売り上げの低下や営業業務の属人化などの課題から、CRM(顧客管理システム)を導入する企業が増加しています。
製造業企業も例外ではなく、多くの先行企業が導入を進めているのが現状です。
しかし、「CRMの具体的な導入効果が分からない・どのように活用すれば良いのか」とお悩みの方も多いでしょう。
本記事では、製造業の方向けにCRMの導入効果と活用方法、事例を解説します。
【基礎知識】製造業で注目のCRM(顧客管理システム)とは?
CRM(顧客管理システム)は、SaaSビジネスやECビジネスのみならず、製造業でも注目されています。
CRMとは、Customer Relationship Managementの略で、顧客関係管理のこと。
元々は、企業が顧客データを管理・活用し、企業と顧客の相互利益を向上させる手法を指す言葉です。
最近では、上記の手法を実現するためのシステムをCRMと呼んでいます。
本章では、基本概要としてMA・SAFとの違いとCRMの国内需要を紹介します。
CRMとMA・SAFの違い
CRMと混同しやすいシステムにMA・SAFがあります。
それぞれ目的や対象とする部門が異なり、主に以下の違いがあります。
システム名 |
目的 |
対象部門 |
搭載機能 |
MA |
リードの獲得 リードの育成 |
マーケティング |
|
SAF |
リードの転換 契約の獲得 |
営業 |
|
CRM |
顧客情報の一元管理(顧客関係管理) リピーターの獲得 |
マーケティング・営業・CS |
|
CRMの目的である顧客関係管理を実現するためには、リードを獲得した段階(MA)から契約に至るまでの顧客情報(SFA)が不可欠。
そのため、近年ではMA・SFAの機能を内包したCRMが増加しています。
CRMは製造業以外でも需要が拡大している
CRMの需要は製造業にとどまらず、様々な業種で拡大しています。
IT専門調査会社 IDCJapanの「国内CX/CRMアプリケーション市場予測、2022年~2026年」によると、CRMの市場規模は2020年に1,871億7,300万円。
2025年には、約2,500億にものぼると予測しています。
2025年の年間成長率は5.5%で推移すると予測しており、製造業のみならず様々な企業がCRMに注目していることがわかります。
一体なぜ、これほどまでにCRMが注目されているのでしょうか。
製造業でCRMが求められる理由
製造業でCRMが求められる理由は、主に以下の2つです。
- 顧客ニーズの多様化
- 業務の効率化
それぞれ順に紹介します。
理由1.顧客ニーズの多様化
1つ目の理由は、顧客ニーズの多様化に対応するためです。
インターネットの普及により、顧客は製品に関する多くの情報を取得できるようになりました。
自分が求める商品を自ら探して購入できるため、従来よりも価値要素が細分化されたのです。
たとえば、冷蔵庫一つをとっても、省エネルギーな製品やデザイン性が優れた製品、食品の鮮度を保つ製品や低価格な製品など、様々な価値要素があります。
企業は単に製品を製造するだけではなく、顧客一人一人のニーズを正確に読み解き製品に活かす必要が出てきたのです。
結果、顧客データを管理・分析するCRMが注目されています。
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理由2.業務の効率化
2つ目の理由は、データ管理業務を効率化するためです。
近年、顧客接点のデジタル化が進んだことで、企業が管理する顧客情報量が増加しています。
氏名や性別、年齢に居住地などの基本情報に加え、問い合わせ履歴や購入履歴、商談履歴など多くの情報を管理しなければなりません。
仮にこれら膨大な顧客データを人手で管理した場合、多くの作業工数がかかります。
また、入力ミスの発生や対応遅れから、機会損失をまねく恐れもあります。
顧客データを正確かつ効率良く管理・分析するため、多くの製造業がCRMに注目しているのです。
製造業企業でのCRM導入効果
製造業企業がCRMを導入した場合、どのような効果が期待できるのでしょうか。
代表的な効果は、以下4つです。
- 部門間連携による業務の効率化
- 変化する顧客ニーズへの迅速な対応
- 組織としての営業力向上
- 顧客満足度の向上
上記以外の細かな効果は、導入するCRMの機能や社内の業務課題などによって異なります。
CRMの導入効果をより詳しく知りたい方は、後述する「CRMを導入した製造業事例3選」の章をご覧ください。
効果1.部門間連携による業務の効率化
製造業企業がCRMを導入する一番のメリットは、部門間連携による業務の効率化です。
