工場の見える化に伴い、ディスプレイを設置し様々な情報を表示できれば、業務効率化・ヒューマンエラー対策を同時に実現可能です。
しかし、「工場の見える化をどうしていくか、ディスプレイに何を表示すべきか?」など、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、工場の見える化の基礎知識・ディスプレイに表示すべき項目を解説します。
【基礎知識】工場の見える化とは?
工場の見える化・見せる化の違いや、見える化の目的とは何でしょうか。
ポイントは以下2つです。
本章では、工場の見える化の基礎知識を詳しくみていきましょう。
1.工場の見える化、目的は「業務効率化」
工場の見える化は、生産ラインや生産機器などの状況を可視化し、課題発見改善による業務効率化が目的です。
見える化の具体的な手順は下記の通りです。
- センサーをはじめとしたIoT機器でのデータ収集
- 収集したデータの分析
- 生産ラインの最適化
- AIを活用し、制御を自動化
工場の見える化は、生産現場が抱える課題発見・分析・改善のサイクルを繰り返す取り組み。
効果を発揮するまでにはある程度の時間が必要なものの、取り組むうちに業務効率化や生産性向上につながります。
工場の見える化は、DXやスマートファクトリーを目指す企業にとって避けては通れない道です。 なぜなら、工場の見える化ができていなければ、効率的な生産性向上が見込めないため。 本記事では、工場の見える化の基礎知識に加え、工場の見える化による[…]
2.工場の見える化・見せる化の違い
工場の見える化と見せる化は、目的が異なります。
見える化と見せる化の意味と目的を比較してみましょう。
- 見える化:IoT機器(センサーなど)で工場内情報を収集・分析し、業務改善・効率化する
- 見せる化:さまざまな情報を単純にたくさん見せる、管理よりも常時モニタリングが目的
見える化・見せる化は似通った言葉ですが、意味合いは全く違ったものです。
意味を履き違えたままで工場の見える化に取り組んだ場合、業務効率化が困難になる可能性があるため気を付けましょう。
工場見える化で情報を表示する4つのメリット
工場の見える化で、情報をディスプレイに表示するメリットは以下の4つです。
各メリットを詳しくみていきましょう。
メリット1.情報共有がスムーズ
工場内にディスプレイを設置すると、管理側が発信したい情報を速やかに現場に伝達できます。
たとえば作業内容に変更が生じた場合に、作業指示書を片手に生産ラインまで移動・説明する必要がなくなるのです。
作業手順書の変更点はディスプレイに表示され、作業者は各自確認する仕組みの構築です。
情報発信を双方向にできるシステムを構築した場合は、製造現場で発生したトラブルや質問などを、よりスピーディに共有可能。
管理側と現場の情報共有がスムーズになれば、より高度な連携が可能となるでしょう。
メリット2.スピーディな対応が可能
情報の表示により、トラブル発生時にスピーディーな対応が可能です。
これまでは、機器に故障が発生した際は、現場の作業者やリーダーを経由して管理側に伝達するのが一般的でした。
工場内の状況をディスプレイで表示していれば、管理者側は作業者やリーダーの報告を待たずに情報が手に入るため、より迅速な対応が可能に。
機器の修理が完了するまでの時間が短縮され、納期に余裕を持った生産が実現します。
メリット3.ムリ・ムダ・ムラを発見・改善
工場の見える化とディスプレイによる表示は、工場内に潜むムリ・ムダ・ムラの発見・改善を容易にします。
ディスプレイに工場内の生産進捗やレイアウトを表示すると、工場内のどこで作業が停滞しているのかや、停滞している原因が工程にあるのか・レイアウトにあるのかなどを分析できるためです。
作業者の意見を集めてムリ・ムダ・ムラの改善に取り組むのも有効な方法ではありますが、時には抽象的な意見しか集まらず、的確な改善案につながらないケースも。
工場の見える化で収集したデータを表示できれば、ムリ・ムダ・ムラの具体的な原因を特定・改善しやすくなり、業務効率化が可能になるのです。
メリット4.業務の属人化・ブラックボックス化の阻止
工場の見える化は、工程ごとに発生しがちな独自のやり方、つまり属人的な業務進行を防止できます。
業務の属人化は作業者がさらなる効率化を求めて考えて実施しているものですが、考案者が不在になった場合のトラブルに対処できなくなるケースもあるため、可能な限り標準化された業務を進行してもらうべきでしょう。
ディスプレイに業務指示書やトラブル発生時の基本的な対処法を表示すると、属人的な業務進行やトラブル発生時のリスクを減少可能です。
工場の見える化は、業務のブラックボックス化の防止にも有効です。
業務のブラックボックス化とは、属人化が進行した結果、業務の内容が不透明になること。
工場を見える化した場合には、業務進行全般が透明化されるため、業務の属人化・ブラックボックス化防止に役立ちます。
工場見える化で表示すべき6つの項目とは?
