バリューチェーンを分析し、どの事業プロセスが価値を創造しているか着目する製造業者。
着目する理由は、バリューチェーンの分析・活用が企業の競争力を高めるために有効な手段となっているためです。
本記事では、バリューチェーンの基礎と分析方法を解説します。
バリューチェーン分析のメリットやリソース活用法とあわせてご覧ください。
【基礎知識】製造業のバリューチェーンとは?
バリューチェーンを目にして、同時に「人権」という言葉を思い返す方がいるかもしれません。
人権が想起される理由として、経済産業省が「ビジネスと人権~責任あるバリューチェーンに向けて~」にて人権尊重について訴えていることが挙げられます。
企業のみにとどまらず、人権問題にまで影響を及ぼすバリューチェーン。
本章では、バリューチェーンの基礎知識を解説します。
製造業のバリューチェーンは競争力明確化が目的
バリューチェーン(価値連鎖)とは、製品・サービスが消費者に提供されるまでの、一連の流れを価値のつながりとしてとらえる概念のこと。
バリューチェーン上のプロセスを業務ごとに分類・分析し、顧客価値を創造している部分を明確化する方法が主流です。
顧客価値を創造するプロセス究明は、自社の競争優位性の把握を可能にするため、必要性が叫ばれています。
こうした考え方が生まれたのは、ハーバード大学教授のマイケル・E・ポーター氏が1985年に発表した著書「競争優位の戦略」です。
製造業のバリューチェーンは、どのような要素で成り立っているのでしょうか。
次章でわかりやすく解説します。
製造業のバリューチェーンは3つの要素で構成
バリューチェーンは、「5つの主活動・4つの支援活動・利益」の3要素で構成されます。
5つの主活動は以下です。
- 購買
- 製造
- 出荷・物流
- 販売・マーケティング
- サービス
上記の5つの主活動は、生産から消費に直接関わるプロセスです。
一方、以下の4つの支援活動は、生産や消費に間接的に関わるプロセスを指します。
- 全般管理(インフラストラクチャー)
- 人事・労務管理
- 技術開発
- 調達活動
バリューチェーンでは、主活動と支援活動に優劣差はありません。
主活動と支援活動は、互いに密接な関わりがあり、それぞれがなくてはならない要素として存在しています。
製造業バリューチェーン、主活動の3チェーンとは?
ビジネスの主活動をプロセス化すると、以下4つあります。
- 商品企画
- 商品の製品化
- 顧客への営業
- 商品供給
上記をプロセスごとに分類したのが、以下3つのチェーンです。
3つのチェーンの各内容を見てみましょう。
1.製造業の需要予測に活かす「デマンドチェーン」
デマンドチェーンとは、マーケティングや営業活動などのプロセスです。
デマンドチェーンは、サプライチェーンと対になる関係にあり、顧客に対する提供価値の最適化が目的。
マーケティングにより需要予測を行い、営業活動によって需要と顧客の拡大を図ります。
2.製造業のビジネスプロセス整理に活かす「サプライチェーン」
サプライチェーンは、材料供給から顧客への製品提供までのプロセスのこと。
バリューチェーンは、自社のプロセス整理による「価値連鎖」を明らかにするのに対し、サプライチェーンは「供給の連鎖」を明らかにします。
サプライチェーンは自社だけでなく、協力関係にある企業を含めて、モノの流れに注目するのが特徴です。
それにより、ビジネス全体のプロセス効率化に役立ちます。
3.製造プロセスの改善に活用「エンジニアリングチェーン」
エンジニアリングチェーンとは、商品企画構想・製品の設計・工程及び設備設計・生産準備・保守までのプロセスのことです。
「Engineering Chain Manegement」を略して、ECMとも呼ばれます。
エンジニアリングチェーンは、製造プロセスを客観的に分析でき、より高品質な製品製造に活用可能です。
製造業ではエンジニアリングチェーンが重要視される
製造業は、製造の受注から納品までを主観業務としています。
そのため、3つのバリューチェーンの中でも、エンジニアリングチェーンに着目するケースがほとんどです。
さらに製造プロセスは、生産リードタイムにも大きく関わります。
製造プロセスの構築次第では、生産効率の大幅な向上も可能です。
製造業のバリューチェーン分析、3つのメリットとは?