従来は、顧客データをマーケティング・営業・カスタマーサポート・カスタマーサクセスの部門ごとに管理するケースが一般的です。
しかし、CRMを導入することで、各部門が抱える顧客データを1つのデータベース上で管理できます。
これにより部門間での確認作業や重複した入力作業などを削減でき、業務効率化を実現できます。
また、人手業務を最小限に減らすことで、データの正確性も担保できます。
効果2.変化する顧客ニーズへの迅速な対応
CRMを導入すると、刻一刻と変化する顧客ニーズへ迅速に対応できます。
仮に、エクセルを使ってデータ管理・顧客分析をする場合、多くの作業工数がかかります。
一方、CRMではリード獲得〜契約後までの顧客データを一元的に管理しており、必要に応じてセグメントも可能です。
また、さまざまな分析機能によって、顧客ニーズの多角分析ができます。
エクセル管理よりもより正確なデータを瞬時に取得できるため、刻一刻と変化する顧客ニーズにも迅速に対応できます。
効果3.組織としての営業力が向上
CRMの導入は、組織としての営業力向上につながります。
CRMを活用すれば、顧客情報や商談内容を社内関係者全員で共有可能。
仮に、担当者が不在の場合でも他のメンバーが代わりに対応ができれば、機会損失を防止できるでしょう。
また、優秀な営業担当者の商談実績からノウハウや知見を切り出し共有します。
これらのナレッジを体系化することで、組織全体での営業力向上の実現に近づくのです。
効果4.顧客満足度の向上
CRMの導入により、顧客満足の向上が期待できます。
営業担当者が顧客情報を入力し蓄積することで、システム上で顧客情報が可視化。
これにより、顧客の趣向や優先事項をより正確に把握し、製品に顧客ニーズを反映できるでしょう。
また、CRMの活用は、アフターフォローを担うカスタマーサポートにも影響します。
問い合わせ内容を蓄積していくことで、顧客対応の正解等が導き出せるでしょう。
結果、カスタマーサポートの品質が向上し、顧客満足度の向上につながります。
【製造業】成果に結びつくCRMの活用方法
製造業がCRMを導入して成果をあげるには、以下の手順がおすすめです。
- ビジョンを描く
- ビジョン達成に必要な要素を洗い出す
- ビジョン達成要素を満たしたシステムを選定
- 運用フローの設計とシステムの実装
- 関係者へのレクチャーと効果測定
CRMを導入し成果を上げるためにもぜひ参考にしてみてください。
1.ビジョンを描く
まず実施するのは、ビジョンの設定です。
ここでいうビジョンとは、「CRMを活用してどのような状態を目指すのか?」ということ。
CRMの導入はあくまでもビジョン達成のための手段であるため、最終的な成果目標を設定することが大切です。
また、ビジョンはチームメンバーのモチベーションにも関わるため、誰もが共感できるより具体的な目標を設定しましょう。
2.ビジョン達成に必要な要素を洗い出す
次の手順は、ビジョン達成に必要な要素の洗い出しです。
たとえば、営業リードタイムの短縮を目指すとします。
ビジョン達成に必要な要素は、意思決定プロセスの削減や営業情報の部門内共有、営業担当者の能力向上などさまざま。
ただ、中にはチームの体制上、実現が困難なものもあるでしょう。
そのため、まずは必要な要素をすべて洗い出し、実現性や効果を検討しながら戦略へ落とし込んできます。
また、戦略が策定できたら、効果を検証するための指標も設定することが大切です。
指標がないと効果検証ができず適切な改善を図ることができないため、必ず指標を設定しましょう。
3.ビジョンの達成要素を満たしたシステムを選定
戦略が決まれば、CRMに求める機能や特性も見えてくるはずです。
これらの要件をもとに、自社にあったシステムを選定します。
CRMの選定では価格や機能面はもちろん、以下のポイントも意識するのと良いでしょう。
- システムの拡張性:上位プラン・オプションが用意されており企業の成長に適応できるなど
- セキュリティ:二段階認証、IPアドレス制限、バックアップ、データ暗号化
- サポート面:導入支援・定着支援・コンサルティング
中でも、システムの拡張性は重要な選定ポイントです。
企業の成長により別のCRMへ移行すると、多くの手間と追加コストがかかります。
そのため、複数のプランやオプション機能が充実しているなど、長期的に利用できる製品を選定するのがおすすめです。
4.運用フローの設計とシステムの実装
導入するCRMが決まったら、運用フローの設計とシステムの実装に移ります。
運用フローの設計では、ベンダー企業にサポートしてもらうのがおすすめです。
