タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムの違いを解説!短縮法も

  • 2022年12月22日
  • 2024年8月2日
  • 製造業

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムは、生産性向上に必要不可欠な数値です。

関係性を理解することにより、製造現場のムダを省けるケースも少なくありません。

本記事では、タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムの違いを、基礎知識とともにを解説します。

関係性や短縮方法とあわせて、ぜひご覧ください。

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムの違いとは?

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムは、似た言葉ではあるものの意味が異なります。

本章では、タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムの違いと基礎知識を解説します。

タクトタイムは1製品にかける時間

タクトタイムはピッチタイムとも呼ばれ、1つの製品製造に必要な時間を意味します。

稼働時間に対して、タクトタイムが短いほどより多くの製品生産が可能です。

タクトタイムの求め方は以下の通りです。

タクトという言葉には拍子や指揮棒などの意味がありますが、製造業でも生産のリズムを決める基準値となると言っても過言ではありません。

サイクルタイムは1製品の工程開始から完了までの時間

サイクルタイムとは、1つの製品を製造するときの工程開始から完了までのサイクルにかかる時間のこと。

工程に必要な正味時間であり、余裕や損失は考慮していない数値です。

サイクルタイムを求めるための式は以下の通り。

製造業では、タクトタイムに収まらない工程もあり、そういった工程は「ボトルネック」と呼ばれます。

ボトルネックは生産性低下につながるため、原因究明と解決が必要です。

リードタイムは受注から納品までの合計時間

リードタイムは、製品受注から納品までにかかる時間の合計です。

リードタイムはおもに開発・生産・調達・配送の4種類に大別され、開発がない場合・外注が必要な製品の場合など、企業によって違いがあります。

タクトタイムやサイクルタイムは、リードタイムの中でも、生産リードタイムに関連する時間と考えて良いでしょう。

そのため、生産性に大きく関わると重要視する企業が多く見られます。

リードタイムに関して、より詳しい解説は「リードタイム短縮でコスト削減&業績向上、実現する方法を解説!」に掲載していますので、あわせてご覧ください。

タクトタイム・サイクルタイムの関係性とは?

リードタイムを短縮するために、タクトタイムとサイクルタイムはどのような関係性を保つのが適切なのでしょうか。

本章では、タクトタイムとサイクルタイムの適正な関係性と、関係性が崩れたときの注意点を解説します。

タクトタイム=サイクルタイムの状態がベスト

タクトタイムとサイクルタイムが同等である状態は、必要な期間に必要な数の製品が効率良く製造できている状態を指します。

よって、リードタイム短縮や生産性向上を図るときは、タクトタイムとサイクルタイムが同等になる状態を目指すと良いでしょう。

タクトタイムとサイクルタイムは、トヨタのようなジャスト・イン・タイム方式の考え方にも通じます。

ジャスト・イン・タイム方式では、タクトタイムを用いた標準作業の設定が必要とされていることが「トヨタ自動車株式会社」のサイトに資料が掲載されています。

タクトタイムとサイクルタイムが同等であり、効率良く製造できている状態を目指し、キープすることが製造業に求められているのです。

タクトタイム>サイクルタイムでは過剰在庫に注意

タクトタイムがサイクルタイムよりも長い場合は、製品を目標よりも短時間で生産できる状態を意味します。

この状態は一見すると高効率な状況に見えますが、過剰在庫の発生・人件費のムダが発生するリスクが潜んでいる点に要注意。

タクトタイムがサイクルタイムよりも長ければ、作業量が少なく、手持ち無沙汰になるシーンが想定できます。

手持ち無沙汰にならないよう製造を続けたとしても、過剰在庫に陥ってしまっては在庫管理コストが増し収益性低下をまねくでしょう。

タクトタイム<サイクルタイムでは欠品に注意

タクトタイムがサイクルタイムよりも短い場合、生産能力が目標に追いついていない状態です。

生産能力が不足していれば、目標期日までに必要な製品数を確保できず、欠品を招く原因になります。

派遣社員による人員拡充・残業や休日出勤による製品数確保も可能ではあるものの、計画上の人件費を大きく上回る出費はまぬがれません。

つまり、タクトタイムがサイクルタイムよりも短い状態は、取引先の信頼を失うリスクに加え、計画上の収益が得られない可能性が含まれるということ。

生産計画の見直しをはじめとした対策により、素早い状態改善が必要です。

【工程別】サイクルタイムを短縮する方法とは?

