製造業が生産活動を滞りなく進め、利益を確保するには調達管理の最適化が必須です。
ただ、調達管理が抱える問題を明確に捉えきれていない方も多いでしょう。
この記事では、調達管理の概要を踏まえつつ、製造業が抱える4つの課題と解決策を解説します。
自社の調達管理に問題意識をお持ちの方は、ぜひご覧ください。
製造業の調達管理とは【基礎知識】
製造業の調達管理とは、生産に必要な原材料や部品などの資源を適切な品質・価格・タイミングで調達する一連のプロセスのことです。
調達する資源はモノに限らず、ヒトやカネも含みます。
調達管理の主な業務内容は、おおきく以下5つです。
- 調達先の選定
- 契約交渉
- 発注処理
- 納品確認
- 支払い処理
厳密に言えば、単に資源を調達するだけでなく、必要とする工程へ適切なタイミングで供給するところまでが調達管理の対象範囲です。
そのため、製造業企業が生産活動を滞りなく進めるためには、調達管理の最適化が欠かせません。
本章では、調達管理の基礎知識として、以下の2つの内容を解説します。
- 製造業の調達管理が担う役割
- 調達管理と購買管理の違い
製造業の調達課題を改善するためにも、業務の役割や目的を理解することが大切です。
製造業の調達管理が担う役割
製造業の調達管理が担う役割は、生産に必要な資源を適切な「品質・価格・タイミングで調達すること」です。
仮に、調達した資源の品質・価格・タイミングのいずれかに問題があると、生産工程に大きな影響を及ぼします。
たとえば、材料の調達が遅れると、予定していた工程に着手できずリードタイムが伸びます。
場合によっては生産計画を変更する必要が出てくるため、管理者のみならず製造現場の従業員にも影響を及ぼしかねません。
また、調達コストがあまりに高ければ、利益率を圧迫し損失につながる可能性も。
調達管理は企業が製品を製造し、利益を確保するためにも欠かせない業務なのです。
なお、企業の成長により事業規模や製品数が増えると、調達管理の難易度・重要度が高まります。
現状、課題が顕在化していない場合でも、将来的に大きな問題となる恐れがあるため、早いうちから調達管理の最適化に取り組みましょう。
調達管理と購買管理の違い
調達管理とよく似た用語に、購買管理があります。
業務内容や課題を正確に捉えるためにも、両者の違いを理解しておくことが大切です。
調達管理と購買管理の違いをまとめると、以下のとおりです。
調達管理 | 購買管理 | |
管理の対象物 | ヒト・モノ・カネ | モノ |
役割 | 資源調達のQCD最適化 | 物品調達のコスト最適化 |
購買管理とは、生産に必要なモノの購入先を検討し、実際に発注するまでの一連のプロセスです。
購買管理が扱うモノには、部品や材料などの直接材と工具や消耗品などの間接材が含まれます。
生産に必要なモノの種類・量を正確に管理し、コストをできるだけ抑えるのが目的です。
一方の調達管理は、必要な資源を適切な品質・価格・タイミングで調達する一連のプロセスです。
購買管理とは異なり、モノ以外のヒト・カネも管理の対象に含まれます。
なお、調達管理は現場への資源共有も担うため、購買管理よりも対象範囲が広いと言えます。
製造業の調達管理が抱える4つの課題
多くの製造業企業は、調達管理に以下の課題を抱えています。
- 製造拠点ごとに調達方法や条件が異なる
- 調達の管理業務が煩雑
- 製造拠点の調達状況を把握しづらい
- 一部の担当者に調達業務が属人化
本章では、具体例を交えつつ上記4つの課題を紹介します。
課題1.製造拠点ごとに調達方法や条件が異なる
製造業企業の資材調達は、本社が一括管理している場合と製造拠点ごとに管理しているケースがあります。
後者の場合、拠点ごとに業務最適化されるため、調達方法や提案条件に違いが生じやすくなります。
たとえば、同じ原材料を扱う工場でも、A工場はまとまったロットで調達し在庫として保管するのに対し、B工場は必要なタイミングで都度調達するなど。
A工場は保管コストや仕様変更リスクが、B工場では調達コストや業務負担の増加が懸念されます。
拠点ごとに管理体制が異なると、それぞれ異なった問題が発生し、個別に対処しなければなりません。
また、システムで統制しようにも業務要件が異なり、資材情報やナレッジの共有が思うように進まないでしょう。
製造拠点ごとに調達管理の方法が異なると、全社的に見た場合ムダ・ムラ・ムリが発生しやすく全社最適化の足かせとなるケースも多いです。
課題2.調達の管理業務が煩雑
製造業が調達する品目は、他業種に比べて非常に多く、特殊性が高い傾向にあります。
製品の材料や部品をはじめ、製造機械の消耗品や燃料など多くの品目を扱います。
もちろん、品目ごとに調達のタイミング・仕入れ先が異なるため、管理項目が膨大です。
さらに、仕入れ先ごとに独自の商習慣や取引方法を設けているケースも多く、管理業務が煩雑になりやすいでしょう。
改善しようにも社内に調達の統一ルールがなく、根本的な解決に結びつかないことがほとんどです。
管理業務の煩雑さゆえに、製造業の調達管理は改善が難しいとされています。
課題3.製造拠点の調達状況を把握しづらい
製造業の本社が抱える課題として、拠点の調達状況を把握しづらいことがあげられます。
拠点ごとに管理体制が異なったり、品目が多く管理業務が煩雑化していたりすると、拠点の調達状況を正確に捉えることが困難です。
たとえば、各拠点で材料の過発注や原価割れが発生していても、管理体制が整っていなければ見つけられないでしょう。
ただ、こうした問題の発見が遅れると、過剰在庫による廃棄ロス・在庫不足による機会損失・事業の損失など会社レベルの問題にまで発展しかねません。