製品を知り尽くしているうえに、導入サポートサービスを展開する製品もあるため、多くのアドバイスを受けられるでしょう。
また、無料トライアルを利用して実際にCRMを試験運用します。
実際にCRMを利用すると、それまで気づけなかった課題や改善点が見つかるはずです。
問題点を十分に取り除いたら、いよいよシステムを実装していきます。
5.関係者へのレクチャーと効果測定
CRMの実装が完了したら、関係者へのレクチャーを徹底します。
CRMの操作方法をはじめ、データの管理方法や形式などを教育します。
CRMのレクチャーでは、マーケティング・営業・カスタマーサポートなど各関係部門の協力が不可欠です。
認識のズレを防止するためにも、各部門の代表者で話し合い具体的な指導要項を策定すると良いでしょう。
CRMを一定期間運用したのち、ビジョンに対する進捗度合いを測定します。
あらかじめ設定した指標を用いて、どのような効果があったのか、またどこを改善すれば良いのかを模索するのです。
ただ効果検証と改善は、もちろん重要度の高い業務ではありますが、時間をかけすぎるとプロジェクトが長期化する恐れがあります。
PDCAを高速回転させ課題を対処していくためにも、スピード感を意識して取り組むと良いでしょう。
CRMを導入した製造業事例3選
製造業界でも、一部の先行企業はCRMを活用し成果をあげています。
ここでは、CRMの導入とその後の効果をより具体的にイメージしてもらうため、以下3社の事例を紹介します。
- 株式会社イムラ
- 株式会社相模化学金属
- 株式会社ミツバ
いずれも異なった課題を抱えていた製造業企業です。
自社の営業力向上やリードタイムの短縮を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
事例1.株式会社イムラ
株式会社イムラは、封筒の製造〜販売を行う会社です。
同社の課題は、部署ごとに顧客情報の管理体制が異なり、営業リードタイムが長くなっていたことです。
商談実績をエクセルで管理する部署もあれば、一切管理していない部署もあるなど、営業部門内でも統制できていない状況でした。
ただ、封筒の製造販売では、リードタイムが非常に短く、リピート率も高いという事業特性があるため、営業部門の効率化が必要に。
CRMを導入した結果、商談内容がデータベース上で管理されるため、上長が進捗や種別を把握できるようになったそうです。
成功事例やノウハウの部門内共有にもつながり、部門全体の営業力向上を実現しました。
また、意思決定によるプロジェクトの長期化を防ぐため、試験的に特定部署で導入し、成果を確認したのち他部門へ展開する方法をとったとのこと。
当初の目標達成を短期間で実現した製造業の事例です。
事例2.株式会社相模化学金属
株式会社相模化学金属は、産業機器メーカー向けに金属部品を製造する中小企業です。
同社の課題は、営業部門の成果が伸びず、なおかつその原因が不明だったことです。
業務改善をしたくとも、改善の方向性を掴めていない状態でした。
そこで着手したのが、CRMによる営業部門の可視化です。
商談や顧客情報から営業部門のボトルネックを特定し、改善により案件の受注数や売り上げ増加を達成しています。
また、従来は営業会議用の資料作成に半日を費やしていたところ、CRMのデータをそのまま転用できるため作業時間が0に。
そのほか部門内での情報共有により、取り合わせに対するタイムロスの削減や顧客対応の品質向上など副次的な効果もあげています。
事例3.株式会社ミツバ
株式会社ミツバは自動車などの電装品を製造する自動車部品メーカーです。
同社では、エクセルによって顧客情報や営業報告をしており、せっかく仕入れた情報も部門内で横共有されていないことが課題でした。
また、作業報告書の作成に時間を取られ、営業活動のスピード感を阻害していました。
CRMによる情報共有の推進を図ったところ、従来2〜3週間かかっていた案件が1週間ほどで完了するように。
管理者の立場では、部下の案件内容や進捗をタイムリーに把握できることで、適切な指示やフォローができるようになったようです。
また、部門内で情報が共有されたことで、担当者の引き継ぎもスムーズにできています。
CRMを活用し製造業界での競争力を高めよう
この記事では、製造業企業向けに、CRMの導入効果と活用方法、事例を解説しました。
CRMは、顧客情報を一元的に管理することで、以下のメリットをもたらします。
- 部門間連携による業務の効率化
- 変化する顧客ニーズへの迅速な対応
- 組織としての営業力向上
- 顧客満足度の向上
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