市場競争が激しさを増す昨今、本格的にマーケティングへ取り組む製造企業が増加しています。
しかし、マーケティングはさまざまな取り組みがあるため「いったい何から始めれば良いのか?」とお悩みの方も多いでしょう。
本記事では、製造業で効果的なマーケティング戦略を解説します。
施策の実施手順・先行事例とあわせてご覧ください。
製造業のマーケティング基礎知識
メディアなどでも度々耳にする、マーケティング。
すっかり聞き慣れた用語ですが、具体的な意味を聞かれると困ってしまう方も多いのではないでしょうか。
「マーケティング=販売促進」「マーケティング≒営業」と考える方も多いようです。
今後マーケティング活動に取り組むうえでも、定義を明確にしておくとは大切です。
本章では、基礎知識としてマーケティングの定義と製造業での重要性を解説します。
マーケティングの定義
マーケティングを一言で表すと、商品・サービスが売れる仕組みを作ることです。
具体的に言えば、以下の企業活動全体を総称してマーケティングと呼びます。
- Product(商品戦略):誰に向けてどのような商品を作るのか
- Price(価格戦略):社内外の状況を考慮し、いくらで販売するのか
- Place(流通戦略):どのような立地・プラットフォームで販売するのか
- Promotion(販促戦略):商品の存在や魅力をどのように伝えるのか
これより先の、商品を顧客に売ることに特化した業務が「営業」です。
なお、オンライン展示会・Webメディア・SNSなどのデジタルテクノロジーを駆使した方法を「デジタルマーケティング」と呼びます。
WebマーケティングやSNSマーケティングは、デジタルマーケティングの一部です。
製造業でのマーケティングの重要性
近年の製造業でマーケティングが重視される理由は、市場環境が変化したためです。
かつての製造業では、製品を売ることよりも作ることに重きが置かれていました。
すべてではないにしろ、「良いモノ作れば売れる」という言葉が広まるほど、モノが売れていたのです。
一方、近年はどうでしょうか。
市場にはさまざまなモノがあふれ、消費者はスマホ・PCから自由に情報を収集し、商品を比較できます。
近年では、たとえどんなに優れた商品であっても、戦略的にアピールしなければ、消費者の目に留まることはないでしょう。
つまり、「良いモノを作れば売れる」時代は終わりを告げ、良いモノを「いかにして売るのか」が重要になっています。
BtoB製造業が抱えるマーケティングの課題3選
大企業を中心にマーケティングへ注力する製造企業が増えるなか、BtoB製造業は一歩遅れをとっています。
遅れをとっている理由は、以下3つの課題を抱えているためです。
- マーケティングに精通した人材の不足
- 専門性が高く外部マーケターが介入しづらい
- リード(見込み客)を獲得しても成約に結びつかない
一朝一夕で解決できる課題ではありませんが、問題点を明確にし解決に向けて取り組むことが大切です。
課題1.マーケティングに精通した人材の不足
BtoB製造業では、マーケティングに精通した人材が不足しています。
また、独立したマーケティング部門が設けられておらず、販売管理や営業部門が兼任しているケースがほとんどです。
通常業務の片手間でマーケティング活動を進めるため、施策の実行はもちろん、マーケティング人材の育成に多くの時間を要します。
なお、体制が変化しつつあるとはいえ、製造面に重きをおく企業が未だ多いでしょう。
予算は設備投資へとまわり、マーケティング関連への投資が進まない傾向にあります。
課題2.専門性が高く外部マーケターが介入しづらい
BtoB製造業は、製品のみならず企業間の流通構造も複雑です。
長年、その業界に従事している方ならともかく、外部のマーケターが特有の商習慣をつかむのは非常に困難。
さらに、業界特有の商習慣を調べようにも、欲しい情報がなかなか公開されていません。
人手不足・ノウハウの補填を目的に、外部のマーケターを入れようにも、こうしたBtoB製造業の専門性ゆえに適切な提案や支援が受けられないことがあります。
課題3.リードを獲得しても成約に結びつかない
製造業に限らずBtoBのマーケティングでは、リード(見込み客)から顧客への転換が難しいとされています。
一般的に、スーパーやネットショップなどのBtoCの場合は、商品の認知・検討・最終決定・利用が1人で完結します。
一方BtoBでは、上記フェーズのそれぞれが立場の異なった別々の人になることがほとんどです。
たとえば、新たな製造機器を導入する場合、現場の従業員・管理者・経営層が関わり、それぞれのニーズが満たされて初めて導入が決定されます。
つまり、BtoBのマーケティングでは、商品購入に関わるすべての人を納得させなければならないため、高度な戦略が求められます。
BtoB製造業がマーケティングを成功させるための3つのポイント
BtoB製造業のマーケティングは、以下3つのポイントが成功を大きく左右します。