適切な原材料を適切な数量を発注するためにも、社内の購買状況を把握する体制を整える必要があります。
課題4.一部の担当者に調達業務が属人化
管理業務が煩雑化しがちな調達管理では、業務の分担により担当者が個別に取引先とやり取りするケースが多いです。
また、材料の取引条件や商談の進捗状況の共有体制が整っておらず、調達業務が属人化しやすいのです。
仮に担当者が不在だったり、退職したりした場合、調達業務が滞り生産体制に影響を及ぼす可能性があります。
また、属人化した調達業務は適正度合いを客観的に測定することが難しいため、業務改善の障害となっています。
製造業の調達管理の課題を解決する3つの対応策
製造業の調達管理は、課題を解決することで、業務効率化や利益率の向上につながります。
本章では、調達管理の課題を解決する以下3つの対応策を紹介します。
- 各製造拠点の調達プロセスを見直す
- 推奨購買品を設定し調達業務を標準化
- 製造業の調達管理業務をシステム化
自社で取り入れられそうなものがないかチェックしてみてください。
対応策1.各製造拠点の調達プロセスを見直す
まず、各製造拠点での調達プロセスを詳細に調査する必要があります。
調達業務を詳細まで洗い出し、現状の問題点やムダを洗い出すことが大切です。
余分な手続きがある場合には、省略することで時間短縮やコスト削減につながります。
ただほとんどの場合、仕入れ先が複数存在し調達プロセスの把握に多くの時間を要するでしょう。
通常業務と並行して実施すると、業務改善が長期化しプロジェクトが頓挫する恐れがあります。
そのため、調達管理を改善する場合は、専門のチームを立ち上げ集中的に取り組むのがおすすめです。
対応策2.推奨購買品を設定し調達業務を標準化
調達業務の標準化を図るには、推奨購買品や取引条件を設定すると良いでしょう。
調達ルールを徹底できれば、拠点ごとのムリ・ムダ・ムラを削減できます。
たとえば、原材料の仕入れ先を統一できれば、価格交渉を優位に進められ、調達コストを抑えられます。
また、各拠点が個別におこなっていた業務を統合できるため、効率化を実現できるでしょう。
対応策3.製造業の調達管理業務をシステム化
大幅な業務改善には、調達管理業務をシステム化するの効果的です。
システムを導入することで、調達ルールの統制強化や進捗状況の見える化につながります。
現状の調達プロセスを正確に把握できるとともに、問題点を把握しやすいため、業務改善に効果的です。
また、生産管理システムと連携することで、生産計画に則ったベストな調達タイミングがわかります。
調達管理のシステム化には多くのメリットがあるため、自社での導入を検討してみてはいかがでしょうか。
製造業の調達管理にはERPがおすすめ
調達管理に対応したシステムはさまざまありますが、製造業においてはERPシステムがおすすめです。
ERPシステムとは、会計・人事・生産・物流などの基幹業務を統合し、情報を一元管理するためのシステム。
製造業にERPシステムが適している理由は、主に以下の3つがあげられます。
- 原価・在庫データなどを一元管理
- 入力業務を削減し業務効率化
- 的確かつ迅速な経営判断を実現
調達管理のシステム化を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
おすすめ1.原価・在庫データなどを一元管理
ERPシステムは、企業のあらゆる部門の情報を一元管理できます。
これにより、情報の重複や誤りを減らすことができ、効率的な業務遂行が可能です。
たとえば、生産部門と調達部門がリアルタイムで情報を共有することで、生産部門が必要とする材料や部品を、必要な時に確保できるようになります。
これにより、生産計画の遅れや品質低下を防止できるでしょう。
また、ERPシステムでは複数の拠点を単一のデータベースへ統合できるため、社内全体の標準化が可能。
現状、各拠点の統制が取れていない場合は、ERPシステムによるデータ統合がおすすめです。
おすすめ2.入力業務を削減し業務効率化
ERPシステムのデータ統合により、入力業務が削減され業務効率化を実現できます。
入力したデータは即座に共有され、他部門のデータ資料に反映されます。
これにより部門間で二重入力をする必要がありません。
また、データ入力ミスや人為的なエラーを減らすことができるため、業務プロセス全体の信頼性が向上します。
おすすめ3.的確かつ迅速な経営判断を実現
ERPシステムを導入することで、経営者はリアルタイムにビジネスの状況を把握できます。
何らかの問題が発生した場合、直ちに対処できるのです。
従来の管理体制では、データを収集するために時間がかかり、その間に問題が拡大してしまうことがありました。
しかし、ERPシステムでは、迅速に状況を把握し対処できるため、万が一の際でも被害を最小限にとどめられるでしょう。
これにより、企業はビジネスの効率を高め、コストを削減することができます。
ERPシステムを活用し製造業の調達管理を最適化しよう
本記事では、製造業の調達管理の概要を踏まえつつ、抱える4つの課題と解決策を解説しました。
多くの製造業企業が、調達管理に課題を抱えています。
ただ、調達管理は生産業務や利益に直結する業務のため、最適化を実現できれば大きな効果を得られます。
ぜひ、ERPシステムを活用し、自社の調達管理を改善してみてください。
弊社チェンシージャパン株式会社は、製造業向けERPシステムの導入支援をしている企業です。
ブラックボックス化したシステムの刷新により、調達管理や生産管理を効率化した事例もございます。
詳しい事例については以下よりお配りしておりますので、ぜひお気軽にご覧ください。