景気動向の先行指標として、製造業や金融業から注目されているPMI。
ただ、「PMIと聞いたことがあるが具体的に何を示すのか・PMIの見方を知りたい」と気になる方も多いでしょう。
本記事では、製造業が着目すべきPMIの概要と、需要調査で求められる理由・ISMとの違いを解説します。
製造業PMI(購買担当者景気指数)とは?
製造業PMIとは、Purchasing Manager’s Index の略で、購買担当者景気指数のことです。
製造業企業の購買担当者に生産や受注、雇用に関するアンケートを実施し、その結果を指数化したもの。
PMIは製造業と非製造業に分けて集計・発表されますが、着目されるのはおもに製造業の指標です。
製造業の購買担当者は、製品のニーズだけでなくサプライチェーン全体の動向や他国の財政状況などを見極め仕入れを行うため、指標の信憑性が高いとされています。
また、GDPや物価上昇率などの経済指標よりも公開タイミングが早いため、速報性を兼ね備えた指標として経営判断や投資判断に用いられます。
本章ではPMIの概要として、「グローバル製造業PMI」と「ISMとPMIの違い」を紹介します。
各国の景気循環を示す「グローバル製造業PMI」
グローバル製造業PMIとは、各国の製造業PMIをまとめたもので、世界の景気循環を示す指標です。
PMIは各国で集計されており、中でも経済力の高い下記3カ国の指標が注目されています。
- 中国
- アメリカ
- ユーロ圏
また、グローバル製造業PMIの動向は、日本の日経平均株価と高い連動性があります。
日経平均株価を構成する企業のうち、約6割を製造業企業が占めるため、世界の景気循環と連動した動きを取りやすいのです。
そのため、グローバル製造業PMIが上昇すると、国内製造業の業績予測が上昇傾向になり、株価も上がるとされています。
将来的な景気動向を占う上で、世界各国で集計・発表されているPMIは、購買担当者に必要な指標です。
製造業PMIとISMの違い
ISMとは、Institute for Supply Management の略で、全米供給管理協会が公表している製造業景況感指数のことです。
一般的には、「ISM製造業景況感指数」と呼ばれます。
ISM製造業景況感指数は、アメリカの300を超える製造業企業に対してアンケートを実施し、回答結果を指数化したものです。
本来、アメリカの製造業の景気を占う指標ですが、アメリカが世界トップクラスの経済力を誇るため世界経済を占う指標としても用いられています。
一見するとPMIと混同しやすい指標ですが、大きく下記2つの違いがあります。
PMI | ISM製造業景況感指数 | |
違い1.調査団体 | IHS Markit社 | 全米供給管理協会 |
違い2.対象企業数 | 400社以上 | 300社以上 |
上記の違いはありますが、購買担当者が将来的な景気を占う際は、PMIとISM製造業景況感指数を合わせて判断することが大切です。
複数の指標を掛け合わせることで、分析結果の偏りを防止できより確度の高い判断を下せるためです。
ISM製造業景況感指数とは、全米供給管理協会(ISM)が毎月算出している指標であり、米国の製造業の景況感を示しています。 ISM製造業景況感指数を経営判断に役立てる製造業者も多いのではないでしょうか。 今回は、ISM製造業景況感指数の基[…]
【PMIの見方】製造業の購買担当者が目安にすべき数値は50
PMIの見方は至ってシンプルです。
値は「50」を基準値として、上回れば景気が上向きと判断でき、下回れば景気減速と判断します。
ビジネスに当てはめると、PMIが基準値を上回る「60」で推移した場合、新たな事業に着手したり、事業を拡大したりと攻めの行動を意識します。
また、グローバル製造業PMIも上向きであれば、各国の企業も攻勢に転じるため新たなビジネスチャンスにつながるかもしれません。
一方、PMIが基準値を下回り「40」で推移した場合、事業の縮小など事態の打開に取り組まなければなりません。
PMIの振れ幅は、概ね40〜60を推移するため、数ポイントの推移でも見逃せない景気変動といえます。
購買担当者の需要調査、PMIが必要な3つの理由とは?
