近年、大手製造業を中心に着々とIT化が進んでいることをご存じでしょうか?
製造業のIT化は予算や人的リソースの問題で先送りにされがちですが、一刻も早く着手しないと先行企業との差は開く一方です。
本記事では、製造業でIT化が求められる理由と、ITトレンド、課題を紹介します。
自社のIT事情に不安をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
国内製造業では先行企業によるIT化が進行中
近年の製造業ではIT化の遅れが懸念されますが、大企業を中心とした一部の先行企業では着々と進められています。
総務省が令和3年に発表したデータによると、2018年〜2020年の間でDX(デジタルトランスフォーメーション)に着手した製造業企業は全体の22.8%とのこと。
また、「今後実施を検討する」と回答した企業は20%にものぼります。
つまり、全体の約半数もの企業がIT化に興味を示し、着手しようとしているのです。
しかし、IT化にはコスト問題や知見・人手不足などさまざまな課題が立ちはだかるため、IT化やDX推進に消極的な製造業も見られます。
IT化の流れが加速しつつある近年の製造業では、先行企業とそうでない企業とのデジタル格差が開くことが懸念されます。
先行企業に遅れを取らないためにも、課題をひとつずつ解決し、IT化に着手することが求められます。
製造業でIT化が求められる5つの理由
一体なぜ、製造業でIT化が求められるのでしょうか?
製造業でIT化が求められる理由は、以下5つです。
- 生産性の向上が期待できる
- 製造リソースを削減できる
- 社内情報の活用による製品の高付加価値化
- 業務の標準化と技術継承の助長
- 市場競争力の向上につながる
本章では、製造業でIT化が注目される理由を解説します。
製造業IT化1.生産性の向上が期待できる
製造業でIT化が求められる1つ目の理由は、生産性の向上が期待できるためです。
製造業では、同時に複数の生産プロジェクトを進行するケースが一般的です。
しかし、全てのプロジェクトを人手で管理するのは困難でしょう。
中でも、多くの従業員が関わるプロジェクトや、顧客の要件に合わせる個別受注生産では、情報の抜け漏れや伝達ミスなどが発生する恐れがあります。
結果、不良の発生やスケジュールの遅延につながり、業務の生産性が低下する可能性もあります。
ITシステムを活用することで生産業務を適切に管理でき、情報の抜け漏れや認識間違いなどのヒューマンエラー削減が期待できます。
また、製造業の要である「ものづくり」にしっかりと人的リソースを割けるため、結果的に生産性の向上が期待できるでしょう。
製造業IT化2.製造リソースを削減できる
製造業でIT化が求められる2つ目の理由は、製造リソースを削減できるためです。
製造業におけるリソース管理では、資材や製造設備などのモノやカネにばかり目が行きがちですが、従業員の配置や稼働率も大きな課題です。
しかし、IT技術を活用することで従業員の配置を最適化でき、より少ない人員で高い生産性を発揮できるでしょう。
製造業にとって重要なヒト・モノ・カネを効率的に運用するためにも、早急なIT化が求められています。
製造業IT化3.社内情報の活用による製品の高付加価値化
製造業でIT化が求められる3つ目の理由は、社内情報の活用が進み製品の高付加価値化が期待できるためです。
複数の製品を製造している企業でも、部門やプロジェクトごとに技術や情報が管理されているケースが見られます。
しかし、部門間の情報を一元的に管理するITシステムを活用すれば、社内の情報をデータベースに集約できます。
集約したデータを分析・活用することで、有益情報の横展開や新しいアイデアの創出などが期待できるでしょう。
また、ノウハウの共有にともない、品質の向上や既存製品の改良などを実現でき、自社製品全体を高付加価値化できる可能性もあります。
社内の情報を効率的に管理・活用し、製品の付加価値へと転化するためにも、ITシステムの導入が注目されているのです。
製造業IT化4.業務の標準化と技術継承の助長
製造業でIT化が求められる4つ目の理由は、業務の標準化と技術継承の助長につながるためです。
業務管理システムを導入すれば、製造スタッフそれぞれのリソースを把握でき、大幅な業務の偏りや長時間勤務の削減などが実現できます。
製造業界全体の課題である技術継承も、製造工程のITシステム管理を行うことにより解消できるかもしれません。
たとえば、これまで熟練の勘や感覚でおこなっていた業務を定量的なデータとして集約することで、人材育成に活用でき、スムーズな技術継承を実現できます。
また、製造業のIT化は技術継承の実現にとどまらず、業務の見える化や業務改善にもつながります。
業務プロセスを定量データで管理できれば、ムダやムラを把握しやすくなり、効果的な改善行動をとりやすくなるでしょう。
製造業IT化5.市場競争力の向上につながる
製造業でIT化が求められる5つ目の理由は、市場競争力の向上につながるためです。
前述した通り、製造業がIT化に取り組んだ場合、生産性の向上やリソースの削減、製品の高付加価値化などを実現できます。
いずれも企業の成長に欠かせない重要な要素であり、これらを突き詰めることで、市場における競争力を強化できます。
近年は製造業の国際競争も激化しているため、ITやデジタル技術を活用した競争力のさらなる強化が求められています。
【2024年】いま注目の製造業ITトレンド
近年注目されている製造業ITトレンドは、以下の5つです。
- メタバース
- RPA
- 電子インボイス
- ワークフローシステム
- HRテック
上記のIT技術は、複数の技術を組み合わせて取り入れることも可能なため、自社の課題や相性を考慮し導入すると良いでしょう。
