製造業の「生産リードタイム」とは、生産作業に着手開始から工程が終了するまでの時間のことです。
生産リードタイムを短縮することにより、生産性向上・業務効率化などが期待できます。
本記事では、生産リードタイムの基礎知識・実践に役立つ方法をまとめました。
関連する3つのリードタイム・メリット、生産リードタイムの短縮方法・注意点とあわせてご覧ください。
生産時間に関わる3つのリードタイムとは?
製造業の生産リードタイムとは、製造現場で作業工程の着手開始から作業工程が終了するまでの所要時間のことです。
所要時間には、発注・納品・待ち時間・検査・物流の全てが含まれ、以下3つに分類されます。
各リードタイムの内容を見ていきましょう。
1.全時間の合計を算出「生産リードタイム(製造リードタイム)」
生産リードタイムとは、原材料調達・製造・出荷までの時間の合計のことです。
工程ごとにかかる作業時間のほか、工程間の滞留時間も含まれており、工程間の仕掛在庫量に比例してリードタイムが増加。
生産リードタイム短縮に必要な、工程の処理時間・工程間のムダな時間などについては、工程分析による洗い出しをするのが一般的です。
生産リードタイム短縮は工場の生産性向上に期待できますが、原材料の調達待ち・仕掛在庫管理など、生産管理と深く関わる取り組みです。
2.納入要求に対する所要時間「調達リードタイム」
調達リードタイムとは、生産に必要な原材料・部品の発注・納品・検査をしたうえで、生産現場の納入要求に対応できるまでの時間のこと。
調達リードタイムは、部品選定を調達部門が担う・部品が製品である、など企業や製品によって異なります。
調達部門や部品の状況により、調達リードタイムは上記のように3つに大別されます。
調達リードタイム短縮は、計画段階での予測と都度の調整がポイントです。
調達リードタイムは、短納期化・在庫減少・材料回転率の向上・生産計画達成度向上・コスト削減に期待できます。
そのため、生産性・収益向上に大きく関わる要因であるといえるでしょう。
3.顧客視点を考慮する「納品リードタイム」
納品リードタイムは、製品の製造を依頼した顧客視点で見たリードタイムのこと。
生産リードタイム・調達リードタイムの合計が、納品リードタイムより長い場合は見込み生産をしますが、在庫管理が必要となるためムダが発生しやすいのがネックです。
一方で、納品リードタイムが短期間の場合は、期待できる受注機会の増加に期待できます。
ゆえに、生産リードタイム・調達リードタイム・納品リードタイムの短縮は、十分な投資対効果があるといえるでしょう。
なお、投資対効果については、受注機会増加・生産性向上・リスク削減効果などを比較しながら検討することが大切です。
生産リードタイム短縮、2つのメリットとは?
生産リードタイムは、なぜ生産性や収益の向上に期待できるといえるのでしょうか。
生産リードタイム短縮で得られるメリットとともに、生産性・収益向上に期待できる理由を解説します。
生産利リードタイム短縮のメリット
メリット1.生産リードタイム短縮による「省力化」
生産リードタイム短縮の代表例とも言えるのが、産業用ロボット導入によるオートメーション化(オートメ化)です。
元来マンパワーで対応していた工程は、オートメ化によって不必要になり、マンパワーは他の工程で活用可能。
つまり、オートメ化が進むと、少ない人数でより多くの製品を製造可能だということ。
マンパワーの省力化の成功に伴って生じた余裕を活用すれば、より多くの製品受注が可能になり、生産性が向上するというわけです。
オートメ化には、ヒューマンエラー対策としての一面もあります。
ヒューマンエラー解消による不良品率の減少は、リードタイム減少と同様に、生産性向上に期待できます。
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メリット2.リードタイム短縮で「生産コストダウン」
製造業に多く見られるのが、見込み生産による在庫過多です。
在庫は機会損失の対策に有効ですが、管理には様々なコストがついてまわります。
しかし、在庫管理コストはリードタイム短縮で解決可能。
1つの製品あたりに要するリードタイムが短縮され、回転率が向上するため、より素早い製品提供体制が整います。
よって、リードタイム短縮はコスト削減に有効な手法といえるでしょう。
生産リードタイム短縮に有効な4つの方法
生産リードタイムの短縮方法を、下記の視点から解説します。
各方法について見てみましょう。
方法1.標準化・共通化による生産リードタイム短縮
製品開発では、設計の標準化と部品の共通化がリードタイム短縮に有効です。
設計の標準化は個別の仕様検討を省けますし、部品共通化は切り替え時間短縮に有効なためです。