サイクルタイムを短縮するためには、工程ごとにかかる時間を平坦化する方法を考えるのがポイントです。

本章では、加工と梱包の2工程を短縮する方法を解説します。

サイクルタイム短縮法1.人員増加が効果的な「加工」

他の工程に比べて加工の工程が長い、つまりボトルネック工程になっているケースでは、加工にあてがう人員の増加が効果的です。

同時に加工手順を確認して、作業量の偏りがないかをチェックしましょう。

その上で、人員の増加分を作業量の多い箇所に集中させ、効率化を目指します。

不必要な加工手順を洗い出し、ムダな手順をカットする手法で短縮を試みる場合は、現場スタッフと一緒に検討するのがポイント。

ムダに見えても、製品に不可欠な手順である可能性があるためです。

サイクルタイム短縮による効率化は、経営・管理側だけでなく、多角的な視点が必要です。

サイクルタイム短縮法2.動線の見直しが有効な「梱包」

出荷作業に伴う梱包に時間がかかり、ボトルネックとなっている場合は、倉庫内の動線を見直すべきです。

梱包作業は単純であるぶん、時間短縮は動線の効率性にかかっています。

製品の出荷前に必要な梱包作業に、かける時間が多いほど配送までに必要な時間が増え、取引先を待たせるケースも増えるでしょう。

ときには、在庫を管理する倉庫全体の見直しを要する場合もあるかもしれません。

しかし、在庫を管理する倉庫整理は、在庫管理コストを抑える効果にも期待できます。

倉庫整理は、業務効率化と低コスト化に期待でき、梱包工程の効率化も可能な取り組みです。

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイム短縮を成功へ、3つのポイントとは?

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイム短縮を成功させるためには、以下3つのポイントが大切です。

各ポイントについて、詳しく見てみましょう。

ポイント1.タイム短縮は見える化が必須

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムの短縮には、工場内の見える化が必須です。

工場内の見える化がなされていない場合、ムダな個所の洗い出しばかりに時間がかかり、本来の目的であるタイム短縮が困難。

「どのような製品の・どの工程で・どれくらいの時間がかかっているのか」を的確に洗い出し、対処するためにも見える化が大きなポイントになるでしょう。

製品の製造工程ごとにかかった時間をはじめとしたリソースがある場合は、活用したほうがより効率的です。

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムの短縮を素早く実行できるだけでなく、似通ったケースが生じたときは事前に対策できます。

ポイント2.現場視点ありきのタイム短縮にすべき

サイクルタイムやリードタイム短縮は「時間の短縮」が目的ではなく「時間短縮による生産性向上」が目的です。

しかし、時間短縮を意識するあまり、現場の動きを考慮しない短縮に取り組んだ結果、失敗するケースも。

データを追いかけたタイム短縮方法は効率的ですが、生産性向上を成功させるためには、現場を直接見て確認する作業は必須でしょう。

特に、工場内の見える化がすすんでいる場合は注意が必要です。

データに頼りがちになってしまい、現場視点を見落としがち。

サイクルタイムやリードタイムの短縮は、現場スタッフやリーダーを含めたチームを組んで検討するのがポイントです。

ポイント3.基幹システム・ERPがタイム短縮の強い味方に

人材不足が深刻化する現代では、デジタル・ITの力による業務効率化は欠かせません。

生産計画の策定においても、生産管理システムによって、より生産性が高い計画が可能なケースもあります。

一方で、基幹システムが老朽化し、十分に活用できていないレガシーシステムが課題となる企業が増加。

今後の製造業に必要なシステムについて、経済産業省が発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)」では、ERPをはじめとした新規システムの導入が推進されています。

十分に活用できないシステムにかかる運用・保守費用は、大きなムダです。

的確なシステムの導入により、ムダのない効率的な形態を築き上げるべきでしょう。

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムにお悩みの方へ

本記事では、以下3つのポイントをお伝えしました。

  • タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムの違い
  • タクトタイムとサイクルタイムは同等の関係を保つべき
  • タイム短縮にはデジタル・ITシステムの活用が必須

タクトタイム・サイクルタイム・リードタイム短縮は、生産性・収益向上を見込める取り組みです。

しかし、より効率的かつ的確に短縮するには、ITの力が欠かせません。

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