【IT初心者向け】SAPとは?構成モジュールについての基本知識と会計ソフトとの違い

ERP

ERPの世界シェア第一位を誇るSAP

SAPについて、一体どのようなシステムなのか、との疑問をお持ちはないでしょうか。

IT初心者の方に向け、SAPの基礎知識と会計ソフトの違いを解説します。

また、記事の後半では、SAP知識の効果的な学習方法も紹介しているため、ぜひご覧ください。

【基礎知識】ERPとは?

SAPがどのようなシステムなのかを解説する前に、ERPについて簡単におさらいします。

ERPとは、 Enterprise Resource Planningの頭文字をとった言葉で、日本語では、企業資源計画と訳します。

元々は、ヒト・モノ・カネなど、企業の経営資源を効率よく活用するという概念を表す言葉でしたが、現在では、統合期間業務システムやERPシステムなどとも呼ばれています。

ERPシステムは、会社における会計・人事・生産・販売などの基幹業務を統合し、社内情報を一見管理するためのシステムです。

ERPシステムは、基幹システムと混同されがちですが、双方は全くの別物

基幹システムは、各基幹業務単位で導入されており、対象業務のみの効率化を目的としたシステムであるのに対し、ERPシステムは全社の効率化が目的です。

ERPシステムを導入することで、全業務が一元的に管理され、データ共有・データ入力などの業務を削減できます。

また、経営者が社内情報を瞬時に把握できることで、正確な経営分析や迅速な意思決定をおこないやすいのです。

近年の目まぐるしい市場変化に対応するため、ERPシステムを導入する企業が年々増加しています。

SAPとはSAP社製のERP製品

SAPとはドイツにあるソフトウェア会社のSAP社が製造するERP製品のこと。

ERP製品には、SAP以外にもOracleやMicrosoft、IFSなど数多くのパッケージが存在します。

引用:トップ10のERPソフトウェアベンダー、市場規模、市場予測2019-2024|Apps Run The Worldn

IT市場の調査企業APPS RUN THEWORLDによると、SAPのシェアは全体の6%で、世界第1位を誇っています。

全世界18,300社以上で導入されている、信頼性の高い製品です。(参照:SAPが選ばれる理由|SAP公式サイト)

また、30種類以上の言語に対応しており、各国の税制・商習慣にも適応するなど、海外拠点・グループ企業への導入も可能。

海外進出に伴い、SAPを導入する企業は多く存在します。

SAPを構成する4タイプのモジュール

SAPの特徴をより深く理解するためには、モジュールについて理解することが大切です。

モジュールとは、システムの機能をひとまとめにしたもののこと。

中でも、SAPの主要なモジュールは下記4つです。

  • 財務会計(FI)
  • 管理会計(CO)
  • 販売管理(SD)
  • 調達/在庫管理(MM)

もちろん上記以外のモジュールも存在しますが、まずは重要度の高い4タイプを詳しく解説します。

モジュール1.財務会計(FI)

1つ目のモジュールは、SAP FIと略される財務会計モジュールです。

財務会計モジュールは、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)など社外向けの財務諸表を作成するための機能です。

貸借対照表や損益計算書を作成する財務会計は、どの会社でも欠かせない業務。

そのため、SAPを導入する企業のほとんどが財務会計モジュールを使用しています。

財務会計モジュールに分類される機能には、主に次のものがあります。

サブモジュール 略称 機能
総勘定元帳 FI-GL
  • 会社の取引を記録する機能
  • 他モジュールのデータが連携され 、会社仕分けが登録
債権管理 FI-AR
  • 得意先補助元長の作成
  • 得意先別に売掛金・未収金の残高・明細を管理
債務管理 FI- AP

仕入れ先補助元帳を作成

  • 仕入れ先別に買掛金・未収金の残高・明細を管理
固定資産管理 FI-AA 有形・無形資産を固定資産として管理

財務会計モジュールは、データ入力や明細管理などの財務会計業務全体をサポートするため、業務削減やヒューマンエラーの防止が期待できます。

モジュール2.管理会計(CO)

2つ目のモジュールは、SAP COと訳される管理会計モジュールです。

管理会計モジュールとは、主に社内の原価管理をおこなうための機能です。

先の財務会計モジュールが、社外向けの財務諸表を作成するのに対し、管理会計モジュールでは、社内向けの財務報告書などを作成します。

SAPの場合、購買・生産・販売データが管理会計モジュールに連携され、標準原価計算のみならず、実際原価計算まで可能

管理会計モジュールには、主に下記の機能が備わっています。

サブモジュール 略称 機能
間接費管理 CO-OM

人件費や光熱費などの間接費を部門ごとに集計

間接費を各直接部門に配賦管理

製品原価管理 CO-PC 標準原価・実際原価・原価再分析
収益性分析 CO-PA 品目・プラント・得意先ごとに収益性分析

管理会計モジュールを使用することで、正確に原価計算ができるため、調達・生産・販売の最適化が実現できます。

モジュール3.販売管理(SD)

3つ目のモジュールは、SAP SDと略される販売管理モジュールです。

販売管理モジュールは、注文を受注してから請求までのプロセスを管理します。

具体的には、次の機能を機能を有します。

プロセス 機能
受注 得意先ごとに受注管理
出荷
  • 出荷内容の管理
  • 出荷日程から製品準備日程の割り出し
請求
  • 得意先への請求管理
  • 財務会計と連携し売上の計上