大規模な企業であるほど、自社の事業活動内容の把握が困難になる傾向があります。
そこで活躍するのが、バリューチェーンによる分析です。
バリューチェーンによる分析は、価値という切り口を与え、プロセスごとの課題を明らかにします。
それでは、バリューチェーン分析の3つのメリットの詳細を見てみましょう。
メリット1.バリューチェーン分析で製造業の利益を最大化可能
バリューチェーン分析では、どのプロセスで付加価値を生み出しているのかが明確になります。
これにより、自社の強みとなる部分を認識できれば、より的確な経営資源分配が可能。
弱点に経営資源を集中させることが、得意分野の成長につながる可能性も高くあります。
自社の現状を踏まえ、得意分野と弱点のどちらに経営資源を集中させるかを深く検討しましょう。
メリット2.製造業のバリューチェーン分析は競争力を獲得できる
バリューチェーン分析の範囲を、他社にも広げると、自社の成長促進効果に期待できます。
分析範囲を自社内にとどめた場合、どうしても自社にとって都合が良い部分に目を取られがちです。
しかし、他社を含めた範囲を分析すると、より客観的な視点で分析が可能に。
他社のバリューチェーン分析は、競合相手の強みだけでなく、弱み・課題を浮き彫りにできます。
バリューチェーンの範囲を広げることで、成長に必要な行動を俯瞰的に判断できるようになるのです。
結果的に、企業としての競争力が高まり、成長を続ける企業の礎となります。
メリット3.バリューチェーン分析は製造業の経営戦略に活かせる
柔軟な経営が求められる中、どのような経営戦略を打ち出すのか、悩んでいる方が多いのではないでしょうか。
限られたリソースの中で、打ち出せる経営戦略には限界があります。
バリューチェーン分析によって、経営資源の活用法や競争力が身に付けば、課題解決・現状打破につながります。
バリューチェーン分析を活用し、企業としての新たな可能性を見出してみましょう。
製造業のバリューチェーン分析、活用のポイントは「デジタル化」
製造業にとって大きなカギとなるのが、エンジニアリングチェーンです。
エンジニアリングチェーンについては、経済産業省が「デジタル技術の活用による部門間の連携促進」の必要性について「製造業DXレポート~エンジニアリングのニュー・ノーマル」で述べています。
つまり、ヒト・モノ・カネといった、限られた資源の中で成長を続ける企業であるために、プロセスの効率化が求められているということ。
背景には、モノ消費からコト消費の変化に伴うニーズの多様化があります。
しかし、製造業に活用可能なデジタル技術は多くあり、どれにすべきか決めかねているケースが少なからずあるのが現状です。
次章では、ニーズの多様化に対応できる基幹システム「ERP」について、詳しく解説します。
製造業のバリューチェーン分析に最適、ERPとは?
ERPとは、経営の最適化を目的として、情報の一元管理・部門間のシームレス化が可能な基幹システムです。
それでは、ERPはバリューチェーン分析にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
以下3つの観点から解説します。
ERPは製造業のビッグデータ対応、バリューチェーン分析に活用しやすい
バリューチェーンの分析結果は、ビッグデータとのすり合わせにより、より的確な情報を得ることができます。
バリューチェーン分析によって得られるのは、自社・競合他社の情報に限定されがちです。
対してビッグデータは、ニーズの変化をはじめとした膨大なデータが含まれます。
このことから、バリューチェーン分析による恩恵の最大化にはビッグデータ活用が必須と言えるでしょう。
ERPで製造業のプロセスを可視化、バリューチェーン分析がスムーズに
バリューチェーン分析では、どのプロセスが価値を生み出しているのかを明確にする必要があります。
しかし、プロセスそのものが可視化されていなければ、リサーチには膨大な時間がかかるでしょう。
ERPの情報一元管理機能を応用すると、全社的なプロセスの可視化が可能。
これにより、価値を生み出すプロセスの明確化が、よりスムーズになるのは明白です。
リアルタイムに近いバリューチェーン分析が可能になり、より現状に適した経営判断の材料になります。
ERP×バリューチェーン分析で製造業の基盤を固める
企業の基盤を固めるのには、働きやすい環境が必須です。
働きやすい環境が構築されていなければ、雇用した人材を定着させるのは困難でしょう。
じゅうぶんな人材を確保できなければ、事業を縮小せざるを得ない状況を生み出します。
ERPは業務を効率化させ、主幹業務に集中しやすい環境形成に貢献可能です。
主幹業務に集中でき、効率的に仕事を遂行できれば、時間的・精神的なゆとりが生まれます。
ERPは業務効率化により、企業が盤石な基盤を手に入れる手助けが可能な基幹システムです。
製造業のバリューチェーン分析で課題解決を目指す方へ
本記事では、製造業のバリューチェーンについて下記3つのポイントをお伝えしました。
- 製造業ではエンジニアリングチェーンが重要
- バリューチェーン分析で、利益最大化・競争力獲得・経営戦略活用が可能
- ERP導入でバリューチェーン分析のメリットを最大化可能
課題解決には、業務の各プロセス可視化が欠かせません。
課題の明確化ができても、どのプロセスを改善すべきかがわからなければ、課題が課題を生んでいる状態に陥ってしまいます。
当メディアを運営するチェンシージャパン株式会社は、ERPソリューションにより製造業が抱える課題解決のサポートをしております。
弊社が提供するクラウド・モジュール型のERPは、企業の状態に合わせてフレキシブルな対応が可能です。
ERPにより解決した実際の事例を下記にまとめましたので、ぜひ一度ご覧ください。