【製造業】品質向上の取り組み方とは?意識すべき3要素と懸念される課題

常に品質向上と向き合い、切磋琢磨する製造業。

しかし、「どのように品質向上へ取り組めば良いのか、具体的な手順を知りたい」とお悩みの方も多いでしょう。

本記事では、製造業の品質向上への取り組み方を丁寧に解説します。

自社の品質管理に課題を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

製造業が品質向上に取り組む重要性

製造業が品質向上に取り組む重要性は様々ありますが、根底にあるのは、顧客からの信頼確保です。

顧客が求める品質を確保しつつ決められた期日までに納品することで、信頼関係が構築され、継続的な取引へとつながります。

一方、製品・サービスの品質が顧客の要件を満たせなかったり、不良・欠品が続いたりすれば、顧客とのトラブルに発展する恐れがあります。

こうした事態を回避しつつ顧客満足度を高めるには、商品・サービスの品質向上に勤めることが大切です。

また、品質向上は、製造業で特に重要視されるQCD(quality:クオリティ、cost:コスト、Delivery納期)の最適化にもつながります。

たとえば、業務改善で不良率を改善できれば、不良品に費やした資材コストや人件費などを削減可能。

不良による設備の調整時間を短縮できれば、稼働率を向上でき、リードタイム短縮の実現もできるでしょう。

つまり、製造業の品質向上とは、企業の成長を促すのみならず、コスト削減やリードタイムの短縮にも効果的といえます。

製造業の品質を左右する3つの基本要素

製造業の品質を左右する要素は、主に以下の3つです。

  • 工程管理
  • 品質検証
  • 品質改善

本章では、上記3つの要素を順に紹介します。

要素1.工程管理

工程管理は、製品を製造するヒトや設備のパフォーマンス、製造プロセスに着目した管理要素です。

作業の手順や工数を適切な状態で管理・維持し、成果物の品質を向上させます。

たとえば、作業手順が担当者ごとに異なる場合、成果物の品質は担当者の力量に依存する可能性が高いでしょう。

また、不良が発生しても原因の特定が難しく、スムーズな改善行動を取りづらくなります。

一方、作業をマニュアル化できれば一定の品質を確保しやすく、不良原因の特定も容易です。

このように、工程管理では、ヒトや設備のパフォーマンス、製造プロセスそのものを管理・改善し、製品の品質向上に努めます。

要素2.品質検証

品質検証とは、製品の品質が規定水準を満たしているかを検査し、保証することです。

品質検証は成果物の品質を検証するだけにとどまらず、主に以下の種類があります。

  • 受入検査:外部から仕入れた資材や部品の品質を検査する
  • 工程内検査:製造途中の製品を検査し、品質を確認する
  • 完成品検査:完成した製品が規定水準を満たしているかを検査する
  • 工程能力監査:製造プロセスを検査し、品質低下の要因がないかを確認する

品質検証では品質を定量的に測定するため、日本産業規格(JIS)や電気安全法(PSE)、国際規格(ISO9000シリーズ)などの品質規格を用います。

また、工程能力のように定量化が難しい項目では、CpやCpkと呼ばれる工程能力指数を活用するケースが一般的です。

要素3.品質改善

品質改善は、製品・サービスの品質を直接的に向上させる要素です。

不良品の発生原因や品質低下の要因を洗い出し、改善行動を取ります。

具体的には、製造プロセスの情報を収集、分析、改善案・対策の立案、実行というプロセスです。

この品質向上に向けた一連の改善プロセスを、QCストリートと呼びます。

また、製品の設計改善や設備の保全活動など、不良を発生させないよう未然におこなう対策も品質改善の一環です。

将来的な不良原因を取り除き、製品の品質低下を防ぎます。

未然の防止策に効果的なのは、製造プロセスを細分化し潜在的なトラブルを分析する、工程FMEA

工程FMEAでは、トラブルを影響・発生数・検出数で点数化し、優先順位の高いものから対策を講じます。

将来的なリスクを効果的に改善できるため、多くの製造業で用いられています。

製造業の品質向上への取り組み方5ステップ

製造業が品質向上の取り組みに用いる代表的な手法は、前述したQCストーリー。

QCストーリーの具体的な手順は、以下です。

  • 品質向上の目標を設定
  • 品質データの収集と現状の把握
  • 不良が生まれる原因の特定
  • 対策の立案と実施
  • 施策の効果検証と改善行動

本章では、製造業の品質向上への取り組み方を順に紹介します。

取り組み方1.品質向上の目標を設定

まずおこなうのは、品質向上の目標設定です。

品質の向上目標を明確にできれば、のちの改善行動を取りやすくなります。

より具体的な目標を設定するために、どの商品の品質をいつまでに、どれほど向上させるのかを設定してください。

また、目標設定では、製造プロセスを十分に把握している現場の意見が、大きなヒントとなる可能性もあります。

問題箇所の特定や課題の緊急性を抽出するためにも、現場の従業員に意見を募ると良いでしょう。

改善対象を絞り込む際は、以下の観点で進めるのがおすすめです。

  • 重要性・緊急性の高い品質問題か
  • 日常業務に支障をきたしていないか
  • 生産性や作業効率を阻害する問題か
  • 現状、どれほど顕在化した品質問題か

また品質向上の目標・計画を策定したら、プロジェクトの関係者に共有し、方向性のズレを修正しましょう。

取り組み方2.品質データの収集と現状把握

目標を策定したあと、対象商品の品質データを収集して現状を把握します。

現状分析の手法にはさまざまなものがありますが、主に以下の2つの観点が効果的です。

  • 5W1H
  • 層別

5W1Hは、品質データを収集する際に役立ちます。

いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのようになっているのかの観点から、品質データを収集することで、情報の抜け漏れを防止でき、必要データを効率的に収集できます。