上記では、一般的なプロセスを元にな機能を示しましたが、サービス業などの受注→請求というプロセスにも対応しています。

また、製品返品時の返品受注→入荷→請求取り消しにも対応しているため、様々な業種への柔軟な対応が可能です。

モジュール4.調達/在庫管理(MM)

4つ目のモジュールは、MMと略す、調達/在庫管理モジュールです。

先の販売管理モジュールは、自社が製品を販売するためのモジュールでしたが、調達/在庫管理モジュールは資材などを買うためのモジュール

購買依頼・購買発注・入庫・請求書照合の4プロセスを管理します。

資材調達や在庫管理の最適化を目指したモジュールのため、主に製造業の会社が使用する傾向にあります。

調達/在庫管理モジュールを使用することで、資材調達が最適化され、不良在庫のリスク回避やキャッシュフローの円滑化が期待できます。

SAPと会計ソフトの違いとは?

SAPのモジュールは、会計ソフト重複する部分が多く、混同してしまいがちです。

しかし、SAPと会計ソフトは異なったシステムのため、双方の違いを明確にすることが大切です。

SAPと会計ソフトの違いは、主に下記の2つがあります。

  • 導入目的
  • 対象範囲

1つ目の大きな違いは、システムの導入目的です。

会計ソフトを導入する一番の目的は、会計業務の効率化。

貸借対照表や損益計算書などの作成に必要なデータを迅速に収集し、会計業務の円滑化をはかります。

一方、SAPの導入目的は、社内業務全体の最適化。

基幹業務を統合し、情報を一元的に管理することで、情報の円滑化・部門間での重複業務の削減が期待できます。

2つ目の違いは、システムの対象範囲です。

会計ソフトの対象範囲は、経営資源であるヒト・モノ・カネのうち、カネの部分にフォーカスしています。

しかし、SAPの対象範囲は、ヒト・モノ・カネすべてを対象としています。

したがって、SAPの方が幅広い機能を搭載しており、会計を含めた社内の全業務を最適化できます。

SAP導入時に必要な2つの作業

これまでの内容で、SPAがどのようなものなのかを理解できたかと思います。

この章では、SAPの一番の山場である、導入時に必要な作業について解説します。

作業1.パラメータの設定

SAPが世界中の企業で利用される理由には、パラメータの設定が大きく関係しています。

SAPは様々な業種に対応するため、幅広いパラメータ設定によってシステムの最適化が可能

パラメータと聞くと、簡単な設定をイメージするかもしれませんが、ERPシステムのパラメータは、専門知識が求められるほど複雑な設定作業です。

中でも、SAPのパラメータは複雑性がより顕著であり、SAPコンサルなどのサポートが必要なほど

SAPの導入企業では、SAPコンサル・SAPエンジニアなどの外部機関に依頼し、初期パラメータ設定するケースが一般的です。

作業2.必要機能のアドオン開発

導入時に必要な2つ目の作業は、必要機能のアドオン開発です。

アドオン開発とは、先のパラメータ設定で対応できない機能を拡張する作業のこと。

SAPのアドオン開発では、SAP専用のプログラミング言語であるABAPを用いるため、SAPエンジニアの助力が必須です。

また、アドオン開発の結果によっては、バグが発生する可能性もあるため、優秀なエンジニアの雇用が求められます。

しかし、高度な専門知識が求められるSAPエンジニアは人数が少なく、なおかつ需要は高まり続けているため、多額の開発コストが生じます。

SAP知識の効果的な学習方法

IT初心者の方がSAP知識を身につけるためには、下記の学習方法がおすすめです。

  • SAPの動画教材で学ぶ
  • SAPの専門書で学ぶ

それぞれの学習方法について、詳しく解説します。

方法1.SAPの動画教材で学ぶ

1つ目の学習方法は、SAPの動画教材で学ぶことでです。

中でも、SAP社が公式に提供しているLearning Hubがおすすめ。

有料のコンテンツですが、大手コンサル会社なども導入している信憑性の高い教材です。

Learning Hubの内容を一通り理解できれば、現場でも通用する最低限のスキル・知識が身についているでしょう。

ただし、コースによっては40万円と高額なものもあります。

会社のプロジェクトでSAPについて知る必要が出てきた方やSAPコンサルを目指す方では、学習すべき内容が異なります。

そのため、学習内容と費用をじっくり検討するとよいでしょう。

方法2.SAPの専門書で学ぶ

2つ目の学習方法は、SAPの専門書で学ぶこと。

先ほどの教材よりも安価なため、ハードルが低く取り組みやすいのではないでしょうか。

また、書籍はネット上の情報と違い、校閲を通過しているため、記載内容の信憑性が高いケースがほとんどです。

SAP以前に、ITについての知識がない方でも読みやすい入門書も出版されているため、一度試してみてはいかがでしょうか。

中でも、「図解入門 よくわかる最新SAPの導入と運用」は入門書でありながら、現場レベルの実践的な内容も書かれているため、一度目を通しておいて損はないでしょう。

SAPへの理解を深めよう

この記事では、SAPの基礎知識と会計ソフトの違いを解説しました。

SAPは、ドイツのソフトウェア会社SAP社が提供するERPのこと。

世界中の企業で導入されるなど、信頼のある製品です。

SAPについて理解を深めたい方は、今回紹介したLearning Hub図解入門 よくわかる最新SAPの導入と運用を活用してみてください。

 

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