生産管理システムとERPの違いとは?MESとは?選び方のコツ

  • 2022年6月19日
  • 2024年9月26日
  • ERP
ERP

生産管理システム・MES・ERPの中で、最も高効率なシステムはERPです。ERPは生産管理システムやMESの機能を持ち、企業全体の業務を効率化できるためです。

本記事では、生産管理システム・MES・ERPの違いを解説します。基礎知識をはじめとして、選び方のポイントや失敗回避の注意点なども参考になさってください。

チェンシージャパン株式会社は、ERP導入をお考えの方へ「製造業向けERPパンフレット」を無料配布しております。製造業が直面する課題・ERP導入で目指すべき姿をまとめておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

目次

生産管理システムとは?ERP・MESの違いは「管理可能な範囲」

生産管理システム・ERP・MESは、いずれも生産管理の業務を効率化できるシステムです。各システムの違いを、簡単にまとめると以下のようになります。

  • 生産管理システム:生産計画・品質管理・在庫管理ができるシステム
  • ERP:会計・生産・財務・人事など、統合的管理が可能なシステム
  • MES:生産工程の管理が可能なシステム

【基礎知識】生産管理システム・ERPの違い

製造に特化した生産管理システムとERPでは、管理できる範囲が異なります。生産管理システムは製造工程の管理をサポートし、QCDの向上が見込めるシステムです。

一方で、ERPは全部門の業務を効率化し、情報の一元管理が可能。ERPは、複数システムの運用保守に必要なコストのカットもできるため、費用削減目的としても有効です。

上記の理由を背景に、昨今ではシステム導入・刷新する企業が増加しています。

関連記事

近年、あらゆる場面で耳にするERPシステム。しかし、「具体的にどのようなシステムで、一体何ができるのか?」が不明確な方も多いでしょう。 本記事では、ERPシステムの概要と種類を紹介します。導入に向け、プロジェクトの進め方と選定方法も説明し[…]

MESとは製造実行システムのこと

MESは、製造工程のみを管理できるシステムであり、低コストで導入できるのがメリットです。システム導入による影響が最小限の範囲でとどまるため、導入期間も短く済みます。

しかし、昨今では生産管理システムへの移行が進む傾向にあります。MESに比べ、生産管理システムのほうが管理できる範囲が広く、より効率的に活用できるためです。

今後は、より広範囲を管理できる生産管理システムやERPへの移行が加速するでしょう。

関連記事

ERPとMESの違いは、「何を最大化するのか」という目的です。 本記事では、ERPとMESの具体的な違いを中心に、システム間連携の必要性を解説します。ERPとMESの違いを知りたい方・システム連携を検討している方は、ぜひご覧ください。 […]

生産管理システムとは、生産管理部門限定のシステム

生産管理システムとは、生産管理を効率良く行うためのシステムです。生産管理システムの特徴や目的について、以下の2点に着目して解説します。

生産管理システムの目的:QCDの向上

製造業にとって、品質(Quality)・原価(Cost)・納期(Delivery)の最適化が大切です。生産の効率性が収益に直結し、資材購入や在庫の量はキャッシュフローの正常化に関連するためです。

生産管理システムに備わっている機能は、どれか1つでも欠けてはいけません。それぞれが密接に関連づき、生産管理の礎となっています。

そして、生産管理システムの機能が集約され、ようやくQCDの維持・向上につながるのです。

生産管理でできること、6つの機能

生産管理システムの主な機能は以下の6つです。

  • 受注管理:製品の受注状況・納期を登録、把握をサポートする機能
  • 生産計画:受注状況や見込み需要に基づいた生産計画を立案する機能
  • 必要資材試算:生産には、どれくらいの資材や設備が必要かを試算する機能
  • 工程管理:計画通りに生産が進んでいるかを管理する機能
  • 品質管理:製品の品質が基準を満たしているか管理する機能
  • 出荷管理:納期や販売計画通りに出荷ができているか管理する機能

生産管理システムは、製造工程の流れを効率化するためのシステムです。そのため、製造に必要な機能が一通りそろっています。

導入シェア上位、生産管理システムの代表例

引用元:ビジネスIT「生産管理システム11製品を比較、製造業の課題から導く選定のポイント」

生産管理システムのシェア上位として有名なのは、大塚商会・富士通・NECの3社です。中でも、大塚商会の生産管理システム「生産革新シリーズ」は、シェア率を大きく伸ばしています。

生産革新シリーズは、受注方式や生産内容に合わせたシステムを提供しているのが特徴。様々な企業にあわせた提供体制により、生産管理の効率化を実現が可能です。

ERPの特徴と目的とは?

