世界各国で取り組みが進められているSDGs。
しかし、「何から始めれば良いのか・どのように取り組めば良いのか」と迷う方も多いでしょう。
本記事では、製造業のSDGsの取り組み方を、事例を用いて紹介します。
SDGsの取り組みをご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
製造業企業が目指すべきSDGsとは?
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標を指す言葉。
外務省は、下記のように定義しています。
「誰一 人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標です。
引用:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組|外務省
SDGsは、環境問題や地域格差などさまざまな課題に向け、全17種類の目標が設定されています。
とりわけ製造業においては、エネルギー消費や生産、イノベーションに関する目標が注目を集めているのが現状です。
本章では、製造業企業がSDGsに取り組む重要性と、製造業企業が目指すべき4つの目標を紹介します。
製造業におけるSDGsの重要性
SDGsの達成には、製造業企業の取り組みが欠かせません。
理由は、SDGsで取り上げられているエネルギー問題や環境問題に、製造業が大きく関わっているためです。
エネルギー庁の調査によると、製造業のエネルギー消費量は、全業種の中で最も多いとのこと。
中でも消費量の多いエネルギーは、石油(33.4%)、電気(21.3%)、石炭製品(16.0%)です。
石油・石炭製品は、枯渇が問題視される化石燃料であり、電気も化石燃料を用いた火力発電が主流です。
製造業は、我々の生活に欠かせない産業ですが、現状生産工程で多くのエネルギーを消費しています。
そのため、SDGsが掲げる「持続可能でよりよい社会」を実現するには、製造業企業1社1社の取り組みが重要なのです。
製造業に関連する4つのSDGs目標
SDGsの中で、製造業と関連深い目標は4つあります。
各目標の詳細は、下記の通りです。
目標 詳細 目標7:エネルギー すべての人が、安くて安全で現代的なエネルギーをずっと利用できるようにしよう 目標8:成長・雇用 みんなの生活を良くする安定した経済成長を進め、だれもが人間らしく生産的な仕事ができる社会を作ろう 目標9:イノベーション 災害に強いインフラを整え、新しい技術を開発し、みんなに役立つ安定した産業化を進めよう 目標12:生産・消費 生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう
製造業企業がSDGsに取り組む際は、上記4つの目標をもとに具体的な活動内容を検討するのがおすすめです。
次章では、上記4つの目標に向けた製造業企業の取り組みを紹介します。
【目標別】製造業のSDGs取り組み
SDGsでは、環境問題やエネルギー問題など社会的な問題を扱うため、自社内で大々的な取り組みを検討しがちです。
しかし、たとえ大きな取り組みであっても、一過性では社会問題を解決できません。
したがって、自社が継続的に実現できる取り組みを検討・実行し、徐々に取り組みを強化すると良いでしょう。
この章では、先ほど紹介した4つの目標に向けた、製造業企業の取り組みを紹介します。
取り組み1:目標7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
この目標で目指すのは、「すべての人が、安くて安全で現代的なエネルギーをずっと利用できるようにしよう」です。
製造業が「目標7.エネルギー」に向けてできることは、エネルギーを減らす・作る・効率化の3つです。
具体的な取り組みは、下記が挙げられます。
- 社内の照明をLEDに代えて消費電力を減らす
- 輸送の効率化を図って消費燃料を削減
- エネルギー消費の少ない製品を製造・販売する
- 太陽光発電や風力発電で電気を作る
- コージェネレーションでエネルギー効率を高める
中でも、社内照明のLED化は、取り組みやすい上に消費エネルギーの削減に効果的です。
計201台の社内照明を蛍光灯からLEDへ置き換えた会社では、消費電力の約40%削減を達成しています。(参照:大之木建設株式会社|SHARP)
取り組み2:目標8.働きがいも経済成長も
目標8.働きがいも経済成長もで目指すのは、「みんなの生活を良くする安定した経済成長を進め、だれもが人間らしく生産的な仕事ができる社会」です。
この目標に向けた製造業の取り組みは、下記が挙げられます。
- デジタル技術を活用して生産性の向上
- システムによる業務の効率化・負担軽減
- 労働環境を見直し、従業員の安全性・生産性を向上
- 社内データをもとに従業員のスキル向上を目指した教育の実施
製造業企業が生産性を飛躍的に向上させ、安定した経営を実現するには、デジタル技術やシステムの活用が不可欠です。
中小企業におけるDXの必要性やメリットを知りたい方は、こちらの記事をご参考ください。
中小企業にDXが必要な理由は、自社の競争率向上と起こりうる経済損失に対応するためです。DX(デジタルトランスフォーメーシ…
取り組み3:目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう
目標9.産業と技術革新の基盤をつくろうでは、「災害に強いインフラを整え、新しい技術を開発し、みんなに役立つ安定した産業化」を目指します。
製造業企業の具体的な取り組みは、下記の4つが挙げられます。
- 既存システムのクラウド化を進めITインフラを強化
- セキュリティ対策をしてインフラの安全性を確保
- 組織改革・DXによるイノベーションの誘発
- サービタイゼーションの推進
道路・電気・水道などのインフラ整備は、一部の製造業企業に限定されますが、ITインフラの強化は今や多くの企業で求められています。