部品共通化には、在庫管理や部品発注業務の簡素化に期待できる点も忘れてはいけません。
部品が共通化されれば、在庫の管理環境を検討する必要がなく、調達リードタイムの予測が立てやすくなるでしょう。
結果的に生産リードタイムの短縮が効率化され、的確な納品リードタイムの予測が可能となります。
方法2.不良率削減で生産リードタイムを短縮
不良品の発生は最悪の場合、生産ラインを止めての対応が迫られるため、生産リードタイム短縮には対策が必須です。
不良率削減は、検査工程をどこに配置するかがポイント。
どの工程に配置するかは、過去データを分析して、不良率が高い工程の後に設置しましょう。
ボトルネック工程が含まれる場合は、ボトルネック工程前に検査工程を設置するのも大切です。
直行率がアップし、生産リードタイムが短縮します。
方法3.工場・倉庫の導線変更で生産リードタイム短縮
工場や倉庫の導線は、人の流れに着目して変更すると生産リードタイム短縮に効果的です。
たとえば、倉庫の出入り口が4ヶ所あるとします。
4ヶ所全てが出入り口となっていれば、人の流れが煩雑になってしまい、倉庫内での動きにムダが多くなりがちです。
しかし、4ヶ所のうち2ヶ所を入り口、残り2ヶ所を出口とするとどうでしょうか。
導線によって制限することで倉庫内の人の流れがすっきりするため、より効率的な動きが可能になります。
工場においては、工程ごとにどのような人の流れが生じるのかをシミュレーションしてみましょう。
導線を検討しやすくなり、より生産リードタイムの短い製造につながります。
方法4.計画と進捗開示が生産リードタイム短縮に有効
部品発注先と工場内での計画と進捗開示が生産リードタイム短縮に有効です。
部品発注先に依頼した納期は、あくまでも計画段階の納期なため、製造テンポが早ければ部品待ちによる時間浪費の原因になりかねません。
部品発注先に進捗を開示していれば、納期が具体化されやすく、部品待ちのない製造に期待できます。
工場内での計画・進捗開示は、工程間の連携を深め、作業効率の向上が可能。
特に後工程では、進捗の把握によるムダのない作業準備ができるようになります。
工場内の計画・進捗開示は比較的取り組みやすい手法でありながら、作業者のモチベーション向上にも期待できるでしょう。
生産リードタイム短縮に取り組む前に、3つの注意点
生産リードタイム短縮を成功に導くためには、以下3つの注意点があります。
注意点の内容を見てみましょう。
注意点1.小ロットの生産リードタイム短縮はトラブル対策を
小ロット製品の生産リードタイム短縮は、自然災害が発生した際の部品供給ストップをはじめとしたトラブルの影響が大きい点に注意が必要です。
小ロット製品の部品は、在庫過多を避けるケースが多い反面、部品供給がストップすると納期遅れに直結します。
異なる地域に拠点のあるサプライヤーを選ぶ、複数のサプライヤーをおさえておくなど、非常事態に対する備えをしておきましょう。
注意点2.現場を無視した生産リードタイム短縮は控える
正味時間が短い工程を短縮する・現場を見ずに机上でのみ判断する、といった生産リードタイム短縮は大きな効果に期待できません。
そもそもの正味時間が短ければ効果が薄いのは当然ですし、机上での判断は現場の意見を無視する結果につながります。
生産リードタイム短縮は、管理側だけでなく、現場の意見があってこそ成り立つものでしょう。
注意点3.生産リードタイム短縮で必要項目を省いていないかチェック
生産リードタイム短縮に集中するあまり、省いてはいなけない項目・工程を省いてしまうケースが見受けられます。
ボトルネック工程の洗い出しによって、ムダな作業を洗い出すだけでなく、なぜムダになっているのかについてまで分析しましょう。
生産管理システムやMESを導入している場合は、リソースを活用するのが効率的です。
リソースからは、ムダとなり得る工程の洗い出しが可能なうえ、似通った工程が含まれる製造のムダ削減に役立ちます。
生産リードタイム短縮にシステム導入・刷新をご検討中の方へ
本記事では、生産リードタイムの基礎知識と、短縮方法・注意点を解説しました。
ポイントは以下3つです。
- リードタイムの基礎知識は取り組みの失敗防止に役立つ
- リードタイム短縮方法は、工程・場面によって異なる
- リードタイム短縮は、リソース活用によって効率的に取り組める
生産リードタイム短縮方法以外にも、近年ではERPシステム導入によるリードタイム短縮が注目を集めています。
ERPは工程の見える化をはじめ、情報の一元管理や基幹業務の効率化が可能です。
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