国会の「2050年カーボンニュートラル宣言」を受け、多くの企業が脱炭素化に向けて動き出しました。
しかし、2050年カーボンニュートラル宣言に対して、企業はどのような取り組みを推進すべきか・どこから手を付けるべきかなどを悩む声も。
本記事では、2050年カーボンニュートラル宣言に対して、製造業がどのように取り組むべきかを解説します。
企業としての宣言を発表する際の注意点も、あわせてご覧ください。
【基礎知識】2050年カーボンニュートラル宣言とは?
2050年カーボンニュートラル宣言とは、温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を保つことで、温暖化を抑止する概念です。
CO2をはじめとした温室効果ガスの排出量を削減するとともに、森林が吸収できる温室効果ガスの総量を増やして、環境問題の解決に取り組みます。
環境省が発表した「2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について」では、温室効果ガスの排出量が最も多いのは製造業と判明。
そのため製造業界では、カーボンニュートラルに対する意識が高まりを見せており、企業として積極的に取り組む必要性が高まっています。
一方で、カーボンニュートラルに取り組む際に、どのような宣言をすべきなのかと悩む企業が多いのも事実です。
次章では、製造業がカーボンニュートラルに関する宣言に盛り込むべき項目を解説します。
カーボンニュートラルは、2050年までにCO2排出量とCO2吸収量の均衡を目標とした概念です。本記事では、カーボンニュー…
製造業がカーボンニュートラル宣言に盛り込むべき3項目とは?
製造業が、カーボンニュートラルに対する宣言を実施する目的は、おもに下記の2つです。
- 環境問題の解決
- 新たな付加価値の創出
カーボンニュートラルは、専門知識の有無を問わず、多くの人が必要性を感じているため企業として向き合うべきです。
本章では、企業がカーボンニュートラルに関する宣言に必要な項目を解説します。
項目1.カーボンニュートラル実現に向けた具体的な目標
2050年カーボンニュートラル宣言では、温室効果ガスの実質的ゼロの実現が目標です。
したがって、企業がカーボンニュートラルに取り組む際は、2050年カーボンニュートラル宣言の目標に沿った具体的目標が必要です。
2050年までのカーボンニュートラルを実現するには、2030年までの中間目標を掲げて、段階的に取り組みます。
たとえば日本政府は、2030年に中間目標として2013年度比で46%削減を目標としています。
まずは、2030年の目標実現に向けた目標を設置して、具体的な取り組みを検討すると良いでしょう。
項目2.目標達成に必要なカーボンニュートラル化の取り組み
カーボンニュートラルの目標を達成するための取り組みは、企業によって様々であり自由度の高いものです。
自由度の高さは選択肢が豊富な反面、悩みの一因になることもあります。
製造業では自社が直接的に排出する温室効果ガスのほか、間接的な排出をも考慮した取り組みが必要となるため、具体的な取り組みを検討するのは負担が大きくなりがちです。
まずは環境省・経済産業省の「排出量算定について」を参考にしながら、サプライチェーンの温室効果ガス排出量を可視化するところから取り組んでください。
温室効果ガスの排出量が多いプロセスを特定できれば、具体的な取り組みの検討に役立ちます。
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、サプライチェーン内のリソースの流れを管理し、商品供給の最適化を目指す管理手法…
項目3.カーボンニュートラル実現までのフロー図
カーボンニュートラルの実現に向けたフロー図は、自社の取り組みがどのように進行され、いつまでにどの程度の数値を目指すのかを可視化するために必要です。
フロー図を作成するメリットは、おもに以下の3つです。
- 取り組みに進捗状況の確認が容易になる
- 知識の有無を問わず、社員全員が目標を共有できる
- 社外に向けたアピールを通して付加価値を創出しやすい
フロー図は、横軸を時間軸と設定して、取り組みや具体的な数値目標を可視化できるよう作成するのがポイントです。
見やすさを配慮したフロー図を作成することで、得られるメリットを最大化できます。
カーボンニュートラルを宣言した3つの企業の事例
カーボンニュートラルに関する宣言の内容を検討する際は、事例を参考にするのも良いでしょう。
すでにカーボンニュートラルに取り組んでいる企業の事例からは、取り組みを検討する際の視点や考え方、方向性などを学べます。
本章では、カーボンニュートラルに取り組んでいる企業の事例を解説します。
事例1.ライフサイクル全体でCO2排出ゼロを目指す「トヨタ自動車株式会社」
トヨタ自動車株式会社は、部品調達・製造・物流・走行・リサイクルと、車に関わる全てのプロセスに対してCO2排出ゼロを目指しています。
近年では、電気自動車の開発が進んでいる反面、製造やリサイクルなどの工程ではCO2が発生しているのも事実です。
車のライフサイクルで使用するエネルギーを再生可能エネルギーで補うとともに、工場内で発生するCO2は日常的な改善で抑制することで、全体的なCO2削減を実現する考えです。
トヨタ自動車株式会社は、取り組みの中で水素にも着目しています。
リチウムイオンバッテリーを搭載した「MIRAI」のライフサイクル環境取り組みでは、再生可能エネルギーを用いて水素を取り出すことによる、CO2排出量の大幅な削減にも言及。