ERPとは、企業資源計画(Enterprise Resource Plannning)のこと。企業全体をデータベース化し、リソースの有効活用やビッグデータの分析などが可能です。

生産管理システムが持つ機能も、ERPの一機能として備わっています。ERPについて、以下の3点に着目して解説します。

ERPは生産~全体を管理するシステム

ERPは、人事・物流・会計・生産・販売など、企業の基幹業務を統合して管理できるシステムです。情報の一元管理によって可能になるのは業務の効率化。

これまでは、業務ごとに異なる基幹システム導入によって、データ探し・作成に時間を要する場面がありました。部門ごとにシステムが分かれており、データの保管場所・形式が異なっていたためです。

しかし、基幹業務を統合して管理できれば、そういった場面は激減するでしょう。結果的に、ERPはヒューマンエラーや無駄な時間を減少させ、企業全体の効率化を可能にします。

ERPの目的は、生産面だけでなく「経営の最適化」

情報化社会の中、企業経営者には素早い状況・経営判断が求められています。適切な経営判断のためには、必要なリソースを素早く手に入れる必要もあるでしょう。

ERPはリアルタイムで全社の情報共有が可能なシステムです。情報化社会の中で生き抜くために必要な情報が、すぐに取り出せます。

ERPは、流動的な状況が続く現代社会において、企業力を身に付ける手段として有効です。

ERP導入、生産管理面をふまえた3つのメリット

ERP導入のメリットは「業務効率化・ペーパーレス化・情報管理の簡易化」の3つです。さっそく、3つのメリットを見てみましょう。

  • ミスの減少による業務効率化

製造業では、業務分野ごとに違った単位が使用されるケースがあります。たとえば、生産計画では年~日の単位を使用しており、製造現場では日~秒の単位が使用されているケース。

1つのデータに統合した際、単位を間違えて入力してしまうミスが起こりがちです。ERPの情報一元管理機能は、ヒューマンエラー解消・業務効率化に貢献します。

  • ペーパーレス化

ERPのセキュリティレベルは日々進化を遂げ、様々な脅威から企業の情報を守ります。ゆえに、重要書類や個人情報関連の書類は、全てデータ化が可能に。

税務調査に必要な書類を探すのに、乱雑な書庫の中にこもる必要もなくなるでしょう。さらに、プリンターのトナーやプリント紙のコスト削減も可能です。

ERPは「トナーやプリント紙は絶対的に必要な経費」という概念すら覆します。

  • 情報管理の簡易化

ERPは役職や役割ごとに、適切なアクセス権限を設定可能です。社員や顧客の個人情報が漏えいするリスクが少なく、情報管理がより簡易的になるでしょう。

MESとは、製造手順の情報を管理するシステム

MESとは、製造工程の情報把握により、管理・作業者への指示や支援を行うシステムです。生産ラインの核製造工程と連携し、必要に応じて機能を使い分けます。

本章では、MESの基礎知識について解説します。

MESの目的は品質固定化

MESは、品質管理をサポートするのが役割の1つです。不良品の発生データは全てMESが蓄積、いつでも取り出し可能です。

不良品が発生した状況が素早く把握でき、原因の究明が効率化。不良品の発生率低下、および品質の固定化につながるでしょう。

MESは熟練職人の知識をデジタル化

環境や整備の違いを乗り越えて少量多品種生産を可能にしているのは、熟練技術者の知識と経験でした。しかし、熟練技術者に頼っていたままでは属人化リスクがあります。

若手を育てようにも、労働力不足によってかなわない場面も増えているでしょう。そこで活躍するのがMESです。

MESは、熟練技術者の知識と経験をデジタル化して保管。経験の浅い技術者も、熟練技術者の知識と経験を活かした仕事が可能です。

生産管理システム・ERP導入のメリット3つ【製造業視点】

生産管理システムやERPの導入で、得られるメリットはおもに下記の3つです。

さっそく、詳しく解説します。

関連記事

ERPの最大のメリットは、部門ごとに分散したデータを一元管理できることです。このメリットは、さまざまなメディアでたびたび目にするため、「すでに知っている」という方も多いでしょう。 しかし、「データを一元管理することで何が変わるのか?・どの[…]

メリット1.コスト削減

生産管理システムやERPによる機械管理は、より幅広い作業の自動化を可能にします。単純作業を自動化できれば、人件費の削減のほか、生産性向上にもつながるでしょう。

システムの運用保守費用の点からすると、ERPが特に大きなコスト削減効果をもたらします。ERPは単一システムで全社的な管理ができ、複数ベンダーに保守費用を支払う必要がありません。

