製造業のサービス化「サービタイゼーション」事例4選!必要性と戦略を解説

市場競争の激化・価値基準の移り変わりを受け、製造業のサービス化が注目されています。

しかし、「製造業のサービス化はどのようなビジネスモデルなのか、どのような戦略で進めるべきなのか」とお悩みの方も多いでしょう。

本記事では、製造業のサービス化に成功した4つの事例と、サービス化戦略を紹介します。

自社事業のサービス化を検討している方は、ぜひご覧ください。

製造業のサービス化「サービタイゼーション」とは?

製造業のサービス化とは、サービタイゼーションの実現を意味します。

サービタイゼーションとは、製品を製造し販売するという従来のビジネスモデルと異なり、製品とサービスを統合し、新たな付加価値を提供するビジネスモデルのことです。

製品が故障した際に駆けつけ、修理やメンテナンスをする保守サポートや、導入時のトレーニングサポートなどは、あくまでも付帯サービス。

サービタイゼーションは、付帯サービスの枠を超え、製品価値の向上や拡販を目的としたビジネスモデルといえます。

たとえば、製品の故障を予測し、計画的に保守・整備するサービスなど。

このサービスでは、製品が故障するリスクを格段に減らすことができ、ユーザーは納入時と同様の製品機能を長期的に享受できます、

それでは、製造業でサービス化が求められる理由と、それを支えるデジタル技術をみていきましょう。

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近年製造業で注目されているサービタイゼーション。サービタイゼーションとは何か・なぜ製造業で注目を集めているのでしょうか。…

製造業でサービス化が求められる理由

近年の製造業でサービス化が求められる理由は、主に下記2つが考えられます。

  • 顧客の価値基準がモノからコトへと移り変わった
  • 製造業の競争が激化した

以前の人々は、製品自体(モノ)に価値を見い出し、自身の生活を豊かにできる商品を求めていました。

しかし近年では、数多くの製品が市場に出回り、手軽に購入可能に。

これにより、モノへの価値が薄れ、体験・経験に価値を見出す人が増加したのです。

有名な書籍に「ドリルを売るなら穴を売れ」という本がありますが、まさに顧客はモノであるドリルを欲しているのではなく、モノを消費して得られる体験(穴)に価値を見い出しています。

こうした価値基準の変化に対応するため、近年の製造業ではサービス化が求められているのです。

また、製造業の国際競争が激化したことも、サービス化を加速させる要因の1つです。

以前の国際競争は、先進国の製造業企業によるものが一般的でしたが、新興国が台頭したことで状況が一変。

テクノロジーの発展も重なり、新興国製造業は先進国製造業と同等の、高品質な製品を量産できるようになりました。

国際競争が激化したことで、競争力強化の重要性が高まり、その手段として製造業のサービス化が注目されています。

製造業のサービス化を支えるデジタル技術

製造業のサービス化に欠かせないのが、AIやIoTなどのデジタル技術を活用した情報戦略です。

デジタル技術を活用すると、これまで以上に膨大な情報を処理でき、製品・サービスの高付加価値化を実現できます。

たとえば、モノをインターネットに接続させるIoT技術を活用し、製品の稼働状況や周辺情報を収集。

AIによるデータ分析で、未然に機械トラブルを検知したり、製品の改善点を把握できたりします。

近年では、製造業に限らずさまざまな業種でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されています。

今後のデジタル競争を勝ち抜き、競争優位性を確立するためにも、先行事例を参考にサービス化を推進することをおすすめします。

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製造業のサービス化を成功させた4つのサービタイゼーション事例

製造業のサービス化は大手企業を中心に推進され、すでに成果を出したという事例も公開されています。

本章では、製造業のサービス化に成功した下記4つの事例を紹介。

  • ダイキン|Daikin Global Platform
  • ブリヂストン|Tirematics
  • クボタ|KSAS(クボタ スマートアグリシステム)
  • 沖電気工業|Advanced M&EMS

各社独自の戦略でサービス化を実現しています。

それでは各事例の内容をみていきましょう。

サービタイゼーション事例1.ダイキン|Daikin Global Platform

1つ目の事例は、空調設備メーカーのダイキンが提供する「Daikin Global Platform」です。

Daikin Global Platformとは、世界中の空調機器をインターネットに接続し、販売・施工・運用・保守に対するサービスを提供するビジネスモデルです。

製品にIoT技術を搭載しており、空調機器の稼働状況や室温などの情報を一元管理

収集したデータを瞬時に分析し、自動制御により快適な空調環境を提供します。

また、空調機器の故障を未然に検知するため、故障点検や遠隔点検のサービスも提供しています。

空調機器のみで価値を提供するのではなく、常に快適な空調環境を享受できる体験を実現させた事例です。

サービタイゼーション事例2.ブリヂストン|Tirematics

2つ目の事例は、日本の大手タイヤメーカー株式会社ブリヂストンが提供する「Tirematics」です。

「Tirematics」は、日本国内のトラック・バス事業者向けに提供しているデジタルソリューション。

タイヤの内圧情報をリアルタイムで収集・モニタリングし、異常があれば運行管理者へアラートが送られる仕組みです。

また、摩耗や温度状況なども収集し、適切なタイミングでメンテナンスをおこなっています。

これにより、トラック・バス事業者の車両稼働を最大化をし、メンテナンスコストの削減トラブルによる機会損失の防止を実現します。

車両の安全性が重視されるトラック・バス事業者向けに、サービスによる付加価値化を実現した事例です。

サービタイゼーション事例3.クボタ|KSAS(クボタ スマートアグリシステム)

