生産管理とは、製造におけるすべての工程の管理のこと。
「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」を満たした製造に必須な業務である一方、複雑さゆえに適正管理ができないケースもあります。
生産管理を適正化するためには、いったい何が必要なのでしょうか。
本記事では、生産管理の業務・課題と対処法を解説します。
【基礎】生産管理の仕事とは?8つの業務を解説
生産管理の業務をまとめると、下記のように分類できます。
業務 | 内容 |
需要予測 | 市場において自社製品がどれだけの需要があるかを予測する。必要な生産数に大きく関わる。 |
生産計画 | 調達する資材・生産の時期・準備期間・生産期間等の情報を整理。設備や人材を含めて生産における全てを計画立てる。 |
調達・購買計画 | 生産計画に沿った調達・購買計画を立案する。製造ラインに対する資材供給が適切になるよう熟慮する。 |
調達・購買実施 | 資材のコストを常に考慮し、資材調達を行う。品質基準と低コストを両立可能な資材を仕入れられれば生産コストの大幅削減も実現できる。 |
生産実施・管理 | イレギュラーな案件が入る可能性を視野に入れながら生産を実施する。生産が計画通りに進んでいるかどうかをチェックし、QCDを満たせるように生産をコントロールする。 |
品質管理 | 生産現場に行き、ネジ山の1つに至るまで細かく品質チェックする。定期的にチェックして、QCDを満たすよう努める。 |
在庫管理 | 在庫を効率良く消費できるよう管理する。資材と在庫の双方を管理し、適正在庫を維持する。 |
工程管理 | 生産工程が遅れないよう、各工程を管理する。標準リードタイムを要として、生産全体の効率化を目指す。 |
生産管理業務は、多岐に渡ります。
そのため、業務を分担し、各担当が連携しつつ管理する方法が一般的です。
いわば、二人三脚ならぬ八人九脚をテンポよくできている状態がベスト。
しかし、八人九脚をいくら練習しても失敗があるのと同様に、生産管理の足並みをそろえるのは困難です。
では、生産管理はどのような課題を抱えているのでしょうか。
生産管理が抱える7つの課題とは
生産管理で発生しやすい課題は、以下7つです。
- 調達管理ミスによる「納期遅れ」
- 工程管理の不足による「生産負荷の偏り」
- 品質管理が行き届かない「不良率の未把握」
- 不適切な在庫管理による「過剰在庫」
- 原価管理しきれず「余剰コストの発生」
- 部署間の交流がない「コミュニケーション不足」
- 人為的ミスによる「余分な手間」
全てではないにしろ、いずれかのシーンに直面した経験を持った経営者の方がほとんどではないでしょうか。
現状の生産管理が不十分と感じている場合、課題を明確化して解決を目指しましょう。
生産が効率化し、収益のアップにつながります。
課題1.調達管理ミスによる「納期遅れ」
納期遅れは、生産工程管理と資材調達管理の足並みにズレが生じた際に発生します。
生産ラインのペース管理が不十分だったり、資材調達が予定通りにならなかったりなど原因はさまざまです。
生産工程の管理方法改善・複数の資材調達先の獲得など、生産ラインが止まらないよう取り組みましょう。
課題2.工程管理の不足による「生産負荷の偏り」
生産負荷の偏りは、生産ライン工程の不適切な管理により発生します。
課題解決のポイントは平準化。
各工程の見える化・適切な業務割り振りを行って対応しましょう。
平準化については下記記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
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課題3.品質管理が行き届かない「不良率の未把握」
不良率の未把握は、生産ラインで発生する不良品の量を把握できていない場合に発生します。
人が生産に関わる以上、ミスがあるのは当然ですが、どのラインで・どれだけの欠陥品が発生するかを把握しておきましょう。
部品の多さや生産工程の複雑さを考えると、欠陥品が多くなる理由を導き出すのは困難です。
しかし、不良率をデータ化しておけば、欠陥品が増える要因を突き止めやすくなります。
課題4.不適切な在庫管理による「過剰在庫」
過剰在庫は、需要予測と生産ラインのペース管理、双方の連携不足によって発生します。
変動を続ける需要を常にチェックし、定期的に生産計画を見直して対策しましょう。
同時に在庫の見える化を図り、キャッシュフローが悪化しないように注意すべきです。
課題5.原価管理しきれず「余剰コストの発生」
余剰コストの発生は、資材調達の際に価格チェックできていない場合に発生します。
2018年の中小企業会計研究第4号「我が国の中小企業における原価計算・原価管理の実践状況」によると、原価管理をしていない企業は約30%。
原価管理が出来ていなければ、余剰コストが発生することは避けられない事態です。
原価管理の在り方を考え、システム導入や管理体制の見直しを検討しましょう。
課題6.部署間の交流がない「コミュニケーション不足」
生産は各担当の足並みがそろってこそ、適切に管理できるものです。
それぞれが目前の状況に対応するだけでは、十分に機能しません。
コミュニケーション不足が発生する大きな要因は、各担当のシステム連携が出来ていない問題が挙げられます。
全体の状況をリアルタイムで把握し、密な連携体制を築きましょう。
課題7.人為的ミスによる「余分な手間」