層別とはヒト・モノ・プロセス・設備など、製品の品質に関わる要素を細かく細分化し、現状を分析するというもの。

たとえばヒトに着目したら、経験の少ない作業員がミスを頻発していた、プロセスの視点で見ると、組み立て作業で多くの不良が発生していた、などがわかります。

データを細かな要素ごとにとらえることで、現状を正確に把握しやすく、次におこなう問題点の洗い出しにも役立ちます。

取り組み方3.不良が生まれる原因を分析

続いて、不良が生まれる原因を分析します。

商品の品質が低下したということは、ヒューマンエラーや設備の動作不良など、不良品を生み出した原因があるはずです。

また、ミスや不良品に気づかず、顧客に納品したという流出原因も存在します。

品質向上では、不良の発生原因にばかり目が行きがちですが、本来、引き渡してはいけない物を止めることができなかったという流出原因にも注意しなければなりません。

しかし、不良の発生原因や流出原因は、容易に見つかるものではありません。

担当者によって分析の視点が偏ったり、抜け漏れが発生したりする恐れがあるためです。

品質低下の原因を分析する際はプロジェクトメンバーのみならず、担当部門の従業員などにも意見を募り、客観的に分析すると良いでしょう。

取り組み方4.対策の立案と実施

品質低下の原因を分析できたら、発生原因と流出原因の対応策をそれぞれ検討します。

たとえば、ヒトの技術力やミスが原因で品質低下につながっていた場合は、教育体制の見直しや業務の標準化・マニュアル化を実施。

また、流出原因への対応策は、チェックリストの活用や機械を活用した自動チェックの導入などが挙げられます。

しかし、品質向上の施策を検討する際は、現場業務への影響を考慮する必要があります。

仮に、ヒューマンエラーを防止するためにダブルチェックを増やした場合、品質向上の効果が期待できる一方で業務負担が大きくなることも。

業務が忙しくなり、かえってさらなるミスを誘発する可能性もあるため、施策を実施する前には効果の予測を立てるようにしましょう。

取り組み方5.施策の効果検証と改善行動

施策を実施した後は、定期的に効果を検証し、再改善を実施します。

最初に策定した目標に対し、どれほどの効果を得られたのか、更に効果を高めるにはどのように改善すれば良いのかを検討。

施策はどれほど入念な計画を立てたとしても、予想外のトラブルや実践後に初めて気づくことなどが出てくるものです。

新たな気づきを施策に反映させることで、より大きな品質向上効果が期待できます。

改善施策のPDCAサイクルを回し、品質の最大化を目指しましょう。

製造業の品質向上を阻む3つの課題

製造業が顧客との信頼性を構築し、さらなる成長を遂げるには品質の向上が欠かせません。

しかし、近年の国内製造業企業には、品質向上を阻む以下3つの課題が存在します。

  • 人手不足と業務の属人化
  • 生産管理体制の脆弱さ
  • 紙媒体やExcelによる管理工数の増加

本章では、上記3つの課題をそれぞれ解説します。

課題1.人手不足と業務の属人化

近年の国内製造業では、慢性的な人手不足が続いています

そのため、現場従業員の業務負担が大きく、品質向上にリソースを割けないケースも見られます。

また、ノウハウや技術の引き継ぎがなされず、特定の業務が熟練技術者に属人化しているケースも。

この場合、熟練技術者が抜けると品質が大幅に低下するおそれがあるため、早急に対処しなければなりません。

製造業では人手不足に加え、従業員の高齢化も深刻化しているため、生産性のさらなる向上とリソースの削減が求められます。

課題2.生産管理体制の脆弱さ

2つ目の課題は、生産管理体制の脆弱さです。

特に中小企業では、生産業務の効率化や人員配置、コスト管理など、生産プロセスの管理体制が確立されていないケースも見受けられます。

商品の品質を向上させようにも、現場業務の把握だけで多くの時間・労力がかかるため、思うような改善行動を取れないのです。

品質向上を進めるには、現場業務や生産プロセス全域の可視化が必要です。

万が一自社の生産体制を把握できていないのであれば、管理体制の構築から着手すると良いでしょう。

課題3.紙媒体やExcelによる管理工数の増加

3つ目の課題は、紙媒体やExcelによる管理工数の増加です。

ExcelはWindows PCに標準搭載されており、追加コストをかけることなく利用できます。

また関数や表を挿入することで、高度な管理体制にも対応できるなど、汎用性の高いソフトウェアです。

しかし、生産工程をExcelで管理すると、急な仕様変更へ対応しづらかったり、データを共有する手間がかかったりと、管理工数の増加が懸念されます。

品質管理や生産管理などの管理工数を削減するには、データを一元的に管理できる生産管理システムやERPシステムを活用すると良いでしょう。

製造業で品質向上をお考えの担当者の方へ

本記事では、製造業の品質向上について解説しました。

製造業企業にとって商品・サービスの品質は、顧客の信頼性に直結する重要な要素です。

今回紹介した適切な手順で、商品・サービスの品質を改善していくと良いでしょう。

しかし、品質の向上には、万全の生産管理体制が必要不可欠です。

管理工数を抑えつつ生産工程の情報を管理するなら、生産管理システムやERPシステムの活用がおすすめです。

当メディアを運営するチェンシージャパンでは、製造業の業務をサポートする「IFS Cloud」を提供しています。

ERPシステムに関する無料相談会も開催しているため、品質管理でお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

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