3つ目の事例は、農機具メーカー株式会社クボタが提供する「KSAS(クボタ・スマート・アグリ・システム)」です。

KSASとは、高収量・良食味米などを実現する営農支援サービスです。

IoTセンサーを搭載したクボタの農機を利用することで、農地情報や作業記録などを収集しデータベースで一元的に管理。

蓄積したビッグデータを分析し、農機の稼働効率向上や品質の向上につなげます。

また、収穫した作物の食味・収量をリアルタイムで計測するため、圃場(ほじょう)成績を把握でき、来季の農業計画に反映できるでしょう。

クボタのKSASは、農機具×営農サービスによる高付加価値化を実現させた事例です。

サービタイゼーション事例4.沖電気工業|Advanced M&EMS

4つ目の事例は、沖電気工業株式会社が提供する「Advanced M&EMS」。

沖電気工業は、通信機器やATMなどを製造する国内大手の電機メーカーです。

沖電気工業が取り組んだサービス化は、先述した3社とは大きく異なり、自社の生産能力をサービスとして提供する電子機器受託製造サービス(EMS:Electronics Manufacturing Services)というビジネスモデル。

「Advanced M&EMS」は一般的な製造受託事業と異なり、同社がシステム事業で培ったノウハウを転用している点が特徴です。

また、設計から調達、実装、試作、装置組立、保守までを一貫してサポートするため、経営資源を商品企画・販売などのコアプロセスに集中できます。

沖電気工業の「Advanced M&EMS」は厳密にいうと、サービタイゼーションとは異なりますが、他社との差別化に成功した製造業のサービス化事例といえます。

製造業のサービス化戦略

製造業がサービス化を進めるには、下記2つの戦略策定が必要です。

  • サービスの方向性を設定
  • 組織の抜本的な再編成

本章では、製造業のサービス化に欠かせない2つの戦略を紹介します。

戦略1.サービスの方向性を設定

ひとえに製造業のサービス化と言っても、その方向性は多岐にわたります

たとえば、製品志向でサービスを構築するのか、市場ニーズを重視した顧客志向(マーケティング志向)でサービスを構築するのかで、ビジネスモデルは大きく異なります。

  • 製品志向:より優れた製品(機能・品質・デザイン)にフォーカス
  • 顧客志向:顧客のニーズを意識し、提供する価値にフォーカス

また、サービスの統合先が自社製品なのか、他社の製品なのかという点でも、想定されるサービスの方向性に選択肢が生まれます。

仮に「製品志向・顧客志向」、「自社製品志向・他社製品志向」という、2つの軸でサービスの方向性を検討したとします。

サービスの方向性が、顧客志向・自社製品志向であれば、既存の自社製品へニーズに即したサービスを統合することになるでしょう。

製造業がサービス化を進める際は、初めにサービスの方向性を設定することが大切です。

上記で紹介したもの以外にも、さまざまなフレームワークが存在するため、それらを活用し方向性を模索すると良いでしょう。

戦略2.組織の抜本的な再編成

製造業のサービス化では、既存の組織体系を抜本的に見直し、新たに再編成する必要が出てきます。

とりわけ中小規模の製造業企業の場合、製造に必要な人材・技術を保有していても、サービスに必要な経営資源を有しているケースは少ないでしょう。

しかし、製造業のサービス化とは、製造中心のビジネスモデルから、製造+サービス提供のビジネスモデルへの変革を意味します。

つまり、製造業企業がサービス化を成功させるためには、現状の体制を見直し、サービス提供を支える新たな体制を構築しなければならないのです。

具体的には、既存の製造部門にサービス運営の機能を付加したり、新たに選任の部門を設けたりが効果的でしょう。

前者の場合、製品を十分に理解した人材がサービスに携わるため、自社製品の強みを活かした製品志向のサービスを展開しやすい点が魅力です。

一方後者の場合、顧客ニーズを捉えサービスに反映さえやすいため、市場を意識した顧客志向のサービスを展開できるでしょう。

新たに構築するサービスの方向性や自社のリソースを考慮し、適切な組織体系を構築してください。

製造業のサービス化をご検討中の方へ

本記事では、製造業のサービス化に成功した4つの事例と、サービス化戦略を紹介しました。

市場環境が急速に移り変わる近年では、それに対応するための変革が必要です。

製造業のサービス化はまさにその代表的な例であり、大手製造業をはじめ多くの企業が取り組んでいます。

自社事業のサービス化を検討している方は、先行事例を参考に、サービス化を推進してみてはいかがでしょうか

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