システムごとのメンテナンス管理も不要になり、より少ない人数でのシステム管理が可能になるでしょう。

メリット2.見える化促進

生産管理システム・ERPを活用すれば、工程の状況把握による見える化が可能です。作業者が置かれている状況をリアルタイムで把握でき、必要な指示を素早く伝達できます。

特に、規模が小さく変更の多い製品では、生産管理システムやERPが活躍します。情報のリアルタイム共有によって、指示変更が後手に回る状況を阻止。

管理者が素早く的確な指示を出せて、ムダの少ない製造と生産性向上が見込めるでしょう。

メリット3.ノウハウ共有

生産管理システムやERPは、製造に関するノウハウを共有できるのもメリットです。従業員のスキルに頼っていた作業を自動化し、特定の人材に頼らない生産が可能に。

結果的に属人化の防止にもつながり、生産性が頭打ちになる状況を回避しやすいでしょう。ノウハウを共有できれば、新人育成に必要な時間短縮に期待できるのもポイントです。

たとえば、A・Bという2つの製品を製造するとします。A・Bは、効率的な製造に必要なポイントがあります。

上記のような情報は、製品ごとにポイントが異なるため、マニュアルへの記載は困難。しかし、生産管理システム・ERPによってノウハウを共有できれば、細かな情報の共有が可能です。

新人の育成時間短縮は、生産性の向上につながります。

ERP×生産管理で失敗回避のための注意点3つ

ERPの導入を、成功につなげるための注意点は下記の3つです。

注意点の詳細を見ていきましょう。

関連記事

近年、ERP導入に取り組む企業が増えている一方で、失敗に終わるケースも増加しています。ERPは、企業経営の根幹を支えるシステムなだけに、従来のものよりも導入が難しいのです。 導入のご検討中の方は、「何が原因で失敗するのか?」「どのように取[…]

注意点1.ERP導入目的を明確化

「ERPの導入」はゴールではありません。ERPの導入は「【入門編】ERPシステムとは?導入効果・手順と注意点を解説」で解説しているように、大変な作業です。

そのため、ERPを導入した段階で満足する気持ちもわかります。

しかしERPは、活用しなければ本末転倒。ERP導入前に目標を数値化し、ERP導入はスタート地点であることを念頭に置いておくべきでしょう。

注意点2.ERP導入に向け目的を説明

ERP導入に必要な手間やコストは莫大です。そのため、ERP導入についての説明をおろそかにすると、思わぬ反発を買いかねません。

最も表面化しやすいのは、ERP導入費用問題でしょう。物価上昇が続く昨今では、給与の増加を求める声が後を絶ちません。

ERP導入によって、どのように業績が向上し、どのように還元されるのかについてを十分に説明しましょう。

注意点3.フィット率の高いERPを選ぶ

ERP選びは、Fit&Gap分析を行い、フィット率の高いシステムを選ぶべきです。Fit&Gap分析とは、自社の要件とERPの機能を比較する作業のこと。

候補となるERPにFit&Gap分析を行い、自社の要件の充足度を確認しておきましょう。フィット率が高い事例については、下記記事をご覧ください。

関連記事

本記事では、弊社のERP(IFS Applications)を導入いただいたお客様のリアルな声をお届けします。 リアルな声の内容は、以下3つです。 お客様のERP導入時の悩み 導入の決め手となった理由 導入後にお客様が体感[…]

ERP・MES・生産管理システムは連携すべき?

ERPは、生産管理システム・MESとの連携が可能なシステムです。それでは、ERP・生産管理システム・MESの連携は現実的なのでしょうか。3つの観点から解説します。

1.連携メリット:使い慣れたシステムを使用可能

ERP・生産管理システム・MESの連携は、新規システムに慣れるまでの生産性低下リスクを軽減可能です。新規システムを導入した場合、導入までの指導期間があったとしても、作業者全員に浸透するまでは時間が必要。

そのため、新規システム導入後は、一時的な生産性低下が懸念されます。一方でシステムを連携させた場合は、生産低下のリスクを考慮せず、早い段階での生産性向上に期待できるでしょう。

システム連携は、新規システムの操作に必要な指導期間が必要ない点もメリットです。システム開発から導入までの期間が短縮され、導入コスト削減にも直結します。

2.連携デメリット:システム間エラー発生リスク

ERP・生産管理システム・MESの連携は、一時的な通信状態の悪化に起因したエラーが発生しやすいのがデメリットです。それぞれのシステム自体は正常に稼働を続けていても、わずか数秒にも満たない通信断絶がエラーを引き起こします。