- 各部門の連携・協力体制を整備
- BtoB特有の顧客ニーズを意識
- KPI・KGIの設定
これからマーケティング活動に取り組む方・すでに取り組んでおり成果が出ない方は、ぜひ上記のポイントを意識してみてください。
ポイント1.各部門の連携・協力体制を整備
マーケティングは、商品企画〜販売促進にいたるまでの一連の企業活動です。
当然、マーケティング担当者がすべての業務や社内情報を熟知しているわけではないため、一任したとしても成果につながりづらいでしょう。
ここで重要となるのが、部門間の連携・協力体制です。
たとえば、商品に最も深く関わる設計部門・製造部門が、マーケティング活動に協力したらどうでしょう。
担当者のみでは気づけなかった商品の魅力や、顧客が抱えているニーズを戦略に活かせるはずです。
また、人材が不足している企業でも、業務負担が分散されることでマーケティング活動を進めやすくなります。
マーケティング活動の成功率を上げ、滞りなく戦略を遂行するためにも、部門の垣根を超えた連携・協力体制が必要です。
ただ、はじめは現場からの反発も予測されるため、マーケティング活動の必要性や達成目標を示し、体制を整備していくのがおすすめです。
ポイント2.BtoB特有の顧客ニーズを意識
前述のとおり、BtoBのマーケティングでは、認知・検討・購入・利用に関わるすべての人を意識しなければなりません。
言い換えれば、上記の関係者たちが抱えるニーズを、マーケティング戦略に落とし込む必要があるのです。
具体的なやり方としては、購買プロセスの可視化が効果的です。
リードが自社の課題に気づいていない段階から、商品の認知・比較検討・購買に至るまでのプロセスをマインドマップや表にまとめます。
どのような立場の担当者・決裁者が、どのような情報を求めているのかを明確にできれば、実施するべきマーケティング施策が見えてくるでしょう。
難易度が高いとされるBtoBマーケティングを成功させるためにも、購買プロセスをより具体的に描くことが大切です。
ポイント3.KPI・KGIの設定
マーケティング戦略では、KPI・KGIの設定が必須です。
- KGI:最終的な達成目標
- KPI:KGIの達成度合いを評価する中間指標
KPI・KGIは施策の達成度合いを検証するためにも欠かせないものです。
また、KPI・KGIを明確にしておくことで、ゴールまでの最短ルートを把握できます。
たとえば、売り上げ目標をKGIに設定した場合、KPIの要素は新規開拓・リピート率向上・顧客単価など無数に出てきます。
これらを整理せずにマーケティング戦略を進めると、本来不要なはずの施策を実施してしまうでしょう。
そこで、無数にあるKPIの要素から自社にあったものを選定してまとめる「KPIツリー」が効果的です。
上記のように、自社のマーケティング戦略で目指すKPI・KGIを設定すれば、施策の方向性が統一され、成果に最短ルートでたどり着けます。
【BtoB製造業】マーケティングの基本プロセス
マーケティング活動を進めようにも、一体何から始めれば良いか迷う方も多いはず。
まは、以下の基本プロセスを実行し、徐々に自社の仕様へ変更していくのがおすすめです。
- 現状の内外部環境を分析
- ターゲットの設定
- ポジションの明確化
- 実施するマーケティング施策の検討
- マーケティング施策の実施と検証
本章では、基本プロセスについて注意点を交えながら解説します。
プロセス1.現状の内外部環境を分析
まず実施するのは、自社の強み・弱みなどの内部要因と市場や政治環境などの外部要因の分析です。
環境分析の方法はさまざまありますが、主に以下2つのフレームワークが用いられます。
- PEST分析:自社でコントロールできない外部環境を分析する手法
- 3C分析:市場環境を捉える分析手法
- PEST分析の具体例
-
Politics:政治的要因
税金・補助金・法律など
ex)法律の改正Economy:経済的要因
世界情勢・為替・経済成長・物価
ex)円安で原材料費が高騰
Society:社会的要因
市場トレンド・人口動態・文化
例:労働人口の減少に伴い業務効率化を目的とした設備投資が増加
Technology:技術的要因
特許・技術革新
例:IoT・AIが浸透し、デジタル技術の需要が増加
- 3C分析の具体例
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Customer:市場・顧客
どのような属性をターゲットとするのか
顧客が抱えるニーズとは何か
Competitor:競合
競合他社の価格はいくらか
競合他社はどれほどのシェアを占めているか
競合の強み・弱み
Company:自社
自社の強み・弱み
自社はどのような価値を提供できるのか
自社はどのような評価を受けているのか
環境分析で重要なことは、現在の状況をもとにマーケティング戦略のヒントを見つけることです。
フレームワークの作成が目的化し、状況整理のみで終わらないよう注意してください。