まずは、自社内に目を向け、ITインフラの強化・技術革新の基盤作りを進めると良いでしょう。
取り組み4:目標12.つくる責任・つかう責任
目標12.つくる責任・つかう責任で目指すのは、「生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう」です。
この目標に向けた製造業の取り組みは、下記が挙げられます。
- 不良率を改善し廃棄物を削減
- 長期間使用できる製品の開発
- 商品の過剰包装、廃棄ロスを削減
- 汚染物質への対策
製造業にはつくる側の責任があり、地球環境・人々の健康に配慮したものづくりが求められます。
まずは、自社事業とも関連深い不良率の改善から取り組んでみてはいかがでしょうか。
製造業がSDGsに取り組む3つのメリット
SDGsへの取り組みは、社会問題の解決のみならず、ビジネスにおけるメリットも期待できます。
製造業企業が、SDGsへの取り組みで得られるメリットは下記3つです。
- ESG投資が優遇されやすい
- ビジネスチャンスにつながる
- 企業のブランディング効果
3つのメリットを順に紹介します。
メリット1.ESG投資が優遇されやすい
1つ目のメリットは、近年、欧州・アメリカを中心に活発化しているESG投資が優遇されやすいこと。
ESG投資とは、企業の環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)への配慮を評価し、投資することです。
SDGsへの取り組みは、環境や社会問題への対策が主であり、なおかつ「目標8.成長・雇用」「目標9.イノベーション」には、企業統治に向けた対策が含まれます。
製造業企業がSDGsへ取り組むことでESGの評価基準を満たし、結果的に資金調達の成功率が高まります。
メリット2.ビジネスチャンスにつながる
2つ目のメリットは、SDGsへの取り組みが、新たなビジネスチャンスにつながること。
SDGsが掲げる17つの目標は、世界規模で解決するべき課題です。
つまり世界中には、課題解決に向けたニーズがあり、こうした課題解決につながる製品・サービスを開発すると、新たなビジネスチャンスにつながる可能性が高いのです。
たとえば、プラスチックに代わる紙ストローや、ガソリンを使わない電気自動車・水素自動車など。
SDGsは見方を変えれば、世界的な巨大マーケットです。
いち早くSDGsへ取り組むことで、ビジネスチャンスをつかむ可能性が高まります。
メリット3.企業のブランディング効果
3つ目のメリットは、ブランディング効果が期待できること。
先述したESG投資からも分かるとおり、SDGsへの取り組みは企業イメージを左右する大きな要因です。
SDGsへ積極的に取り組むことで、企業イメージの向上・企業のブランディングに効果をもたらします。
また、企業のイメージの向上は、製品・サービスへの信用や優秀な人材が集まりやすくなるなど、さまざまな効果が期待できます。
SDGsへの取り組み事例
SDGsへ取り組んでいる日本企業は、数多く存在します。
それぞれどのような取り組みをしているのか、下記3社の事例を紹介します。
- 株式会社前田製作所
- 株式会社高坂工業
- カネパッケージ株式会社
自社でSDGsへの取り組みを検討する際の参考にしてみてください。
事例1.株式会社 前田製作所
株式会社 前田製作所は、クレーンや運搬台車など産業用機器を製造する会社です。
SDGsの中でも、労働力不足という問題に向け、製品のICT化・IoT化による作業効率向上・省人化に取り組んでいます。
同社が取り扱うICT建設機械は、建設工事における測量・設計・計画・施工・検査の全工程を一元的に管理し、工事現場の見える化を実現するシステムです。
現場のムダを省き、従業員の安全性・生産性を高め、労働力不足の解決を目指しています。
事例2.株式会社 高坂工業
株式会社 高坂工業は、マンションやビルの外壁塗装・防水工事を手掛ける会社です。
高坂工業は自社の強みを活かし、熱塗料によるCO2の排出量削減へと取り組んでいます。
採用している断熱塗料「ガイナ」は、宇宙ロケットの開発技術を応用して生み出された商品。
高い断熱効果を持つため、外壁などに塗布すると外の熱を遮断し、室内の温度を一定に保てるとのことです。
外壁塗装会社ならではの取り組みで、CO2排出削減に貢献しています。
参照:株式会社 高坂工業SDGs10の取り組み|株式会社 高坂工業
事例3.カネパッケージ株式会社
カネパッケージ 株式会社は、緩衝材や梱包材を開発・製造・販売する会社です。
近年問題となっているマイクロプラスチックを削減すべく、バイオプラスチックの開発に取り組んでいます。
プラシェル樹脂と卵の殻を配合することで、プラスチックを60%削減したバイオプラスチックができるとのこと。
石油系材料を削減できるとともに、産業廃棄物となっていた卵の殻の有効活用が期待できます。
今後、行政・大手企業と連携し、日本全国への普及を目指すようです。
参照:卵の殻を配合した樹脂「プラシェル」|カネパッケージ株式会社
SDGsに取り組み経済的×社会的価値を創造しよう
製造業が目指すべき4つのSDGsについて、メリット・取り組み例を紹介しました。
SDGs目標はたくさんありますが、なかでも製造業では下記4つの目標が注目されています。
- 目標7.エネルギー
- 目標8.成長・雇用
- 目標9.イノベーション
- 目標12.生産・消費
事例でも紹介した通り、自社の強みを活かしてSDGsへいち早く取り組んでいる製造業企業が、数多く存在します。
これらの事例を参考に自社を今一度見直し、SDGsへの取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。
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