ERPを導入するにあたり、最初の障害となるのが製品の選定です。「他の企業ではどのようなERPを運用しているのか・信頼性の高いERPを導入したい」との思いから、ERPの市場シェアを把握したい方も多いでしょう。
本記事では、国内外のERP市場シェアを解説します。また記事の後半では、最新のERP情報や正しい製品の選び方もまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【2024年最新】世界のERP市場シェアランキング
出典:Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028|Apps Run The World
上記は、アメリカの調査会社「Apps Run The World」が公表した、2023年の世界のERP市場シェアをまとめたグラフです。本調査によると、世界のEPR市場シェア上位3社は以下のとおりです。
- ERP世界シェア1位:SAP社
- ERP世界シェア2位:Oracle社
- ERP世界シェア3位:Intuit社
ここでは、世界のERP市場シェア上位3社の概要と製品を紹介します。
ERPシェア1位:SAP社
SAP社は、世界のERP市場シェアでトップを誇る企業です。同社は、さまざまな業界にソリューションを提供しており、180カ国以上に顧客を抱えています。
また、SAP社のERPは、世界的にも高い評価を獲得しています。実際、ICT調査機関最大手のガートナーからは、最高評価のリーダーに認定されるほどです。
現在、SAP社が提供するERPは、主に以下の4種類です。
- SAP S/4HANA:中堅〜大企業向け
- SAP Business ByDesign:中小〜中堅企業向け
- SAP Business One:中小企業向け
- ※SAP ECC :大企業向け
特に、SAP S/4HANAは世界トップシェアを誇るERPです。優良企業のベストプラクティスをもとに構築されており、業務の統合性とデータ処理能力の高さが魅力です。
なお、これまでSAPの主力であったSAP ECC は、2027年をもってサポート・保守が終了します。この影響もあり、近年はSAP S/4HANAへの移行が加速しています。
「SAPはITに関する言葉らしいけど、何を表しているんだろう?」との疑問をお持ちではないでしょうか。この記事では、SAP…
ERPシェア2位:Oracle社
世界のERP市場で第2位のシェアを誇るのが、Oracle社です。Oracle社は、いち早くクラウド型ERPに着手し、世界的に高い信用を獲得しています。
Oracle社が提供するERPは、主に下記の2つです。
- Oracle NetSuite:中小企業〜中堅企業
- Oracle Fusion Cloud ERP:中堅企業〜大企業
中でもOracle NetSuiteは、全世界で38,000社以上もの導入実績を誇る、主力のERPです。190種類以上の通貨と19言語に対応しているため、各国に拠点を持つグローバル企業でもリアルタイムな業務統合が可能です。
前述したSAP社と同様、Oracle社のERPも高く評価されており、ガートナーからリーダーに認定されています。また、近年は着実にシェアを拡大しており、SAP社に迫る勢いを見せています。
高いERPシェアを誇るOracle社は、2種類のERP製品を提供しています。主力製品であるOracle ERP Clou…
ERPシェア3位:Intuit社
Intuit社はアメリカを中心に、中小企業向けのERP・会計管理システムを提供する会社です。前述した2社とは異なり、徹底して中小企業向けの製品に特化している点が特徴です。
主力製品である「QuickBooks」は、主にアメリカ・カナダ・インド・中国など、人口の多い国で導入されています。ただし、日本ではIntuit社の製品がそれほど普及していないため、比較的馴染みが薄いのではないでしょうか。
【2024年最新】 国内の中小企業・中堅企業のERPシェアランキング
国内のERP市場で、高いシェアを誇るのは以下の3社です。
- 株式会社大塚商会
- 富士通株式会社
- SAPジャパン株式会社
本章では、国内で高いシェアを誇る上記3社の特徴と製品について紹介します。
国内ERPのTOPシェア1.株式会社大塚商会
株式会社大塚商会は、ERPのみならず、生産管理システムや販売管理システムなど、さまざまなICTソリューションを提供しています。
開発〜導入をワンストップで対応しているため、連携度の高いシステム構築を実現します。大塚商会が提供する主力ERP製品は、「SMILEシリーズ」です。
SMILEシリーズは、約40年もの歴史を持つシステムであり、これまでに培ったノウハウや企業のベストプラクティスを搭載しています。また、一部業務を自動化するRPA機能も内包しているため、バックオフィス業務の最適化を実現します。