プロセス2.ターゲットの設定
次に、環境分析の結果をもと、ターゲットを設定します。
ターゲットはマーケティング戦略の起点となる重要な要素です。
ターゲットの解像度が低いと、自社の発信する情報が刺さらなかったり、期待する行動をとってもらえなかったりします。
そのため、自社の強み・弱みをもとに、より具体的なターゲット層を設定してください。
プロセス3.ポジションの明確化
ターゲットが決まれば、市場における自社のポジションを明確にします。
ポジションとは、顧客から見た自社や製品の立ち位置のことです。
自社の立ち位置を示すことで、競合企業との差別化につながります。
たとえば、サードプレイスとして浸透した「スターバックス」や高価格帯で知られる「ハーゲンダッツ」など。
いずれも独自のポジションを確立しており、他社に対する優位性を高めています。
自社や他社を多角的に捉え、優位なポジションを設定しましょう。
プロセス4.実施するマーケティング施策の検討
いよいよ、これから実施するマーケティング施策を検討します。
施策を検討する際は、高い独自性・訴求力を発揮するために、複数の要素を掛け合わせるのが効果的です。
一般的には、マーケティングの基本要素である4Pと、消費者の視点を取り入れた4Cの観点から施策を検討します。
4P | 4C |
Product:製品 |
Customer Value:顧客価値 |
Price:価格 | Cost:商品価格 |
Place:流通 | Convenience:利便性・購入方法 |
Promotion:プロモーション | Communication:企業と顧客の接点 |
4Pに加え4Cを取り入れることで、企業側に偏った施策になることを防止できます。
プロセス5.マーケティング施策の実施と検証
マーケティング施策を実施したら、KPIを元に効果を検証します。
どのような効果があったのかや、成功要因・失敗要因を分析します。
また、うまくいかなかった場合は、次回に向けた改善策も検討しましょう。
PDCAを好転させ、マーケティングの成功を目指します。
製造業の代表的なマーケティング戦略5選
製造業のマーケティングには、さまざまな戦略・手法があります。
進め方や効果は戦略によっても異なるため、自社の目標に適した方法を選ぶことが重要です。
この章では、製造業の販促活動で効果的な下記5つの戦略を紹介します。
- コンテンツマーケティング
- オンライン展示会・イベントへの出展
- ソーシャルメディア(SNS)を活用した露出の強化
- メールマーケティング
- Web広告の出稿
メリット・デメリットも解説しているため、ぜひ自社に合った戦略を見つけてみてください。
戦略1.コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、ユーザーに価値のあるコンテンツを配信し、最終的に自社の利益につながる行動を促すマーケティング戦略です。
一般的には、ユーザーが知りたい情報やタメになる情報をコンテンツ化します。
作成したコンテンツは、Web・SNS上に残り続けるため、施策終了後も持続的な効果が期待できます。
メリット | デメリット |
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コンテンツマーケティングで成果を出すには、相当数のコンテンツが必要です。
また即効性が低く、継続的に取り組まなければなりません。
ただ、コンテンツが資産として残り続けるうえに、蓄積したノウハウの応用が効きやすい点は大きなメリットと言えます。
戦略2.オンライン展示会・イベントへの出展
オンライン展示会とは、Web上で開催される展示会のこと。
従来から、BtoB製造業では展示会(オフライン)への出展やセミナーを開催する企業が多く見られます。
そのため、もともと行っていた取り組みをオンライン上に移行するだけなので、比較的取り組みやすいのではないでしょうか。
メリット | デメリット |
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新型コロナウイルスの影響もあり、オンライン展示会へ取り組む製造企業が増加しています。
すでに多くの先行企業が存在するため、実施方法や展示内容などを参考にすると良いでしょう。
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戦略3.SNSマーケティング
SNSマーケティングとは、TwitterやInstagramなどのSNSで情報を発信し、リードや認知を獲得するマーケティング戦略です。
SNSと聞くと、プライベート感が強く感じますが、Twitter・Facebookでビジネス情報を収集する方も数多く存在します。
また、SNSの拡散力は非常に高く、会社の認知度向上にも効果的です。
メリット | デメリット |