環境負荷をゼロに近付けるために、カーボンニュートラルの視点から車のライフサイクルをデザインしています。
事例2.バリューチェーンを通じてカーボンニュートラル実現「株式会社 日立製作所」
株式会社 日立製作所は、クリーンエナジー&モビリティ・デジタルシステム&サービス・コネクティブインダストリーズ・オートモーティブ事業の4領域を中心として、バリューチェーンの脱炭素化に取り組んでいます。
バリューチェーンは、製品・資材などの搬送が不可欠な製造業にとって、カーボンニュートラルを実現するには避けて通れない課題のひとつ。
株式会社 日立製作所は、バリューチェーンの脱炭素化に向けて、EVシステム・高速鉄道車両・蓄電池ハイブリッド車両などの提供を通じて脱炭素化を目指します。
さらに、工場やオフィスのカーボンニュートラルにも同時に取り組むことで、全社的な脱炭素化を推進する狙いです。
2030年の中間目標では、工場・オフィスのカーボンニュートラル達成と、2010年度比でのバリューチェーンのCO2排出量50%削減を宣言しています。
事例3.カーボンニュートラル実現の10年前倒しを宣言「ソニー株式会社」
ソニー株式会社は、脱炭素化社会への移行に向けた対応が喫緊の課題となったことを背景に、カーボンニュートラル目標の10年前倒しを宣言しました。
具体的には、環境省・経済産業省が推進しているサプライチェーン全般の温室効果ガス排出量削減への取り組みです。
環境省・敬座産業省が推進しているのは、サプライチェーンを以下の3つに分類して取り組む方法です。
- scope1:事業者自らが直接的に排出した温室効果ガス
- scope2:電気・熱・蒸気などの使用によって間接的に発生する温室効果ガス
- scope3:scope1・scope2以外で発生する間接的な温室効果ガス
ソニー株式会社は、2040年までに全scopeでの排出量実質ゼロを目指します。
カーボンニュートラル目標を宣言するときの3つの注意点とは?
カーボンニュートラルは、単純に節電に取り組むだけでは実現は困難です。
なぜなら、カーボンニュートラルの実現には様々な要素が絡み合っており、複数の取り組みが必要になるため。
本章では、複数の取り組みを的確に推進するために必要な3つの注意点を解説します。
注意点1.カーボンニュートラルの取り組みはCO2可視化が必要
CO2排出量が可視化されていない場合は、実施した取り組みの効果測定ができず、PDCAサイクルの回転が困難です。
そのため、カーボンニュートラルを実現するには、CO2排出量の可視化が前提となります。
一方で、CO2排出量の可視化に必要なシステム導入資金で悩む企業が多いのが現状です。
CO2排出量の可視化に必要なシステムにかかるコストを検討する際は、カーボンニュートラルに限定した視点ではなく、導入するシステムが全社にどのような好影響を与えるかも考慮するのがポイントです。
CO2を可視化可能なシステムを探すと、複数該当します。
仮にCO2可視化可能なERPを導入した場合、業務効率化や生産性向上・トータルコスト削減も期待できるでしょう。
注意点2.業務効率化がカーボンニュートラルに貢献
業務効率化による企業の活動時間短縮は、活動に必要なエネルギーの削減につながるため、カーボンニュートラルにも有効です。
たとえば業務効率化に取り組んだ結果、100時間の残業時間短縮に成功した場合は、残業代と光熱費の削減につながります。
さらには、残業が原因となる社員のストレス軽減や、在宅ワークをはじめとした柔軟な働き方の実現にも期待できます。
近年の製造業界には、DX(デジタルトランスフォーメーション)をはじめとした様々な取り組みが求められています。
カーボンニュートラルやDXは、関連性の高い取り組みでもあるため、複合的な視点での検討が必要です。
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が使われるようになりました。 しかし、DXの意味や取り組み必要性…
注意点3.海外拠点のカーボンニュートラル実現はシームレス情報共有体制がカギ
製造業の海外拠点は、人件費を削減する目的で途上国にある場合が多いため、CO2排出量の管理にはシームレスな情報共有体制の構築が必要です。
なぜなら、途上国と先進国ではCO2の削減目標が大きく異なるためです。
先進国は経済が発展しており、CO2削減という次のステップに進めている反面、途上国ではCO2削減に取り組むよりも経済を発展させることが優先事項。
ゆえに、国内拠点と海外拠点で実現できるCO2削減目標が異なり、管理の煩雑化が課題となっています。
カーボンニュートラルに取り組む際は、国内拠点・海外拠点で実現すべき目標を適切に管理するために、情報を一元的に管理する必要があります。
カーボンニュートラル宣言・目標達成に必要なシステムでお悩みの方へ
本記事では、カーボンニュートラルの目標を宣言するためのポイントを解説しました。
多様化するニーズへの対応力・生産性向上・カーボンニュートラルなど、複数の取り組みを同時に進行するには、インフラとして新規システム導入を検討する必要もあります。
当メディアを運営するチェンシージャパン株式会社では、柔軟性と操作性に優れるERP「IFS Cloud」を提供しております。
IFS Cloudには、CO2の可視化機能や情報一元管理機能など、現代の製造業に必要な機能を搭載。
カーボンニュートラルやDXなど様々な取り組みにも応用できるため、導入するシステムでお悩みの際はぜひお声がけください。