PMIは、各国の製造業の状況、ひいては世界経済の動向把握も可能です。
しかし、非製造業はPMIにあまり着目していません。
製造業が、なぜPMIに着目するのかについて解説します。
事業拡大のタイミングをPMIで予測できる
事業を拡大するのであれば、好景気なタイミングを狙う方がビジネスの成功率が高まります。
前述のとおり、PMIは国内のみならず世界経済の動向を指し示すため、値に着目することで、事業拡大のタイミングを把握しやすくなります。
たとえば、PMIが50を上回り世界的に景気上昇が続いている場合、新規ビジネスや事業拡大の成功確率を高められるでしょう。
PMIを見れば経済動向を正確かつ瞬時に把握できるため、事業の舵取りをするうえで欠かせない指標といえます。
理由2.PMIの動向チェックで効率的な生産計画策定が可能
近年の市場では、流動的に変化を続けるニーズに対して、突発的に受注する製品が増えています。
限られた期間内で納品するため、慌ただしく生産計画を策定し、工場の人員数や稼働時間を調整する必要があります。
中には、残業に頼り過ぎてコンプライアンスを守れなかった、というケースもあるのではないでしょうか。
しかしPMIを活用すれば、突発的な製品受注に対して、ある程度の対策が可能です。
季節的なニーズについては、過去のデータを参考にし、最新の動向についてはPMIを参考にします。
それにより、受注する可能性のある製品のリードタイムを予測できれば、より的確な生産計画の策定が可能です。
理由3.PMIは適正な在庫管理に効果的
PMIは、製造業に欠かせない在庫管理にも大きな影響を及ぼします。
日本は、エネルギー資源の大半を海外の国々に依存しています。
万が一、輸入国のPMIが悪化した場合、エネルギー資源の価格高騰により製造コストが跳ね上がる恐れがあります。
ただ、常にPMIなどの景気指標を分析し、異変にいち早く対処できれば、在庫の確保や仕入れ先の変更などの対処が可能です。
こうした万が一の機会損失を最小限に食い止めるためにも、PMIをはじめとする景気指標を分析することが重要です。
PMIの需要調査を効率化する3つのポイントとは?
製造業の需要調査は、生産管理部門が担当しているケースがほとんどです。
しかし「生産管理の業務とは?社内の人材を活かし作業効率化する方法を解説」に掲載している通り、生産管理の業務は工数が多く煩雑です。
より効率的にPMIの需要調査を行うには、下記3つのポイントが大切です。
需要調査を効率化するポイント
本章では、需要調査を効率的に行うための3つのポイントを解説します。
ポイント1.購買担当者に業務効率を意識させる
需要調査を担当する社員が、目の前の業務に追われ続ける日々を過ごしていないでしょうか。
確かに、業務をこなすのは大切です。
しかし、本来であれば「どうしたら業務をより効率的にこなせるのか」を考えること必要です。
そうでなければ、現状の作業効率が改善されません。
ただ、業務の効率化を図る際、上司の呼びかけだけでは思うような成果につながらないでしょう。
当人が現状の作業効率に問題意識を持ち、自ら改善行動をとることが大切です。
まずは社内ミーティングなどを活用し、業務効率への問題意識を持ってもらうよう社員一人一人にアプローチすると良いでしょう。
ポイント2.購買担当者がリソースを活用できる環境構築
PMIは、あくまで調査機関による調査結果です。
そのため、PMIを需要調査や経営判断に活かすためには、自社に蓄積したデータとすり合わせを行わなければなりません。
そうした作業には、購買担当者がリソースを活用できる環境構築が必須でしょう。
リソースを整理し、必要な時に必要な情報を取り出せるよう、支援を惜しまない姿勢が大切です。
ポイント3.デジタルソリューションによる業務効率化【社内DX】
担当者の意識改革・環境構築を解説しましたが、やはり最も効果があるのは、業務プロセスそのものを置き換える社内DXです。
現状の業務を見渡すと、「部門間での重複業務」や「データの入力作業」に時間を取られていませんか?