本章では、各トレンド概要と導入メリットを解説します。
ITトレンド1.メタバース
メタバースとは、Web上に構築された3次元の仮想空間やサービスを指す用語です。
近い技術には、製造業でもなじみの深い3Dモデリングの元となるVR・ARが挙げられます。
製造業がメタバースを取り入れる場合、バーチャル展示会の実施や各製造拠点のオンライン会議、製造技術のマニュアル化などが考えられます。
中でも、昨今の製造業では技術継承の課題を抱える企業も多いため、メタバースを利用し複雑な技術を3Dマニュアルに落とし込むのは大きな効果が期待できるでしょう。
メタバースは今後も発展が期待されるIT技術のため、先行して取り入れることをおすすめします。
ITトレンド2.RPA
RPA(Robotic Process Automation)は、「ロボットを活用した業務の自動化」を指す用語です。
比較的多くの企業に導入されているIT技術のため、なじみの深い方も多いのではないでしょうか。
RPAは単純作業のみならず複雑な製造業務もロボットに代行させられるため、ヒューマンエラーや製造納期の遅延を解消できます。
内閣府が発表した「令和元年度 年次経済財政報告」によると、RPAの導入に前向きな製造業企業が79%に上ると発表されており、今後のさらなる活用が期待されるIT技術です。
ITトレンド3.電子インボイス
2023年10月に施行されるインボイス制度の影響もあり、請求書などを電子管理する動きが活発化しています。
電子管理に移行することで紛失や記入ミス、内勤スタッフの作業時間短縮などが期待できます。
中でも、人材不足が叫ばれる製造業では現場責任者がインボイスの管理を行うことも多いため、電子化による業務負担軽減の恩恵は大きいでしょう。
また近年では電子帳簿保存法の改訂など法律の整備も進んでいるため、電子インボイスの導入は追い風となっています。
ITトレンド4.ワークフローシステム
ワークフローシステムの導入は、製造コスト・スケジュールの管理をする上で大きな効果が期待できます。
ワークフローシステムを使い全体工程を管理することで、プロジェクト進行前から納期の目安を正確に把握できたり、人的リソースを無駄なく配置できたりします。
また、製造工程で出てきた課題をワークフローシステムで管理することで、次回のプロジェクトに活かせるでしょう。
製造プロジェクトのPDCAサイクルを好転させてくれるワークフローシステムは、多くの製造業に注目されるITトレンドです。
ITトレンド5.HRテック
HRテックとは、「Human Resource(人材)」と「Technology」を組み合わせた言葉です。
主に、人材採用・人材配置・人事評価・勤怠管理などのヒトに関する業務領域を内包するITシステム。
ヒトの動きをシステム上で管理・調節できるため、少ない人員でも効率よく人材管理が可能です。
人材管理に課題を抱える製造業は、HRテックの導入を検討してみてください。
国内製造業が抱えるITへの課題と対応策
製造業のIT化は多くのメリットが期待できる一方で、以下の課題が懸念されます。
- IT人材の不足
- IT化に対する現場からの反発
- IT投資のコストを捻出できない
本章では、多くの製造業が抱えるIT化の課題と対応策を解説します。
IT人材の不足
IT人材の不足は、多くの製造業が抱える課題です。
近年では製造業に従事する人材の高齢化が進み、ITになじみの深い若手人材が集まりづらい傾向があります。
また、他業種でもIT化が着々と進められているため、国内全体を見てもIT人材不足が問題となっています。
解決策としては、HRテックの導入で採用活動を活性化し、今まで見つからなかった転職潜在層にアプローチする方法が有効です。
また、ワークフローシステムのような作業工程管理ができるITシステムは、導入の際にアドバイザーをつけてくれるケースもあるため、積極的に活用し、社内のIT人材育成にも注力すると良いでしょう。
IT化に対する現場からの反発
これまでIT化に取り組んでこなかった製造業企業の場合、新たにITシステムを導入すると現場から反発を受ける恐れがあります。
長年、勘や感覚に頼って仕事をしてきたベテラン技術者が多く、IT化を推進する際は説明会を開くなど細かなフォローが必要になるでしょう。
作業スケジュールの管理など、簡単な部分からIT化を進めていくことで現場からの反発を抑えられます。
IT化に反発する社員も、自身の技術継承や業務の効率化が実現できるとわかれば、積極的にIT化に協力してくれるようになるでしょう。
IT投資のコストを捻出できない
IT投資のコスト捻出も、多くの製造業が抱える課題です。
しかし、昨今のITシステムは導入コストが少額なクラウド型のものや、いつでも解約可能なサブスクリプション型も提供されています。
また、政府によるIT化補助金などもあるため、投資コストを抑えつつIT化を推進できるでしょう。
製造業でIT化推進を検討している担当者の方へ
本記事では、製造業でIT化が求められる理由とITトレンド、課題を紹介しました。
近年の製造業では、以下5つの理由からITシステム・デジタル技術が注目されています。
- 生産性の向上が期待できる
- 製造リソースを削減できる
- 社内情報の活用による製品の高付加価値化
- 業務の標準化と技術継承の助長
- 市場競争力の向上につながる
国内製造業でも、大企業を中心に着々とIT化が進行しつつあります。
今後のデジタル競争で高い競争力を発揮するためにも、いち早くIT化に着手するのがおすすめです。
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