手配漏れ・誤発注など、人為的ミスを減らすための多重チェックが余分な手間になります。
ならば人為的ミスを減らすためにどうすれば良いのでしょうか。
必要なのは、情報の一元管理。
情報を総合的に管理できれば、チェックに必要な人員の削減が可能です。
余分な人材を抱える必要がなく、適切な生産管理と共に人件費削減にもつながります。
生産管理が抱える課題に対処できる3つの方法
生産管理が抱える課題はさまざまあり、全てに対処するのは不可能のように感じるかもしれません。
しかし、課題を追っていくと対処法は3つに絞られます。
なぜなら、課題の要因は深い部分でつながっているためです。
それでは、生産管理の課題の対処法3つの詳細を見ていきましょう。
方法1.生産管理に必要な情報のリアルタイム取得
生産ライン・在庫・キャッシュフローなどの情報は流動的です。
どれだけ素早く現状を把握できるかが、生産管理の要になります。
資材の支払い・在庫消化などの情報が共有できれば、キャッシュフローの適正化を図りやすく、どれだけの資材・在庫があるかを共有できれば過剰在庫もリスクが減ります。
情報のリアルタイム取得は、一元管理にも役立ち、全社的な効率化も可能です。
方法2.生産管理・作業の標準化
業務プロセスの標準化を求める声は年々高まっています。
標準化が求められる理由は、担当者のみが業務内容を把握している属人化防止や、限られた労働力下での生産効率向上が可能なためです。
各担当・各部署のマニュアルを配備して業務プロセス標準化を図りましょう。
業務プロセス標準化については下記記事をご覧ください。
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方法3.生産ラインの見える化による生産管理の効率向上
生産ラインの見える化の必要性は、広く知られています。
たとえば、製造機械の稼働データ集約による分析・製造機械の故障情報伝達など。
生産計画通りに物事を進めるためには、発生してしまった事態に対するリカバリー力が必須です。
見える化が出来ていれば、不測の事態に対する対応力がアップし、最低限の損害で抑えることができます。
生産管理には的確なシステム導入が必須
必要最低限の人材とコストで生産管理の適正化を検討する場合は、新たなシステムの導入も検討すべきでしょう。
生産管理の適正化は1度では終わらず、PDCAサイクルに則って繰り返す必要があります。
しかし、労働力不足の中で生産管理の適正化に貴重な人材を割くことは現実的とは言えません。
そこで本章では、製造業の生産管理向けシステムをわかりやすく解説します。
生産管理の課題解決には「ERP」が適切
ERPとは、各部署のシステム同士をつなげ、情報の一元管理を可能にするソフトウェアのことです。
横の連携が図りやすくなるのと同時に、各部署が抱える情報がどこからでも入手可能に。
業務効率の向上により残業が減少するため、社員の働きやすさが増し、働きやすい環境推進にも役立ちます。
製造業向けのERPソフトウェアは年々進化を続け、より使いやすくなっているため、システム導入後もスムーズな業務進行できて安心です。
生産管理に使用するERPは導入期間とコストで選ぶ
生産管理に悩む中小企業にとって、生産管理の適正化に人員を割くのは困難です。
経済産業省の調査(中小企業白書)によると、70%以上の中小企業が人材不足について課題を抱えている事実が判明しています。
そのため、できるだけ短期間(アジャイル)かつ必要な人材は最低限でシステム導入を目指す必要ことが大切です。
システム導入に必要な期間の長短は、担当者にかかる負担とコストに直結してしまいます。
ERPそのものの価格だけでなく、どの程度の期間で導入可能なのかを必ず確認しましょう。
クラウド・コンポーネント型ERPで生産管理の負担軽減
新規システム導入は、データの保管先であるサーバーを置くスペースが必要か、自社にとって過不足がないかが大切なポイントです。
しかし、デジタル技術の進歩により、自社に設置したサーバーでデータ保管する必要はなくなりました。
クラウドを利用したERPであれば、自社のスペースは現状のままで速やかな導入が可能です。
また、最近ではコンポーネント型のERPにも注目が集まっています。
コンポーネント型とは、必要に感じる機能だけをパズルのように組み合わせる形式のERPのことです。
余計な機能がないぶん使いやすく、コスト面にも優れていると人気を得ています。
ERPについては下記にて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
近年、あらゆる場面で耳にするERPシステム。しかし、「具体的にどのようなシステムで、一体何ができるのか?」が不明確な方も多いでしょう。 本記事では、ERPシステムの概要と種類を紹介します。導入に向け、プロジェクトの進め方と選定方法も説明し[…]
生産管理の悩みは課題の明確化が第一歩
今回は生産管理の基本知識と共に、生産管理が抱える課題と対処法をお伝えしました。
特に大切なポイントは、以下の3つです。
- 生産管理における課題を明確化し、適切に対処すべき
- 限られた人材で生産管理を適正化するにはERPの導入が現実的
- ERPはクラウド・コンポーネント型が期間とコスト削減しやすい
当メディアを運営するチェンシージャパン株式会社は、アジア最大級のIFSパートナーとして、製造業向けERPのコンサルティング・導入をしております。
下記にて、生産管理を含めたお悩みを抱えたお客様のERP導入事例をまとめておりますので、ぜひ一度ご覧ください。