国内ERPのTOPシェア2.富士通株式会社
富士通株式会社が提供する主なERPは「GLOVIAシリーズ」です。
GLOVIAシリーズの特徴は、対応業務が異なる複数のERPパッケージに分かれている点です。たとえば、会計・人事給与・販売・生産を軸に経営基盤を強化する「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA iZ」や、販売・会計・人事を内包する「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA きらら」などがあります。
導入企業は、会社の規模感や課題、ニーズにあわえて適切なERPを選択できます。こうしたニーズへの対応力の高さから、国内ERPシェア2位の人気を誇っています。
国内ERPのTOPシェア3.SAPジャパン株式会社
SAPジャパン株式会社は、先述したSAP社の日本支部であり、国内企業向けにSAP社製のERPを提供しています。
SAP社のERPは世界スタンダードといわれるほど信頼性が高く、多くの日本企業が導入しています。
最新のERP市場の動向
近年、国内外問わずERP市場規模が急速に拡大しています。アメリカの調査会社Apps Run The Worldが発表した調査によると、世界のERP市場規模は2023年時に 1,242 億ドル(約18兆6,300億円)でした。
2028年まで成長率3.6%で推移し、1,482億米ドル(約22兆2,300億円)に達すると推測しています。
なお、国内のERP市場も拡大傾向にあり、リサーチ会社株式会社矢野経済研究所によると、2022年の国内ERP市場規模は、前年度比10.9%の1,406億4,000万円でした。2025年には1,797億円に達すると予測しています。
ここでは、拡大の一途を辿るERP市場の動向について、深掘りして紹介します。
クラウドERPがシェアを拡大!
ERPは、大きく分けてオンプレミス型とクラウド型に分類できます。オンプレミス型とは、社内に設置したサーバーにてERPの保守・運用を担う形態で、クラウド型は文字通りインターネットを通じてシステムを利用する形態のことです。
以前のERPはオンプレミス型が主流でしたが、近年、クラウド型へと移行する動きが活発化しています。以下は、調査会社株式会社アイ・ティ・アールが公表した、ERPの形態別の市場規模推移です。
パッケージ(オンプレミス型)の市場規模が横ばいなのに対し、SaaS(クラウド型)が大きく増加しているのが見て取れます。
クラウドERPとは、インターネット環境さえあれば、どこからでも利用可能なERP形態のことです。オンプレミス型よりも初期費用・導入期間を抑えられるため、近年では中小企業での導入が加速しています。 この記事では、クラウドERPのメリット・デメ[…]
クラウドERPが人気な2つの理由
先のデータでも示したとおり、近年クラウド型ERPの市場規模が大きく拡大しています。この背景にあるのは、主に以下2つの要因です。
- 導入期間・導入コストが抑えられる
- 多様化する働き方にも対応可能
1つ目の理由は、導入期間・コストが抑えられることです。クラウド型ERPは、ベンダーが管理するサーバーにて管理されるため、導入企業がサーバーを設置する必要がありません。
結果、オンプレミス型のERPよりも導入・運用コストを安く抑えられます。また、クラウド型はすでにパッケージ化されたERPを導入するため、短期間での導入が可能です。
2つ目の理由は、多様化する働き方にも対応できるためです。オンプレミス型ERPの場合、社内ネットワークを介してERPへアクセスします。
そのため、アクセス導線を確保しなければ、外出先などからのアクセスが制限されます。その点クラウド型は、インターネットを介してアクセスできるため、テレワークなど場所を選ばない働き方にも対応できるのです。
こうした理由から、資金力やリソースが限られた中小企業を中心に、クラウド型ERPへ移行する動きが活発化しています。
ERPの構造を見直した次世代型のソリューションも登場
ERPの変化は、提供形態のみにとどまりません。近年、中小企業での導入が加速・クラウド型ERPが台頭したことで、システムの構造自体も大きく変化しつつあります。
かつてのERPは全社最適化を目的としており、単一のシステムで基幹業務全体を網羅するものが主流でした。しかし近年は、ビジネス環境の変化へ柔軟に対応すべく、各機能を自由に組み換えてシステムを構築する、コンポーザブルERPが注目されています。
コンポーザブルERPとは、システムの対象をコア業務に絞り、残りを外部ツールや別のシステムとの連携で補うというものです。ベースとなるERPは比較的小規模なため、低コスト・短期間での導入が可能です。