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SNSは、コンテンツマーケティングとの相性が良く、SNSからWebコンテンツへの誘導が可能。
2つのマーケティング戦略を組み合わせることで、効果をより発揮しやすくなります。
戦略4.メールマーケティング
メールマーケティングとは、展示会やセミナーなどで獲得した見込み客へメールを配信し、購買行動を促すマーケティング戦略です。
メールマーケティングでは、MAツールや配信ツールの活用した作業の自動化が一般的。
ツールは月額数千円程度で運用できるため、少ないコストを抑えながらアプローチできる点が魅力です。
メリット | デメリット |
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メールマーケティングには、段階的にメールを配信をするステップメールや、過去に接点のあった顧客へアプローチする休眠発掘メールなど、さまざまな手法があります。
顧客との関係性や自社の状況を考慮した上で、柔軟に使い分けると良いでしょう。
戦略5.Web広告の出稿
Web広告はその名の通り、Webサイト上に出稿する広告のことです。
出稿する媒体や配信方法によって以下の種類に分けられます。
- リスティング広告:検索結果に合わせて広告を表示する手法
- ディスプレイ広告:Webサイトやメディアの広告枠に出稿する手法
- 純広告:特定のメディア内で広告を出稿する手法
- リターゲティング広告:自社サイトを訪れたユーザーを追跡して広告を表示する手法
メリット | デメリット |
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Web広告は手法によって、運用方法や必要な知識が異なります。
手法ごとの特性を理解し、自社のマーケティング戦略に適したものを選びましょう。
製造業企業による3つのマーケティング事例
すでにマーケティングへ着手しているBtoB製造業企業は、どのように取り組み、成果を出しているのでしょうか。
- 旭製粉株式会社:メールマーケティング
- ダイトロン株式会:オンライン展示会
- ローム株式会社:Webマーケティング
上記3社が実施した、マーケティング戦略の事例を紹介します。
マーケティング事例1.旭製粉株式会社:メールマーケティング
引用:旭製粉株式会社
旭製粉株式会社は、小麦粉やミックス粉の製造・販売をする食品製造業の企業です。
以前は、営業担当者が各自で顧客を管理しており、顧客との接点も営業担当者による訪問のみでした。
また、セミナーの申し込みをFAXで受け付けていたことで、作業が煩雑化し業務負担を感じていたそうです。
旭製粉株式会社は、MAツールを導入し、メールマーケティングを実施しました。
その結果、セミナーの問い合わせ数が増加。
申し込み受付をオンライン上で完結できるようになり、業務負担を軽減できたそうです。
マーケティング事例2.ダイトロン株式会社:オンライン展示会
引用:ダイトロン株式会社
ダイトロン株式会社は、電子部品を製造・販売する製造業企業。
ダイトロン株式会社は、複数の企業が出展する合同開催型のオンライン展示会を主催しています。
オンライン展示会では、各社の製品が一覧表示され、気になるものがあれば詳細を確認できる仕組みです。
実際の展示会場のようなデザインに工夫されており、アンケートの回答でノベルティをプレゼントするなど、リード獲得に向けた取り組みが特徴的です。
オンライン展示会は、自社で主催するだけでなく、他社が主催する展示会に参加することも可能です。
製造業のオンライン展示会は定期的に開催されているため、実際に参加し、イメージをつかむのも良いでしょう。
マーケティング事例3.ローム株式会社:Webマーケティング
ローム株式会社は、半導体・電子部品を製造する企業です。
Tech Webというメディアを構築し、コンテンツマーケティングに取り組んでいます。
Tech Webは、技術者向けの電源設計の技術情報サイトです。
さまざまなコンテンツを配信しており、資料ダウンロードによるリードの獲得を目指しています。
Tech Webへの流入は月間2万以上にものぼるなど、多くの技術者に認知されています。
マーケティングを成功させ、製造業の事業拡大を目指そう
本記事では、製造業で効果的なマーケティング戦略を紹介しました。
近年では大手製造企業を中心に、マーケティング戦略への取り組みが加速しています。
マーケティング活動には多くの課題もありますが、いち早く着手することで、競合他社よりも優位に立てるでしょう。
ぜひマーケティング活動を進め、業績向上・事業拡大を目指してみてください。
そこでご覧いただきたいのが、弊社が導入支援をしているERPソリューション「IFS Cloud」です。
導入までの悩み・導入後の変化と、製造業者が気になる内容をヒアリングした内容を以下にまとめておりますので、ぜひ一度ご覧ください。