これらの業務は、生産管理システム・ERPシステムなどのデジタルソリューションを活用することで、大幅に削減できます。
本来、購買担当者の需要分析・予測は、製造業企業の事業の指針となる重要度の高い業務です。
デジタルソリューションの活用で無駄な業務を省き、よりクリエイティブな業務に着手できれば、会社に今よりも多くの利益をもたらせるでしょう。
社内業務を抜本的に改革し、作業効率を高めるのであれば、デジタルソリューションの導入をおすすめします。
購買担当者の需要調査効率化にはシステム導入が効果的
経済産業省が発表した「DXレポート ~ITシステム「2025 年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」では、以下2点を現代企業に求めています。
- クラウド・モビリティ・ビッグデータ・アナリティクス・ソーシャル技術を用いた新たな価値の創出
- ITを活用したデジタルイノベーションプラットフォームの構築
今後も続くであろうニーズの多様化、それを見通すための的確な需要調査には、より多くのデータが必要です。
さらには、PMIをはじめとしたデータを的確に処理し、活用できるプラットフォームが必要でしょう。
これらを可能にするのは、基幹システムと呼ばれるデジタル技術です。
基幹システムの導入は、ビッグデータを取り扱いやすくなり、より的確な需要予測を可能にします。
購買担当者の業務を効率化が可能なERPとは?
ERPは、企業全体の情報一元管理・業務の可視化が可能で、企業の経営最適化を目的とした基幹システムです。
これまでは、部門ごとに別々の基幹システムを導入するのが一般的でしたが、ERPは1つのシステムで社内の業務全体をカバー。
性能や機能だけでなく、ユーザビリティの向上がめざましく、近年注目を集めています。
ERPが、購買担当者の業務にどのような影響を与えるのかを解説します。
ERPでリソース活用、購買担当者の負担を軽減
インターネット上のセキュリティ対策が強固になり、クラウド型のERPが増えています。
同時にビッグデータにも対応し、データ化がすすんでいる現代社会に、より適したシステムへと進化しました。
一方で、社内のデジタル化がすすまず、リソースとなるべきデータがブラックボックス化している企業が多いのではないでしょうか。
ERPは全部門をつなぎ、これまで膨大な手間と時間が必要だったデータ収集を効率化します。
購買担当者の業務負担を軽減し、より的確な需要予測を実現できるでしょう。
ERPで全社的な連携強化、PMI分析結果のシームレス共有が可能
複数のシステムを導入している場合、データの統合には、単位のすり合わせが必要です。
部署によっては、時間を日単位で管理する場合もあれば、分単位・秒単位で管理する場合もあるためです。
PMIの速報性を活用するには、リアルタイムの情報共有が大きなポイントですが、データ統合が遅ければ意味がありません。
しかしERPによって、はじめからデータの統合が終了している場合はどうでしょうか。
PMIの速報性というメリットを損ねず、最大限活用できるでしょう。
ERPの情報一元管理は、シームレスな情報共有と、リアルタイムのデータ分析に貢献します。
PMIの需要調査をより的確にしたい方へ
今回は、製造業が着目すべきPMIの概要と、需要調査で求められる理由・ISMとの違いを解説しました。
ポイントは下記4つです。
- 製造業PMIとは、「Purchasing Manager’s Index」の略で、購買担当者景気指数のこと
- 値は「50」を基準値として、上回れば好景気・下回れば景気減速と判断
- 「事業拡大のタイミング予測」・「効率的な生産計画策定」・「適正な在庫管理」につながる
- 需要調査の効率化には、ERPシステム(デジタルソリューション)が効果的
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