工場を見える化した際に、ディスプレイに表示すべき項目は以下の6つです。
- スピーディな対応が可能「工場全体の状況」
- 機器・人材のムダ発生を防止「受注状況」
- 的確な納期管理「生産進捗」
- ヒューマンエラー防止「作業指示」
- 工程間の連携強化「作業進捗」
- モチベーション低下予防「生産量」
本章では、管理側と現場側のそれぞれの視点から、ディスプレイに表示すべき項目を解説します。
【管理側】項目1.スピーディな対応が可能「工場全体の状況」
機器の異常や人員の配置状況をリアルタイムに把握できれば、トラブル発生時の対応や突発的な製品追加などへの対処が容易です。
業務効率向上にもつながり、ニーズの多様化に伴って増加した特注品への柔軟な対応も可能になるでしょう。
【管理側】項目2.機器・人材のムダ発生を防止「受注状況」
営業部門が受注した製品の製造量や納期をディスプレイに表示・共有すると、製造に必要な人材や機器のシミュレートが的確になります。
製造業の原価率は高いため、ムダな人件費や電気代は削減したいもの。
製品の受注状況をリアルタイムで確認できれば、ムダのない生産計画の立案が可能です。
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【管理側】項目3.的確な納期管理「生産進捗」
納期に間に合わないのは、生産体制の把握不足が1つの原因です。
つまり、工場の見える化で全体の生産体制を的確に把握できれば、納期管理の適正化につながるということ。
なお、納期管理は下記記事で詳しく解説しています。
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【現場側】項目4.ヒューマンエラー防止「作業指示」
作業指示は、聞き間違いや思い込みが原因で正しく伝わらないことがあります。
作業指示に変更が加われば、ヒューマンエラー発生リスクのさらなる高まりが想定されます。
ディスプレイでの表示は、作業指示を常に確認できる環境が構築されるため、効果的なヒューマンエラー対策と言えるでしょう。
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【現場側】項目5.工程間の連携強化「作業進捗」
工程ごとの作業進捗が表示されていれば、どのタイミングで自分の工程に製品が流れてくるかの把握が容易です。
したがって、作業に必要な準備を開始するタイミングが分かりやすくなり、工程間の連携強化につながります。
【現場側】項目6.モチベーション低下予防「生産量」
製造現場では、納品数に到達するまでは、基本的に単一作業の繰り返しです。
ゴールの見えない単一作業の繰り返しは、モチベーション低下の原因となることも。
生産量の表示はゴールの明確化につながり、作業者はモチベーションをキープしやすくなるでしょう。
【注意点】工場の見える化はデータ活用がポイント
工場の見える化でデータを活用するとは、収集したデータを分析し、業務の改善や効率化のためにフィードバックすることです。
工場を見える化すると、工場内の状態や発生したトラブルなど、様々な情報がビッグデータとして残ります。
完成形は異なっても、同一部品を使用する製品を例に考えてみましょう。
同一部品を製造するときに、過去のデータが残っていれば効率的な製造工程を考える必要がなく、的確な標準時間を打ち出せます。
このように、蓄積したデータを分析・活用すると、その後の製造に直接的または間接的に関わる業務の効率化に成功するのです。
工場の見える化で収集したデータは、分析とフォードバックをしてこそ真価を発揮します。
工場見える化の2つの導入事例
工場の見える化を導入し、成功した事例を、下記2つ紹介します。
- 事例1:生産性向上・省エネ化を達成「富士電機」
- 事例2:新規システム導入で業務効率化・収益アップを実現「プレジション・システム・サイエンス株式会社」
工場の見える化は、具体的にどのような効果があるのかをイメージしながらご覧ください。
事例1.生産性向上・省エネ化を達成「富士電機」
富士電機株式会社は、2ヶ所の自社工場で見える化に取り組み、大きな成果を上げています。
栃木県大田原市にある工場では、情報を一元管理できるダッシュボードを導入し、QCDを見える化。
生産タクトタイムのバラつきの発見と改善をはじめとした対策を講じて、生産性を5%向上させました。
山梨県の工場では、かねてから課題だった省エネに取り組むために、エネルギー使用量の見える化を実施。
収集したデータを分析し、エネルギーのムリ・ムダ・ムラを解消し、34%の省エネに成功しました。
事例2.新規システム導入で業務効率化・収益アップを実現「プレジション・システム・サイエンス株式会社」
プレジション・システム・サイエンス株式会社は、ブラックボックス化したシステムと、頻発する非効率的な手作業を解決するために新規システムを導入しました。
導入したERPソリューションは「IFS Cloud」。
IFS Cloudの決め手となったのは、支援機能の充実度や適合率・コストパフォーマンスの高さです。
プレジション・システム・サイエンス株式会社は、ERPの強みである情報の一元管理機能を最大限に活かし、会社全体を業務効率化。
製造工程や原価の見える化に成功し、データ活用の幅が広がったほか、素早い経営判断にもつながります。
本記事では、弊社のERP(IFS Applications)を導入いただいたお客様のリアルな声をお届けします。 リアルな声の内容は、以下3つです。 お客様のERP導入時の悩み 導入の決め手となった理由 導入後にお客様が体感[…]
【結論】業務効率化には、工場の「見える化」が必要
工場の見える化と見せる化では、目的が異なります。
しかし、工場の見える化に取り組むなかで、情報収集と表示に成功した段階で満足してしまうケースも。
工場で収集した情報をディスプレイに表示するだけでは、見える化ではなく”見せる化”になってしまいます。
業務効率化に必要なのは見える化であり、見える化には収集した情報の分析が必要です。
工場の見える化に取り組む際は、目的と手段を履き違えないよう注意しましょう。
工場の見える化でお悩みの方へ
本記事では、工場の見える化でディスプレイに表示すべき項目を解説しました。
業務効率化には工場の見える化が有効ですが、データをいかに分析し改善に活用するかが大きなポイントです。
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