また、連携するシステムの入れ替えにより機能をカスタマイズできるため、あらゆるビジネス環境へ柔軟に対応できます。
コンポーザブルERPとは、2020年にガートナー社が提案した新たなERPの形態です。従来のERPよりも細かなシステム要件に対応できると、注目を集めています。 本記事では、従来型のERP形態をおさらいしつつ、コンポーザブルERPの概要とメリ[…]
【注意】ERPシェアだけでなく、「機能・操作性」も考慮しよう
しかし、ERPを導入する本来の目的は、情報共有の円滑化や経営資源の有効活用、ひいては社内全体の最適化です。社内状況や業務フローは会社ごとに大きく異なるため、たとえトップシェアのERPを導入したとしても、目標を達成できるとは限りません。
場合によっては、既存システムとの不適合が発生したり、現場から受け入れられなかったりと、ERP導入が失敗に終わるケースもあります。そのため、ERPを選定する際はシェアのみならず、搭載機能や操作性、既存業務・システムとの兼ね合いなどを総合的に判断することが重要です。
自社に適したERPを選ぶための4つのポイント
- 自社業務・目的との適合度の高さ
- ERPの拡張性・柔軟性の高さ
- ERP導入後のサポートサービスの充実度
現状、ERPの導入をお考えの方は、上記4つの選定ポイントをぜひご確認ください。
選定するERPによって、プロジェクトの成否が分かれると言っても過言ではありません。仮に自社要件との適合度が低ければ、多額の追加コストがかかるばかりか、当初の目的を達成できない恐れもあります。 本記事では、自社に最適なERPの選び方を解説し[…]
ポイント1.自社業務・目的との適合度の高さ
1つ目のポイントは、自社業務・目的との適合度の高さです。ひとえにERPと言っても、製品ごとに搭載機能や対応業務が異なります。
たとえば、バックオフィス業務に特化したERPもあれば、製造業に特化したERPも存在します。万が一、自社の要件を洗い出さすにERPを選定すると、業務・商習慣とシステムの標準機能に大きなギャップが生まれかねません。
ギャップを埋めるには、機能の開発やカスタマイズが必要なため、その分多くのコストがかかります。機能の開発・カスタマイズコストを抑えるためにも、ERPを選定する段階から、自社との適合率が高い製品を見つけ出すことが大切です。
ポイント2.ERPの拡張性・柔軟性の高さ
2つ目のポイントは、ERPの拡張性・柔軟性の高さです。ERPの拡張性・柔軟性は、変化するビジネス環境への対応力を高めるうえで重要なポイントです。
たとえば、ERP導入からしばらくして、業務課題の解決に向けた業務改革を実施することもあるでしょう。この場合、変更した業務にERPの機能を適用させる必要があります。
ただ、拡張性・柔軟性の低いシステムでは、改革後の業務プロセスに対応できないでしょう。したがって、ERPの長期的な運用を見据えるうえでも拡張性・柔軟性の高さを考慮した製品選定が重要です。
ポイント3.ERP導入後のサポートサービスの充実度
3つ目のポイントは、ERP導入後のサポートサービスの充実度です。ERPのベンダー企業は、それぞれ独自のサポートサービスを提供しています。
たとえば、導入支援サポートやシステム管理部向けの教育セミナーなどです。仮に自社の人員のみでERPの導入・運用を進めることが困難な場合は、サポート体制が充実したベンダー企業を選ぶと良いでしょう。
ポイント4.ERPのイニシャルコスト・ランニングコストの高さ
4つ目のポイントは、ERPのイニシャルコスト・ランニングコストの高さです。一見、「当たり前なこと」と思われるかもしれませんが、実はERP導入で見落としがちなコストがいくつかあります。
具体的には、ERP導入プロジェクトにかける時間と労力です。差異はあれど、ERPの導入・運用にはかなりの時間と手間がかかります。
導入だけでも半年〜1年ほどかかりますし、運用後もトラブルシューティングが欠かせません。仮に、機能過多な大規模ERPを選択すると、かえって自社の足枷になる恐れがあります。
したがって、ERPを選定する際は、金銭的なコストだけでなく、時間・労力などの経営資源にも目を向けて比較することが大切です。
製造業向けERPをお探しの方へ
ERPの導入をお考えの方は、ぜひ本記事を参考に自社の業種・業務に適したERPを選定してみてください。
弊社チェンシージャパン株式会社は、製造業に特化した「IFS Cloud」を提供しています。また、ベンダーとしての専門的な知見をもとに、ERP導入企業の支援にも力を入れております。
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