
- 障害やトラブルの被害が拡大しやすい
システムを改修しづらい
モノリシック型ERPでは、搭載する機能同士が密接に連携しています。そのため、システムの一部を改修した場合でも、別の箇所に影響が出る恐れがあります。
また、システムの改修には時間がかかりますし、その間、関係する業務が停止する可能性もあるため注意が必要です。こうした改修のしづらさから、古いシステムをそのまま使い続けレガシー化を引き起こすケースも見られます。
ほかのシステムと連携しづらい
とくに古いモノシリック型ERPは、単一システムでの経営・業務最適化を想定しているため、外部システムとの連携に対応できない場合があります。ポストモダンEPRなら、ASP連携によって結合できますが、モノシリック型ERPでは別途システム連携用の改修が必要になる可能性が高いです。
もちろん、改修にはコストや時間がかかるため、長期的な運用を想定していたり、社内でシステム開発を内製化できなかったりすい場合は費用対効果が合わないでしょう。
障害やトラブルの被害が拡大しやすい
1つ目にあげた課題に付随して、障害やトラブルの被害が拡大しやすい点にも注意が必要です。機能同士が密接に連携している分、一箇所で発生しシステム障害やトラブルが、関係各所へ影響を及ぼす可能性があります。
また、構造が複雑化している場合は、システム障害の発生箇所を特定しづらく対応に時間がかかります。場合によっては復旧に時間がかかり業務が停止するケースもあるため、注意が必要です。
コンポーネント型ERPの課題
コンポーネント型ERPの課題は、以下の2つです。
- システムの構造が複雑化する恐れがある
- 長期的に見てコストがかかる
システムの構造が複雑化する恐れがある
コンポーネント型ERPは、必要に応じて機能モジュールを追加できる点が魅力です。しかし、長期的に運用していくと、使わなくなった機能と新たに導入した機能が混在し、システムの構造が複雑化する懸念があります。
システムの構造が複雑化すれば、保守・運用の負担が増加するため、定期的にERPの構造を整理したり、ドキュメントにて可視化したりしていく必要があります。
長期的に見てコストがかかる
必要最低限の機能でERPを構築でき初期費用が抑えられる反面、頻繁に機能を追加していくと多くの改修コストがかかります。最終的にモノシリック型ERPと同等のコストが発生する可能性もあるため、注意が必要です。
ポストモダンERPのメリット3つ
ポストモダンERPは、ガートナー社が次世代型のERPの在り方と評した形態であり、従来型ERPと比較して以下3つのメリットがあります。
- システムの複雑化・肥大化を防止
- 導入コスト・期間を削減できる
- 機能の拡張にも柔軟に対応可能
ここでは、上記3つのメリットを順に紹介します。
メリット1.システムの複雑化・肥大化を防止
ポストモダンERPは、従来型ERPよりもシステムの複雑化・肥大化を防止しやすい形態です。これは、ポストモダンERPの範囲がコア業務に絞られているためです。
不足している機能や新たに必要になった機能はほかのシステムで補うため、ERP自体はシンプルな構造を維持できます。ERPを拡大するのではなく、外部ソリューションを活用するポストモダンERPでは、システムの複雑化・肥大化を防止しやすいのです。
メリット2.導入コスト・期間を削減できる
ポストモダンERPで新たに機能を追加する場合は、市場にあるSaaSや業務アプリケーションを活用します。もちろん、SaaSや業務アプリケーションの導入にもコストはかかりますが、既存ERPを拡張するよりも低コストに収まりやすいです。
また、SaaSや業務アプリケーションは市場に出回っているパッケージなので、複数の製品を比較検討しやすく、費用対効果を高めやすいでしょう。なお、SaaSであれば、ベンダー側で保守・バージョンアップを担当するため、長期的に見ても従来型ERPよりコストを削減しやすいのです。
メリット3.機能の拡張にも柔軟に対応可能
ポストモダンERP最大のメリットは、拡張性の高さです。ビジネス環境の変化や事業の成長によって、システム要件が変化するケースは多く見られます。
ただポストモダンERPなら、外部ソリューションとの連携によって要件を満たせるため、ビジネスの変化にも柔軟に対応できます。
ポストモダンERP実現に必要な4つのポイント
ポストモダンERPの導入時には、以下4つのポイントが大切です。
- コア領域を適切に見極める
- ERPをSaaS化する
- 必要に応じてBPOを検討する
- 経営層が積極的に支援する
導入後に後悔しないためにも、上記のポイントを押さえておきましょう。
ポイント1.コア領域を適切に見極める
ポストモダンERPを導入する際は、コア領域の見極めが肝心です。コア領域を本来よりも大きく想定すると、その分、搭載機能も増えて導入コストが高額になります。
また、システムのメンテナンスに負担がかかり、ERPの費用対効果が悪化します。一方、ERPに欠かせないコア領域を適切に見極め、機能を絞り込めれば、さまざまなコストが抑えられます。
ポイント2.ERPをSaaS化する
導入企業の状況・製品によっても異なりますが、近年はSaaS型のERPを選択する企業が増加しました。これは、SaaSであればサーバーの設置やシステムのアップデートをベンダー企業に担当してもらえるためです。
自社でサーバーやシステムの保守作業をする必要がないため、IT人材が不在の場合やリソースを節約したい場合に適しています。もしポストモダンERPの導入をお考えの方は、SaaSのERPパッケージを選定すると良いでしょう。
ポイント3.必要に応じてBPOを検討する
BPOとは、自社業務の一部を、外部の機関に外部委託することです。ポストモダンERPに限らず、ERPを導入する際は、自社の業務プロセスを見直し、改変するケースが一般的です。
このタイミングでBPOを検討すれば、ERPの対象範囲を抑えられ導入コストの削減につながります。また、効率の良いオペレーションやプロセスを持つ専門機関に外部委託できれば、自社で内製化するよりも生産性の向上が期待できます。
ERPの導入では、自社の業務を見直して必要に応じてBPOを検討してみてください。
ポイント4.経営層が積極的に支援する
ポストモダンERPの導入を成功させるためには、経営層の積極的な支援が重要です。もちろん、実際にIT基盤を整備したり、ERPの導入を担ったりするのは情報システム部門ですが、ここに経営層が関与しなければ、自社の要件からズレたERPが構築される可能性が高まります。
また、情報システム部門は通常業務と並行してEPRの導入に取り組むため、経営が関与していかなければ、業務負担が増加してしまいます。こうした問題を回避するには、経営層がERPの導入プロジェクトに関与し以下のような支援をすることが重要です。
- ポストモダンERPの全体像・方針の策定
- 情報システム部門の業務負荷を調節
ERPの導入をお考えの方へ
本記事では、ポストモダンERPの概要を紹介しました。ポストモダンERPは、「次世代型のERPの在り方」を指す言葉で、コア業務と外部システムの連携によってシステムを構築する形態です。
従来型のERPよりも導入コストを削減できたり、柔軟な機能拡張ができたりと多くのメリットがあります。ERPの導入をお考えの方は、ぜひポストモダンERPの構築を目指しましょう。
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