通信状態はインターネットの使用状況によって刻々と変化するため、100%の対処は困難。しかし、システム間エラーの回復にはベンダーの協力が必要です。

エラーが発生するたびに業務が中断されていては、業務効率化ができず、システム間連携の大きなメリットを失いかねません。

【結論】システム間連携よりERP導入が現実的

システムの連携は、導入費用の削減に期待できますが、そもそもの目的である業務効率化を達成できないリスクがあります。目的を達成できず、使いにくさが目立つシステムは、ブラックボックス化・レガシー化が進む可能性も。

一方でERPを導入した場合、システム間エラーにおびえることはありません。ERPの導入費用は決して低くはありませんが、業務効率化・見える化・経営の最適化など、得られるメリットは十分にあります。

ERP導入費用は、競争力を身に付けるための投資となり得るでしょう。

生産管理に役立つ!ERPの見極めポイント3つとは?

ERPを選ぶときに重要なのは、下記3つのポイントです。

数多くのERPの中から、自社に適したシステムを探す際にお役立てください。

関連記事

選定するERPによって、プロジェクトの成否が分かれると言っても過言ではありません。仮に自社要件との適合度が低ければ、多額の追加コストがかかるばかりか、当初の目的を達成できない恐れもあります。 本記事では、自社に最適なERPの選び方を解説し[…]

ポイント1.ERPは全体的な効果で評価すべき

ERPは、生産管理に必要な受注管理・生産計画・必要材料シミュレーション・工程管理・原価管理など、基本的な機能が十分に備わっています。しかし、ERPを選ぶときは、生産管理以外の業務効率化が同時に図れるかをチェックすることが大切。

ERPは、全社的に業務を効率化し、企業の経営を最適化するのが目的のシステムです。販売・流通・経理など、生産管理部門以外の意見を募り、検討しましょう。

全体を捉えた、俯瞰的な視点でのERP選びを意識するのが大切です。

ポイント2.業界に対応したERPかをチェック

ERPパッケージの中には、業界別の課題に特化した機能を備えたものも多く存在します。業界特化型のERPパッケージは、業界ごとのテンプレートが用意されており、現行の業務になじみやすいのがメリット。

自動車業界・金属加工・機械製造業など、自社の業界に合ったERP選びにより、ERPで得られる恩恵最大化に期待できるでしょう。

ポイント3.クラウド型かつコンポーネント型ERPが活用しやすい

「クラウド型ERPは、セキュリティがネック」というのは、間違いではありません。しかし、逆を返せば「ERPはセキュリティが良ければ導入する価値が十分にある」のです。

サーバー設置不要で、自社に必要な機能を選択できるコンポーネント型ERPであれば、コストを抑えたい中小企業も導入しやすいでしょう。柔軟性に富んだ社会においては、柔軟性のあるクラウド型・コンポーネント型ERPの導入が有利です。

生産管理やERP、システム導入でお悩みの方へ

今回お伝えしたポイントは、以下の3つです。

  1. 生産管理システムとERPの違いは管理可能な範囲と目的
  2. ERPには十分な生産管理機能がある
  3. ERPの導入で企業力が身に付く

ERPを導入し、業務効率化を図ってみてください。きっと、競争力が身に付くとともに、貴重な人材を逃がさずにすみます。

なお、当メディア「IFS LABO」では、製造業向けERPシステムの活用例や導入事例に関する資料を配信しております。ERPシステムの活用によるDX推進をお考えの方は、以下よりお気軽にご請求ください。

ERP資料・導入事例はこちら

―――最適なソリューションを最適なコストで。

チェンシージャパン株式会社(IFSチャネルパートナー)は、「IFS Applications」の販売・導入・構築・運用までワンストップで提供中。

専門コンサルタントにより、お悩みを丁寧にヒアリングの上、最適なご提案をさせていただきます。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

 
 
最新情報をチェック!
>グローバルERP IFS導入におけるシステムインテグレーター『チェンシージャパン株式会社』

グローバルERP IFS導入におけるシステムインテグレーター『チェンシージャパン株式会社』

チェンシーグループの日本法人として、アジア地域の企業に向けて高品質で革新的なソリューションを提供しています。日本・アメリカ・中国・タイを拠点にIFS経験者を100名以上を抱え、海外拠点へ進出されるお客様プロジェクトの円滑な支援も実現します。

IFSに関するコンサルティング・導入・運用保守までのサービスを通じてお客様ビジネスの効率化と成長の実現を共に目指します。サイト内には導入事例やホワイトペーパーもございます。情報収集にお役立てください。

CTR IMG